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貴島誠一郎さんに聞く プロデューサーが考える脚本家のあり方

2011.11.18 開催 THEミソ帳倶楽部 テレビドラマプロデューサーの根っこ 僕の考えるドラマ作りの鉄則
ゲスト 貴島誠一郎さん

シナリオ・センターでは、ライター志望の皆さんの“引き出し=ミソ帳”を増やすために、様々なジャンルの達人から“その達人たる根っこ=基本”をお聞きする公開講座「ミソ帳倶楽部 達人の根っこ」を実施しています。そのダイジェスト版を『月刊シナリオ教室』よりご紹介。
今回の達人は、TBSのベテランプロデューサー・貴島誠一郎さん。ヒットドラマを通して、大勢の役者さんやシナリオライターを育ててきた貴島さん。ドラマ制作とシナリオ、シナリオライターのあり方について、その極意と持論の一部をお話しいただきました。

原作を超えるには、自分らしさを加える

テレビドラマというのは時代を映す鏡だと思っています。

最近では原作ものやコミックものが多いのですが、テレビドラマこそオリジナルで勝負しなければいけない。そうすべきメディアだと思うんですね。

日本のコミックは世界的に認められたコンテンツで、それがドラマ化されるのは決して悪いことではないです。

例えば当社でやった『JIN―仁―』などは、プロデューサーと脚本家で上手な脚色をしていますよね。決して原作通りじゃない。

山田太一先生が以前こうおっしゃっていました。

「原作があるものを脚本化する場合、それは『脚色』というんだ。原作を超えるほどの脚色を施して、初めて脚色したと言える。そこを目指さなきゃいけない」と。

原作を超えるには、絶対に自分らしさを加えなければなりません。

何かを表現するということは、自分自身を探す旅のようなものです。

自分は何が好きで何が嫌いで、何に興味があって何が許せなくて……つまり自分という人間をどう知るか、どう向かい合うかということではないでしょうか。

僕が連ドラの現場でプロデューサーをしていたのは主に90年代で、ずいぶん前のことになりました。貴島らしいドラマの特徴は、「悪い人が出てこない」ということです。

この僕のポリシーは、当然自覚してやっています。だからといって僕が良い人という訳じゃないですが(笑)。

悪い人だって、どこかひとつくらい良いところがある。悪いことをしている理由もある。表と裏の面も含めて一生懸命生きているのが人間です。

そこに、ライター自身の人間性が投影されてくる。「自分はこういうものが書きたい」とか「自分はこういうライターです」と一言で言えるくらい、突き詰めて自分を知ることが必要だと思います。

楽しくなければ向いていない

僕は30歳過ぎてからドラマの現場に入りました。

それまでは営業とか編成にいて、すごく勉強してドラマのプロデューサーになったタイプなので、自分のドラマが当たっているうちに早く逃げたかった……(笑)。

自分の中に引き出しがなかったから、そういう考えになっていたんですね。

もうプロデューサーを辞めようかなと考えていた時に、ある映画プロデューサーの方に、「貴島くん、映像表現ほど面白い趣味は、他にないよ」と言われました。

その方は非常に多趣味で、ヨットも料理も女性も(笑)、本当にたくさんの引き出しをお持ちでしたが、その人が、映画を作るのが一番楽しい「趣味」だと言うんです。

「趣味」と思えないんだったら、つまり楽しいと思えないんだったら、向いていないということなんですね。

ドラマ『スウィートシーズン』で桑田佳祐さんに主題歌をお願いした時、思わず「桑田さんて天才ですよね!」と言ってしまったら、桑田さんは「天才じゃありませんよ、ただ僕は他人の3倍努力するけどね」とおっしゃった。

だけどその努力は決して苦じゃない、むしろ楽しいことだと思うんです。

シナリオライターも同じで、シナリオを書くことを仕事だと思ったらいけません。遊んでいる状態というのかな、桑田佳祐が曲を書いているのと同じような感覚で、シナリオを書いてほしいんですね。

すっごいおしゃべりか、すっごい無口か

脚本家の資質、どういう人が向いているか。2タイプありますね。

すっごいおしゃべりか、すっごい無口か、どっちかですよ。中間はいない。

おしゃべりな方は、とにかくセリフが上手い。普段のおしゃべりが、自然なセリフにつながっている。思っていることを全部しゃべることによって他人のリアクションを確認することもできますからね。

プロデューサーとの打ち合わせでも、ワーッとしゃべっている内にコンセンサスが生まれてくるものです。

一方無口な方は、僕が言ったことを黙って聞いているだけなので、わかっているのかな?と思うと、次の打ち合わせまでにビシッと直してくれる。

それも、言われたこと以上に、プラスアルファしてくれる。その場で上手に会話にできなくても、それを書くことができるタイプなんですね。

おしゃべりな人はもっとガンガンおしゃべりするようにして、逆に無口な方は脚本にやりたいことを思いきりぶつけるようにするといいと思います。

脚本家と演出家と役者とのバランスがある

12月に『Moon Cake(ムーンケーキ)』というオールシンガポールロケのドラマを放送します(2011年12月24日放送)。

日本語と韓国語と中国語と英語のセリフが入り乱れる、アジアコスモポリタンドラマともいうべき画期的な作品です。不思議なことに、たとえ言葉がわからなくても、その人物が怒っているとかの気持ちは伝わるんですね。

