小学4年生~中学生向けオンライン創作クラス「考える部屋」。
最初のステップである「基礎科クラス」は全24回(基礎科修了後は本科→研修科→作家集団とご進級可能)。
例年、“折り返し地点”となる 12回目には「中間発表会」を開催。
先日、基礎科5期生の中間発表会を開催しました。
※これまでの中間発表会の模様はこちら↓
▼1期生
▼2期生
▼3期生
▼4期生
なお、中間発表会の作品には以下の規定を設けています↓
・課題テーマ「料理」
・枚数はペラ(200字詰め原稿用紙)なら10枚/400字詰め原稿用紙なら5枚
・主要人物は3人くらいで
(3人だと、本音と建前が交錯して物語がより面白くなるため)
この3点を意識して、「考える部屋」基礎科5期メンバーは作品を執筆。
こちらのブログでは、特に印象的だった2人の作品をご紹介。
ひとりは作品に登場する人物名を聞いただけで、もうひとりは題名を聞いただけで、他のメンバーが「!!!」と惹き込まれました。これは物語を作りたい方にとって、とても大切なことだと思いますので、その模様を広報の齋藤がリポート致します。
※なお、今回は人数と時間の関係で2グループに分かれて実施。1つは担当講師の「ふじこちゃん」と「かずちゃん」ことシナリオ・センター代表・新井グループ。もう1つは「ひろくん」「てんこちゃん」グループ(※『考える部屋』の講師陣は子どもたちから「先生」ではなくニックネームで呼んでいます)。こちらのブログでは、ふじこちゃん&新井グループの模様をご紹介します。
人物名を聞いただけで惹き込まれる!
・Mさんの作品『3人で協力!料理対決』
=あらすじ=
「もう君たちしかいないんだ!」。にくお(11)は、親友であり料理の天才であるパスたろう(12)とピザ子(12)に、料理対決への出場を懇願。パスたろうは「言ったじゃないか、料理対決に出るなら俺だって」と呆れ顔。ピザ子は「でも驚いたわ。ここ“うますぎタウン”のみんなは、お料理を作れると思っていたのに」と溜め息。かくして、ともに出場することになった3人。肉じゃが・餃子・ハンバーグを作る最中、まだ開けてはいけない鍋の蓋を、にくお はつい開けてしまう。そして、蓋が熱すぎたため鍋にぶつかり、その拍子に胡椒・唐辛子・ミントの葉が入ってしまう――。
――発表会では作者が自分の作品を読み上げます。
Mさんが冒頭、「にくお」「パスたろう」「ピザ子」と人物名を読み上げると、Zoom画面の中の考える部屋メンバーが「!」という表情に。
発表後、メンバーからは「登場人物の名前が料理名をもじっていて面白い!」「人物名からもう既に楽しめてすごく良かったです!」「この名前の人たちが作る料理はどんな味なのかなって、名前を聞いただけで惹き込まれました!」といった人物名に関する感想が沢山!
これを受けて、ふじこちゃんは――
〇ふじこ:私も「どんな人間ドラマが始まるんだろう!」って人物表を聞いたときからワクワクしました。もう最初から心を掴まれました。
「にくお」はちょっとおっとりしていてちょっとドジな感じがセリフや行動で伝わってくるし、「パスたろう」は料理の天才!といった孤高な感じを受けるし、「ピザ子」はにくおに懇願されたとき「しょ、しょうがないわね。どうしてもって言うんなら手伝ってあげてもいいけど」って言いながら引き受けるところとかすごくキュート。
単に“個性的な名前”というわけじゃなくて、名前にあったキャラクターがセリフにもト書にも出ていて、そこもまたすごいなと思いました。
それから、物語の終わり方もすごく良かった。「うわ!色々なものが入っちゃった!これからどうなっちゃうの!?」と続きが気になるような終わり方をしていて、最後の最後まで惹き込まれました!
〇新井:みんなも言ってたけど、本当に人物表を聞いただけで「ん?」って惹き込まれたよね。「どういうキャラなんだろう?」って期待しちゃいました。
あと すごかったのが、舞台となる「うますぎタウン」の設定も、ピザ子のセリフとしてさりげなく紹介していたところ。うますぎタウンなのに、料理が上手な人があんまりいないって面白い(笑)。ここもまた惹き込まれるよね。
人物名にも町の名前にも意味をもたせていて、ただユニークな名前を付けているわけじゃなくて、作品の世界観をちゃんと考えた上で名前を付けているんだということがよく分かります。
「考える部屋」の後半に、登場人物の名前の付け方を紹介します。なので、まだ人物名については詳しくやってないのに、もうこの段階でできていて驚きました、すごいね!「にくお」「パスたろう」「ピザ子」といった名前の響きから受ける印象と、セリフやト書から伝わってくるそれぞれのキャラクターが見事にマッチしていました。
キャラクターにあった名前を考える、ということをこれから「考える部屋」でもっと紹介していくので、Mさん、そして5期生のみんな、楽しみにしていてくださいね!
――この感想を受けて、作者であるMさんは「登場人物の名前や終わり方を工夫したので、そこをみんなに褒めてもらえてうれしかったです!」とニコニコ。本当に狙い通りでしたね!
題名を聞いただけで惹き込まれる!
