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興味が湧くこと 見つけたいなら/第15回南のシナリオ大賞受賞者に学ぶ

興味が湧くこと見つけたいなら/第15回南のシナリオ大賞受賞者に学ぶ

興味が湧くことを見つけるのは意外と難しいですよね。もしいま何かお探しでしたら、オーディオドラマ(=ラジオドラマ)を書いてみるというのはいかがでしょうか?

例えば、ラジオドラマに興味が湧いて、書き方を学んでみて、コンクールに応募してみたら選考を通過した――となったら、より一層興味が湧いて、これまでの日常とは違う世界が見えてくるかもしれません。

今回ご紹介する、ラジオドラマコンクール「第15回南のシナリオ大賞」受賞者のお二人は、映像のドラマと違って、セリフの声や音響効果のみで表現するラジオドラマの自由度の高さや面白さに興味が湧き、書くようになったそうです。

そんなお二人に受賞のコメントをいただきました。興味をひかれたラジオドラマの世界でどんな物語を、どんな風に書いたのか、参考にしてみてください。

まずは第15回南のシナリオ大賞の概要から。

第15回南のシナリオ大賞について

400字詰原稿 15枚以内(15分のラジオドラマ)のシナリオ。テーマは自由。シナリオの中に1回以上、九州か沖縄の地名が登場すること。

今回の応募総数は300編(前回:298編)。その中から大賞1編、優秀賞2編を選出。大賞は荻 安理紗さん(WEB作家集団)の『オルガニストを探しに』が、優秀賞2編のうちの1編は竹上雄介さん(通信作家集団)の『おいしいヘタクソ事件』が受賞。

大賞受賞作『オルガニストを探しに』荻 安理紗さん

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==受賞作『オルガニストを探しに』あらすじ==

浮かれた大学生たちが、湘南の海で遊んでいる。そのなかの一人が今井だ。長崎県五島市から、都内の大学に進学して初めての夏休み。今井はサークルの部員と海に遊びに来ていた。彼には気になる女性がいる。サークルの先輩である凉子だ。凉子は奇妙な虚言癖があった。自分の父親と出身地について、妙な嘘を繰り返すのだ。今井は凉子の虚言癖の下らなさを指摘してしまう。傷ついて走り去る凉子。困惑する今井。サークルの先輩である原田は、凉子の虚言癖の原因を今井に教える。凉子は、津波で行方不明になった父親を、空想の世界でなんとか生かそうとして嘘を重ねていたのだ。夜の浜辺で並んで座る、今井と凉子。今井は凉子のために一つの空想を語る。凉子の父は五島の教会で、パイプオルガンの演奏をしているという物語だ。夜の海が、二人の幻想を見守る――。

――まずは受賞のご感想を。

〇荻さん:南のシナリオ大賞へは初めての応募です。大賞を受賞したことよりも、脚本がオーディオドラマとして制作してもらえることの方が嬉しかったです。脚本は制作されてナンボだなと思っているので。

――ラジオドラマを書こうと思ったキッカケやラジオドラマとの出会いを教えてください。

〇荻さん:私がティーンの頃、人気マンガやアニメのドラマC Dが大量に発売されていてよく聴いていました。その流れで大人になってからも、たまにラジオドラマを聴いていました。ラジオドラマ脚本を書いてみようと思ったのは、北阪昌人氏の『ラジオドラマ脚本入門』を読んでからです。映像脚本では書けない世界を展開できるんだなと思って興味が湧きました。

――受賞作『オルガニストを探しに』をなぜ書こうと思ったのですか?

〇荻さん:ハーレクインに出てくるようなヒロインを助けるカッコいい男の子を主人公にしたドラマを描きたいなと、なんとなく思ったのがきっかけです。意外とそういう主人公像がエンタメで復活しつつあると思って(『鬼滅の刃』など)。主人公が助けたくなるような魅力的なヒロインとして凉子を登場させました。

――特にどんなことを心掛けましたか?

