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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

もの申すには、歴史的考察など裏付けがなければただのイチャモン

大相撲の不思議(潮新書刊)

大阪なおみとセレーナ選手

シナリオ・センター代表の小林です。今年の全米OPENほどテニス好き以外の人にも知られ、喜ばれたことはないでしょう。
災害続きの暗い日本を、気持のよい光で照らしてくれたのが、錦織圭選手と大坂なおみ選手だと思います。 2人でBEST4まで並びながら進出するという初快挙を成し遂げ、錦織選手は惜しくも準決勝で敗れましたが、大坂なおみ選手はグランドスラムの大会に日本人初めての優勝を勝ちとるという素晴らしい成績を上げました。

相手のセリーナ・ウィリアムズ選手は、グランドスラム優勝23回という偉業を持つ大坂選手の憧れの人。その憧れにチャレンジして、アウェイでの勝利は、誰もが驚くほどのことです。
残念なことに、セリーナ選手が審判ともめ、折角の大坂なおみ選手の優勝がブーイングの嵐となりました。でも、セリーナはブーイングの嵐の中「彼女は素晴らしいプレイをした。彼女とって最初のグランドスラム優勝です。皆さんが応援してくれた大会です。ブーイングはもうやめて。コングラチュレーション、なおみ」と勝者を讃え、かつ、大坂なおみ選手は涙を浮かべて「みんな、セリーナを応援していることを知っています。こんな終わり方ですみません」と一番に切りだし、それまでのブーイングの嵐が賞賛の嵐に変わりました。

テレビを観ながら、ことの一面だけを見ていてはいけないと思いました。
観客は、二人のお互いをリスペクトしている素晴らしい言葉に我に返り、冷静に戻った時、大坂なおみ選手のプレイを正当に評価するところに立ち戻れたのだと思います。

大相撲の不思議

大相撲にといえば、内館牧子さん。
その内館牧子さんが「大相撲の不思議」(潮新書刊)を上梓されました。
女性で初めて横綱審議員になられてから10年間、内館さんは歯に衣を着せぬ言い方で、物言いをつけていらっしゃいました。(笑)
内館さんの凄さは、決して感情的に好き嫌いでものを言ったりしてされないことです。単によし悪しをおっしゃるのではなく、きちんと本質を踏まえて論理的にお話をされているのです。
その小気味よさに、毎回拍手喝采をしていた私ですが、男性社会の中では女性のこうした発言を揶揄したり、好ましく思わない男性の方が多いのが悲しいです。

土俵に女性が上がることはできないということを男女差別だとして、一時世間を二分するほどの論議になりました。
そのとき、内館さんは神事に発する相撲を、一般社会と同じ土俵で話をすることに疑問を感じられ、グローバルスタンダードが「男女共同参画」を標榜するなら、学問的裏付けをもたねばならないと、東北大学大学院を受験されて、2年も仕事を休まれて、宗教学を先行して相撲史を学ばれました。
こうした学問的な裏付けをしっかりとされているからこそ、内館さんの発言はきっぱりしているのです。
その内館さんのもの申す力が、この本に記されているようで面白く拝読しました。
内館さんは闇雲に文句は言いません。

朝青龍が左利きだからといって左手で手刀を切ることへ異を唱えた事件は有名です。
それは、懸賞金は神からの贈り物、五穀豊穣の三神に感謝する作法。 日本でもモンゴルでも「右は浄」「左は不浄」とされており、だからこそ右手で切らなければ神様に失礼だからなのです。
朝青龍は、反発していたにも関わらず尊敬する大横綱大鵬に注意されて直したそうですが・・・。
正当だと思っても女性の言うことなんか聞きたくない男の意地でしょうか。(笑) 子どもっぽさに笑ってしまいます。
もっと笑えるのは、それは左利きに対する差別だと抗議をされたこと。
「土俵は結界された異空間であり、その中の考えで、日常社会における左利きに何ら異を唱えません」ときっぱりの内館さん。
 異議を唱えるならちゃんとものごとをわかって発言してほしいですよね。

この本の中に内館さんの相撲愛、力士愛、優しさが隅々に感じられます。
白鵬が稀勢の里に負けた一戦で、観客から万歳三唱で館内が湧きました。
白鵬が双葉山を目標として心技体を磨き、不人気の相撲界をひっぱってきたにもかかわらず外国人というだけで、自分が負けると日本人は・・・と思ったのか、それから横綱の威厳も格も自ら放棄した振る舞いが増えたと内館さんはいいます。
白鵬への深い同情とともに観客の熱い想いが力士へ届くことも懸賞なのだと戒めています。
昨日の大坂なおみとセリーナ選手の試合のブーイングも同じことかと思います。
スポーツは勝つか負けるかしかありません。
勝者も敗者も力いっぱい戦ったからこそ勝負は素晴らしく、観客をも魅了します。

物を知らないことは本当に恥ずかしいことだと、不勉強の私は痛切に感じさせられた本です。

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