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ndjc 若手映画作家 育成プロジェクトからみる/
現場で求められるシナリオ力

2018.04.23 開催 THEミソ帳倶楽部「ndjc映画『トーキョーカプセル』にみる現場で求められるシナリオ力とは」
ゲスト 【左から】桝井省志さん(アルタミラピクチャーズ代表プロデューサー) 齋藤栄美さん(映画監督) 根津 勝さん(映像産業振興機構 チーフプロデューサー)

シナリオ・センターでは、ライター志望の皆さんの“引き出し=ミソ帳”を増やすために、様々なジャンルの達人から“達人たる根っこ=基本”をお聞きする公開講座「ミソ帳倶楽部 達人の根っこ」を実施しています。そのダイジェスト版を『月刊シナリオ教室』(今回は2018年8月号)から。
元本科 齋藤栄美さん(公開講座当時は本科在籍) は文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」に参加され、『トーキョーカプセル』で監督デビューされました。今回は、齋藤さんと、同作の制作プロダクションであるアルタミラピクチャーズの代表取締役で映画プロデューサーの桝井省志さん、そして同プロジェクトの企画事務局であるVIPO(映像産業振興機構)の根津勝さんをお招きした公開講座をダイジェスト版でご紹介。
当日は齋藤さん脚本・監督の映画『トーキョーカプセル』上映後、ndjcの映画製作取り組みの実際について、プロデューサーの視点を交えてお話しいただきました。脚本家・監督志望者はこちらの記事を参考に次回の応募にむけて準備してみてはいかがでしょうか。
※なお、こちらの記事は2018年に採録したものになりますので、ndjc応募の際は必ずVIPO公式サイトで最新情報(募集要項など)をご確認ください。

ndjc監督募集のあらまし

〇根津さん:「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」は、映像産業振興機構(VIPO)が、日本映画の次代を担う映画監督を発掘・育成するために、文化庁から委託を受けて2006年に立ち上げたプロジェクトです。

最近、映画祭やシナリオコンクールなども含めて人材育成の場がどんどん増えていますが、ndjcの場合は、30分のオリジナル脚本で、35mmフィルム撮影による短編映画を製作することが大きな特徴です。もちろん作品制作だけではなく夏のワークショップ、作品完成後は全国での上映活動もあり、1年間を通した映画監督の人材育成事業となっております。

この短編映画は、年によって例外もありますが、毎年だいたい5本ずつ製作しています。優秀な方を集めるということで、応募の仕方は自薦ではなく他薦です。日本映画製作者連盟、日本映画製作者協会、全国のさまざまな映画祭、学校等の団体から推薦していただく形をとっています。

映画祭では受賞歴のある方とか、学校で映像表現などを勉強する方は、それぞれその映画祭、学校から推薦をいただいております。その1つとして、こちらのシナリオ・センターさんも推薦団体として毎年生徒さんを推薦していただいております。

募集受付後は、事務局とスーパーバイザーで、まず15人程度のワークショップ参加者を選びます。夏に10日間くらいの日程で行われるワークショップがあり、最初のオリエンテーションでお題が出ます。

ちなみに昨年は『逆転』というのがテーマでした。参加者は同じカメラ、同じ16ギガのSDカードを渡されて、1週間後までに、お題をもとに5分の短編の素材を撮って来ていただきます。

そして2日間で、同じパソコン、同じ編集ソフトで素材をつないで5分の短編を完成させて、3日目にみんなで作品を鑑賞の上、いわゆる合評という形で、講師の方から意見をいただきます。そしてその中から5人を選出します。

それから、5人の応募脚本をもとに30分の短編映画を制作する製作実地研修というカリキュラムとなります。製作費は5人に直接渡すのではなく、事務局が選出した商業映画の製作実績をもつ各制作プロダクションならびにプロデューサーに、製作費とともに5人の方を預かっていただき、そこで脚本指導を受けた上で、作品を製作する流れになります。

昨年度選ばれたシナリオ・センターの生徒の齋藤さんは、アルタミラピクチャーズの桝井さんの指導のもとで映画を製作しました。

作品が完成したあとは合評上映会を行います。試写会みたいなものですが、映画業界関係者に講評をいただき、その後さらに一般の方に向けた劇場公開を実施します。できるだけ多くのお客様にも観てもらい、ご意見、ご感想などすべてを、監督にフィードバックします。

