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映像に映らない「キャラクター(性格)」をシナリオで表現するには
@韓国・中央大学校 日本語クラス

カレッジシナリオ:映像に映らない「キャラクター(性格)」を表現

昨年11月、韓国の中央大学校 日本語クラスの学生を対象にZoomでシナリオ授業を行いました。

授業を担当した新井、現地に行く予定でした。
なんと、当日韓国が歴史的大雪のため、飛行機 飛ばず。
急遽、オンラインで実施。
なんと、システム環境の関係で皆さんのお顔 見えず。
表参道からひとり、モニターに向かって話す新井。

先生から都度、「今、みんな○○しています」と生徒さんの様子を口頭&写真(↓)でご報告いただきながら進行していきました。

このクラスには、韓国の方だけでなく、中国からの留学生もいます。
日本語を学ぶ一環として今回、出前授業「カレッジシナリオ」を実施させていただくことに。

皆さんシナリオ初体験のため、シナリオとは何か、というところからじっくりお話しさせていただきました。

その中でご紹介した「シナリオは“見えるもの=映像に映るもの”を描きます。じゃあ、“性格”などの映像に映らないものはどう表現すればいいと思いますか?」という内容は、多くのシナリオ初心者の方々に知っていただきたい!と感じました。そこで、その模様を広報・齋藤がリポートいたします。

=今回の概要==============

・サービス名:「日本のシナリオについて知りたい!」(全1回)
・目的:シナリオの作り方を知る
・対象:韓国・中央大学校 日本語クラス
・時間:各約90分
※カレッジシナリオなど、子ども・学生向け出前授業の実施例
https://www.scenario.co.jp/online/23609/ 

====================

映像に映らないものとは?

*

・新井: シナリオは、「柱(場所・時間帯)」「ト書(状況・人物の動作や言い方)」「セリフ」の3つの要素で描きます。小説の書き方とはちょっと違います。

例えば、小説なら「窓から外を見ながら新井は思った。今日は大事なプレゼンがあるから頑張ろうと」みたいに、全部“地の文”で書けばいいけど、

シナリオは、

〇新井家・リビング(←これが柱)
   スーツを着た新井が窓から外を眺めている。(←これがト書)
新井「いよいよ、プレゼンの日か」(←これがセリフ)
   ネクタイをギュっと締める新井。(←これがト書)

みたいに、「映像に映るもの」を書きます。

では逆に、シナリオには書かない、「映像に映らないもの」とは何だと思いますか?
それは、人の「気持ち」「考え」「目的」「性格(=キャラクター)」「人間関係」などです。

シナリオはこれらを映像に映るように表現します。

先ほどの例で言うと、

小説では「頑張ろう!」という気持ちを「今日は大事なプレゼンがあるから頑張ろう」とそのまま文章で表現しますが、

シナリオでは「頑張ろう!」という気持ちを「ネクタイをギュっと締める」という“動作”で表現します。

・先生:みんな、頷いています。

・新井:あ、そうだ。ちょっと聞いてみたいんだけど、日本ではこの動作で気合を入れている感じが出るんだけど、韓国や中国でも伝わるのかな?

・先生:韓国では伝わりますが、中国ではガッツポーズにしたほうが、このニュアンスが伝わるみたいです。

・新井:おお、そうなんですね!こんなふうに、国によって、気持ちを表す動作はちょっと違うようですが、考え方は一緒です。映像に映らないものは映るように表現するんだ、ということをまずは抑えておきましょう!

ゲームで実感!登場人物のキャラクターとは

・新井:皆さんにちょっと質問。「面白い映画」とか「面白い小説」といった言葉を聞くと、 「あ、ストーリーが面白いんだな」って思いませんか?

