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脚本家 杉原憲明さん×プロデューサー 辻村和也さん:
映画『 望郷 』ができるまで

2017.09.29 開催 THEミソ帳倶楽部「シナリオライター×プロデューサー 映画『望郷』を語る 脚本家の視点、プロデューサーの視点」
ゲスト 杉原憲明さん(シナリオライター) 辻村和也さん(エイベックス・デジタル株式会社プロデューサー)

シナリオ・センターでは、ライター志望の皆さんの“引き出し=ミソ帳”を増やすために、様々なジャンルの達人から“達人たる根っこ=基本”をお聞きする公開講座「ミソ帳倶楽部 達人の根っこ」を実施しています。そのダイジェスト版を『月刊シナリオ教室』(今回は2018年2月号)から。
『月刊シナリオ教室』(2017年10月号)に映画『望郷』(原作:湊かなえさん 監督:菊地健雄さん)のシナリオを掲載させていただきました。今回、ご紹介する公開講座のゲストは、同映画の脚色を手掛けた脚本家 杉原憲明さんと、企画・製作を手掛けたプロデューサー 辻村和也さん(エイベックス・デジタル株式会社)。なお、お2人ともシナリオ・センター出身です。
元々、配信動画コンテンツとして企画された『望郷』が、どのような経緯で映画として公開されたのか。脚本家とプロデューサーというぞれぞれの視点で対談していただきました。

配信、DVD、そして映画

〇杉原さん:脚本家である僕が、この企画に参加したのは2016年の10月でした。監督から電話があって、すぐに原作を読んでほしいということで始まりました。

もちろん企画はそれ以前から動いているわけで、最初はどういうところから始まったんですか?

〇辻村さん:僕はエイベックス・デジタル株式会社という会社でdTVという映像配信サービスをやっている会社に所属し、オリジナルの配信動画コンテンツの企画・プロデュースをしています。

今回は、その企画立案の中で、「2つのドラマを制作する」「DVDと配信の展開を行う作品」という条件で企画を作る機会があり、ならば「映画でも出来るんじゃないか?」と考えて、本企画を提案しました。

つまり本作は配信企画としてスタートしましたが、実際のところ「映画の方が監督スタッフはモチベーションが高く制作できるね」ということもあって、配信の制作費で少し頑張って映画として成立する企画まで持って行きました(笑)。

〇杉原さん:脚本家としても配信だけで終わるより映画館でかかることはすごく大きいので、ありがたい企画です。こういった配信と映画館上映を両方やるやり方は、前作の『裏切りの街』の影響もあるんですか?

〇辻村さん:そうですね。三浦大輔監督の『裏切りの街』は、もともとdTVで配信した6編のドラマ作品でした。その後、映画バージョンに再編集し、映画として劇場でレイト上映しました。配信から半年くらいあとだったと思います。

ウィキペディアで見てみたら、dTVで配信され、好評につき映画業界の目にとまり映画になりましたというようなことが書いてありましたが、あれは少しウソかも(笑)。実際は「これは映画として劇場でもかけられる作品なのでやりたい」とを言い続けて、粘り勝ちしたみたいなことです。

〇杉原さん:そうだったんですね。僕も『裏切りの街』は劇場に見に行ったんですけど大盛況で。その興業の成功があって、今回の作品に繋がっているっていうことですよね。

〇辻村さん:そうですね。こういう言い方が正しいか分かりませんが、映画ってドラマと違うものと思われがちですが、実際配信ドラマを作るときと脚本的な制作プロセスは同じと思うんです。なので配信の企画で映画も作れるんじゃないかって。

とはいえ映画を作ることは、当然大変で、宣伝もしなければいけないし、出演者の気合いも違い大変なことはあります。しかし作っている工程、役者さんの演技など、配信と映画を比較しても本質は変わらないと僕は思っているんです。

〇杉原さん:そういう企画の流れがあって、プロデューサーとして、どういうところで今回の『望郷』という原作に惹かれたんですか?

