このほど第19回南のシナリオ大賞(※)の受賞作が発表となりました。
応募総数236篇(前回209篇)の中から大賞1篇 優秀賞2篇が選出され、なんと3篇すべてシナリオ・センター在籍生&出身生の方々の作品でした!
☆大賞
『水たまりの夜に』浅田佳子さん(元作家集団)
☆優秀賞
『博多発新宿行き』立石えり子さん(作家集団)
『カレイの煮つけはパンに合う?』ニッコさん(作家集団)
受賞を記念してコメントをいただきましたのでご紹介。「全て音で表現するのはすごく難しそうで、ラジオドラマはなかなか手が出せない……」とお悩みの方は特に、お三方のコメントを参考にしてください。ラジオドラマだからこそできる“ラジオドラマならではの表現”を考えるヒントになるのでは!と思います。(広報・齋藤)
※南のシナリオ大賞とは:
日本放送作家協会九州支部 主催、日本脚本家連盟九州支部/日本脚本家連盟寺島アキ子記念委員会 後援。募集作品は、15分のラジオドラマのシナリオ(400字詰原稿 15枚以内)でテーマは自由。ただ、「シナリオの中に1回以上、九州か沖縄の地名が登場すること」。
大賞『水たまりの夜に』浅田佳子さん
「人間以外を登場人物にすることは、ラジオドラマだからこそ活きる表現」
*

――受賞のご感想をお聞かせください。ちなみにこれまでこのようなコンクールに応募されたことはございますか?
〇浅田さん:正確には数えていないのですが、「南のシナリオ大賞」は開催数がひとケタの頃から、ほぼ毎年応募していて、恐らく10回以上は応募しているかと思います。「南のシナリオ大賞」以外のコンクールは、文字通り、数えきれないほど、というか数えたくないくらいラジオドラマも映像シナリオも応募し続けてきました。
今回が初めての受賞となります。大変嬉しく思っております。
――受賞作『水たまりの夜に』のあらすじを教えてください。
〇浅田さん:雨が降ると決まってできる水たまりがあり、明かりが届かない所で夜には足を踏み入れてしまう人も多い。その水たまりは、できてしまう度に、早く太陽が昇って、蒸発して消えたいと思っていた。月が出ると、自分にはメリットがないので、早く引っ込んでほしいと悪口を言う始末。ある日、水たまりは月に話しかけられる。それぞれの立場を話していくうちに、互いの違いについて知る。そして、ある女性によって、互いの存在を温め合う――という物語です。
――この作品を書こうと思ったキッカケや、この作品に込めた想いを教えてください。
〇浅田さん:本作は、4年前に私自身の習作として原稿用紙2枚で書いた「物が登場人物」という設定の作品が元になっています。
当初、書くにあたり、近所のコンビニで小さな水たまりに足を踏み入れてしまい、イラっとしたのですが、同時にイラっとした自分に嫌悪感を覚え、その感情を紐解くように書いたのを記憶しています。
また、今年、実際に熊本で大雨が降りましたが、そのニュースを見たときに、この作品を思い出し、15分の作品に仕上げてみようと思い立ちました。
――どういったところに特にこだわりましたか?
〇浅田さん:水たまりと月の関係は、擬人化に置き換えられると思います。書いているときは、その関係が、届くといいな、届きますようにと想いながら執筆しました。人間以外を登場人物にすることは、ラジオドラマだからこそ活きる表現でもあり、特にキャラクターを描くにあたり、カセがくっきり表現でき、感情をのせることができると思います。
――今回、シナリオ・センターでの学びが活きたと感じられたことがございましたら是非お聞かせください。
〇浅田さん:基本をしっかり学べることが強みだと思います。また、映像にしても、ラジオドラマにしても、脚本そのものには何が必要かを常に意識することができるようになりました。
書籍でいうと、柏田道夫先生の『シナリオの書き方―映画・TV・コミックからゲームまでの創作実践講座』(映人社)は何度も今でも繰り返し読んでいます。
また、ご存命の際にラジオドラマ脚本講座も受講した森治美先生の『ドラマ脚本の書き方』(※)は映像とラジオドラマ脚本の両方について書かれており、たいへん役に立ち、重宝しています。
※現在は絶版となり森治美・堀江史朗著『いっきに書けるラジオドラマとテレビドラマ』(言視舎)として販売中です。
――「ラジオドラマを書いてみたい」「ラジオドラマコンクールに応募したい」という方に向けて、何かメッセージをいただけますでしょうか。
〇浅田さん:ラジオドラマは、リスナーそれぞれの頭の中で映像をつむぐ楽しさ、リスナーの脳内で完結することが魅力だと思います。また、宇宙でも、過去でも未来でも、人間以外でも、舞台やキャラクター設定を制約なく描けるのも大きな特徴です。勉強法かつ楽しみとして、普段からラジオドラマを聴くことと、ラジオドラマのみならず、ラジオそのものや音声コンテンツをいろいろ聴いてみるのがおすすめです。
優秀賞『博多発新宿行き』立石えり子さん
「映像ドラマなら“見ればわかる”場面転換を、説明セリフにならないよう注意しながら丁寧に」
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――受賞のご感想をお聞かせください。なお、立石さんは第17回南のシナリオ大賞で優秀賞を受賞されておりますので今回で2度目の快挙!(※)となります。今回のご受賞は前回とはまた違った感慨があったのではないでしょうか?
