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作家の眼 とは/脚本家・作家 ジェームス三木さん

2017.04.17 開催 THEミソ帳倶楽部「作家の眼、作家の切り口―色々な方向から物事を考えてみよう―」
ゲスト ジェームス三木さん(脚本家・作家)

シナリオ・センターでは、ライター志望の皆さんの“引き出し=ミソ帳”を増やすために、様々なジャンルの達人から“達人たる根っこ=基本”をお聞きする公開講座「ミソ帳倶楽部 達人の根っこ」を実施しています。そのダイジェスト版を『月刊シナリオ教室』(今回は2017年8月号)から。
今回は、シナリオ・センター我らが大先輩・ジェームス三木さんにお越しいただいた模様をご紹介。脚本家になるまでの道程やドラマの本質について、また、脚本家としてのものの考え方や見方については、社会や歴史を通した具体的なお話をしていただきました。

新井一先生との出会い

私が新井一先生にお目にかかって、シナリオを教わり始めたのは、赤坂のシナリオ会館の講座でした。シナリオ・センターが誕生する前ですから、私は1期生より前のゼロ期生になるんですね。

 新井先生の最初のご挨拶はよく覚えています。「新井一と言います。洗濯の時、洗い始めますね。あらいはじめ、と覚えてください」とおっしゃっていました。

僕は10代に俳優座の養成所に入って、俳優の勉強をしていました。それがどうも才能がないということで、歌の方に進みました。テイチクレコードの専属だったんですが、ディック・ミネさんという素晴らしい男性歌手がいらっしゃいました。

 当時、テイチクレコードの部長は僕をフランク永井の対抗馬として売り出そうとしていて、ある時ディック・ミネさんに「この新人に芸名をつけてくれませんか」って言ったんです。そうしたら「俺、それどころじゃないよ。これから税務署に行くんだ」って行っちゃった。それで「ゼイムショ行き」から「ジェームス三木」にしようと(笑)。

あとでディック・ミネさんにその話をしたら「じゃあ、俺が名付け親だね」って。僕の名前は洋風ですが2世でも何でもなく、フランク永井の対抗馬としてつけられた芸名です。

そして私は歌手として『ナイトアンドデイ』というナイトクラブに7年くらい立っていました。その頃に何となく小説を書いたんです。『装飾音符』という題名の小説で、日本のバンドマンがアメリカの有名なバンドマンの真似をしているうちに、どっちが本物かわからなくなるっていう話でした。

それを同人雑誌に投稿したら、『新潮』のその年の12月号で、全国の素人の書いた小説を10点選んで載せるというのに選ばれました。それで、ひょっとしたら、これは書けるかなと思った時に、ふと夕刊を見たら「シナリオ研究所研究生募集」って書いてあって、それで通うようになったんです。新井先生はそこの常任講師でした。

ところがその頃、安保反対の学生運動が盛んになって、内ゲバをする連中がいましてね、ゲバ棒を持って教室に入ってくるヤツもいて、言い合いになった。威勢のいい講師がいて、上着をパっと脱いで「なんだ、てめぇら。文句あるならかかってこい!」って大騒ぎになった。

そんなこんなでシナリオ研究所が閉鎖になって、新井先生が、これじゃ生徒たちが可哀相だっていうんで、新井塾という私塾を自宅でお始めになって、それがだんだん大きくなってシナリオ・センターになっていった。

今は、シナリオライターになる人は、まずシナリオ・センターに行かなくちゃ、というくらい、いろんなライターを輩出して、今日ここにいる中からも、私のあとを継ぐようなライターが出てくるかもしれません。私は出てこないでほしいですけど、こっちの仕事がなくなるといけないですから(笑)。

でも今年の大河ドラマもシナリオ・センター出身のライターですし、他にもたくさん出てきていますね。競争率は高いですけど、頑張っていただきたいと思います。これだけ若い人が多いと期待が持てますね。