「スゴい面白かった」という人もいれば、「全然面白くなかった」という人もいます。監督が上映活動を通じて、様々な意見を聞くことで、ちょっとやそっとのことで落ち込んだり有頂天にならずに、自分の作品を客観的に見られるようになることを目的としています。

おおまかな1年間の流れを申し上げましたが、監督たちはこの短編を名刺代わりにして長編映画を目指していただきたいということです。

ndjc出身者は、おかげさまで『湯を沸かすほどの熱い愛』でたくさんの映画賞を撮った中野量太、『嘘を愛する女』の中江和仁といった監督が出てきております。

マンガ原作の映画が多い昨今ですが、オリジナル脚本で頑張ろうとする卒業生たちがたくさんいるのもこの事業出身監督の特徴です。

助監督から監督になるためには

〇桝井さん:アルタミラピクチャーズのプロデューサー、桝井です。昨年度のndjcのプロジェクトで、プロダクションとして斎藤さんをお預かりして製作しました。齋藤さんは今もシナリオ・センターに通っているんですね?

〇齋藤さん:はい、通っています。

〇桝井さん:偉いですね。ここの学校はプロの方もたくさん出ているので、切磋琢磨するのにいい場所だと思います。通い始めたのは?

〇齋藤さん:4年前です。助監督としてずっと仕事をしてきたんですが、日々ひたすら忙しく、1つの映画に3人から4人助監督がいますが、チーフ助監督でも監督デビューはしていない。書けないとダメだなという危機感を覚えて、シナリオ・センターに通うようになりました。

〇桝井さん:助監督から監督に上がっていくという道が、まったく閉ざされているとは言いませんが、なかなか先が見えない。現場に追いまくられるというか。やはり脚本を書かないと監督への道はないかなという感じでしたか?

〇齋藤さん:そうですね。

〇桝井さん:「書きます」って言いながら、みんな忙しくてなかなか書けないので、学校に来てしまうというのは1つの選択肢ですね。

〇齋藤さん:友達が出来て、ゼミのクラスメイト同士で脚本を見せ合ったりっていうのは、いいモチベーションになります。

〇桝井さん:よく言われるのが『俺、ndjcタイプじゃないんだよね』と……。でも勝手に決めつけないほうがいい。何が当たりになるか、わからない。6年前に私がスーパーバイザーをしていた頃は、助監督は代表作がないということで応募できなかったんです。

でも助監督というのは映画製作の要で、一生懸命映画を作っているのに代表作がないっていうのはないだろうと。それでOKにしようということになりました。ですから過去作は関係ない。もちろん自主制作作品とか、助監督でやったものとかの提示は求められるんですね?

〇根津さん:そうですね。応募書類に今までの経歴を書いていただきます。審査では、応募書類と脚本、企画意図、プロットも含めて、スーパーバイザーを中心に事務局で判断させていただいてます。

30分の映画の企画とは

〇桝井さん:やっぱり脚本ですよね。脚本が良かったら過去作品の内容がよくなくてもいいと思います。齋藤さんは助監督として著名監督についていますが、それは関係ない。

ただ本当は2時間の脚本を書いてあって、このシナリオ応募の枠が30分だから、それをダイジェストにしてしまえというのはよくない。僕が審査の時はそういうのは全部落としていました。やっぱり30分という長さを、どう使うかを見たい。齋藤さんは、30分の作品を企画するのに苦労されましたか?

〇齋藤さん:そうですね。30分って微妙というか、長編でもなく短編としては長い。10分くらいの超短編のほうが作りやすい気がして、30分っていうのは非常に難しいと思いました。

〇桝井さん:齋藤さんのホンを読ませていただいた時、15分なら楽勝だけど、30分のボリュームだと、どう見せればいいのか考えましたね。齋藤さんは決定稿までどうでしたか。

〇齋藤さん:応募時のプロットを読んでもらうとわかると思いますが、決定稿とは全然違います。脚本出して終わりではなく、映像化しなくてはならないので、なかなか難しいと思いながら、結局取材をしてこの形になりました。

〇桝井さん:今までの方は、目茶苦茶変わるというか、全然違うじゃないかっていうのが結構あったんです。でも齋藤さんは書きたいことが一貫していると思いました。

実は今日、初めて企画書を見せてもらいましたが、ここまで整理した企画を出す人はいないです。これをシナリオにする上では大変な悩みがあったと思います。

当初プロットではモニター画面の中で歌うリリカっていうアイドルの存在があって、最初のホンではフューチャーされていました。ああだこうだと我々が言ってるうちに、無くなりました。 それはイヤなことでしたか?