・先生:みんな、頷いています。

・新井:ストーリーというのは、「ああなってこうなって」という物語の“筋”のことを指します。

実は、もうこの“筋”はパターンが決まっているんです。どういうことかというと、『ロミオとジュリエット』も『ローマの休日』も『愛の不時着』も同じパターンなんですよ。惹かれ合っている2人が“立場の違い”という障害を乗り越えようとするラブストーリー。

・先生:言われてみれば、そうですね!生徒も頷いていますよ。

・新井:シナリオ・センター創設者の新井一は「23パターンある」と言っています()。

新井一 著『シナリオ作法入門』P36を是非お読みください。 

でもなんで、『ロミオとジュリエット』も『ローマの休日』も『愛の不時着』も、“筋”は似ているのに、観ちゃうのか。それは、登場人物のキャラクター(=性格)が違うからなんです。

観客や視聴者は、どんな登場人物が、どんなセリフを言って、どんな行動を起こしていくのか、を見て、それに魅了されると「面白いな」って感じるんですよ。だから、シナリオ・センターでは、シナリオを描くときはまず、登場人物のキャラクターを設定しましょうとお伝えしています。

ではここで、「人物のキャラクター」について、もっと理解を深めていただくために、ちょっとゲームをしてみましょう。

今日は30人弱くらいいらっしゃるんですよね。では前に2人出てきてください。
その他の方々は、これから1分間で、1月生まれから12月生まれまで順に並んでください。
その様子を、前の2人は見ていてくださいね。

・先生:え? 1分で? みんなお互いの誕生日、知らないのに……。

――生徒さんの様子はZoomに映っていないので見えないのですが、教室内のざわめきから、明らかに皆さんがあたふたしているのが分かります。そんなことはお構いなしの新井。

・新井:はい、ではスタート!お願いしまーす!

――画面から先生も消えました。

・新井:はーい、あと30秒ですよ!

・先生の声:カオスです……。

・新井:お互い、誕生日を確認してくださいねー。

・先生:中国人留学生は韓国語がまだ完璧ではない子もいるので時間がかかっちゃうんです……。

・新井:はい、10、9、8、7……

――新井の明るいカウントダウンでついにタイムアップ……。

・新井:ありがとうございました!では、前にいるお2人にお聞きします。みんなが並んでいるときの様子で、気になった人の“動き”はありましたか?

・Aさんの声:女性が手を挙げて「4月生まれはココだよ!」と“基準”を作っていたのが気になりました。

・Bさんの声:あ、私も気になりました!

・新井:なるほど。その女性が、「4月生まれの人はまずこの場所に集まって、そこより前に1~3月生まれの人が、そこより後ろに5~12月生まれの人が、並んでいけばいいんだよ」という“基準”を作ってくれたんですね。

・AさんとBさんの声:そうです!

・新井:すごい方ですね。僕は絶対できないな。僕だったら、小声で「あのー……7月6日生まれなんですけど……7月ってここですか?」ってコソッと動くな(笑)。

ほら、こんなふうに、このゲームをやってみると、みんなそれぞれキャラクターが違う、ということが分かるでしょ。

そしてもうひとつ。さっき、“映像に映らないもの”の1つとして「性格=キャラクター」を挙げましたよね。でも、その人の動作を見たり、セリフ(言葉)を聞くと、キャラクターが分かるんですよ。

さきほど、手を挙げて「4月生まれはココだよ!」と“基準”を作ってくれた女性は、行動力があるキャラクターだということが分かりますよね。
「あの……7月6日生まれなんですけど……」ってコソッと動く僕はどうですか?ちょっと内気なキャラクターなんだな、って思うのでは?

・先生:みんな笑ってます。

・新井:このゲームで、「人によってキャラクターが全然違うこと」。そして、「そのキャラクターは動作やセリフによって分かる」ということを体感していただけたのではないでしょうか?

・先生:みんな頷いています!

「キャラクターが物語に与える影響を体感できました」

この後、もうひとつ、キャラクターに関するゲームにトライ。

そして最後に、今回お伝えしたキャラクターについて意識しながら、「昔付き合っていた宮田浩一と南悠子が3年ぶりに偶然再会したら」という設定の短いシナリオを描いてもらいました。執筆途中でしたが、時間の関係もあり、本日はここで終了。後日、先生に皆さんのシナリオを送っていただきました↓

先生によると「みんなそれぞれ、自分なりの宮田と悠子をイメージして描いていました」とのこと。

「ほんとだ。宮田と悠子という同じ登場人物なのに、キャラクターが全然違う!授業でお伝えしたキャラクターのことをしっかり意識して描いてくれている!」と感動する新井。

また、シナリオの裏には授業の感想も!
この感想を読んでさらに感動する新井。一部をご紹介↓

<皆さんのご感想>

・途中参加だったため、少ししか授業を受けれなかったのは残念でしたが、とても良い機会だと思いました。登場人物のキャラクターを、私たちが実際に人を分析するのと同じように考えるというアプローチが印象的でした。「こういう性格の人だったら、どんなふうにその特徴が表れるだろう?」と深く考えることで、それに応じた物語が展開していけるんだなと感じました。

