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若手映画監督 たちに聞く /「 ndjc」を経験して

2019.04.13 開催 THEミソ帳倶楽部「若手映画監督たちの根っこ」
ゲスト 司会 柏原寛司さん(脚本家 映画監督)/【左から】目黒啓太さん(映画監督)、齋藤栄美さん(映画監督)、川上信也さん(映画監督)

シナリオ・センターでは、ライター志望の皆さんの“引き出し=ミソ帳”を増やすために、様々なジャンルの達人から“達人たる根っこ=基本”をお聞きする公開講座「ミソ帳倶楽部 達人の根っこ」を実施しています。そのダイジェスト版を『月刊シナリオ教室』(今回は2019年8月号)から。
文化庁委託事業「ndjc:若手映像作家育成プロジェクト」でシナリオ・センター推薦の在籍生・元在籍生が、2016年から3年連続で選出されている。選出された目黒啓太さん(2016年度の『パンクしそうだ』)、齋藤栄美さん(2017年度の『トーキョーカプセル』)、川上信也さん(2018年度の『最後の審判』)のお三方は、ワークショップ参加後、制作実地研修作家の1人として選ばれ、それぞれ映画監督デビューを果たしました。今回は、この若手3監督と“シナリオ・センターの大先輩”“映画監督の大先輩”である柏原寛司さんをお迎えして、各自の脚本や映画監督の実際についてお話しいただいた模様をご紹介。

脚本をきちんと勉強することは監督にとっていいこと

〇柏原さん:柏原です。今日のお三方もそうだけど、『カメラを止めるな!』の上田(慎一郎)君とか、最近シナリオ・センター出身の監督が活躍しているんですよね。

僕は映画祭の審査員とかもしていて、インディペンデント作品のいい悪いの差って、脚本だなと思います。ndjcの出身者でも、例えば中野量太氏とか脚本のうまい監督は伸びていくわけです。

ですが、脚本はすぐ書けると思いこんでしまいがちです。脚本をきちんと勉強することは監督にとっていいことですし、シナリオ・センター出身の監督が活躍していることについて話すのは、面白いんじゃないかということで、このMCを引き受けました。

僕も最初ライターになるつもりはなくて、本当は監督になりたかった。黒澤明監督が、監督になるには脚本が書けなくてはいけないと言っていたので、シナリオ作家協会のシナリオ研究所に、浪人中に行ったんです。そこで教えていたのが新井一先生で、その繋がりでシナリオ・センターに入りました。

シナリオって、すごく大事です。お三方の作品もシナリオがうまく出来ている訳ですよ。

目黒君の『パンクしそうだ』はキャラクターが面白い。パンクやってたヤツと、彼と結婚しようとしている彼女のキャラクターがうまい。キャラクターがよく出来ているとドラマが進むんです。パンクというアイディアは、どこから出てきたの?

〇目黒さん:学生のころに遊びでバンドをやっていたので、バンド物とか、夢を諦められないとか、そういう話をずっと考えていて。2時間の映画コンクール用に、ゴーストライターの話を書いていて、コンクール出しても落ちて、また直して出してってことを繰り返していました。

で、その話のどこか30分を切り取るとしたら……と考えて出来たのが、あの話です。結婚相手の女性のほうが主人公で書いていたのですが、選出されてからプロットを書き直しました。

〇柏原さん:うまいなと思ったのは最後のところ。彼が仲間にあげようとしたギターを、彼女が取り戻すじゃない。あれ、バンド活動を認めたのかなと思ったら、「ミルク代ぐらいになるから」っていう落とし方がいい。

やっぱりシナリオやってないと書けないと思う。下手なヤツだと、「私、出来ちゃったの」とか妊娠したって直接言わせたりする。それにケツがいいと、作品ってよく見えるんだよ。プロのやりくちだね(笑)。

