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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

【 ラジオドラマを書く かた参考に】
第14回南のシナリオ大賞受賞 竹田行人さん

ラジオドラマ脚本コンクール「南のシナリオ大賞」。
第14回を迎える今回の応募総数は298編。
大賞に輝いたのは竹田行人さん(研修科修了)の『ほてぱき』。

受賞の感想とともに、「なぜラジオドラマを書こうと思ったのか」といったラジオドラマに対する想いもお聞きしました。「次回、南のシナリオ大賞に出したいけど、ラジオドラマ書いたことないしな……」と不安なかたは、竹田さんのコメントを参考にしてください。

=『ほてぱき』あらすじ=
親子はフクザツでややこしくて愛おしい。
熊本は東京、大阪、名古屋などの大都市圏を除くと最も渋滞が多い都市であるそうな。栞(17)が空港に向かうために乗ったタクシーも例外なく渋滞に巻き込まれている。タクシーを運転する松本(45)は8年前に離婚したきり会っていなかった栞の父親。栞の母が再婚したことをきっかけに、栞は家族とともに海外に移住することになる。栞の母と新しい父親はまだ学校のあった栞を置いてひと足先に東京観光に向かっている。それはもう簡単に会えなくなる栞と松本を2人きりにするために栞の母が考えたこと。松本は栞に餞別を渡す。餞別は「ほてぱき」。「ほてぱき」。見たことも聞いたこともない。「ほてぱき」とは何か?「ほて」と「ぱき」の2つで1つ。カラーが豊富。すごく伸びる。なんだ? わからない「ほてぱき」。

今回の応募は「“すみません。お邪魔します”という気持ちで」

――今回、受賞の手応えはありましたか?応募する前のお気持ちと併せて、受賞の感想をお願いします。

〇竹田さん:まず今回、南のシナリオ大賞の大賞に『ほてぱき』を選んでいただけたこと。率直に嬉しいです。ありがとうございます。

いつも、どのコンクールであっても「この作品で受賞するんだ!」という気概だけは持っています。

その点では普段と変わりないのですが、南のシナリオ大賞は他のコンクールと違い、1次審査と2次審査どちらも、ホームページ上で通過作品のタイトルとともに、ひとこと講評をいただけるという特徴があります。

そこで1次審査の講評をいただいたときに、その文面から「自分がこの作品でやろうとしたことが伝わっている」と感じました。その喜びは大きく、ひょっとしたら、のちの受賞の連絡のときより嬉しかったかもしれません。

「伝える」を「伝わる」に変換するのが創作の仕事。というのがモットーというか、お話を書く上で個人的に大切にしていることなので、「伝わった」と実感できたことが一番うれしかったですね。

もちろん、受賞の連絡はとても、とても、とても嬉しかったです!

――ラジオドラマを書いたのは今回が初めてですか?それとも、以前から、ですか?
ラジオドラマとの“出会い”を お聞かせください。

〇竹田さん:もう鬼籍に入られているのですが、大学時代、シナリオ・センターでラジオドラマ講座を持たれていた森治美先生の元で学ばせていただく機会がありました。その時に課題として書いたのが初めてのラジオドラマです。

その時に書いたのは主人公の前に亡くなった母親が主人公と同じ年齢の姿で現れるというお話だったので、今思い返してみると映像の方が親和性の高い内容ですね。つまりその時はラジオドラマと映像ドラマで相性のいいモチーフがそれぞれある、というようなことはまったくわかっていませんでした。

そこからかなり下って2020年の春先に、山梨県北杜市が地域興しの一環としてラジオドラマのコンクールを開催していることを知り、5分という短編であったこともあって、募集のあった4つのテーマすべてに応募しました。

結果こそ奮いませんでしたが、このときに「ラジオドラマでできることはなんだろう」「ラジオドラマの特性とは」といった根本的な疑問についてたくさん考えることができたのは大きなお土産だったと思っています。

――なぜ今回ラジオドラマに挑戦しようと思ったのですか?

〇竹田さん:ラジオは大学受験のときから断続的に聴いていて、木皿泉さんが書かれている「道草」シリーズも聴いていました。

でも、だからこそラジオドラマのリスナーさんは耳が肥えていそうで怖いというか、うかつに手を出せないというか、「親戚にいる発明家のおじさん」のような、魅力的だけれどもアンタッチャブルな存在でした。なので正直なところ、コロナがなければ先ほどの北杜市のコンクールも南のシナリオ大賞も書いていなかったと思います。

毎年、応募するコンクールについて大雑把な予定を立てるのですが、緊急事態宣言が出されて職場が休業になったことで予定が前倒しになっていき、ポカンと空く時期ができました。そこで当初は予定になかったコンクールにも応募しようかと考え始めた時に知ったのが北杜市のコンクールと南のシナリオ大賞でした。

そんな事情なので、「挑戦しよう」というより、「すみません。お邪魔します」という気持ちの方がずっと強いです。それは今も変わらないですね。

受賞作『ほてぱき』について

――書いたキッカケを教えてください。

〇竹田さん:「ラジオドラマでできることはなんだろう」というところから考え始めてアイデア出しをしました。

街中をカッコよく移動する姿が印象的な「パルクール」というスポーツがあるんですけど、それの実況中継はどうだろう。とか。主人公が誘拐されている真っ最中で、目隠しをされている中で音だけを頼りに活路を見出す話はどうだろう。とか。