〇辻村さん:企画を立てる中で気を付ける点は、ある程度映画やドラマに興味のない人でもわかるものじゃないとダメだと思ってます。もっと言うと見られないと思うんです。本を読む以前に、読んだ後が想像できるもの。

例えばこの映画で言うと、基本的な打ち出しを「湊かなえ原作」や、「感動のミステリー」として、1人でも多くの方に振り向いてもらえる言葉で打ち出せる企画を意識しました。

有名原作者というのは、やはり本作の最大の強みで、脚本の内容がいいからと言って、それで企画成立とはならないです。皆さんは普段から映画をたくさん観ていらっしゃると思いますが、そういう方じゃない方にどれだけ興味を持ってもらえるかをイメージ出来るかどうかだと思います。

〇杉原さん:内容的にはどうでしたか?

〇辻村さん:いい話になると思いました。自分自身の話のように感じられるというか。「私もそうそうだった」とか「うちの親もそうそう」みたいな、みんな故郷はあると思いますし、その捉え方は少しずつ違う。それを改めて考えられるかな?という感じ。
脚本の段階でも、共感性の高いリアリティのあるように書いてほしいと何回も言った記憶があります。

〇杉原さん:言われましたね、何回も(笑)。湊かなえさんの原作っていうと、衝撃的な展開のサスペンスというイメージが僕自身にはあったんですが、今回の『望郷』は身の回りの話というか、派手ではないけれども、だからこそ普遍的なテーマというか、誰もが体験したことのあるような感情を扱っていて、それをいかに映画として語るか、それが脚色のモチベーションでした。

そして、いよいよ僕が呼ばれて、制作の段階に入ると、辻村さんともう一人、清家優輝Pがいて、菊地健雄監督がいて、4人で脚本作りが始まりました。監督、脚本の人選はどのように行われたんですか?

〇辻村さん:企画が通って監督は誰にしようっていう中で僕が言ったのは、助監督経験があって芝居をつけられて、キャラクターをちゃんと演出できる人。経験が豊富で下積みの長い若手監督とやってみたいと考えてたと記憶してます。僕自身もプロデューサーとしてはまだまだですし、同年代くらいでやりたかった。

〇杉原さん:僕と辻村さんが同い年で、監督が3つ上で、清家さんは20代で、みんな年齢が近かったので、打ち合わせも非常にリラックスした感じでしたね。

〇辻村さん:そうですね。お菓子がいつの間に無くなる、みたいな。(笑)

〇杉原さん:作品自体は渋い映画ですが、現場のスタッフも含めて、実はチームとしては若かった。

〇辻村さん:原作から考えても、年齢の高い人にも観ていただきたい映画ですが、制作体制としては若いから出来ないということではなく、逆に同じ世代でチームワークよく出来たらいいなという気持ちが強かったです。デジタル世代ではない年代の方だと、結構感覚が違ってくるんですよね。

〇杉原さん:配信に対する考え方とかも違いますか。

〇辻村さん:それもありますね。それからフットワークの問題とか。今回も自分の役割以上のことをみんながやっている。僕は実際、企画とプロデューサーをやっていて、宣伝や配給もやってる。これは少し範囲が広すぎたという話もあるんですけど(笑)。

〇杉原さん:今日も本作の宣伝で大阪から駆けつけているんですよね。

〇辻村さん:明日も大阪・京都・神戸・名古屋の初日で舞台挨拶を行うので、監督は宿泊をしています。地方での取材なども積極的に行ってますが人数が少ない分、話は早いです。

〇杉原さん:直接交渉できるってことですね。

〇辻村さん:そうですね。ただ、いっぱい確認が来るから、少し大変です(笑)。

原作の短編が映画になるまで

〇辻村さん:菊地監督に決まって初めての打合せで、「(脚本家は)やりたい脚本家でいいですよ」って監督に言ったら、監督はその場で杉原さんに電話して……

〇杉原さん:はい、電話をもらいました。確かに、後ろに何人か人がいる気配がしました。

〇辻村さん:監督+2人いました(笑)。

〇杉原さん:菊地監督のデビュー作の『ディアーディアー』という映画があるんですけど、その脚本を僕がやらせてもらっていて、なにかと縁が深い監督なんですけど、『ディアーディアー』が終わった後、また一緒にやりたいねと言いながら、スケジュールが合わずすれ違っていたんです。それが、今回はタイミングばっちりで、先ほど話に出た最初の電話で、「やります!」となりました。

『望郷』の原作は6編の短編小説集ですが、そのうち3編は、既にテレビ東京でドラマ化されていて、残りの3編のうちの2編を原作として作ってほしいというのがプロデューサー陣からのオーダーでした。

