通信講座で学び、ラジオドラマ脚本コンクール で賞を!
シナリオ・センターでは、“通学”の講座やゼミだけでなく、距離や時間の関係で毎回通うことが難しいかたでも受講できる「通信講座」もあります。
通信講座の受講を検討されている脚本家志望のかたに、「脚本コンクールで賞をとりたいのですが、直接授業を受ける“通学”ではなく、通信講座でも脚本の技術は充分に学べますか?」とご質問をいただくこともありますが、勿論、充分に学べます!カリキュラムに差はありません。
通信講座で学ばれて、テレビドラマやラジオドラマの脚本コンクールで受賞されたかたは沢山いらっしゃいます。
今回ご紹介する山下蛙太郎さんもそのひとり。通信講座基礎科の修了生です。
山下さんは今年、『午後四時五十八分の悲劇』という作品で第12回南のシナリオ大賞 優秀賞を受賞されました。
南のシナリオ大賞(主催:日本放送作家協会九州支部)は、15分のラジオドラマのシナリオを応募するもので、今回は応募総数200篇の中から大賞1篇、優秀賞2篇が選ばれました。その優秀賞を受賞された2篇のうちの1篇が山下さんの作品。
受賞作『午後四時五十八分の悲劇』について、日本放送作家協会九州支部公式サイトの総評では【日常で起こる、クレーム対応。人が電話口にでるまでの時間が掛かります。その状況をおもしろおかしく描いています】とされています。
今回は山下さんに、受賞作の執筆エピソードの他、通信講座を受講したキッカケや通信講座の課題をいつもどのような想いで書いていたか、についてもお話いただきました。山下さんのコメントを読むと、「自分も頑張らなきゃ!」「次は自分が賞をとるぞ!」と刺激を受けますよ!
第12回南のシナリオ大賞優秀賞受賞 山下蛙太郎さん
「“出場すること。打席に立つことに意義がある”と、多くを期待せずに応募」
――第12回南のシナリオ大賞優秀賞をして
〇山下さん:コンクールの締め切り5日前のできごとでした。
4ヶ月がかりで応募作として別の作品を添削し続けていたのですが、出来栄えに確信が持てなかったこともあり、コンクール受賞歴がある知人に読んでもらいました。
知人は、「締め切り前に申し訳ないんだけど…」と前置きして。ダメ出し箇所多数。そうなのか。難しいテーマではあったんだけど。書き切れていなかった。重いテーマを15枚に収めるために無理をしたかもしれない。
残り4日。根本的に書き直すか。ゼロから別の作品を書くか。
4ヶ月つきあってきた脚本を修正するには、もう煮詰まっていて無理。この作品は、今は棚上げして、別の作品を出そう。応募直前でそういう決断を下しました。応募すると決めていたコンクールを見送るのもいやだったのです。
考えた末に、シナセン通信基礎科の第4回目の課題「イライラしている人」で書いていた同題の原作『午後四時五十八分の悲劇』を、規程枚数に増やして応募することにしました。
通信基礎科の4回目の課題ですから200字詰めで3枚しかありません。でも、担当の横山恵美先生から「面白かった」と言われていたので、ある程度は確証が持てていたのが大きかったです。
200字詰め3枚のものを400字詰め15枚に増量しますので、水ぶくれしそうなところですが、シナセンの課題提出の際に、200字詰めで20枚くらい書けてしまったものを場面ごとカットなどを行い、必死に減量して核心的な一場面に集約し3枚に絞っていたので、増量ではなく削除部分の復活ということで苦にはなりませんでした。
そうして締め切りギリギリに書き上げて応募したのですが、今回はもう「出場すること。打席に立つことに意義がある」と、多くを期待していませんでした。そのせいか、受賞の電話を受けて、頓珍漢な対応をしてしまい、恥ずかしかったです。あまりの恥ずかしさに、主催者のWEBに掲載した「受賞者のひとこと」を、電話応答の顛末にしてしまったほどです(※1)。
――受賞前と受賞後で変化したこと
〇山下さん:受賞の知らせから1ヶ月ほど経過しましたが、いまのところ特に変化はありません。何か変化するものなのでしょうか。
――応募したキッカケ
〇山下さん:ラジオドラマのコンクールには、けっこう応募しておりまして、創作ラジオドラマ大賞などの最終選考にも残ったことがあるのですが、受賞には至っていませんでした。ふだんからラジオをよく聴いているので、オーディオドラマなど、音しか使えない世界の物語は、割と身近に感じております。
――受賞作『午後四時五十八分の悲劇』で特に心掛けたところ