そんな中でふと、小さい頃に「世にも奇妙な物語」で観た「ズンドコベロンチョ」を思い出したんです。というか「ズンドコベロンチョみたいなお話を書いてみたい」というのはずっとあって。でもあのお話は唯一無二というか、二番煎じが作りにくい作品だというのもわかっていて。

「でもラジオならいけるかも」。これはけっこう確信に近かったと思います。そこで「ふしぎな名前の得体のしれないものを中心に動いていく物語」という基本のコンセプトが決まりました。

もう一つのキッカケはむかし聴いていたラジオドラマシリーズ「道草」の大好きなエピソードです。離婚した長距離トラックの運転手である父親とその息子。月に一回の面会日と父親の仕事が重なり、父親は仕方なく息子をトラックの助手席に乗せて仕事に出ることにする。そこでの会話劇。そんなエピソードで。この2つが合わさったところで「ほてぱき」の骨組みが完成しました。

――なぜ「ほてぱき」という言葉にしようと思ったのですか?

〇竹田さん:まず最近の映像ドラマでよく使われる4文字略称。「逃げ恥」「ギボムス」「恋つづ」なんかの耳馴染みの良さから、4文字だろうと。

それと、かなり昔に読んだ本の中で、口に馴染みやすい造語を作る方法として母音の種類がたくさん入っているといい。というようなのを読んだ記憶があって。それで最初にサイコロを振るような感覚で「o、e、a、i」と仮に決めました。

あとは子音を適当に放り込めばいいや、くらいに思っていたんですけど、どうしても「p」の音だけは入れたかったんです。「p」の音を入れるとなんというか、かわいさというか、いままでにない特別感が出るような気がして。

そこだけは本当に感覚なので上手く説明できないんですけど、こだわりましたね。

――この作品では特にどんなことを心掛けましたか?

〇竹田さん:コメディであること。これはすごく心掛けていたと思います。

ちゃんとバカバカしくありたいというか。最後は笑って終わりたいというか。こういうときだからこそ物語にはガハハやニヤニヤを届けてほしいし、自分もできるだけそうでありたいというか。

それにコロナと同じ「得体のしれないもの」で笑顔が作れたら、こんなに作り手冥利に尽きることはないんじゃないかなと。

「ほてぱき」の場合、前半がコントや漫才のように進むので、そういうコメディタッチな部分はできるだけなんにも考えないようにして、小賢しいことをせず、いつも以上にひたすら勢いというか、目の前の小笑いを取りに行くことだけを考えました。

会話に関してラジオドラマだからと特別意識したことはあまり、ほとんど、まったく、なくて、そもそも会話劇が好きなんです。と言ってしまうと元も子もないんですけど、本当に好きでずっと書いてしまうんです。

それで、勢いで書いたセリフからその人物のキャラクターを見つけていくというか、「今なんでこのセリフ言ったの?」ということを取っ掛かりにして、人物の奥にあるものを掘り出していく、みたいなことをいつもしています。

自分で作った会話劇で人間観察しているという感じでしょうか。

「よく考えたら17年くらい脚本書いているんですよ。私。」

――ラジオドラマ脚本コンクールで賞をとりたい生徒さんが沢山います。その方々に向けてメッセージをお願いします。

〇竹田さん:よく考えたら17年くらい脚本書いているんですよ。私。実は。子どもだったら反抗期真っただ中ですよ。もちろん途中お休みしてた時期というか、生活が忙しくて書けていなかった時期なんかもあるんですが。空恐ろしいなと自分でも思います。

でも、その間ずーっと脚本好きでした。辞めたいとか嫌いになったりとかはないんです。一度も。

今回、大賞をいただいたこと、もちろんとても嬉しいです。やりたいことが伝わったと感じられたこと、泣きそうです。でもなにより、ずっと大好きなものを大好きなままでいられていることがありがたいです。

これを読んでいるみなさんは、これを読んでいる時点で少しは脚本のことを好きなんだと思います。

やってると、やっただけもっと好きになります。きっと。サンプル数1ですけど。

もちろん好きな気持ちや初期衝動だけでなんとかなることばかりではなかったです。これからもないと思います。

ただ、続けていきたいし、みなさんにも続けてほしいなと思います。

私はあまりラジオドラマの経験がないので、ここでなにか技術的に言えるようなことはありません。そういうノウハウはぜひ、シナリオ・センターのラジオドラマ講座で身につけてください。

あと、『ほてぱき』も聴いていただければありがたいです。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

※なお、2021年1/10より「南のシナリオ大賞 日本放送作家協会 九州支部」のHPで『ほてぱき』(ドラマとシナリオ)が公開されるとのこと。

※ラジオドラマのコンクールに出したいかたはこちらのブログも併せてご覧ください

■「第14回南のシナリオ大賞 優秀賞受賞 境田博美さん」

■「ラジオドラマ脚本コンクールで賞をとる2018①/山本雅嗣さん(第39回BKラジオドラマ大賞最優秀賞受賞)」

■「ラジオドラマ脚本コンクール で賞をとる2018②/菅浩史さん(第2回MBSラジオドラマ脚本コンクール優秀作受賞)」

■「ラジオドラマ脚本コンクールで賞をとる 2018③/山下蛙太郎さん(第12回南のシナリオ大賞優秀賞受賞)」 

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