小説として読むと面白いけど、映像化するのがむずかしい作品が残っているなというのが正直な印象でしたね。

つまり撮影がむずかしい話が残っていたんです。撮影が不可能な大洪水が起こる話だったり、撮影許可が下りない浦安にある某遊園地が舞台だったりで。遊園地は、結局地方のさびれた遊園地に設定を変えて脚色しました。

でも、脚色するなかで、一番悩んだのは、3編のうちの2編を、どうやって1本の映画にするのかってことでしたね。

〇辻村さん:僕はどちらかというとお任せしたというか。小説の長さからして1編が1時間くらいの話になるだろうから、映画館でかけるなら2本を合せてということで、「3編のうち2本を使って」と考えました。

〇杉原さん:無茶ぶりだなと思いつつ監督と悩みましたね(笑)。最初は2本の話をミックスして1本にしようとしたんですが、話の性質上、むずかしいということになりました。2つとも過去に大きな出来事があって、そこが共有されていない。

『夢の国』は、厳しいおばあちゃんに象徴される古い因習にとらわれた家の記憶がある。もう1つの『光の航路』は進水式の強烈な思い出がある男の話。この2つの思い出は重ならないので、同時進行で進めるのは無理だから、どうしようかってみんなで悩み抜いた末に、もう1編の『石の十字架』っていう作品のモチーフを少し使わせてもらうことになりました。

この作品は洪水が描かれています。先ほども言いましたが、洪水の部分を撮影するのは無理なんですが、冒頭と最後にモチーフとして出して、ほかの2編の接着剤となるように脚色しました。

〇辻村さん:サンドウィッチにしようと。その話の中で、2編の登場人物たちは同じ島の中にいるんだから会っているだろうなと。

〇杉原さん:会っているほうが面白いだろうと。で、そこが決まってからは、1週間くらいでプロットを書きました。

〇辻村さん:プロットが上がってきた時、凄く全体像が見えたと思いました。僕が見えてなかった部分が見えてきた感覚です。

〇杉原さん:原作のここを大事にしてほしかったとかってあるんですか?

〇辻村さん:僕は原作と見比べるのではなく、映画だけを見ても成立していればいいんじゃないかと。逆に忠実に再現されていたら、「本でよくない?」と感じる派です。

僕は、映画を観るお客さんは原作を読んでなくても楽しめる作品であるべきで、映画を観てから、「これ、良かったな。本も読んでみようかな」くらいでいい。なぜなら本のほうが情報量が多いから。映画にしていくと、どうしても情報を削ぎ落として集約していくことになると思うんです。

〇杉原さん:そうなんですよね。これは今後脚本家になる方に伝えたいんですが、映画やドラマは、原作となる小説や漫画よりも、情報の量が少ないです。

だから脚色のポイントとしては、なにを描いているかももちろん大事ですが、この映画は原作のなにを描かなかったのか、というところも同時に考えていくと、脚色の勉強になると思います。

〇辻村さん:僕は、製本された台本はほとんど読まないです。もうスゴくやりとりしましたし、また見たら直したくなるので。

〇杉原さん:僕にとっても製本された台本は仕事が終わった証です。だから現場にお邪魔したときは、ひとりだけ台本がピカピカですよ。

〇辻村さん:脚本は設計図なんです。もう完パケしたものがどうなるかっていうことで……。

〇杉原さん:脚本はそれだけで終わりではなくて、映像化されて初めて作品として成立するから、プロデューサーは、脚本よりもっと先を見ているということですよね。撮影はどうでしたか?

