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出身生・黒坂圭太さんに聞く アニメーション作家になるまで

2011.09.16 開催 黒坂圭太さん アニメーション作家の根っこ
ゲスト 黒坂圭太さん

シナリオ・センターでは、ライター志望の皆さんの“引き出し=ミソ帳”を増やすために、様々なジャンルの達人から“その達人たる根っこ=基本”をお聞きする公開講座「ミソ帳倶楽部 達人の根っこ」を実施しています。そのダイジェスト版を『月刊シナリオ教室』よりご紹介。
今回の達人は、出身アニメーション作家の黒坂圭太さん。シナリオ・センターで勉強していた頃から、これまで出会ってきた人たち・その影響について語って頂きました。

人とのつながりが大切

人前で話すのは慣れている筈なんですが、今日は雰囲気も違うし、センター時代の恩師である大塚孝典先生もいらっしゃっているので、何だか緊張しています。

私は今から17~18年くらい前にシナリオ・センターでお世話になりました。あまり優秀な生徒ではありませんでしたけれど(笑)。

この同じ教室で、後藤先生のシナリオ作家養成講座に参加していまして、壁に貼られている出身者が関わった公開中の映画ポスターを見て、「いいなぁ!」と思っていたのを覚えています。

今日は自身の作品論みたいな話ではなく、シナリオを勉強していた頃から今に至るまでに出会ってきた人たちや、その影響について話そうと思います。この世界は、やはり人とのつながりが大切だなと思いますので。

私はもともと8ミリで自主映画を撮っていたのですが、ある日それを見た「MTV」から突然に仕事依頼の電話がかかってきたのです。MTVとはアメリカを拠点とする世界規模のミュージックチャンネルで、仕事というのは、その局のCM制作でした。

実はこれがアメリカでは新人映像作家の登竜門的存在となっていて、私にとっても事実上の「業界デビュー」となったのです。

その電話の主というのが何と、以前「ぴあフィルムフェスティバル」に入選した時に、たまたま打ち上げで知り合った入選者の一人でした。それだけのつながりしかないのに、私に声をかけてくれたのです。

ちょうどバブルがはじけ、それまでの安定した仕事を失ったところでした。結婚して間もなくで、2人ならなんとかなるだろうと思っていたら、その後すぐ子供ができたことが分かって(笑)「うわあ~っ!」というところにこの電話です。まさに「捨てる神あれば拾う神あり」ですよね。

“ドラマ構成”として論理的に考えられるように

そんなわけで、とりあえずは食いつなげたものの、これからどうすればよいか…。そんな時、妻から、「こんな綱渡りのようなことをしていてはダメ。対策を考えないと早晩つぶれてしまう」と指摘されました。

そして「まずはシナリオを勉強したら?」と。彼女はアニメーション美術(背景画)の現場にいたことがあり、私より業界事情に明るかったのです。

シナリオ・センターの存在は以前から知っていて、面白そうだなとは思っていたので、入学しました。月謝も安かったし(笑)。

入ったら「これだ!」という感じで、それまでは行き当たりばったりでやっていたことが、ちゃんと分析して考えられるようになりました。絵を描くのは得意でも「ドラマ構成」として論理的に考えることがなかったので、授業で教わる事はどれもすごく新鮮でした。

当初は、お話づくりのハウツーを学べればいい位に考えていたのが、シナリオの書き方を覚えたら、欲が出てきて本格的な長編ドラマ脚本が書きたくなったのです。「火曜サスペンス」でデビューして、いずれは朝ドラをとか、本気で考えた時期もあったんですよ。

深夜枠の1時間ドラマを書いて、テレビ局に持ち込んだこともあります。これは結構いいところまでいったんですけれど、最終的にはポシャりました。私、このパターンが多いんです(笑)。

そんな時、MTVでステーションID(30秒くらいのCM)を前提とした絵コンテのコンクールがあることを知り、先ほどお話した1時間ドラマのクライマックス部分だけを絵コンテにして応募しました。これが『パパが飛んだ朝』という作品です。幸運にも1位をいただき、制作が決定しました。

最初は実写を考えていたのですが、予算的に難しいこともあり、結局アニメーションで作ることになりました。

それまで私の作品は写真を使った実験的な手法が多く、いわゆる「動画アニメ」の経験が全くなかったんですが、現場ベテランスタッフ諸氏の力により、数カ月で完成しました。

リストラされたお父さんに羽が生えて飛んでいくという、当時の自分自身をパロディ化したみたいな内容でした。
ちょうど時代に合っていたのか海外の映像祭でたくさんの賞をいただきました。

でも、それ以上の収穫は何といってもプロフェッショナルな現場テクニックを勉強させてもらえたことです。

最新作『緑子/MIDORI‐KO』で使った作画技術は、この時に学んだスキルの応用なのです。これは仕事でありながら個人的には大変ありがたい、ギャラの出るアニメーション学校(笑)みたいな存在でした。

漫画、PVと広がって

アニメーションの語源はアニミズム、つまり「命を吹き込む」という意味なんです。絵に描かれたキャラクターが自分の意志を持って動き出し芝居を始める、その面白さに目覚めてしまった。