・授業を通して、脚本を描く魅力、そして、日本語表現そのものの魅力を実感しました。今回の授業は、私の言語能力を向上させただけでなく、創作の楽しさやチームで協力する楽しさも体感させてくれました。今後もこのような授業に参加できる機会を増やして、言語や創作の能力をさらに高めていきたいと思いました。

・とても有意義な時間でした。普段、自分は趣味で小説を書いているのですが、シナリオはまた違う難しさがあると感じました。しかし、難しいながらも、勉強になり、楽しい時間でした。自分は日本に住んでいたので普段から日本の作品に触れてきたのですが、シナリオは奥が深いんだと感じました。今日の授業で学んだことを趣味の小説作りに取り入れていきたいと思います。

・今日の授業では、シナリオ作成の基本原理とキャラクター構築の重要性について学びました。特に、登場人物のキャラクターがセリフや行動を通してどのように表現されるのかを知ることができて興味深かったです。自信のある人と内気な人の行動の違いをシュミレーションし、それぞれのキャラクターが物語に与える影響を体感しました。今後、日常生活でさまざまな人々の行動を観察し、キャラクターの発想に役立てたいと思います。

・Zoomでの講義になってしまったのは残念でしたが、シナリオの書き方を分かりやすく説明してくださって、とても楽しく有益な時間になりました。色々なところに活かせるような知識が増えて嬉しいです。これから小説やドラマなどを鑑賞するときは、ストーリーよりも人物のキャラクターに注目しながら楽しんでみようと思います。

・シナリオの書き方を学べて本当に良かったです。子どもの頃から今もずっと、頭の中で何かしらの物語を作り続けています。以前は、まずストーリーを作ってから、それに合わせてキャラクターを作るものだと思っていました。しかし、この授業を通して、登場人物のキャラクターから作り始めることでシーンが生まれ、その後に物語が作られていくということを学べて、とてもうれしいです。直接お話を聞けなかったのは残念ですが、Zoomで実施してくださったおかげで、楽しく受講できました。

・日本語でシナリオを描く方法について勉強することができました。非言語的表現も一緒に書かなければならないというのが興味深かったです。また、物語を描く方法を学べて面白かったです。新井さんの著書『プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方』の韓国版が出ているので読んでみようと思います!

――そうなんです。新井の『プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方』(日本実業出版社)は、韓国版と台湾版も発売しているのです!

日本版(おかげさまで5万部突破いたしました!) 

韓国版

台湾版

※こちらのブログも併せてご覧ください
面白い物語になっているかチェック!『シナリオ・センター式 物語のつくり方』

ですので、韓国の学生さんも、中国から留学されている学生さんも、今回お伝えしたことと併せて、是非こちらの書籍もお読みいただければ幸いでございます。今回をキッカケに是非、創作を楽しんでいただければ!

次回もし、また機会がございましたら、今度こそ韓国でお会いできる日を新井は楽しみにしております!

番外編

実は先生から、「当日直接お渡しする予定でしたが」と、皆さんのシナリオとともにこちらも送っていただきました↓

中央大学校の学科ジャンパー(クァジャム)を着たかわいいテディベア。

先生、ありがとうございました!

新井一樹 著書情報

・2024年6月19日発売

▼『大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』(KADOKAWA)

Amazon販売サイト https://amzn.to/3V3WV3o 

「主人公のキャラクターを具体的にイメージする」とき、『大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』のP66・67(図参照)を是非参考にしてください。詳しくご紹介しています↓

※こちらも併せてご覧ください
あなたのアイデアを、物語に仕上げるための『シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』

※本作の刊行記念イベントの模様も是非。
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【シナリオ・センター】「小説 最後まで書けない」を解決

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・出前授業
シナリオ・センターは、1970年創立。優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に創設以来、700名以上の脚本家や小説家が誕生しています。2010年から「日本中の人にシナリオを書いてもらいたい」という思いから、小中学校だけでなく、大学や色々な施設へ出前授業を実施。創作を楽しみながら、想像力と表現力が身つくカリキュラムを提供しています。ご参考までにこちらをご覧ください。

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