ドラマとは何か

そこの教室の壁に「ドラマとは変化である」と新井先生の言葉が書いてあります。まったくその通りだと思います。経験を重ねるとわかってくることが結構あるんですね。今、申し上げた「ドラマとは変化である」もそう。ドラマってなんですか? ギリシャ語で対立、葛藤、喧嘩、衝突をドラマというんですね。

私なりに考えたんですけど、ドラマは英語ではディレンマだと思うんですね。ドラマ=ディレンマ。人間も動物ですから動物の本能ってなんだって考えると、1つは食料を奪い合う、闘争ですね。動物同士が縄張りを争う。生存本能です、死なないためには物を食わなければならない。取り合わなければならない。

もう1つ、あらゆる動物が持っている本能、それは生殖本能ですね。恋愛して結婚して子供を作って子孫を残す。親は死んでいくけど、命を子に繋げていく。これはすべての動物に共通している。偉そうなことを言っても人間も同じ動物で、オスとメスが子供を作って愛情を注ぐ。

つまり闘争と愛と。生き物の本能はこの2つ。それを書くのがドラマです。

正義のために戦う。こんなインチキな言葉はありません。言い分は必ず双方にある。正義を貫くために戦わなければならない、テロを起こさなければならない。正義ってのは能書き。戦争から夫婦げんかに至るまで必ず正義は双方にあるというのが私の考えです。

 今、アメリカも正義、正義って言って、北朝鮮も正義と言っている。韓国も正義と言っている。世界中で言っている。けれども正義というのは必ず両方にある。

警官と泥棒。どっちが正義? 警官に正義があれば泥棒にも正義があるって考えないとドラマは出来ない。こんないい加減な言葉はない。そうやって世界に争いごとが起きてきて、戦争が起きる。人間の歴史っていうのはそうなんですね。正義をかざすのは嘘。

嘘といえば、我々が普段テレビで聞いている言葉、あるいは本に書いてある言葉は嘘が多い。まず、それに気がつくってことが大事。

何年か前の講義で私、皆さんに聞いたことがあるんです。日本がアメリカと戦争していた時に、朝鮮半島に北朝鮮の人はいたか。おわかりですか? 日本人だった。1910年に日韓併合って言って朝鮮半島を日本の領土にした。北朝鮮も韓国も1つの国でした、全員日本人になれと。そして朝鮮半島にいた人は日本の軍隊に入り、天皇陛下のためにたくさん戦死しました。

でも今は、日本がアメリカに付いて安保条約を結んで北朝鮮に経済制裁をしてきたりする。北朝鮮の人から見れば「俺たちは日本人としてアメリカと戦争したのに、その日本が何で我々を裏切って、アメリカにくっついて経済制裁してくるんだ」って言いたくなるかもしれない。本当にそう言ってるかどうかはわからないけどね。

そういうふうに物の考え方が変わってくる。経済制裁って何でしょうか。金持ちが貧乏人を苛める。これが経済制裁です。貧乏人は金持ちに経済制裁できないでしょ? 金持ちしか出来ない。例えば北朝鮮に経済制裁をする。

私、北朝鮮を擁護するつもりは全くない。ないけど考えてもらいたい。貧乏なほうは金持ちに経済制裁出来ない。じゃあ、どうしたらいいんでしょう? テロをするしかない。テロっていうとね、言葉は酷いですけど『忠臣蔵』もテロです。今は美談になってるけどね。

戦争におけるものの考え方

それから日本の総理大臣が靖国神社にお参りすると中国がブツブツ言う。なんでか。日本は太平洋戦争で240万人が戦死した。東京大空襲や原爆なんかで70万人死んでる。310万人が死んでいる。そして戦死した軍人が靖国神社に神様として祀られている。これをみんなが拝むのは当たり前じゃないか。そう思うでしょ?