〇齋藤さん:全然そんなことはないです。応募時は試行錯誤して企画を書いたので、リリカというアイドルの女の子を企画書に入れた時に、こういう要素を入れたら受かるかもしれないという下心があったんですね(笑)。

東京っぽい日本っぽいものを取り入れたかったので、アイドルっていうのもそういう日本っぽいアイコンの1つかなと思ったんです。でも実際にやってみるとトゥーマッチで、自分がついていけないところがあったので、指摘してもらって、かえってその部分を落とせたというのはありがたかったです。

〇桝井さん:たぶん1時間だったらリリカが活かせたのかもしれないですね。撮影の柳島克己さんは北野組の有名なカメラマンですが、リリカバージョンを気にいっていたようです。モニターの中のリリカが主人公と同一であるっていうのは深読みなんですよね?

〇齋藤さん:そうですね。ただ似ているだけで同一ではないです。

〇桝井さん:モニターを通じて主人公に訴えかける存在がいたっていうのは面白い視点で、たぶん、これが企画として選ばれたポイントになったと思うので、齋藤さんの作戦通りだったって気もしますね。根津さん、どうですか?

〇根津さん:昨年の6月、7月くらいに応募作がたくさん来て、スーパーバイザーの土川勉さんや事務局のみんなで読んだんですけど、リリカと主人公が同一なのか別々なのかも含めて話し合い、それぞれに意見がありました。

僕が面白かったのは、やはりカプセルホテルのアイディアですね。あとリリカと主人公の兼ね合いがどう発展していくのかなと。非常に面白くなりそうな匂いがありました。

制作プロダクションに渡す前に、脚本の講師がついて脚本指導を実施します。講師は土川さんに加えて、三原光尋監督と脚本家の竹内清人さんに担当していただきました。

カプセルホテルを取材して

〇桝井さん:撮りたいものは山ほどあると思うんですけど、その中で、なぜジジくさいカプセルホテルを選んだんですか?(笑)

〇齋藤さん:そういう印象があるかと思うんですけど、今はそれほどジジくさくないというか(笑)。

脚本を書く時にはいつも柱を大事にしています。どこを舞台にするかが私の中でとても重要です。画として映る大部分を占めますし、その場所の特殊性が出ます。それで割と柱から考えることが多いんですが、どうせなら誰も撮ったことのない場所がいいなと。カプセルホテルをメインにした映画はなかったかなと考えたところから始まりました。

実際、取材してみると、若い人も多くて就活生が半数を占める時期があったり、転職のために利用している人が多かったり、私としては新鮮な印象でした。

〇桝井さん:撮影場所は上野カプセルホテルをお借りしたんですが、支配人が青森出身の方で愛着を持って仕事をしていました。映画では菅原大吉さんが演じてますが、取材で話が広がっていくこともありました。実はホンを書く段階までは直接取材はしてないんですね?

〇齋藤さん:まったくしてないです。

〇桝井さん:学校でホンを書く時も取材することが大事なポイントだと思いますが、取材したほうがいいのか、しないほうがいいのかというと、僕は、どちらの側面もある気がしています。

あんまり取材しすぎちゃうと現実をレポートすることに一生懸命になり、想像力が広がらなくなる。この話は取材しなくて結果的に正解だったかなと思います。

とはいえ、もうちょっと取材しておくと、もう1つ2つ話を作れそうって気もしますがどうでしょう?

〇齋藤さん:そうですね。指摘されて、実際に3つくらいカプセルホテルに行って取材させていただきました。支配人の方から掃除係の方まで、お話を聞きました。1時間2時間の話ではわからないこともありますから、本当だったら何日か働いてみたら、深みが出たのかもしれないですね。

〇桝井さん:学生さんの映画とかを見ていると取材をあまりやらないので僕は不満なんです。でも齋藤さんは社会人の経験がありますし、シナリオ・センターに通っている方も人生経験がある方が多いと思うので、過剰に取材する必要はない。でも取材をすると、外から見ているのと違うものが見つかります。

〇齋藤さん:特殊な場所であればあるほど取材する必要があると実感しました。やっぱり全然違うなって。プロットでは、支配人はセクハラしているおじさんで、おばちゃんたちは意地悪なだけの人たちという設定だったんですが、実際取材すると、カプセルホテルの支配人さんって、人情味がある人だったりするんです。

〇桝井さん:意外と辛いのは、設定では「セクハラするスケベな親父」だったのに、実際はいい人で、そこでロケ場所を借りなきゃいけないので、そう悪くは出来ない(笑)。でもいい人だけでは困る。そこが取材の弊害ですね。

〇齋藤さん:今回は映画の設定も「いい支配人」に変わって、お話としても結果的に良かったと思うんですけど、もし今後、同じようなことがあったら、取材先とシナリオ内のバランスも考えなきゃいけないと思いました。

稿を重ねてキャッチボール35mmで映画を撮れるチャンス

〇桝井さん:あと齋藤さんはホンがどんどん変わっていきましたよね。打ち合わせしたら翌日には変わってたり。何稿くらいありましたか?