〇荻さん:映像ではやはり表現しにくいシーンを入れました(涼子の父が津波に飲まれていくところなど)。S Eとセリフによって人物たちの心象風景をリスナーがイメージしやすいように工夫しました。前向きなエンディングへ向かうように展開させました。

――シナリオ・センターで学んできたことで、今回特にどんなことが役に立ちましたか?

〇荻さん:研修科や作家集団のゼミで接する、自分とは違う性別・年齢・考え方の人たちの意見です。

――ラジオドラマ脚本コンクールで賞をとりたいかたに向けてメッセージをお願いします。

〇荻さん:最終審査での審査員投票では私の脚本は1票しか入っていませんでした。しかしオーディオドラマとして制作したいと思ってもらったのは私の脚本でした。他の脚本の方が技術的要素は上とみなされても、制作したら面白そうかどうかのポイントで勝てたということです。

受賞作品を制作するコンクールに応募する場合、「この脚本はラジオドラマにしたら面白いのだろうか?」という一点が非常に大切なのだなと改めて思っています。技術的な上手さはもちろん大切ですが、読み物としてのシナリオ(レーゼシナリオ )に走らない意識が必要です。

レーゼシナリオ:映画脚本の形式で書かれた文学作品

優秀賞受賞作『おいしいヘタクソ事件』竹上雄介さん

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==受賞作『おいしいヘタクソ事件』あらすじ==

ある日の食事中、一紀(30)は妻・莉子(30)に怒られた。「ご飯おいしい?」と聞かれて、「おいしい」と答えた一紀の「おいしい」がヘタクソだったからだ。一紀は本当に「おいしい」と思っているが、莉子は「ヘタクソ」の一点張り。なぜ莉子がこんなことを言い出したのか、一紀は全くわからない。莉子の怒りは収まらず、家から追い出される一紀。立ち寄ったラーメン屋では「ごちそうさま」を言わなかったせいで店主から怒られる始末。「そういう一言、大事だぞ」と。その言葉に思い当たる節があった一紀。毎日家事をしてくれる莉子に対し、「おいしい」だけでなく「ごちそうさま」や「ありがとう」の一言を言っていただろうか。ヘタクソと言い張るのは、普段そういうことを言わない俺へのメッセージだとしたら……。夫婦だからこそ忘れてはいけない大事なことに気付いた一紀は、もう一度 莉子のもとへ向かう。

――受賞のご感想を。

〇竹上さん:受賞をすると電話連絡がくると知っていたので、スマホが鳴ったときはものすごく嬉しかったです。南のシナリオ大賞には毎年応募しています。5・6年前くらいに初めて応募した時に講評をもらえたことが嬉しくて、それからは毎年応募しようと決めました。

それで昨年、初めて最終審査まで進んだものの受賞できずに悔しい思いをしたので「今年こそは」と例年以上に気合いを入れて、短編のラジオドラマなので書けるときにスパッと書いていこうと、書けるなら何本でも出してやろうと、気合いの4本を応募しました。結果3本が1次を通って「これで落ちたらなんか恥ずいなぁ」と思いながら結果を待っていたところに朗報があったのでホッとしました。

――ラジオドラマを書こうと思ったキッカケやラジオドラマとの出会いを教えてください。

〇竹上さん:正直ラジオをものすごく聴いているわけではありません。お笑い芸人のラジオはよく聴きますが、ドラマはたまに聴く程度です。けど「ラジオドラマを書くとセリフが磨かれる」と誰かに聞いたことがあり、それを信じて、書いてみようと。

そしてちょうどその時に、『月刊シナリオ教室』に載っていた石原理恵子さんの『夕暮れ迷子』を読んで、それがすごく面白くて、さらに書いてみようと。

でも、書き方もわからないし、長編なんていきなり書けないなぁと思っていた頃にラジオ日本さん主催の「ドラマ・ファクトリー」や「杉崎智介脚本賞」という短編ラジオドラマの募集があったので、『夕暮れ迷子』を片手に書き方を学び、なんとか書き上げたものが1次を通ったので、ハマってしまいました。ラジオドラマは映像のドラマよりも自由度が高いので、書いていて楽しいですね。

――受賞作『おいしいヘタクソ事件』をなぜ書こうと思ったのですか?