 ところが中国の人から見たら、中国は靖国神社に入っている日本の軍人に1000万人以上殺されている。中国人にしてみれば、靖国神社に祀られている人たちは全部中国の敵だと。そう文句も言いたくなる。もっと考えると、なぜ中国が南沙諸島に人工の島まで作るのか。けしからんと日本もアメリカも神経質になって文句を言っている。

 でも中国人の側に立って考えてみると、中国っていう国は北、西、南側には海がないんです。海は東側のあの辺しかない。アメリカなりどこなりの国が海軍の爆撃か何かで攻めてくるとすると、あそこから攻めてくることになる。そこに防備体制を敷こうとするのは当たり前の考えなんです。なぜそういうふうに考えてみないのか。これも中国を擁護するつもりはまったくないんですけど。

いろんな矛盾があって言葉の矛盾もたくさんあります。日本は日清戦争を明治時代に起こしている。私、満州生まれなんですが、満州っていうのは清王朝の清国のもと。

その次が日露戦争。日露戦争はロシアが韓国に勢力を広めようとしたら、これに日本が向かっていって、いちおう勝った。ところがその次は満州事変、支那事変。なぜ戦争じゃないのか。国連が戦争をやめようと言ったために、満州事変、支那事変って言い替えた。言い方を誤魔化しただけ。

だから言葉って怖い。正義に見せようとしたら、そういう言葉を使えばいい。正義の戦い。日本という国は、昔から外国に侵略されたことがない。たった一度、「元寇」っていうのがありました。元はモンゴルで福岡の一部に上陸した。でもこれは失敗して、たいしたことはなかった。それ以来、日本が起こした戦争というのは、全部日本が侵略している。一度も攻められたことがない国なんです。

今、世界のマスコミに私が言いたいのは、自分の国は、戦争で何人殺されたっていうのは言うけど、何人殺したっていうのは、どこの国も言わない。そのワースト10を発表したらどうなんだと。そうしたら、アメリカ、ドイツ、日本もそこに入るかもしれない。東南アジアでも日本は1000万人くらい殺してます。世界中が隠している。どの国も自分のところが悪かったっていうことは絶対に言わない。

神国日本が負けるわけがない、日本人は神の子孫である、それに刃向かうやつらはみんな悪だと言って戦争してきました。我々は、そういうところから考えていかなければいけないんです。

侵略戦争では若い男が何十万人も団体で攻め込むと、どうなるか、女性がいないとやっていられない。それで日本軍は朝鮮の人を強引に従軍慰安婦として戦地に連れて行った。特攻隊だって明日、特攻するぞっていう時は、前の晩に遊郭に行ってました。特攻隊の基地は鹿児島にもあって僕も行ったことありますけど、近くにちゃんと遊郭がある。

北朝鮮も韓国もそうだけど、従軍慰安婦問題で、日本は十億円の賠償をしましたが、韓国では日本の大使館の前に従軍慰安婦の像を作って揉めたりしています。私が満州にいた頃に、関東軍の慰安所というのがありました。将校用と下士官用と兵隊用と小屋が3つあって、「おーい、まだか」なんて小屋の前に何十人と並んでました。

ですから従軍慰安婦がいたのは本当です。ところが日本はやっていないってずっと言ってきた。じゃあ誰が連れて行ったのか。これは軍閥といって軍の下にいる人たちが、アヘンを売り買いしたり、従軍慰安婦を連れて行ったりした。そういう汚いことは全部軍閥にまかせて伏せていたんです。

児玉誉士夫という大右翼は、日本が中国に侵攻していた頃に、アヘンの売買をして大儲けをし、日本に引き上げる時にはダイヤモンドをいっぱい持って帰ってきて、のちに民主党の鳩山一郎に与えて政権を保てと指示した。そういう汚いことは実際に行われているのに隠されている。そこに目をつけていかないと騙されたまま歴史は過ぎていきます。

歴史っていうのは決して正しくない。日本史の歴史がありますね。信長がいて、秀吉になって、徳川時代になって、それから新撰組が出て、これもテロですけどね。そうやって日本の国体を変えてきた。

日本の憲法っていうのは、戦争に負けたあとにアメリカが作った。どんな憲法を作ったかというと、民主主義、基本的人権、戦争の放棄っていう3つを条件に作った。だから今でも日本の憲法はアメリカの押しつけなんだからやめたほうがいいという説がある。