〇齋藤さん:10何稿ありましたね。AパターンBパターンを書いて、「どっちがいいですか?」っていうのもあって、1つにしてくれって怒られましたけど(笑)。

〇桝井さん:稿を重ねるっていうのは、どんな状況で重ねざるを得なかったですか?

〇齋藤さん:私も助監督としては10年くらいの経験があったんですけど、監督としては初めてだったので、迷ってしまったり、不安になることがありました。私はどちらかというと人より書くスピードは速いと思うんですが、速いがゆえに、どんどん書いてしまうっていうのはあったかもしれません。

〇桝井さん:悩んでなかなか書けないっていうよりは、とりあえず無責任に書いても当たりが出るかもしれない。そこからキャッチボールをしていくことは悪いことではないと思います。

私の知っている方で言うと、劇作家の岩松了さんは喫茶店でホンを書く人なんですけど、打ち合わせすると10分くらいでホンになったり、とにかく速書きなんです。それでキャッチボールが出来る。

いい格好して周りをギャフンと言わせるようなものを書きたいという人もいるかもしれないけど、それは置いておいて、とりあえず書くのはいい性格なんじゃないかと思います。

35mmで映画を撮れるチャンス

〇齋藤さん:2011年にndjcに選ばれた藤澤浩和さんが自分の上司だったんですが、悩みがあって「ndjcに興味があって出してみたいけど書けないんです」と相談したら、「書けたというのを待っていたら、いつまで経っても出せないで終わるよ」って言われました。

とりあえず書いて見せないことには、どこを悩んでいるのかもわからないし、悩んでいることも伝わらないまま、時だけが過ぎていってしまう。もうちょっと考えて書かなきゃなとは思うんですが、自分としては気を付けている点です。

〇桝井さん:藤澤さん、いいこと言いますね。皆さんも「来年になると、俺、もっといいものが書けるんだよな」とか、そういうことは考えないで、とにかく出す。100本くらい書けば、いいものが1つくらい書けると思います。

今35mmフィルムで映画を撮れるチャンスはほとんどありません。日本映画では風前の灯です。アルタミラピクチャーズの映画も、ずっと35mmフィルムで撮影してきましたが、周防正行監督の『舞妓はレディ』を最後に、矢口史靖監督の『サバイバルファミリー』から遂にデジタルになりました。理由はプリント上映できる映画館が、テアトル新宿など一部を除いてなくなってしまったからです。

皆さんは齋藤さんとまったく同じような立場であると思いますし、もっとスゴいものを書く人もいると思います。ただ書けるぞと思っていても、書いて応募しないとチャンスは掴めない。

実は私が審査した時、100本くらい応募がくるかと思ったんですが、結局50~60本くらいでした。審査期間が短いので事務局は大変だと思いますが、やはり100本くらいは集まらないと。国からお金を出してもらって映画を作れるという事業に、これではちょっと淋しいと思います。

〇根津さん:皆さん、ぜひ応募してください。齋藤さんは2016年も応募されて、ワークショップまで進んだけど、製作実地研修の5人には残れなかった。それで昨年、めげずに再度応募されて、今度は残りました。中江和仁監督の場合はndjcにシナリオを応募し続けて、4回目でやっとワークショップに進みました。

〇桝井さん:1回落ちたくらいで諦めないということです。参考までに齋藤さんの1回目の企画はどんなものでしたか?

〇齋藤さん:アンドロイドものでした。もともとSFが好きで。

〇桝井さん:落ちた理由はどう考えてますか?

