「こんなにも見事に子どもたちの創作の芽は伸びていくのだと、子どもの力に圧倒されてしまいました」と代表の小林が感動したキッズシナリオ「考える部屋」エピソード 12_中間発表会。
実はこの日、いつも「考える部屋」の進行をしている新井が体調不良のため、声だけの参加に。急遽「てっちゃん」(写真 ※「考える部屋」では「先生」とは呼びません)が司会進行役に。
この模様を、今回は広報の齋藤がレポートいたします。
「考える部屋」は小学5年~中学3年生向けのオンライン創作講座。今年6月に開講してから、アタマの中でイメージしている物語を面白い物語として描くことができるように、いろいろなシナリオの技術を少しずつ使って、発想のブレスト&シナリオ作成を続けてきました。
そして迎えたエピソード12(12回目)。今までは、お馴染みの物語『うさぎとかめ 』『桃太郎』などをアレンジしたり、そこから派生して物語を考えてきましたが、今回はオリジナルの物語を作り、発表します。
「うちの子、物語を作る才能があるかも。でもこれからどうやって伸ばせていけば……」というかた、今回ご紹介する「考える部屋」で書き続けてきた子どもたちの姿をぜひご覧ください。
まずは、子どもたちにはどんな“お題”が出たのか、どんなカタチで中間発表会を開催したのか、概要からご紹介。
アイデアを鋭くするために課題にはルールを
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「制限があることで、かえってアイデアが鋭くなる」という想いから、課題には以下のようなルールを、敢えて設けました。
■課題テーマ「料理」
=料理そのものを描いてもいいし、誰と食べるのか、誰が作るのか、どんなシチュエーションで料理するのか・食べるのか、料理の前段階や料理の後でもいい。「作者の視点」がより際立つテーマではないか、ということでこのテーマに。
■シナリオの形式で書くこと
=発表するときもシナリオの形式で。伝わるように書くのがポイントなので、補足で説明はしないこと
■決められた枚数内で書くこと
=ペラ(200字詰め原稿用紙)なら10枚/400字詰め原稿用紙なら5枚。
■主要人物は3人くらいで
=3人だと、本音と建前が交錯して物語が面白くなる。以前、シナリオ作成で「3人芝居」を書いたときのことを参考に。
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中間発表会では、一般のかたもオーディエンスとしてご覧いただきました。
また、スペシャルゲストとして、シナリオ・センター出身の小説家・原田ひ香さんと脚本家・田嶋久子さんをお迎えしました。
原田さんは、『ランチ酒』シリーズ、『まずはこれ食べて』『口福のレシピ』『三人屋 サンドの女』など料理を素材にした小説をたくさん書かれていらっしゃいます。今回の課題テーマが「料理」ということもあり、ご参加いただきました。
田嶋さんは、一度ゲストとしていらしていただいてから、子どもたちと一緒に“勉強する側”でレギュラーメンバーに。今回は原田さんとともに、それぞれの作品についてコメントしていただきました。
これまで“吸収”したシナリオの技術を使ってオリジナル作品を執筆
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これまで『考える部屋』では、登場人物のキャラクターの作り方や魅せ方がさらに高まるように、このようなことをお伝えしてきました。その一部がこちら。
■登場人物のキャラクターを魅力的にする
=登場人物の性格や二面性(憧れ性・共通性)を表現していくと映像にしやすい。
■登場人物らしさを描く
=性格や感情によってアクション・リアクションを考える
■登場人物の目的を考える
=目的にむかって進んでいく「貫通行動」を意識する。
■人物同士の関係性を考える
=人物関係・本音と建て前を考える。
上記をご覧になって、「え?子どもにこんな難しそうなことできるの?」と思ったアナタ。心配ご無用。しっかり吸収して、オリジナル作品を仕上げました!