だけどアメリカが押しつけたのは、それだけじゃない。もっといろんなことを押しつけてます。そういうことをちゃんと考えないで、マスコミや政府や役人が言っていることを鵜呑みするから、ちょっとおかしくなるんですね。

発想と見方、考え方

何年か前ですけどね、小学校の理科の試験で、「氷が溶けたら何になりますか」っていう問題で、みんな「水になります」って書く中で、1人だけ「春になります」って書いた子がいた。理科の試験だからペケですけど、僕は二重丸をつけてあげたい。違う見方をしたらどうなるか。皆さんにはそういう発想をしてほしい。

人間は嘘ばかり言います。しゃべっている言葉の半分以上は嘘と言っていい。「まぁ、可愛い赤ちゃんですこと」って、これ、全部嘘ですから(笑)。仲良くするためにお世辞も言う、いろんなことを言う。

例えば、うさぎとかめの話があります。「もしもし、かめよ、かめさんよ 世界のうちでおまえほど、歩みののろいものはない どうしてそんなにのろいのか」うさぎが歌った、そうすると、かめが「なんとおっしゃるうさぎさん そんならおまえとかけくらべ むこうの小山のふもとまで どちらが先にかけつくか」と言って競争した。

うさぎが途中で居眠りして、その間にかめがゴールして勝っちゃった。さっきの自慢はどうしたのって、うさぎが馬鹿にされる。私は、これについてもいろいろと考えました。かめは、うさぎに駆けっこでどうして応戦するのか。あの話は、そこのところが曖昧でしょ。なぜ、かめは応戦したのか。

まず、1番目。かめは自分がうさぎより足が遅いことを知らなかった(笑)。それなら応戦したかもしれない。

2番目。かめは負けるってわかっていた。わかっていたけれど、うさぎを怒らせたくないから走って、おべんちゃらみたいにうさぎに負けてやろうとした。

3番目。かめは、うさぎと競争する時に眠り薬を用意して、途中で飲ませてやろうと思っていた(笑)。この3つくらいしか思いつかない。

でもこの3つ、どれを当てはめてもこの話の基本である『油断大敵』っていう言葉は成り立たない。だからこの話はくだらない、あれを考えた人はなっちょらん(笑)というのが僕の考え方です。

そういう風に、世の中のことをいろいろ考えていくと、日本は昔、天皇が神様で、神国日本というのがあって、神国のために戦争で死ぬのは当たり前。特攻隊に入って爆撃しなくてはならないというのがありました。

私が小学生くらいまで日本はアメリカと戦争していたので、なるべく早く特攻隊に入ろうって本気で思ってました。10代に特攻隊で死ぬと新聞に年齢が出る。10代に特攻隊で死ぬっていうことがカッコいいって思ってたの。20代だとちょっと遅いなって。マインドコントロールされてるんです。学校で誰かが軍歌を歌い出したら、全員で軍歌を歌い出す。洗脳され切ってた。

今のイスラミック・ステートもそうでしょう。当時の日本と一緒でアラーの神様のためなら、自爆テロもする。特攻隊と同じ。

ところが日本は戦争に負けて、私は満州から戦争難民になって引き上げてきた。満州で玉音放送を聞いたんですが、戦争をやめるって言う、敗戦とは言わない。ポツダム宣言を受諾したって言う。でも戦争に負けて、天皇陛下が「私は神ではありません、私は人間です」って言ったんです。私は10才過ぎるまで完全に騙されていた。親にも先生にも騙されていたんです。そういう時代に生きてきた。

世界の歴史、日本の歴史

アメリカが言っていることも信じられない。アメリカは自由と民主主義を世界に広めると言っている。そのためにイラクに軍隊を出したり、アフガニスタンに攻め込んだり、CIAがいろんなところに行ったり、ベトナムでも戦争を起こしたり、北朝鮮でも南北の戦争を起こしたり……