といっても映像にするのはお金もかかるし、簡単なことではないので、まずは漫画という形にしようと。

実は子供の頃から漫画家志望で紙に向かって記憶と妄想で絵を描くのが好きだったんです。

そんなわけで20枚シナリオ課題をもとに描き上げた作品が青年漫画誌の新人コンクールで受賞。これ以降、漫画の仕事も入るようになり、次へのステップになりました。

次第に映像の仕事の方が多くなった頃、昨年亡くなられた世界的アニメーション作家の川本喜八郎先生が立ち上げた、松尾芭蕉の連句によるオムニバスアニメ『冬の日』にも参加しました。

俳句を原作に35人のアニメ作家が作った映像をつないでいくという、ユニークな趣向の劇場アニメ映画です。

与えられた句に対して、かなり的外れなSFっぽい作品を作ったところ、川本先生から大変なお叱りを受けました。「君は俳句の心がわかっていない。自分の世界に引き込むのではなくて、自ら俳句の世界に歩み寄らなければいけない」と。

そこで大いに反省し、俳句の勉強をしたり、舞台になった場所を訪れたり……自分から歩み寄るということを、初めて真面目に考えました。

ビジュアル系バンドDir en greyからPVの仕事が来た時には少し戸惑いました。歌詞もかなり独特で、こういう世界があるのかと。

自分には無理かなと悩んでいた時、たまたまついていたテレビのニュースで子供が親を殺害するという傷ましい事件を知り「子供が親に殺意を抱く瞬間」というテーマが決まりました。

この作品は、やや過激な映像になってしまいましたが、その一方で、NHK「みんなのうた」みたいな心温まる作品も創りたいという、これまた偽らざる本音なのです。残念ながら、そういう発注は今のところ全く来ませんけれど(笑)。

『緑子/MIDORI‐KO』の制作方法とテーマ

『緑子/MIDORI‐KO』の時は、初めに登場人物のイメージドローイングを描きました。

キャラクターが持っている性格や、どんな人生を送ってきたのかということを、まずは1枚の絵にイメージ化するんです。それをもとに鉛筆で動画を描き、最終的には3万枚ほどになりました。

原画のサイズですが、実はすごく小さいんです。だから移動中の電車や喫茶店でも描ける。アトリエに籠って制作に励める立場ではなかったので(笑)、フットワークよく描けることを優先したら、こういう作画方法になったということです。

『緑子/MIDORI‐KO』のテーマを一言でいうと、命です。

幼い頃に芋虫に石を投げて遊んでいたら、当たってつぶれてしまった。それが、「命というものは袋に入っていて、破れて外に出た瞬間に失われる」というイメージにつながりました。

心無い人に小動物が虐殺された話などを聞くと、すごく心が痛みます。博愛主義というより、きわめて個人的トラウマによるものです。

依頼仕事は自分を豊かにする

手がけた作品が世間で認知されるまでに数年のタイムラグがあり、評価を受ける頃には自分の中で既に「終わっている」ということが珍しくありません。

だから「今更やりたくないな」という青臭い葛藤も出てきます。ところが仕事というのは概ね「終わった世界」が求められる場合が殆どなのです。

皆さんは、いま自己表現欲に溢れていることと思います。それを押し殺して他者に媚びるような仕事などしたくないという気持ちは痛いほど分かります。

でも、自分の内的欲求だけで続けていると、それは一見純度が高いように見えるけれど、実は自己模倣のマンネリズムに陥っているのに気づかないことも多いのです。

よほどの天才でもない限り自分だけの世界なんてタカが知れてますからね。私の場合、外部から未知の栄養を取り込まないと、たちまち枯渇してしまいます。

依頼される仕事って好きなんです。「えっ、それを俺がやるの?」と驚愕するようなオファーが来る。

でも何とかそれをこなすと、また一つ世界が広がって、自分が以前よりも豊かになる気がするのです。

仕事って、そういうものじゃないかなと、最近はポジティブに考えています。

出典:『月刊シナリオ教室』(2011年12月号)より
ダイジェスト「ミソ帳倶楽部 達人の根っこ」
黒坂圭太さん アニメーション作家の根っこ 2011年9月16日採録

プロフィール:黒坂圭太(くろさか・けいた)

1956年、東京都生まれ。アニメーション作家。武蔵野美術大学映像学科教授。描画、写真、立体など、さまざまな技法を用いた短編アニメーション作品を創作。ビデオクリップ、 イラストレーション、漫画なども手がける。ロッテルダム、ベルリン、アヌシー、広島、オタワなど、多くの国際映画祭で上映。世界のアニメ作家35名のコラボレーションによる連句アニメーション『冬の日』の第23句を担当(2003)。日本のロックバンドとして世界各国で最も知名度のある、Dir en grey『Agitated Screams of Maggots』(2006)のプロモーション・ビデオを手がける。代表作に『みみず物語』(1989),『個人都市』(1990),『ATAMA』(1994),『パパが飛んだ朝』(1997)など。

※黒坂圭太さんアニメーション映画『緑子/MIDORI-KO』公式サイトはこちらからご覧ください。

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