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横浜市立新石川小学校の担任の先生からお問合せをいただきました。
「総合学習の一環として、クラスで1本の映画をつくることを目指しています。
“考えるよりやってみよう”ということで、4グループに分かれて手探りで作りました。
これらを見直して、これから作る映画の内容・編成も踏まえて、
子どもたちと一緒に“課題”をはっきりさせてから取り組みたいと思っています」
承知いたしました!
とお電話でお話しした後、先生から4グループの短編映画を送っていただき、鑑賞させていただきました。
その映画が――
面白い。面白すぎる!
ホラーコメディもの1編、ホラーもの3編の意欲作。
こんなに面白い映画をより面白くする方法ですって?……
お任せください!
出前授業は、シナリオ・センターの創設者・新井一が書いた『シナリオの技術』をもとに、映画づくりのコツをお届けしています。
『シナリオの技術』から、皆さんの次回作がより面白くなるために、バチっとハマる“単元”を見つけました!そのガイド役として今回のキッズシナリオを担当した わたくし田中が、その模様をお届けします!
=今回の概要==============
・サービス名:「クラスで映画を作るために、練習で撮った動画を見直してみる」(全1回)
・目的:総合の取り組み
・対象:横浜市立新石川小学校さま(5年生)
・時間:各約90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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手探りで作った映画
先生は「手探りで作った」と仰っていましたが、4作品すべて、受け手の心を動かす映画となっていました。
このような内容でした↓
・Aグループ『謎の学校』
人が突如としていなくなってしまった学校で仲間を探していくホラーコメディ。ランドセルがなくなって探しに行き、【何十年後……】というテロップに、「探しすぎやろ!ズコーッ!」とツッコミながら笑いましたが、同時に、この後どうなってしまうのか、仲間は見つかるのか……とハラハラしました。
・Bグループ『貞子ex』
学校に現れる幽霊に会ってみたい……そんな興味が、恐怖の世界へと導くホラー。冒頭、いろんな場所から幽霊に興味をもっている登場人物のカットを繋げて紹介いくことで、登場人物の紹介と、観ている人も幽霊に興味を持たせる流れがとても素晴らしかったです。
・Cグループ『恐怖の学校へようこそ』
本格ホラー映画。ドアが急に閉じるカットや仲間を探している姿を木陰から映すカットなど、ひとつひとつのカットにこだわりを感じました。「部屋から出れなくなる!」とサスペンスフルな描写が盛り沢山でとても怖かった!
・Dグループ『夜の森下』
夜9時。三人は、夜の校内探検をすることにした。探検の途中、仲間の森下とはぐれ、なんとか合流するも、不気味な謎ダンスをする女の子が現れて……。ダンスが奇妙でシュール。笑っていいのか、でもちょっと不気味で怖くもある……。そんな印象に残る一作でした。
本当に、どの作品も魅力的でした!
でも、もっともっと面白くしたいんですよね。
みんなに聞いてみると、
「はいっっっ!!!」と大きな声。
「はーい」とフワーっと手を挙げるようなテンションじゃありません。
ヤル気みなぎる歯切れのいいお返事。
そして方々から、切実な視線で私を見つめ、頷く子どもたち。
わかりました。
わたくし田中、実はみんなの作品に共通して、見つけたことがあったのです。
枠(フレーム)を意識する
みんなの作品は、共通して、ロング(ルーズ)ショットが上手でした。
ロング(ルーズ)ショットとは、カメラを被写体から離して、遠映しにした画面のこと。
どこで、誰が、何をしているのか、「全体像」を観客に見せることができます。
全体像が掴みやすいので、観客からしてみるととても観やすい。
でも、シナリオ・センター創設者の新井一は、『シナリオの技術』(ダヴィッド社)で、このように解説しています。
「演劇の表現は<セリフ>の面白さであり、映像の面白さは<枠>の面白さです。
あるときはアップで強調し、ロング(ルーズ)で全体の関係を表わし、
見た目の強調で心理描写することができます」
(P24より抜粋)
そして新井一は、「シナリオはフィルムに描くのです」と言っています。
つまり、映像を撮るときと同じように、シナリオを書く際も、
アップとロング(ルーズ)を意識して、この2つを活用しましょう、
と言っているのです。
ルーズだけでなくアップを活用する
現在、小学校4年生の国語の授業で、「アップとルーズ」について学ぶので、みんな馴染みがある言葉だと思いますが、この“おおもと”は映像業界の言葉です。
映画を作るときは、ルーズだけでなくアップも活用します。
アップとは、アップショットの略。カメラで被写体に近づき、顔や小さな被写体(小道具)などを画面いっぱいに映す撮影サイズのことです。アップにすることで、被写体を強調することができます。特にホラー映画の場合は、登場人物の恐怖という心理描写を強調し、受け手にも恐怖を与えていきます。
例えば、映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』。
公開当時、この撮影方法は大変話題になったのですが、「怖い……」と怯えてブルブル震えている顔がドアップで映し出され、見ているこちらは「一体何が起こってるの……」と恐怖感が増してくるのです。
アップにすると被写体だけが映り、「カメラの枠(フレーム)の外」が映らないので、周りがどんなふうになっているのか、状況が全く分かりません。なので、不安を煽ることができるのです。また、不安を煽るだけでなく、想像をかきたてる効果もあります。
このようにカメラの枠(フレーム)を意識して、アップとルーズを活用することで、より奥行きのある映像作品を撮ることができます。
この話を聞いた皆さんからは
「おー!なるほど!」
「確かに、ホラー映画でそういうシーンあるかも!」
「幽霊のアップも怖くていいかもね」
「ちょっと恥ずかしいけど、『キャーー!!!』っていう顔も大写しにしてみる?」
といった声があがり、それぞれでどのシーンを強調するかで盛り上がっていました。
「もっと怖くしたい!」「もっとのめりこんで観てもらいたい!」とさらにヤル気が漲っている皆さん。
このホラー映画製作を通して、さらに磨きがかかった映画を、期待しています!!!
※動画を作るときはこちらの書籍も参考にしてみてください↓
▼改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』(「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/企画・構成・著:新井一樹 /執筆:川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)
※いろいろな学校でキッズシナリオを実施中。事例をご紹介しておりますので、「うちの学校にも来てほしい!」ということでしたらご参考までにご覧ください。
▼コミュニケーション力 を上げるシナリオ研修 事例まとめ