では、実際にどんな作品を書いたのか。
発表後、子どもたちそれぞれに聞いた「考えたこと・工夫したこと」から作品の雰囲気が分かりますのでご紹介。
■作品名『虹色ポップコーン』
子どもの清々しい青春を描きたかったのでタイトルに「虹色」を入れました。。「虹色」がタイトルに使われている作品は他にもたくさんあるので“あるある”になるかなとも思いましたが、皆さんの感想で「タイトルが内容を表していて良かった」と言ってもらえたのでうれしかったです。また、青空のシーンは、そこだけ“おしゃれ要素”を出したくて入れてみました。
■『こまり料理店 第一章 花の名をもつもの』
“ごちゃまぜ”を意味する料理を描きたくて、有名なものでいうと「ゴーヤチャンプル」ですが、それだとちょっとなぁと思って、調べていったらスペイン料理「ペピトリア」を見つけました。ペピトリアは卵黄ソース煮込みなので黄色。黄色は希望の色ともいわれているので、色味的にもいいかなと。それから、主人公の名前「あやめ」は花言葉でいうと「希望」を表すので、そのことも重ねて、この料理にしました。
■『中華好きのデコボコ3人組』
題名の通り、デコボコな3人組にしたくて。それで、まず最初に登場人物の青木くんと齋藤くんが対決して、あおいちゃんがそれを止めながらも「言いたいことがあるのになぁ」と思っていたり。どんなものを食べるかでも喧嘩するし、ラーメンに何をいれるかでも喧嘩する。最初は原稿用紙5枚で収まりきるかなと心配だったんですけど、けっこう早く 枚数内で書けました。発表できてうれしかったです。
■『不自然な僕ら』
大人は秘密を抱えています。秘密を抱えているからこそ、人間関係にちょっと歪みが生まれるかもしれない。だけど、それと同時に大人の魅力というものはそこだとも思っていて。誰でも秘密はもっているし、たぶんそれが当たり前の世の中だけれど、そんな中でもお互いを分かり合える「共感」ということはできるし、そうやって少しずつ本当の友達になっていくんじゃないかと思って作りました。
■『すべてに勝るもの』
最後のシーンで、アキナが作ったオムライスがすごくおいそうだったのに、ホノカは意地を張って「全然おいしそうじゃない」と言います。本当は食べたいからお腹がすく、ということで、その食欲に勝るものはないなと思って、こういうタイトルにしました。
■『からあげ』
最後の最後、ト書に「清水がチラリと見る」と書いたんですけど、発表直前まで「清水がチラリと見て笑う」なのか「チラリと見る」だけなのかすごく迷っていて。ただ私の中で、彼女が笑っちゃったら若干ミステリアスな性格になってしまうかなというのがあって。彼女は「感情がない」性格というか、そういう雰囲気なので、「笑う」をなくして「見る」だけで終わらせました。
子どもたちの作品、おとなはビックリ&刺激に
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体調不良だった新井ですが、子どもたちの発表を聞いて元気に!
また、スペシャルゲストのお二人も作品の完成度に驚き!
〇原田さん:今日、作品の締切日で、450枚くらいの作品を書いてちょうど送ったところだったんですよね。でも、これまで皆さんがやってきた「登場人物のキャラクターを魅力的にする」とかそういったことを聞いていて、ふと「それ 今日出した自分の作品で出来ていたかな」って(笑)。
やっぱり、いつも“学び”が必要なんですよね。私はいろいろな本を書いているといっても、登場人物の描き方とかそういうことをふと言われると、「たしかに対立が必要だな」「いろいろな問題が起こるよね」とか、「あ、そうか!」と思うことが たくさんあって。
皆さんいまは小学生・中学生だけど、こういう私にはない才能や特徴をもっているかたたちがこれからどんどん書いていくんだと思うと、本当にライバルは たくさんいるんだなと(笑)。明日からも本当に頑張っていこうと思いました。
〇田嶋さん:もう負けました(笑)。映像化したいですよね。
プロの監督に頼んで、「実はこのシナリオは小学生・中学生が書いたんですよ」って言ったら「えー!」ってビックリしますよ!
恐ろしいですね、皆さんの将来が。ほんと負けました、勉強し直します、もっと頑張ります。また次回もよろしくお願いします!
来年の“大発表会”に向けて、さらに“考える”
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子どもたちの作品に感動しきりの中間発表会でした。完成度が高く、作品としてきれいにまとまっていました。
ただ現時点では、物語をまとめるよりも、「何を書きたいと思ったか」「そのためにどう工夫したか」に焦点を当てています。このことを再度、子どもたちに伝えると皆さん深く頷いてました。
来年の6/7(エピソード24)には、大発表会が待っています。今度はそこに向けて、もっともっと面白い作品が書けるように、子どもたちはこの“部屋”で“考えて”いきます!
なお、来年『考える部屋』2期生の募集を予定しています。スケジュール確定次第、公式サイトで詳細を告知いたします。ご参加をお待ちしております!
「考える部屋」についてはこちらも参考にしてください
▼小学5・6年生、中学生向けオンライン創作講座『考える部屋』まとめ
https://www.scenario.co.jp/online/28087/
▼やりたいことが明確な子どもたちが集結!『考える部屋』開講
https://www.scenario.co.jp/online/28183/
▼『考える部屋』エピソード3 キャラクターを描ききれ!
https://www.scenario.co.jp/online/28469/
▼観客・視聴者・読者が 「おもしろい!」と思うシーンを考える『考える部屋Ep6』
https://www.scenario.co.jp/online/28711/