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表現の幅が広がるラジオドラマ/第16回南のシナリオ大賞受賞者に学ぶ

表現の幅が広がるラジオドラマ/第16回南のシナリオ大賞受賞者

日本放送作家協会九州支部 主催、日本脚本家連盟九州支部/日本脚本家連盟寺島アキ子記念委員会 後援の「第16回南のシナリオ大賞」。今回の応募総数は276篇(前回300篇)。その中から大賞1篇、優秀賞2篇を選出。

谷口あゆむさん(作家集団 柏田道夫クラス)の『青空の彼方から』と、橋本直仁さん(通信本科修了)の『ア・イ・シ・テ・ル』が優秀賞を受賞。そこで、お二人のコメントをご紹介。

こちらをお読みいただくと、「映像で表現できないことをどうすれば音で表すことができるか」を考えることで、表現の幅が広がるんだな、と感じていただけるのではないかと思います。

「表現力を磨きたい!」という方、お二人のようにぜひラジオドラマにも挑戦してみてはいかがでしょうか。

優秀賞受賞作『青空の彼方から』谷口あゆむさん
「見えないものをどうしたら効果音・モノローグで表現出来るか」

*

=あらすじ=
航太(32)は戦争もののオンラインゲームをしながら実況する登録者数30人の弱小アイチューバー。ほとんどニートみたいなものなんだからと母・恵子に言われ、認知症の祖母・勝子(92)の介護を頼まれ一緒にゲームをするようになる。勝子はゲームの中で亡き夫・一郎に似ているキャラクターを見てのめり込んでいく。航太はそのお陰で登録者数10万人、再生回数3万回を超えたことを嬉しく思う。ある日、ゲームの中で勝子は再び一郎に出会い声を掛ける。だが、一郎は何も答えずに画面の中に消えていく。勝子は家を飛び出し徘徊してしまう。航太は勝子を現実の世界に戻すためにゲームの世界に似ている「(南九州市)知覧町」に連れていく。航太が特攻隊員の手紙や特攻機を見て唖然となっていると一郎と勘違いした勝子が航太に子供を身籠ったことを告白する。航太は強く抱きしめ、これからは自分らしく生きていくことを誓うのだった。

――まずは受賞のご感想を

〇谷口さん:一昨年、父が死にました。その日から父を思い出さない日はありません。

何がしたかったんだろう? どこに行きたかったんだろう? 何を食べたかったんだろう? と考える毎日です。生きているときは考えもしなかったのに、今は一つの身体を共有し、僕の中で生き続けている気がします。

それは脚本も同じことなのかもしれません。書く人のものだけではなく、聴いてくれる人、演じてくれる人、音を作ってくれる人、携わってくれる人、みんなで共有し、感動、感謝できるものでなければならない。当たり前なことなのに忘れて書いていた気がします。そのことを再認識して書いた作品が優秀賞に選ばれたことは本当に嬉しいです。

柏田講師、小説家の榎本憲男さん、大石さん、小河原さん、小島さん、八田さん、そして、ゼミの皆様にも感謝しかありません。読み返してみて、自分では駄作だと思っていた『青空の彼方から』を選んでいただいた方々に恩返しができるように頑張っていきたいと思います。応援よろしくお願い致します。

――南のシナリオ大賞への応募は何回目ですか?

〇谷口さん:今回で3回目になります。第14回の時は『いつか、きっと』という作品で最終選考までいきましたが「幼稚な話です」と一刀両断されました。去年は一次審査も通らず、今回、“三度目の正直”で優秀賞を受賞させていただきました。

――ラジオドラマを書こうと思ったキッカケは?

〇谷口さん:シナリオ・センターで森治美先生のラジオ講座を受講したのがキッカケです。森先生のサバサバした講義に魅了され、そのときに紹介していただいたたくさんのラジオドラマを聴いて、映像でもない、小説でもない、ちょうど間のようなラジオドラマにはまりました。

――受賞作『青空の彼方から』を書こうと思った経緯を教えてください

谷口さん:「認知症のおばあちゃんが亡き夫を求めて戦争もののオンラインゲームをする」という設定だけ決まっていて映像のコンクールに出そうと思っていました。副主人公はどうしよう? ゲームの中の戦争シーンはどのように書こう? などと考えていました。

ある日、柏田講師が脚本を担当された映画『島守の塔』を映画館で観てヒントを得て、戦争シーンを音だけで表現したほうが残虐なシーンにならずにいいのではないかと思い、この作品を書くことにしました。

――特に工夫されたところは?

〇谷口さん: 戦争もののオンラインゲームの音を工夫しました。地上戦の音、空中戦の音、二つを入れることで、残虐にならないように、マイルドにもならないように、危機迫るように書いたつもりです。また、生活音を入れることで現実の世界とゲームの世界とを分けたつもりです。

――シナリオ・センターで学んできて、今回特に役に立ったことはありますか?