〇目黒さん:ラストカットで本当は、歩いて遠ざかっていくところをもっと長い尺で入れたくて、現場では200ミリの望遠レンズで撮っていました。でもラッシュでチェックしたら、遠ざかっていくうちにピントが外れてしまったと言われて、それで短く切ったんです。

〇柏原さん:変に引っ張るといやらしくなるから、あの終わり方のほうがいいんじゃないかな。

〇目黒さん:ずっと心残りだったので、そう言っていただけて、3年越しに救われました(笑)。

ネタとキャラクター

〇柏原さん:齋藤さんの『トーキョーカプセル』は、カプセルホテルという舞台設定がいいのと、主人公の女の子がシンデレラみたいに、夢の世界に行って帰って来る。その設定がいいよね。あれは何かネタがあるの?

〇齋藤さん:もともとカプセルホテルを舞台にしたいと思っていたんです。

〇柏原さん:目黒さんも齋藤さんも、助監督の経験が長いそうだけど、カプセルホテルは、自分が助監督の時、泊まっていたから?(笑)

〇齋藤さん:そうですね。たまに泊まってました。そういう時に、いろんな人がいるのを見て、ここを舞台に書いてみたいなと思いました。

〇柏原さん:ndjcの脚本指導では、どのくらい変わりましたか?

〇齋藤さん:舞台は一緒ですが、もともとの話はアイドルの女の子を見ているうちに、自分も変身するという話でした。でもリアリティがないように思えて、忘れ物のウィッグを拾ってクラブに行く流れに変えました。

〇柏原さん:ホテルを経営しているおじさんのキャラクターも面白いし、いいよね。

〇齋藤さん:製作会社がアルタミラ・ピクチャーズさんだったので、とても取材を大切にされていて。私ひとりでも、プロデューサーの方と一緒にも、取材に行きました。

〇柏原さん:ああ、あそこはそうだろうね。

〇齋藤さん:実際に支配人の方が言っていたことを、そのままセリフに使わせていただいたりしました。最初は、おばちゃんたちと一緒に女の子を苛めるようなスケベなおじさんという設定だったんです。

〇柏原さん:中にいる就活中の男の子もいいよね。あれは最初から?

〇齋藤さん:取材をしてつけ加えた感じです。ああいう男の子がいっぱいいたんです。逆に、おじさんのお客さんは少なかったですね。

〇柏原さん:ネタ的にも海外の映画祭で受けそうだものね。

〇齋藤さん:『あいち国際女性映画祭』で上映させていただいた際には、海外の方にも声をかけてもらえて嬉しかったです。

〇柏原さん:僕、このカメラマンさんを知っているんだけど、映像もいいよね。通路の映像が印象的だけど、撮影場所は自分で決めたの?

〇齋藤さん:そうです。あんな風にいっぺんに見渡せるカプセルホテルって少なくて。実際は曲がりくねっているホテルが多いんです

〇柏原さん:川上君の『最後の審判』も、めちゃくちゃよく出来てたよね。主人公の男の前に、理屈じゃないアウトロー系の女の子が現れて2人の話になっていく。映画はキャラクターが勝負だから。あれ、ネタはあるの?

〇川上さん:ものすごくぶっちゃけますと、20枚シナリオなんです。もっと言うと「不安」の課題です。僕、土曜の研修科に通っているんですけど、金曜の夜遅くになっても何も書けてないなあってダラダラしていたときに、不安ってなんだろうって考えて、僕、美術系の大学出身で、芸大を落ちた思い出もあって……。

〇柏原さん:じゃあ、主人公は自分じゃない?