〇山下さん:読む人が、笑う場面であっても、書く私は、笑わせようとして書いたことは一度もありません。主人公の必死真剣な行動を描こうと努めていました。
「締め切りを買うようなつもりで通信基礎科に」
――ラジオドラマの脚本コンクール受賞を目指すシナリオ・センターの仲間にひとこと
〇山下さん:脚本書いているかたの多くは、ラジオだけでなく、映像脚本も目指していると思います。
関東や関西にいる方は恵まれています。九州には、脚本を教える教室が、福岡市に2つあるだけです。
仕事の都合から、いずれにも通えなくなった時期がありました。塾に行けなくても、脚本の書き方は学んだわけだし、自分の努力で「いつでも好きな時に書ける」はずなのに、その年、ただ1つの脚本も書かずに過ごしてしまいました。
私は意志が弱い人間です。塾に行く=課題を提出する、という縛りがなくなったので、書く習慣まで失ったのです。陸上競技の選手と同じように、書かなければ筋力が落ちてコンクール応募作も生めなくなります。
締め切りを買うようなつもりで! シナセンの通信基礎科に入りました。
初歩からやりなおしですが、課題ごとに締め切りがありますので、締め切りに合わせて課題を提出すること。先生からの添削や意見を受けて自分なりに再考すること。脚本を書く初心に戻って続けました。
シナセン通信基礎科は、基本的に「褒めて育てる」という精神なのだと思います。横山先生に褒めてもらいながら、ただ1人の読者である先生に向けて、次は何にしようかと考えてゆく充実感は得がたいものでした。受賞作『午後四時五十八分の悲劇』も、通信基礎科の課題を発展した作品です。
「習作も、先生というただ1人の読者のために魂を込めて」
――通信講座で頑張っている“通信講座仲間”にもひとこと
〇山下さん:締め切りはあっという間に来るものです。5枚の課題であっても書けないときがあります。
でも、せっかく講座料を支払っているのですから、書ききって先生の講評を受ける機会を失わないようにしましょう。
その時に、「練習のための脚本」は書かないようにしています。先生というただ1人の読者のために、3枚、5枚、10枚に魂を込めて書きました。誰かに読んでもらえるかどうか分からない作品ではなくて、担当の先生だけは、必ず読んでくれるのですから!
脚本家への道ははるかに遠いのが現実です。それを職業にできるのは、一握りの方々だけでしょう。私は、今の瞬間だけ、ささやかな一歩を得たにすぎません。
南のシナリオ大賞は、審査経過をWEBで公開しています(※2)。
連絡を受けた直後は、素直に入賞を喜んだのですが、その後に公開された審査経過を見ると、私の作品には賛否が激しく分かれ、全否定か全肯定か、択一の状況だったことが分かります(※1)。
主催者のWEBによると、平成31年1月10日に、大賞と優秀賞のシナリオを公開するとのことですので、みなさんも『午後四時五十八分の悲劇』に対する評価を直接問うことができるでしょう(※1)。
私は1位になったことが一度もありません。賛否が割れた私とは異なり、1位の方の作品は審査員全員一致でした。評価が分かれる作品しか書けない私は、何度挑戦しても1位に選ばれることはないかもしれません。
けれども、多くのコンクールでは、映像化されたり放送されたりする特典は、1位に対してだけ与えられます。「生涯でただ1回限りでもいい」。自分の脚本が映像化あるいは放送される日を夢見て精進している私もまた、みなさんと同じように1位を目指すしかないのです。
なお、2018年12月末発行の『月刊シナリオ教室2019年1月号』ではラジオドラマについてを特集。その連動企画として、ブログでもラジオドラマについてをフィーチャー!今年のラジオドラマ脚本コンクールで受賞されたかたのコメントをご紹介しています(全3回)。今回はその第3弾になります。『月刊シナリオ教室2019年1月号』とこちらのブログ、併せてご覧ください。
※ブログ「ラジオドラマ脚本コンクールで賞をとる2018①/山本雅嗣さん(第39回BKラジオドラマ大賞最優秀賞受賞)」はこちらからご覧ください。
※ブログ「ラジオドラマ脚本コンクールで賞をとる 2018③/菅浩史さん(第2回MBSラジオドラマ脚本コンクール優秀作受賞)」はこちらからご覧ください。
※シナリオ・センター通信講座についてはこちらをご覧ください。
※山下さんに続け!脚本コンクールいろいろあります。
こちらのブログ「主なシナリオ公募コンクール・脚本賞一覧」をご覧ください。