〇辻村さん:正直、制作費を抑える都合で人数やコストを抑えた大変さはありました。でも現場では監督が作品の隊長なので、僕は何も言わなかったと思います。むしろ、「あの人、誰?」くらいの存在感を目指してました(笑)。

別に僕が現場で、いろいろ言っても、監督の頭には構想があると思いますし、オフライン(編集を繋いだ段階)の時には少し言いますけど、現場では監督のやりやすさを第一に考えてました。向かってほしい方向は言うけど、行き方は任せますという感じです。

〇杉原さん:いいプロデューサーですねぇ。

〇辻村さん:もう1回言ってもらってもいいですか(笑)。

あくまで僕の場合ですけど、役割分担が大事だと思っているので、企画はこういうことで、こういう方針でお願いしますっていうことは言います。でも脚本家ではないので、脚本のことを細かく言うつもりはない。脚本には脚本で勝負してる人がいる訳で。そこで何か方向が違うと思うことがあれば、「ちょっと違いますね」って言うだけですね。

〇杉原さん:今回ありましたっけ?(笑)

〇辻村さん:ないね。

〇杉原さん:ホン打ちを結構やっていたんで、監督、プロデューサー、僕の間でちゃんとコンセンサスが取れていましたよね。上がってきたものを見ても、脚本を尊重して撮られているなって思いました。俳優さんも非常に台本の台詞を尊重してくださっていて感動しましたね。

脚色のポイントと見どころ

〇杉原さん:プロデューサーとしては、どういう脚本家と仕事をしたいですか? 選ぶポイントというか。逆に、こういうのはよくないとか。

〇辻村さん:仕事って相手が期待する事の少しでいいから上回っていればいいと思うんです。新入社員の時に、「お前には1ミリも期待してない」と言われてました。言い方はともあれ、1ミリも期待されていないと思ったほうが気楽なんです。過剰に期待されていると気合いが入りすぎて失敗するパターンが多い。会議でお客様にお茶を出すことでさえ。当時の僕もそうだったと思うので。

〇杉原さん:それ、すごくよくわかります。僕も昔、気合いが入りすぎて、ものすごいものを書いてやろうとか思って、途中で書けなくなってしまったことがあります。空回りすると書くスピードも落ちますしね。だから今は、何を求められているかっていうのを的確に理解して、「これどうですか?」って、すぐ投げ返せることが大事だなと思ってます。

〇辻村さん:それはそうですね。気合いが入りすぎないほうがいいのかなと思います。

〇杉原さん:今回の『望郷』の場合、湊さんの力強い表現を、きちんと映像表現の中に生かしたいと思いました。原作に『人を傷つけることにためらいのない子どもは、必ず存在する』という言葉が出てきます。たぶん、これは湊さんが一貫して書かれているテーマだと思ったので、この言葉は必ず台詞で言わせましょうと監督とも話し合いました。原作ものの脚本を書く時は、原作の中で、これだっていうテーマを見つけるのが大事なのかなって思ってやっています。

〇辻村さん:今回、湊先生から「ていねいに作っていただいてありがとうございます」と言ってくださったのが、とてもうれしかったですね。

〇杉原さん:そうですね。原作者の方に観ていただく時はドキドキしますね。

〇辻村さん:実際、湊先生は撮影場所にもお越し頂き、「地元の知っている風景が使われていて、ありがたい」とも言って頂きました。

〇杉原さん:嬉しいですね。もう少し脚本の話をしますと、今回、脚本と出来上がりで、1箇所だけ大きく違うところがあります。

最初は脚本通りに編集してあったんですが、ラッシュの時に「悪くはないけど、なにか足りない」という話になって、そこで演出部の1番下についていた方があるアイデアを出してくれて、その通りに編集を変えてみたら、映画全体の印象がガラリと変わったんです。これは非常に勉強になりました。

僕は「映画美学校」という学校で学んだんですけど、その時の担任の先生だった植岡喜晴監督がこんなことを言ってたんです。映画っていうのは常に変化するんだと。脚本を書いた時、撮影してる時、編集でカットをつないでいく時、音楽が入った時、どんどん変化していくのが映画の醍醐味で、それを楽しめるかどうかが大事なんじゃないかと。その言葉を思い出しました。

『望郷』のシナリオは、「シナリオ教室(2017年10月号)」に掲載されていますので、脚本と映画でどこが違うのか見比べていただくと面白いかもしれません。原作を読んで映画を見て、何をどう省いたのか分析していただくのもいいと思います。

〇辻村さん:僕が思う見所は全部です(笑)。全体的には映画も映像配信もDVDもあるというプロジェクトなので、ユーザーの鑑賞環境によって見やすいよう、細かく工夫しているんです。映画は約2時間、大きなスクリーンで止めることなく見ていただく環境で最適に作ってます。配信のバージョンは、『夢の国』『光の航路』それぞれ54分ずつになっていまして、実は、こちらは脚本の通りになっていて、映画と配信で、いろいろ違う点があるんです。