〇川上さん:あんな嫌なヤツじゃないですけど(笑)。僕、20枚以上書いたことがなくて。この20枚を発表したときに、上原(正志)先生から長編にしたらって言ってもらえて、うれしくてndjcの募集を見てふくらませた感じです。

20枚の時は、主人公の稲葉が絵の具のついたタオルで顔を拭うっていうところで終わっていたんです。でも、もう少しふくらませるには、どうすればいいかなって考えて、似顔絵対決の話を入れました。単純に20枚をひっつけた感じです。実際ndjcでは、「これ、前編と後編で2本の作品みたいになっているね」って言われて。もう、おっしゃるとおりですって感じでした。

ndjcのいいところは、プロの方と脚本を揉む時間があるんですよね。それで改善されて、1本のストーリーになったという感じです。基本的には自分の経験というか知っているところで書いています。

似顔絵で生計を立てている女の子も実際、友達にいたんです。家族はほとんど僕の家族の話で。いや、父親は生きていますが(笑)。弟は理系で、「お前、何やっているんだ」みたいな雰囲気とかを極端に繋ぎ合せて作った映画ではあります。

〇柏原さん:なるほど。やっぱりそういう普段の生活って大事だよね。すぐ使えるっていうか。

〇川上さん:そうですね。最初に作る作品ですし、どこかにリアリティある引っかかりがないと、ブレるだろうなっていうのがありました。

〇柏原さん:似顔絵で生計を立てていた友達って、ああいう感じの喋り方なの?

〇川上さん:全然違います。あれは僕の理想っていうか、ああいう感じが好きなんですね。

〇柏原さん:ホントいいよね、あの子。

〇川上さん:彼女、上京後映像に出るのはこれが初めてだったんですが、一発目の演技があれです。キャスティングに恵まれたなと思います。

自分のシナリオで撮るということ

〇柏原さん:3人の作品を見ていいなと思うのは、男性は男性を主役にしているし、女性は女性を主役にしているよね。最近の若い子の作品を見ていると、男性が女子高生の作品を書いていたりするけど。齋藤さんと目黒君は20枚シナリオはやっていたの?

〇齋藤さん:やっていました。でも3年くらい通っていたんですが、本科の半分くらいまでしか、修了してなくて。

〇柏原さん:大丈夫。俺も1期生だけど20枚シナリオ20本くらい書いてないから(笑)。でも、勉強になるよね。

〇齋藤さん:そうですね。ndjcとは違うんですが、私も、「湖」の課題を書き直したものをツタヤ(ツタヤクリエイターズプログラム)に応募して最終まで残ったので、20枚シナリオをアレンジするっていうのは、すごくいい事だと思います。

〇目黒さん:僕は通信基礎科で勉強して、本科に進んですぐ断念してしまったんです。参考にならなくてすみません。

〇柏原さん:自分のシナリオで撮るってどう? 3人とも、助監督とか映像制作とか現場でやっているから、現場はホン通りにいかないっていうのはわかっていたと思うんだけど。

〇目黒さん:そうですね。自分で書いたホンを直すのって大変だと思いました。助監督をやっていると、第三者的に見てこのセリフ要らないなとか、このシチュエーションなら、もっとこうしたらいいのにって考えられるんです。でも自分で書いたシナリオだと、どうしてもイメージが出来上がっちゃっているので、それを直すのはとても困難だと感じました。

〇齋藤さん:私もそうですね。ホン直しの段階では、いろいろな意見が出てくるので、なんで伝わらないんだという不安もあったんですね。でも現場に入ってからは、助監督の立場で監督に言われて仕事する時よりも、自分で脚本をわかっている分、やりやすかったです。

〇川上さん:僕はCMディレクターをやっているので、脚本で映像を撮るということに慣れていなくて。脚本上は30数ページなんですけど、助監督の方からは長いって言われたんです。

でも僕、会話が結構テンポあるので、絶対入るからって、脚本を全部絵コンテに割って、取り込んで尺まで作りました。でもコンテはあまり見てもらえなかったですね。映画はこういうもんじゃないっていう感じに言われて、ケンカしましたけど(笑)。

〇柏原さん:でも、いいんじゃない。これだけの作品に仕上がったんだから。

〇川上さん:そうですね。

〇柏原さん:みんな、新作とかの予定は?