自由と民主主義を広めるためにアメリカは世界と戦争をしていると言っていますが、軍隊に民主主義なんてない。考えればわかりますよね。部隊長を選挙で選ぶなんてありえない。総攻撃を多数決でなんか決めない。トップの命令で動く。これは民主主義でもなんでもない。矛盾しています。

世界中の国家っていうのは、どうやって出来たのか。国家って何なのか。皆さん、国家って触ったことある? 国家、見た人いる? いないでしょ? 国家っていうのはイメージなんです。63組っていうのと同じ。 

国家っていうのは何かっていうと、最初、原始人同士が出会って、ぶつかると殺し合う。相手の縄張りを奪う。食料を奪う。そこから始まる。じゃあ、1人より5人で組んだほうがいい。集団生活を送ると繁殖にも防備にもいい。地主みたいのがいて、それが指揮をとって、村が出来た。大きくなって町が出来た。さらに大きくなって国が出来た。そうやって国というのが世界中のあちこちに出来たわけです。

国家は武力を持って縄張りを広げる。集団で生活して、男女の愛をみんなで見守って人口を増やし、だんだん勢力を拡大する。そうやって国家が出来てきた。でも暴力や武力に頼って国家が存在するというのであれば、これは暴力団と同じです。

昔は陸軍、海軍、空軍、これを警察予備隊って名前を変えて、その後保安隊って言って、今は自衛隊って呼んで誤魔化している。軍隊って言えないので。暴力団はこの町を守ってやるからって、みかじめ料を取っている。国家は国民を守ってあげるからと言って税金を取っている。そうやって世界中に国家が出来て、中世に一番強かった国、スペインとポルトガルは大航海時代、大きな船で世界中回って、あちこち植民地を作って属国にした。

でも世界中乗っ取れるかと思ったら、途中で息切れしちゃってね。その次にイギリスとオランダが出てくる。それでだんだんでかくなって、イギリスはアフリカの領土を取って、インドも取って、中国まで取ろうとした。

日本に正義があるとすれば、日本はそのイギリスを中国から追い出そうとして支那事変を起こした。日本も同じことをやってるわけですけどね。朝鮮を国土にして、満州を取って、満州も日本にしたかったんだけど、国連が反対したから満州国という国を作った。清国がトップだったんだけど、実際は日本が全部仕切っていた。そういう嘘が世界の歴史を作ってきているんですね。

日本の歴史もそうです。戦争に勝ったほうの歴史だけ都合のいいように残る。負けたほうはぐちゃぐちゃに言われます。名君のエピソードなんて大体あとから作られるんです。

織田信長は本能寺の変でやられましたね。明智光秀に殺された。あの時に信長が「光秀ならば是非もなし」って言って死んだことになっている。だけど、あの時、一緒にいた小姓も全部死んでいるんだから、その信長の言葉を聞いた人はいない。だけど、そう言ったことになっている。

桃太郎は鬼退治をした。でも鬼なんているわけがない。あれは漂流してきた外国人です。目が青いし、彫りが深いから鬼に見えたんでしょう。それをみんな殺しちゃった。でも悪い鬼をやっつけたことになっている。そうやって世の中で起きていることを誤魔化していく。政治家は国民を守るって言っているけど、国を守る。実は自分の政権を守っている。そう考えたほうがいい。

政府と国家

先ほど言った動物の本能である食欲と性欲以外にもう1つ、動物にはないものを人間は持っている。それは正邪善悪。これは正しい、これは間違っている。これはいい、これは罰する。

でも一体誰が決めるか。正邪善悪というのは権力者が作るんです。日本は神国である。天皇は神様である。日本に逆らう国は悪である。不正な国である。全部やつける。その教えに背く国民は全部罰する。

そこでもう1つ申し上げたいのは、日本は国家と政府を混ぜこぜにする。少なくとも民主主義国家といった場合、我々も入っているはずでしょ。それを政府の人が出てきて言うんですね。「国家としては、こういう風に考えております」って。