〇齋藤さん:私はいい話だと思ったんですが。

〇根津さん:自分はその回は審査を抜けていたのでハッキリはわからないですが、ホンの評判は良かったと聞いています。

〇桝井さん:SFというジャンルの問題もあるかもしれない。監督以外は全部プロフェッショナルを使って、3日か4日で撮る。自主映画だと1ヵ月くらい使って撮るかもしれませんが、プロを使う訳ですから時間も限られますし、美術的なものは落とさざるを得ないというところがあります。

〇根津さん:オーディション等の準備期間を経て、4日か5日で撮影したあとで編集作業があります。齋藤さんは編集作業をほぼ初めて経験されたそうですが、グレーディング(※)の作業から仕上げの音のダビング作業とかでそれなりに時間はかかってしまいますね。
※映像の色調や明暗を調整する作業

ひたすら続けることと相性

〇桝井さん:齋藤さん、先輩として書く上でのアドバイスとかありますか?

〇齋藤さん:やっぱり続けることなのかなと。やめる理由って、いっぱいある気がしますが、コンペに落ちたり書けなくなったときも、仲間とか先生がいると思うので、そういう人に読んでもらい、ひたすら続けていく。私は大学も映画学科だったので、大学時代から10何年かやり続けてきての今があるので、そこはひたすら続けてもらえたらなと思います。

〇桝井さん:齋藤さんの強いところは、例えば美術の磯田典宏さんは周防組で一緒だった方で、現場を長くやっていると、「齋藤さんがやるなら協力しよう」って娘のように思って応援してくれるスタッフがいるわけです。

それと脚本家とキャッチボールできるってことが、プロデューサーにとってはすごくありがたい。プロデューサーだけでは具現化出来ないことを聞いてくれて、あなたの意見はこうだけど、こういうのもあるよみたいに進んでいく。そういうやりとりというのはすごく大切です。

今、映画やドラマの作り方というのは、プロデューサーと二人三脚で作るようになっていますから、コミュニケーション能力が大事だなと思います。打ち合わせしてその通りにならなくても、逆にそれが面白かったりする訳です。そのキャッチボールが楽しいってこともありますから。

〇齋藤さん:キャッチボールは必須だなと思います。さらに言われたことに対して、そうだと思うところは直しつつも、一方で譲れないことは通すことは大事です。通す時にきちんと説明できる能力や、やりとりが出来ないと。

監督という立場でいうと、脚本家との相性もあるかなという気がします。賞をとった脚本を読ませていただく機会があるんですが、評価されている作品でも、グっとくる作品と、そうでもないと思う作品があります。それは私の個人的な主観だったり好みだと思います。

皆さんも作品を書かれたら、どんどん監督やプロデューサーの方に見てもらって、その中で相性がうまく合ったら、トントンと行くかもしれません。

〇根津さん:ndjcは商業映画の監督を育成することを目指していますので、100人~200人規模のスタッフと一緒に共同作業が出来る方、そういう映画を撮りたいという方を望んでいます。

〇桝井さん:しぶとくやっている人たちが映画をやっているということですね。みなさんもこうして勉強されている訳ですから、一緒に仕事が出来るチャンスがあればと思っていますので、よろしくお願いします。

※今回ご紹介した模様を少し違った視点でお伝えしている記事「脚本を書くための取材で気をつけること」も併せてご覧ください。

〈採録★ダイジェスト〉THEミソ帳倶楽部「ndjc映画『トーキョーカプセル』にみる現場で求められるシナリオ力とは」
ゲスト:齋藤栄美さん(映画監督) 桝井省志さん(アルタミラピクチャーズ代表プロデューサー) 根津 勝さん(映像産業振興機構 チーフプロデューサー)
2018年4月23日採録
次回は4月27日に更新予定です

プロフィール

・齋藤栄美(さいとう・えみ)
東京造形大学デザイン学科映画専攻卒業。在学中から自主映画や映像作品を制作。卒業後、諏訪敦彦監督の現場に助監督見習いとして参加。その後、フリーの助監督として、瀬々敬久監督、周防正行監督、黒沢清監督、三谷幸喜監督など、多くの監督のもとで経験を積む。

・桝井省志(ますい・しょうじ)
アルタミラピクチャーズ代表取締役社長であり映画プロデューサー。大映映画・企画製作室入社し、プロデューサーとして周防正行監督の『ファンシイダンス』(1989)『シコふんじゃった。』(1991)などを手掛ける。アルタミラピクチャーズを設立し、『Shall we ダンス?』(1996)『がんばっていきまっしょい』(1998)『ウォーターボーイズ』(2001)『スウィングガールズ』(2004)『ロボジー』(2012)『終の信託』(2012)『舞妓はレディ』(2014) 『ダンスウィズミー』(2019)『カツベン!』(2019)など数多くの劇映画の企画やプロデュースを手掛ける。

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