〇目黒さん:まだ情報公開前なんですが、1本撮った映画()が9月頃に公開になる予定です。情報公開になりましたら、よろしくお願いします。

〇齋藤さん:去年あるコンペで審査員特別賞をもらった脚本があって。今年の11月にはオーストラリアでの『アジア太平洋映画賞』の会場でプレゼンをするんです。なんとか出資を集めて、その企画を映画化したいというプランがあります。

一緒にやっているのは、シナリオ・センターで知り合った方で、2人で書いてます、復書簡みたいな感じで。私、きついセリフが出てこないんですよね。でも彼女が書くと、辛辣なセリフが出てきたりする。そこがいいなと思っています。

〇川上さん:決まっているのはショート・フィルムですが、「フランデット・ショート」っていうショート・ショート・フィルム・フェスティバル&アジアからオファーをいただいて、あるクライアントの商品を出す条件で、これから9月くらいに向けて、脚本を作って撮影する予定です。

「いい監督の条件は脚本を書けなくちゃいけないんだけど、自分で書かない人が一番いい」

〇川上さん:それから、『最後の審判』は、ご覧になった方はわかると思うんですけど、最後、バスっと終わっています。パイロット版みたいな作りで、続きを見たいと思ってもらえるように作ってあります。

〇柏原さん:フフフフ。すごいね。

〇川上さん:これを長編化するプロジェクトを、勝手にですけどね、やっていきたいと思っています。ndjcの良いところって、いろんな映画の業界の方と繋がることが出来るんです。名刺交換して、すぐに会いに行って、長編をやりたいんでつき合ってくださいって、今動いているので、必ず実現させようかなと思っております。プラス、2本くらい企画を動かしたいと思ってます。

〇柏原さん:全部、自分で脚本書くの?

〇川上さん:現状は。あまりこだわってはいないんですけど。

〇柏原さん:俺なんかはさあ、いい監督の条件は脚本を書けなくちゃいけないんだけど、自分で書かない人が一番いい。

〇川上さん:それは、なんでですか?

〇柏原さん:やっぱりね、自分で書くと視野が狭くなる。監督はズルくなきゃいけないと思うんだよ。

黒澤明監督は、あれだけ優秀な脚本家を人数集めて、ホンを作るわけじゃない? それで、あれだけ上手い役者を人数集めて芝居させて、あれだけ優秀なカメラマンとか録音技師とかスタッフを集めて撮影させて、全部自分の手柄だよ(笑)。

自主映画出身の監督って、全部自分でやろうとする。そうすると1本くらい傑作が出来るんだけど、そのあと、続かない場合が多い。打ち合わせに入ると自分の作品を壊されると思って、守りに入って、結局うまくいかないんだよね。

深作欣二監督とか市川崑監督とか、基本的に脚本は書けるけど自分では書かない。自分で書くのは正直者。でも墓穴掘って死ぬ。

シナリオ・センターで勉強してきたってことは仲間がいる訳だし、誰かに頼って、自分にないものは吸収する。俺なんかは自分が監督する時に、絶対まず誰かに頼む。例えば自分は男だから、女のことを書くなら女に頼む。そういう風にいいとこ狙いでいかないと。これだけ仲間がいる訳だから、誰かに頼んでおいたほうがいい。

〇川上さん:じゃあ、柏原さん、お願いします。

〇柏原さん:俺じゃなくて若いヤツに頼めよ!(笑)

それは絶対、やったほうがいいと思うよ。だから、齋藤さんがシナリオ・センターで知り合った人と二人三脚でやっているっていうのは正解だと思うよ。

〇齋藤さん:ありがとうございます。

〇柏原さん:結局は面白ければ監督の手柄だから。

〇目黒さん:その通りだと思います。人が書いたものだと、「これ、なんかおかしくない?」って感じに客観的に見られたり、批判的になれたりするんですけど、自分で書くと現場で変えられないんですよ。