そのほうが環境も感じ方も違うとおもうのでそれぞれで楽しめると思ってやりました。ドラマ版には未公開シーンもありますし、主題歌も予告編も違います。予告にしても本編にしても配信だと長く見るには辛い事、携帯で見る方を意識した工夫もしました。ユーザーの視聴環境にあった見せ方をかなり意識しました。

いろんなパターンを作らなくてはいけないので、編集をやり始めてから仕上げまでの時間は長かったと思います。本作はそのような全体のプロジェクトとしても挑戦的な企画だったと思います。

バラエティーとドラマの違い

〇杉原さん:僕は基本的にはいただいた仕事は全部やりたいと思っています。でもやっぱり何でもいいからと言われたら、オリジナル作品をやりたいですね。人間の欲望がぐちゃぐちゃになるような映画をやってみたいです。今村昌平監督みたいな作品とか、最近の邦画でいうと、白石和彌の『日本で一番悪いやつら』とか、ああいった題材に興味があります。

〇辻村さん:あの作品は面白かったですよね。僕もベースとしてはオリジナルをやるべきだって思う。しかしその一方で、プロデュース業として企画成立の観点として考えると、制作費を捻出するところが、お金を払う理由を明確に作らなくてはいけない。「喉が渇いたから水を買いました」と同じくらいシンプルな理由がほしいと思います。オリジナルでやるのは、その理由がとても難しいです。そこをどのようにするかは永遠の課題です。

とはいえ、その画題を乗り越えながらオリジナル作品をやるべきだと個人的には思っています。

ただ、どこの誰だか知らない人が、いくら面白い作品を書きましたって言っても、実現はむずかしいので、原作ものか短いものからチャレンジし、いつかはやりたいオリジナル作品が出来ればいいんじゃないかって思います。

若干脱線しますけど、僕は配信作品としてバラエティー番組の企画もやるんです。バラエティーは完全にオリジナルなんですよ。

〇杉原さん:そうですね。確かにオリジナルですね。原作ありのバラエティーってないですもんね。

〇辻村さん:ドラマを作る上でも、バラエティーで鍛えられた部分があるような気がします。企画会議も全然違うんですよ。バラエティーの会議は、まず近況方向など雑談から入るんです。放送作家さんとかリサーチさんがいて、2時間くらい打ち合わせはしているんだけど、そのうち1時間半くらい雑談かと。

バラエティーは、すでに出来ているキャラクター(芸人さんなど)に何をしてもらうか。ドラマは、キャラクターをどう作っていくか。どちらも一線で活躍されている作家さんからそう聞いて、それからは意識しています。

今だとサンドイッチマンさんのバラエティーをやってますが、「町ブラしながら、ホラ貝が鳴ったら、そこでコントするコントバラエティー」。キャラクターを活かした企画ですし、一言で〝見てみたい″と思えるわかりやすい番組です。

〇杉原さん:わかりやすいですね。

〇辻村さん:サンドイッチさんは街ブラもコントも上手いから、両方やりたいということから考えた企画です。ドラマでいうと、主人公のキャラクターがもう出来ている状態。

こういうことがやりたいから、この人に頼もうってなるので、キャスティングの状態で、もうキャラクターが出来ているイメージです。
ドラマの場合は、そのセットアップを最初の10分とか15分で見せなくてはいけない。そこが大きく違います。僕の映画作りは、バラエティーの影響を大きく受けてます。

企画をやり始めたのは配信の仕事を始めてからですが、企画ってオリジナル作品を作ることを何回もやれば出来るようになると思う。細かいオリジナルをいっぱい書くことによって、何度も打席に立って、どれだけ瞬発力を身につけられるか。そして、その内容をどれだけ濃くすることが出来るかじゃないでしょうか。偉そうなこと言えないですけど。

シナリオ・センターで、20枚の短いものをいっぱい書いて練習するのは、本当にその修行だと思いますし、スゴく意味があると思います。僕はバラエティーでオリジナル企画ができる機会に恵まれましたし、そのことがドラマや映画でもベースになっていると感じます。