脚本というのは、ラブレターです。役者さんやスタッフのやる気を出させたり、魅力を引き出したりするものです。

北川悦吏子さんはト書がすごく上手い。『ロング・バケーション』第1話の冒頭で、スーパーボールが弾んでいくシーンがありましたね。

あのト書を読んでいるだけで、これから繰り広げられるドラマの展開が感じられて、スタッフ一同やる気が湧いたはずです。

例えば「主人公、怒りの気持ちで」なんてト書は要らない。怒るようなセリフや展開にすればいいだけです。

以前、ある脚本で「6月の優しい雨が降っている」というト書を見ましたが、これはダメ、映像にできませんから。

小説ならばアリです。小説は全体で表現していくものなので、「6月の優しい雨が」というような修飾語があっても構わない。

舞台の脚本とテレビドラマの脚本は同じだと思っていただいていいと思います。つまり、舞台では役者が立ったり座ったりというのは演出家が決める。

それと同じように、シナリオライターはセリフを書くことに集中していただいて、動きとか表現のやり方は現場のスタッフに任せればいいと思います。

脚本というのは共同作業ですから、ライターと演出家と役者とのバランスがある。その関係を出過ぎちゃいけないと思うんですね。

他の部分に侵略しちゃいけない。そこが上手くできるライターは、ト書のスタイルを持っているなと感じますね。

書きたいことがある、言いたいことがある

テクニック的な話ですが、「主役に説明セリフを言わせない」というのがあります。

何か話を進めるにあたって、二人の会話だけで展開させるよりも、3人芝居にして、もうひとり誰かを入れると、その場に臨んだ二人の気持ちが上手に表現できる。

シナリオライターはコピーライターではないので、すごく印象的なセリフを考える必要はないと思います。

当たり前のセリフを、どこで出すかが腕の見せ所です。僕は台本直しの時、上手くいっていない場合は、シーンの真ん中くらいをぶった切って引っくり返す、ということをよくやります。

1シーンの中で、短いセンテンスのセリフを3回言うのも効果があります。そうすると、そのセリフがキーになってくる。

僕の考えるドラマ作りの鉄則……先ほどの「自分探し」の話に戻ってしまいますが、書きたいことがある、言いたいことがあることですかね。

今はツイッターとかいろいろな形で発信できる世の中ですけれど、自分の言いたいことをセリフという形で役者さんに託せば、さらに大きな影響力を持ちます。

視聴率とか興行収入だとかは結果論であって、大事なのはプロセスですから。正しいアプローチ、プロセスを経れば、高い確率で良い結果に結びつく。

まずは、「自分はこのドラマで何が言いたいのか」ということを決めてから書くといいと思います。

大切なのはキャラクター

僕はドラマのストーリーに、そんなにバリエーションはないと思っています。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の時代で完結している。

大事なのはキャラクターなんです。視聴者だって、大体ストーリーの先は読めてしまうでしょう。

だから大切なのは、登場する人物のキャラクター造形なんです。同じ骨子の話でも、その時代のキャラクターが造形されていれば、とても面白く見られるものです。

主役って意外と何も言えなかったりするので、強烈な脇役を考えるのもいい。極端な話、さっきの3人芝居で言えば、3人目がすごく面白い人物だったら、主人公は面白くなくたっていいんです。

あれ、言っていることが矛盾してるかな(笑)。主人公を魅力的に見せる手段として、3番手に変わった人物を入れるということです。

僕が20年前に作った『ずっとあなたが好きだった』の「冬彦さん」。

あの人物のせいで、恋愛ドラマのはずが、いつの間にかマザコンドラマになってしまいましたけれど(笑)、あそこにミソがあったわけです。

それまでのラブストーリーと全然違うものになった。脇役の方が動かしやすいですし、ドラマの色合いを変えることができます。

山田太一先生もおっしゃっていたんですが、『新婚さんいらっしゃい』って番組があるでしょう。あれを見ると、結婚という大事なことを、結構簡単に決めてしまっていて面白い。作り手として、結婚や夫婦について考える参考になります。

シナリオを書くというのは、自分を知ることです。そういう機会って他の職業ではなかなか得られない。

皆さんが、こうして志したからには「シナリオライターでいてほしい」と思います。

年を取ったからといって、自分の書いたものが映像化されるチャンスはゼロになるわけじゃありません。年代によって考え方も少しずつ変わってきますから、書き続けていれば、作品に自分の歩みが表れてくるはずです。

趣味みたいな仕事ですので、ぜひ楽しんで書いて、頑張ってほしいと思います。

出典:『月刊シナリオ教室』(2012年3月号)より
ダイジェスト「THEミソ帳倶楽部 テレビドラマプロデューサーの根っこ 僕の考えるドラマ作りの鉄則」
ゲスト:貴島誠一郎さん 2011年11月18日採録

★こちらのコーナー、次回は今月の第四月曜日に更新します★

プロフィール:貴島誠一郎(きじま・せいいちろう)

TBSテレビ執行役員・ドラマプロデューサー。
山一証券を経てTBSに入社。プロデューサーとしてテレビ番組の制作に従事。特にドラマ制作においては、『想い出にかわるまで』『ずっとあなたが好きだった』『ダブルキッチン』『スウィートシーズン』『LEADERSリーダーズ』などプロデュースを手掛けた代表作多数。
貴島誠一郎さん公式Twitterはこちらからご覧ください。 

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