それは自分の気質の問題だと思いますけど、僕は自分で書くと変えるのが苦手で。だから本当におっしゃる通りだと思います。自分で書いてないもののほうがスタンスとして撮りやすい気がします。ただ書きたい気持ちもあるので、そこがどうしようかなって感じですね。

〇柏原さん:それはそうだよね。例えば『最後の審判』とか、あの登場人物のキャラクターは作者のもので、あれを初めからライターに書かせるのは無理だから、それは残しておけばいい。

長編を作るにあたっては、いろんな人が入ってくる訳で。あれを残すには、もっとドラマ的にこういう人物を出そうとか、自分の持ち駒じゃないところも出していったほうがいいところもある。なるべく普段見ていて、コイツいいなあって思う人と組めばいいと思う、監督やるなら。

〇川上さん:そうですね。

〇柏原さん:何本も撮っていると、合うスタッフ、合わないスタッフっていると思うんだよね。

ものを書くと自分が出る

〇柏原さん:みんなに向けて、シナリオを勉強するにあたって何かアドバイスを。

〇目黒さん:アドバイス出来るような立場じゃないんですけど、最近、自分が意識しているのは、逆に映像を文章化してみるんです。それで書く時にちょっと心構えが変わってきて、何だったら字でコンテを書くくらいの気持ちになってきました。上手く言えないんですけど。

〇柏原さん:なるほどね。これは僕も同じで、自分で書くと1本映画が出来ちゃうじゃない。詰まると絵が出てこなかったり、芝居が出てこなかったりするけど、興が乗ってくると、自分でコンテを書いちゃったりするんだよね。

〇目黒さん:まさに、そうですね。そういう感覚はndjcに参加して獲得したのかもしれません。自分が助監督をやりながら合間に台本を書いていた時には、あまりそういう意識はなくて。

〇齋藤さん:私はあまり本数を書いていないので、聴いている皆さんのほうがシナリオ・センター的には大先輩だと思いますが。今、私が大切だと思うのは書き切ることです。シナリオ・センターに通う前も、アイディアリストみたいなのはあったんです。

ところが書き切った台本というのは、とても少なくて。ここに通ってから、書き上げて友人たちに見せると、いろんな意見が返ってくる。ペラ一の批評ノートみたいなものを、次の週には持ってきてくれるクラスメートがいたりして。

書き切るって大変なんですけど、書き切ってちゃんと見せないと、受け取る相手も適切に意見を返せないじゃないですか。アイディアだけだとちゃんと返せない。なので書き切るってことが大切だと思います。

〇川上さん:「ブリコラージュ」って言葉、ご存知でしょうか。身の回りにあるものを組み合わせて、新しいものを作ることを言うらしいんです。僕SF映画が好きで、『ET』で、ラジオとかいろいろ組み合わせて宇宙人と交信するシーンがあって、そこがすごく好きなんです。

傘だけなら、身の回りにいっぱいあるけど、傘と何かを組み合わせたら、これは見たことないっていうものに出来たら、発明なんじゃないか。脚本も、見たことない宇宙人を作ってくれって言われると大変ですけど、何かと何かを組み合わせると違うものになったり、そんなふうにお話って出来たりするのかなって思っています。

〇柏原さん:3人の作品を見てもわかるように、その人らしさというか本人が出ていることが大事な訳で。要は、ものを書くと自分が出るんだよね。それを恥ずかしいと思ってしまうと、基本的にダメなんで。

逆に、それが出ているから3人の作品は面白いっていうか……変に気取って、かっこつけたりすると面白くない。本人が出ているっていうことが作家性に繋がっていく訳だから。

皆さん書く時に、気取らないで書いてほしいんだよ。書くっていうことはものすごく恥ずかしいことで、自分を他の人にわからせてしまうことだから。3人の作品を見て研究してみるといいと思う。どこに本人が出ているのか。そういうホンを書いてほしいね。