・Nさんの作品『2日目のカレーライス』
=あらすじ=
アキラ(10)とリク(6)がソファに座ってテレビを観ていると、「ただいま。遅くなっちゃってごめんね。カレー温めるから待ってて」と、スーツ姿の母(29)がヒールを脱ぎ捨てるようにして台所へ向かう。そんな母に「カレーはやだ」と何度も駄々をこねるリク。申し訳なさそうに無理に笑顔を作る母。そのやり取りに「うるさいな。静かにしてよリク。今テレビ、いいところなの」とアキラは一時停止したアニメを再生する。アキラが横目に台所を見ると、レンジの前に悲しげな母の背中が見える。やがて、スライスチーズをのせたカレーが完成。「見て見て、チーズが伸びてる!」とはしゃぐリクに、母は「クモの糸みたいね」と嬉しそうに話しながらも、申し訳なさそうに、がっつくようにカレーを頬張るアキラに目を細める――。
――作者から『2日目のカレーライス』というタイトルが発表されるとすぐに、「おお!すごくいいタイトル!」と新井絶賛。
――発表後、考える部屋メンバーに感想を聞いてみると、やはり「題名を聞いただけで、どんな物語が始まるんだろうって興味が湧きました」「題名を聞いて、私も2日連続カレーか……と思ったので、リクがカレーやだって言っちゃうのもしょうがないなと思いました」「題名にもお母さんの切ない感じが出ていてすごくいいなと思いました」と題名に関する感想が沢山!
ふじこちゃんも「物語の世界観や内容を上手に表している題名だし、内容を聞いていてグッときちゃった」と感動。また、
〇ふじこ:“2日目のカレーライス”に対する、弟のリクと兄のアキラの反応の違いがすごくよく描けていました。
リクは最初、カレーやだ!って言っていたのに、最後はチーズが伸びてる!って無邪気に喜んでいて。“6歳の弟”という感じがすごくよく出ていました。
アキラは、「一時停止したアニメを再生する」というト書があったと思うんだけど、そこに“お母さん想いのお兄ちゃん”というのがすごくよく出ていたなって。お母さんとリクのやり取りを聞いていて、リクがやだやだ!ってこれ以上お母さんを困らせないように、アニメを一時停止して「静かにしてよリク」と間に入って、で、一時停止したアニメを再生したんじゃないかなって。
あと、最後のほうでアキラが無言でカレーにがっつくシーンがありますよね。お母さんのことを想っているけど口には出さない。アキラのちょっと不器用だけど優しいキャラクターもすごくよく出ているなと思いました。
〇新井:冒頭、タイトルを聞いて「おお!」と思ったんだけど、それだけじゃなくて、お母さんの年齢も「おお!」と思ったの。お母さんが29歳で長男のアキラが10歳。若いお母さん、というこの設定は敢えて?
〇Nさん:はい。
〇新井:ああ、やっぱりそうだよね。タイトルと登場人物の年齢を聞いただけで、「ああ、お母さん頑張ってるんだ」というのが分かる。で、冒頭のお母さんのト書。スーツ姿で「遅くなっちゃってごめんね。カレー温めるから待ってて」って言いながら、ヒールを脱ぎ捨てるようにして台所へ向かう。仕事が大変なんだなっていう、この物語が始まる前の、これまでのお母さんの状況がこれだけで伝わってくる。
それから、ふじこちゃんも言っていたけど、最後の無言でカレーをがっつくところ。アキラの不器用で優しいキャラクターがよく出ているよね。お母さんの大変さを10歳なりに感じている。でもそれをアキラにセリフで言わせていない、というのがNさんのすごいところ。言わせたくなっちゃうじゃない、「僕はおいしいと思うよ」とかさ。でも何も言わないで、ただがっつく。この仕草で「お母さん、大丈夫だよ!」と思っているアキラの心情が伝わる。
で、お母さんもアキラに何も言わないで目を細める。「申し訳ない」というお母さんの感情が表情で分かるよね。これをシーン尻にもってくることで、物語に情緒が生まれるというかね、本当にグッときました。
〇Nさん: でも、みんなの作品を聞いていて、「問題提起」というか「目的」をあまり書けていないなと思って、ちょっと後悔しました。
〇新井:え!そうなの!ああ、なるほど。例えば、最初のほうでアキラが母親想いであるという描写ができているともっとそういうことを表現できていたかもしれないよね。でもさ、これはこれで十分ステキな作品になっていたと思います!
Nさんのように、「他の人の作品を聞いて、自分なりに何かに気づく」ということも大切。みんな、今回感じたことを次の大発表会の作品に是非活かしてくださいね。
――この新井の呼びかけに、Zoom画面の中の考える部屋メンバーは「はーい!」と元気よく応えてくれました!
12月には大発表会を開催!
新井が言っていたように、次は基礎科で学んだことの“集大成”ともいえる大発表会がございます!
中間発表会では自分で作品を読みましたが、大発表会では例年、『ちびまる子ちゃん』の“藤木の声”や『ONE PIECE』の“ヒナの声”などを担当されている声優の中友子さんが読んでくださいます。
その模様はオーディエンスとして一般の方もご覧いただけます。
今回こちらのブログで、魅力的な人物名や題名をつけると、読み手や観客は冒頭ですぐに物語の世界に惹き込まれるんだ、ということがお分かりいただけたかと思います。こんなふうに、子どもたちの作品から学べることは沢山あります。創作にご興味ある方は次回の大発表会、是非ご参加いただければと思います!
※ご参考までにこれまでの大発表会の模様を↓
▼1期生
▼2期生
▼3期生
▼4期生
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▼あなたのアイデアを、物語に仕上げるための『シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』
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▼面白い物語になっているかチェック!『シナリオ・センター式 物語のつくり方』