〇杉原さん:20枚シナリオは鍛えられますよ。僕も学生の頃にシナリオ・センターに通っていましたが、勉強になりました。

〇辻村さん:質問で「面白いって何でしょうか?」というのが来ていますが、これは企画ってことで考えると、やっぱり「わかりやすい」ってことじゃないですか。まずターゲットを明確に考えて、一言で内容がイメージできるってことが重要な気がします。

〇杉原さん:一言で言える企画というフレーズは、僕もよく言われます。皆さんが作品を書く時に、何が面白いのか迷ったら、自分が面白いと思った映画をまず真似をしてみることだと思います。

瀬々敬久監督は「すべての映画は『新宿TSUTAYA』に通ず」とおっしゃっていました。すべて映画には何かしらの元ネタがあるはず。それを自分なりに解釈して咀嚼してオリジナルを作っていく。

〇辻村さん:僕は本当に本屋によく行きます。本を読むというより、あの空間が企画を立てる上で好きなんです。

〇杉原さん:ホン打ちの時も、ある程度の映画を見ていないと共通言語がなくて話が進まない状態になる。必ず「あの映画のあれみたいに」っていう話になりますからね。ちなみに、そういうとき見ていなくて恥ずかしいときは、見ているフリをする場合もあります。打合せあるあるです。

〇辻村さん:あれ、それでいいんでしたっけ?

〇杉原さん:それで帰り道にツタヤで借りて、速攻で見る(笑)。

〇辻村さん:そういう時はdTVでご覧いただけるとありがたいです。旧作、名作がいっぱいあるので。と宣伝させていただきます(笑)。

〇杉原さん:僕は16年くらい前にシナリオ・センターに通っていて、もうやめて田舎帰ろうかなと思ったりしたこともあります。でも続けるしかない、やめたらそこで終わっちゃいますから。ある著名な監督が「本気で10年続けていれば、何かしら結果は出る」とおっしゃっていたのですが、そういう言葉を信じて、こういうのは最初に出るのが、つまりデビューすることが一番むずかしいと言われたりもしますけど、なんとか粘って、皆さんも頑張ってください。

〇辻村さん:脚本というと映像に限られていますが、背伸びせず、今出来ることをやっていくことで、その未来は明るいと思うんです。僕は、色々それっぽく言ってますが、30そこそこのただの会社員。僕は会社員と脚本家とでは気合いが違うと思っていて、だから本当に尊敬するんです。人生をかけて脚本家を目指す道を進んでいる訳ですから、今出来ることは出し惜しみせず、全力でやる脚本家になっていただきたいと思いますし、ぼくにできることであれば、ぜひその応援をしたいと思います。

〇杉原さん:最後にもうひと言。ひとりで最後まで書こうと思わない方がいいですよ。同じ夢を持つ仲間を見つけて、書いたら読ませて意見をもらう。書いててつまったら、すぐに相談する。ひとりだと怠けてしまうという人は、仲間と締め切りを設けるのもいいです。僕はそうしていました。プロになってからも1人で最初から最後まで書き切るってことはないですから、必ず打合せが何回もあって皆で練っていくものなので、皆さんもひとりで抱え込まないほうがいいと思います。

※今回ご紹介した模様を少し違った視点でお伝えしている記事「原作を脚色するとき/脚本家とプロデューサーの視点」も併せてご覧ください。

〈採録★ダイジェスト〉THEミソ帳倶楽部「シナリオライター×プロデューサー 映画『望郷』を語る 脚本家の視点、プロデューサーの視点」
ゲスト:杉原憲明さん(シナリオライター) 辻村和也さん(エイベックス・デジタル株式会社プロデューサー)
2017年9月29日採録
次回は3月30日に更新予定です

プロフィール

・杉原憲明(すぎはら・のりあき)
愛知県名古屋市出身。立教大学文学部を卒業後、映画美学校に入学。同校修了作品『ネコと金魚の恋物語』で脚本家デビュー。『貞子3D 2』『ディア―ディア―』『馬の骨』『ニセコイ』『貞子』他多数。2020年6月公開予定の映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』の脚本を担当。

・辻村和也(つじむら・かずや)
エイベックス・デジタル株式会社 プロデューサー。プロデュースを手掛けた作品としては、テレビドラマでは『KISSしたい睫毛』『彼氏をローンで買いました』他、映画では『裏切りの街』『望郷』他多数。

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