〇川上さん:僕はCMを10何年とやっているので、そういう中で培われてきたものって、ぶっちゃけ言葉ではわからないようなものなんです。でも脚本は言葉で書いているじゃないですか。アイフォンでもなんでもいいので、撮っちゃったほうがいいと思うんですよね。撮って繋いで、ついでに映画祭に送ってみてっていうのをやっていくと、面白いし勉強になっていくんじゃないかと思います。

〇齋藤さん:私は助監督を始める前は美大の映画学科に通ってました。美大時代に、映画を観てこういう演出かっこいいなって思っても、いざやってみると出来ない。それで助監督になってから、例えば、ナチュラルなシーンを撮るために、意外とナチュラルじゃないことをやっているって知りました。

ですから、私も一番は実践だと思うんです。まずやってみて、思った通りにいかないなら変えてみようって。何よりも自分でやってみるのがいいと思います。

〇目黒さん:僕も大学で自主映画をやっていて、それは箸にも棒にもかからずの感じでした。今は助監督をやってきた経験が大きいのかなと思います。パーツが細分化されてきたというか。

小道具なら、何となくこういう使い方がいいのかなって思っていたのが、写真1枚にしてもどういう意味なのか、どういう写真を用意すればいいのかなとか考えるようになりました。

助監督の経験とシナリオを勉強したことが、ndjcをやることで、1回すべて統合されて、演出ってこういうことかというのがアップデートされた気がします。

〇柏原さん:3人ともプロの現場でやっている人だからわかると思うけど、役者の動かし方とかむずかしいじゃない。インディペンデントは知り合いの範囲だからいいんだけど、スターとか出てくると扱い方もむずかしくて、大変だよね。やっぱり現場をやったほうがいいね。

撮影現場は辛い⁉

〇柏原さん:みんなから質問が来てるんだけど、監督としてはどんな脚本家と仕事をしたいか?

〇目黒さん:脚本家の方に求めることは、説明ゼリフを書かないことですかね。

〇齋藤さん:脚本家だけじゃないですけど、コミュニケーション能力ですかね。長い時間やりとりするので、人柄的に、この人とやりとりするのはキツイってなると難しいので。

〇川上さん:脚本って文字の羅列で出来ていますけど、映像の設計図だってことだと思うんですよね。

それが人がしゃべって音になったりとか、それが状況になったりとか、美術になったりとか、食べ物になったりとか、映像になるものだっていう意識が大事じゃないかと思います。

あんまり文字にならないものが大事だったりするんですよね。映像とか興味とかを共有できるっていうことが大切なんじゃないかと思います。

〇柏原さん:脚本家に求めるものはコミュニケーション能力というか、こちらの注文に応えてくれる力があること。

あとは性格だね。ある程度、チームとして上手くできないと仕事できないから。本当に出来るやつは、注文を受けといて、自分がやりたいことをパっとやっちゃうんだよ。

映画を撮っていて一番苦しかったこと、一番楽しかったことは?

〇目黒さん:現場はとにかく辛かったですね。僕はアドリブが苦手なので、自分の中である程度設計図を作るんですけど、設計図通りに行くことはなくて。

テニスのラケットを構えていたら、同時に10個ボールが飛んできて、全部返さなくちゃいけないみたいな(笑)。そういうのがずっと続く感じです。

楽しかった瞬間は、編集で音がついた瞬間。初稿を書き終えた時が一番気持ち良かった気がしますが(笑)。

〇齋藤さん:ベテランの監督の方が、現場は楽しいって言うんですけど、絶対ウソだと思うんですよね。

最初は辛かったと思います。辛い理由は、対スタッフというより、対自分で。これで合っているのかなと。でも1回経験して失敗しても、そんなに痛手にはならないじゃないですか。だから1回はやり切ったほうがいいと思います。