〇谷口さん:映像ドラマは3D。「耳・心・目」で成り立っています。

ラジオドラマは2Dで「耳・心」で成り立っています。

作家集団のゼミで学んだ、「目で見えないものは表現出来ないと捉えるのではなく、どうしたら“効果音・モノローグ”で表現出来るかを考えて書く」ということが役に立ったと思います。柏田クラスは映像だけではなく、ラジオドラマ、小説、エッセイとたくさんの素敵な作品を発表してくれる人が多いからです。

自分の作品は結構同じようなものに傾いてしまう傾向があると思います。ゼミ生の作品を聞くことで自分の引き出しも増えますし、柏田講師からは自分に足りないもののヒントを頂けます。自分が書きたいと思うものを色んな角度から見るのは、大切なことだと思いました。

――「ラジオドラマを書いてみたい」「コンクールに応募してみたい」という方にメッセージを

〇谷口さん:映像で表現出来ないと捉えてラジオドラマは難しいと思う人も多いと思いますが、映像で出来ないから、どうしたら「効果音・モノローグ」で表現出来るかを考えてみてください。楽しくなりますよ。

ラジオドラマが書けるようになったら、自分が書きたい作品は映像向きか、ラジオ向きかを考えたり、自分の好きな映画やドラマ、小説をラジオドラマにしたらこうなると考えるだけで楽しいし、自分のふり幅が広がるし、可能性も広がると思います。

優秀賞受賞作『ア・イ・シ・テ・ル』橋本直仁さん
「痛みや辛さを音で上手く表現できたら」

*

=あらすじ=
近未来、あるウィルスに感染した加藤和也は自宅アパートに隔離。完治する希望を持って、検疫官の指示に従う不安な日々。和也には結婚を約束した彼女・玲奈がいたが、隔離を境に距離をおいていた。進行する和也の病状。手足が腐り始め、黒ずみ、やがて、ぽとりと腕が取れてしまった。和也の精神は少しづつ破壊されていき――。

――受賞のご感想を

〇橋本さん:昨年に続いて、2回目の応募でした。受賞できて、シンプルに、非常に嬉しかったです!

――そもそもラジオドラマを書こうと思ったキッカケは?

〇橋本さん:2019年にシナリオを描き始めて、色んなコンクールに出すうちに、ラジオドラマも描いてみようと思いました。

――受賞作『ア・イ・シ・テ・ル』を書こうと思った経緯を教えてください

〇橋本さん:実はこの作品の元は、通信講座 基礎科の課題テーマ「一年間」で書いたものです。それをラジオドラマに変えて、少し長く膨らませました。

南のシナリオ大賞は、既定の枚数が400字詰原稿15枚以内と短いので、出来るだけインパクトのあるエンディングにしようと思いました。

同賞の公式サイトに掲載されている講評に「悲劇的な結末を迎えます」とありますが、私の中では感動的なラストのつもりでした(笑)。

――特にこだわった部分は?

〇橋本さん:少しエグいと評されましたが、痛みとか、辛さとかを、音で上手く表現できたらと工夫しました。自分の足を自分で切るシーンはお気に入りです。

――シナリオ・センターで学んだことで、今回特に役に立ったことはありますか?

〇橋本さん:前述のとおり、今回の作品は、通信講座基礎科の課題で映像シナリオとして書いたものを、ラジオドラマのシナリオに置き換えて出来たものです。

映像とラジオは技術的には違うとは思いますが、基本的な部分は同じだと思います。

通信講座では、決まったテーマに即して、毎週書いて提出して、添削をいただけるのは、とても勉強になりました。自分でも上手く描けたなと思うシーンを講師の方に褒めていただけると嬉しくなります。少しずつ毎日続けることが大事だなと思いました。

――ラジオドラマを書くことや、コンクールへの応募に興味がある方へ、おすすめの勉強法やメッセージを

〇橋本さん:好きな事を、好きなだけ描いたらいいと思います。上手くできた、上手くいかなかった関係なく、コンクールに出せば、楽しく、結果発表のドキドキが味わえます。一度「1次審査」を通過するとやめられなくなります(笑)。

「勉強」と思うより、「自分がどれだけ楽しいと感じられるか」が、大切だと思います。

シナリオ・センターに通えば、技術は自然と教えていただけるので、後は楽しく、自分らしく描けたら幸せだと思います。

「南のシナリオ大賞に応募したい!」という方、こちらも!

シナリオ・センター在籍生・出身生はこれまでも「南のシナリオ大賞」で受賞されています。こちらの記事も併せてご覧ください。

第15回南のシナリオ大賞
大賞受賞 荻安理紗さん&優秀賞受賞 竹上雄介さん

▼第14回南のシナリオ大賞
大賞受賞 竹田行人さん

優秀賞受賞 境田博美さん

第12回南のシナリオ大賞
優秀賞 山下蛙太郎さん

※南のシナリオ大賞の公式サイトでは、ラジオドラマ化された受賞作を聴くことができます。
「南のシナリオ大賞 – 日本放送作家協会 九州支部」 

「シナリオは、だれでもうまくなれます」

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