こういうときは政府って言うべきなんです。アメリカの場合はネーションが国家で、ガバメントが政府。ネーションとガバメント、違うでしょ。日本ではごちゃごちゃになっている。政府としては沖縄の辺野古反対運動は認められないと。国が沖縄県と対立している。沖縄県も国なんですよ。ものを書く上では言葉は正確に使わないと。

関ヶ原の戦いで戦死者は8千人。日清戦争で1万人くらい。日露戦争で3万人くらい。日露戦争、勝ったと思ってるでしょ。あれは局地戦なんですよ。でもロシアに勝ったと言っている。私が言いたいのは、データなんてアテにするなと言うこと。

失業率の計算は国によって計算の仕方が違います。日本は何位とかいっても、計算が違うのに比べようがない。もっともおかしいのは平均寿命。あれは平均余命です。今年、生まれた赤ん坊が何年生きるかという予測です。デモ行進なんかでも、主催者の発表と警察の発表と3倍くらい違うときがある。データと言っても嘘の情報がいっぱい流されている。

カーナビは便利ですけど、道を覚えなくなります。今、若い人はいろいろわかったような気になっているけど、実は何もわかっていないことが多い。自分の頭で考えないとね。みなさんは人間を書こうとするわけだから。それから、シナリオでは読みことばを書いてはいけない。話しことばを書かないとね。

今、男性の精子の数が減っていたり、男性の声の音程がカラオケ歌うと上っていたり、男が女をくどかなくなったりしてきました。面倒くさいんでしょうか。いや、傷つきたくないんですね。昔は20人くどいて1人付き合えたら上々って言われていた。打率なんてどうでもいいよ、打数だよって。でも、今は振られたくないんですね。

これは私、3つ理由があると思います。1つはセクハラの過剰規制。ちょっとしたことでもセクハラって言われるから、くどけない。昔は好きな人を待ちぶせるなんて当たり前でした(笑)。でも今だとストーカーって言われてしまう。

それから2番目は立ち小便の禁止。あれは犬と一緒で一種のマーキングなんです。3つ目は、夜になっても世の中が明るい、明るすぎる。昔は2人きりになりたければ暗いところに行けたんですけどね。

若い男性諸君、ちゃんと女性をくどいてますか? 世の中の男性が女性化しているというのは心配の種です。女性も結婚しなくなってきました。女性の魅力ってなんだろうって考えると、哀愁があって僕がついてやらないとって思うところ。男には保護本能があるから。

でも哀愁のある女性が少なくなった。男は男っぽい男性が少なくなってきた。これでいいのでしょうか。最後に若い男性に教えておきたいことがあります。最高の口説き文句は「この次、口説くぞ」って言うんです。時間で縛るわけです。この次会った時は口説くぞって言われて、それが嫌だったら、女性はもう来ませんから。余計なお金も使わないで済むんですね(笑)。

 〈採録★ダイジェスト〉THEミソ帳倶楽部「作家の眼、作家の切り口―いろいろな方向から物事を考えてみよう―」
ゲスト:ジェームス三木さん(脚本家・作家)
2017417日採録
次回は1230日に更新予定です

プロフィール:ジェームス三木(じぇーむす・みき)

大阪府立市岡高校を経て、劇団俳優座養成所に。1955年テイチク新人コンクールに合格、歌手生活を13年送る。1967年「月刊シナリオ」のコンクールに入選。野村芳太郎監督に師事、脚本家となり現在に至る。テレビドラマ『父の詫び状』(1987/プラハ国際テレビ祭グランプリ受賞)『独眼竜政宗』(1988/プロデューサ-協会特別賞受賞)『八代将軍吉宗』(1996/16回日本文芸大賞)『弟』(2005/13回橋田賞大賞受賞)の脚本など手掛けた作品および受賞歴多数。

※ブログ記事「脚本家に向いている人 とは/脚本家・ジェームス三木さんに学ぶ」もこちらから併せてご覧ください。

なお、同記事はYou Tubeでも公開中↓
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面白いドラマの作り方を紹介 シナリオ・センター公式チャンネル
脚本家ジェームス三木さんの根っこ 【Theミソ帳倶楽部】より

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