一番嬉しかったのは、初号が出来てエンドクレジットを見た時でした。

〇川上さん:僕も現場は辛い派です。脚本やコンテって伸びやかですけど、現場には制約があって、金がないとか時間がないとかで諦めなきゃいけない瞬間、それをどういう風にねじ込んでいくかが、楽しいこともあるんですけど、辛い瞬間もあるんですよね。

嬉しくなる瞬間は、皆さんに観ていただいている時ですね。笑ってほしいところで、若干声が出るとか。僕、小3くらいの時に映画を作りたいなって思ったんですけど、今回の映画に友達が小3の子供を連れてきてくれたんです。

それで、その子が映画を観終わったあと、「稲葉は大学に受かるんですか?」って聞いてきたんです。ちゃんと小3の子にも映画が伝わっているんだなって嬉しかったです。

〇柏原さん:俺は現場が大好きなんだけど、揉め事があるとつまらないし、揉め事が解決するのは楽しいね。この3人の監督にも早く現場が楽しいと思うようになってほしいね。

〈採録★ダイジェスト〉THEミソ帳倶楽部「若手映画監督たちの根っこ」
ゲスト:司会 柏原寛司さん(脚本家 映画監督)/目黒啓太さん(映画監督)、齋藤栄美さん(映画監督)、川上信也さん(映画監督)
2019年4月13日採録
次回は11月23日に更新予定です

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プロフィール

・目黒啓太(めぐろ・けいた)
九州大学芸術工学部画像設計学科卒業。映像制作会社勤務を経て、2013年から助監督として映画・ドラマに携わる。2011年にシナリオ『大団円』が第21回シナリオS1グランプリで佳作を、2016年にはシナリオ『ライフ・タイム・ライン』で第5回TBS連ドラ・シナリオ大賞で大賞を受賞。同年、TBS連続ドラマ『コック警部の晩餐会』第5・8話の脚本を担当。2019年『セカイイチオイシイ水~マロンパティの涙~』(監督・脚本)で長編デビュー。

・齋藤栄美(さいとう・えみ)
東京造形大学デザイン学科映画専攻卒業。在学中から自主映画や映像作品を制作。卒業後、諏訪敦彦監督の現場に助監督見習いとして参加。その後、フリーの助監督として、瀬々敬久監督、周防正行監督、黒沢清監督、三谷幸喜監督など、多くの監督のもとで経験を積む。

・川上信也(かわかみ・しんや)
映像制作会社で数多くのCM、MVなどを演出。国内外の賞を多数受賞後、フリーに。 2014年きりゅう映画祭で『KI・RYU』を脚本・監督、世界の映画祭で上映される。 2018年『桃の缶詰』を脚本・監督。SSFF&ASIA札幌国際短編映画祭などで上映され、 東京、大阪、名古屋、神戸、茨城の劇場で一般公開される。2019年ホッピーのブランデットショートとして國村隼さん主演『願いのカクテル』を脚本・監督。 2020年『ドッキング!』を脚本・監督。

・柏原寛司 (かしわばら・ひろし)
1949年生まれ。大学在学中、東宝撮影所にアルバイトとして入り、子供向け番組『クレクレタコラ』の脚本と現場(助監督)を経験後、1974年『傷だらけの天使』で脚本家として本格的にデビュー。脚本を手掛けた主なテレビドラマは『俺たちの勲章』『大都会』『大追跡』『探偵物語』『プロハンター』『西部警察』『あぶない刑事』等、映画では『あぶない刑事』シリーズ、『平成ゴジラ』シリーズ、『ルパン三世』シリーズ、『名探偵コナン』劇場版など他多数。1997年に映画『猫の息子』で監督デビュー。『ガンブレス~死ぬにはもってこいの夜~』『練鑑ブラザーズ ゲッタマネー!』『STRAIGHT TO HEAVEN~天国へまっしぐら~』などの監督を務めた。

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