〇竹上さん:ある晩に、妻から「ご飯おいしい?」と聞かれて「おいしい!」と答えたにも関わらず「全然おいしそうじゃない!」と怒られたことがあったんです。ほんとに、心の底から、「おいしい」と思っているのに何を言っても信じてもらえず、「え、なにこれ、どゆこと?」「俺なんかしたかな?」と困惑して(笑)。結局真相はわからなかったんですけど、この小さなミステリーを自分なりに謎解きして、ストーリーを膨らませました。

――特にどんなことを心掛けましたか?

〇竹上さん: ラジオドラマを書き始めた頃は、とにかく映像では表現できないラジオならではの「ぶっとんだ設定」を心掛けていましたけど、いろんな受賞作品を読むと「それ映像でもできるじゃん」っていうのが意外と多くて。だけど、ドラマとしては面白いものばかりで・・・

で、自分なりに研究した結果、受賞作品に共通していることは全部聴きやすかったんです。なんだそれって感じですけど(笑)、聴きやすい作品を完成させるのって意外と難しいと思っています。だから「聴いていて心地いいものであれば、それがラジオドラマなんだ!」と、ふわっと結論付けて、無理にぶっとんだ設定にしようとせず、書きたいことを書くようにしました。

はたしてこの作品が「聴いていて心地いいもの」であるかは自信ないですが、「テンポがいい」と評価していただいたので、「うん、聴きやすかったんだな」と強引に腑に落としています。

――シナリオ・センターで学んできたことで、今回特にどんなことが役に立ちましたか?

〇竹上さん:書き方です。シナリオ・センターは書き方を学ぶには最適な場所だと思います。私は通信講座を受講していますが、書き方に関する指摘を細かくいただけるので。

――ラジオドラマ脚本コンクールで賞をとりたいかたに向けてメッセージをお願いします。

〇竹上さん:もう既にラジオドラマを書いたことがある人に私から言えることはありませんが、例えば映像用のシナリオしか書いたことがなく、でもなんとなくラジオドラマを書いてみたいなぁって思っている人に伝えたいことは、「まずは短編コンクールから挑戦するべし!」です。

長編のラジオドラマコンクールに応募する前に、まずは短編。でも短編のラジオドラマコンクールで定期的に開催しているのは「南のシナリオ大賞」ぐらいしかないと思うんです。なのでまずは「打倒!南のシナリオ大賞」で挑戦してみてもいいのではないでしょうか。

しかもラッキーなことに審査員がかなり強烈なので、講評をもらえればかなり励みになります。今年は300編も集まった人気コンクールなので、どしどし応募して、審査員を困らせて、みんなで南のシナリオ大賞を盛り上げましょう!

ラジオドラマに興味が湧いたかたは――

☆まずは実際にラジオドラマを聴いてみてください↓

▼※掲載期間があるようですが、ラジオドラマ化された受賞作を聴くことができます。
「南のシナリオ大賞 – 日本放送作家協会 九州支部」
https://writers9sib.org/contest.php

▼「NHK FMシアター」。オンエア情報はこちらで
https://www.nhk.or.jp/audio/html_fm/

☆こちらの記事も参考にしてみてください。
シナリオ・センター在籍生・出身生はこれまでも「南のシナリオ大賞」で受賞されています。

▼“よく考えたら17年くらい脚本書いているんですよ”
第14回南のシナリオ大賞 竹田行人さん
https://www.scenario.co.jp/online/26977/ 

▼“受賞は期待せず、経験を積むために応募したという感じです”
第14回南のシナリオ大賞 優秀賞受賞 境田博美さん
https://www.scenario.co.jp/online/26982/ 

▼“出場すること。打席に立つことに意義がある、と多くを期待せずに応募”
第12回南のシナリオ大賞優秀賞 山下蛙太郎さん
https://www.scenario.co.jp/online/23075/ 

「シナリオは、だれでもうまくなれます」

「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
※シナリオ作家養成講座とシナリオ8週間講座は、オンライン受講も可能です。

詳しくは講座のページへ
シナリオ作家養成講座(6ヶ月)

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過去記事一覧

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