〇立石さん:前回の作品は職場で疲弊している女性管理職を主人公にして「勢いで」書いてしまったようなコメディでしたが、それに比べ今回は主人公の心情や構成などをじっくり考えたつもりですので、受賞の知らせを聞いた時にはより嬉しく感じました。
※第17回南のシナリオ大賞の受賞コメントはこちらを。
▼ラジオドラマならではのセリフ
――受賞作『博多発新宿行き』のあらすじを教えてください。
〇立石さん:若い時の確執から30年も疎遠になっていた母親の葬儀の帰路。大雪のため飛行機や新幹線が止まり仕方なく博多から新宿行の夜行バスに乗った50がらみの男性が出くわすファンタジーです。ラスト近くに亡くなった母親の本心を知り、いい大人がいても立ってもいられなくなってバスを降りて雪道を関門海峡から博多に向かって歩き出すという余韻を残すストーリーにしました。
――この作品を書こうと思ったキッカケや、この作品に込めた想いを教えてください。
〇立石さん:誰でも身近な人を亡くすと、その人とは「もう二度と会えない」という当たり前のことに愕然とすることがあると思います。たとえ仲違いしていたとしても言葉だけでもきちんと交わしておけばよかったという後悔の念に改めて気づく50歳近い主人公の物語をファンタジーとして書きました。
――どういったところに特にこだわりましたか?
〇立石さん:細かいところですが、夜行バスの中という閉ざされた空間の中で出会ったばかりの年代が違う二人が交わす会話が不自然にならないように、また、バスの乗り降りや回送シーンなど映像ドラマだったら「見ればわかる」場面転換を説明セリフにならないように注意しながらも丁寧に書いたつもりです。
――今回、シナリオ・センターでの学びが活きたと感じられたことがございましたら是非お聞かせください。
〇立石さん:ゼミ仲間の前で読んだところ、「若い人が塩対応からすぐに親し気な態度に変わるのが不自然」といった、自分では気づかない細部を指摘していただけました。特にこだわりがある作品ほど他の方の意見は目から鱗ということがあると思います。
――「ラジオドラマを書いてみたい」「ラジオドラマコンクールに応募したい」という方に向けて、何かメッセージをいただけますでしょうか。
〇立石さん:今回、ありがたいことに2度目の優秀賞をいただくことができました。表彰式では様々な講評がありましたが、審査の方々はもしかすると私以上に作品を読み込んでくださっているのではないかと感じました。必ず認めてくれる人はいると思います。これからも一緒に頑張りましょう!
優秀賞『カレイの煮つけはパンに合う?』ニッコさん
「日常の何気ないやりとりの中で生まれる、相手への愛情や思いやりを表現」
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――受賞のご感想をお聞かせください。ちなみにこれまでこのようなコンクールに応募されたことはございますか?
〇ニッコさん:映像シナリオのコンクールは、何回か応募したことがありましたが、ラジオドラマに関しては、応募はもちろん、書いたのも初めてだったので、連絡を受けたときは、驚きの一言でした。
――受賞作『カレイの煮つけはパンに合う?』のあらすじを教えてください。
〇ニッコさん:子供も独立し二人暮らしになった熟年夫婦は、年金受給までの生活費と老後資金を貯めるために、アルバイトやパートに出る毎日。そこでは若い同僚に、夫は妻の、妻は夫の愚痴をついついこぼしてしまう。しかし、それに同調されると、なんだか面白くない。些細な不満はあるものの互いに大切な存在であることに気づき、老後に向けて心をひとつにしていく物語です。
――この作品を書こうと思ったキッカケや、この作品に込めた想いを教えてください。
〇ニッコさん:以前から、描きたいものの一つに夫婦のラブストーリーがありました。といっても、なにか大きな出来事があって愛を深めるというより、日常の何気ないやりとりの中で生まれる、相手への愛情や思いやりを表現してみたいと、この作品を書きました。
――どういったところに特にこだわりましたか?
〇ニッコさん:人それぞれだとは思いますが、長年連れ添った夫婦は、相手を思いやる気持ちや感謝の気持ちを、ストレートな言葉で伝えるのは気恥ずかしいのではと思いました。ですから、セリフに使う言葉は何度も推敲し、ひとつひとつ丁寧に選びました。
また、ラジオドラマを書くのが初めてだったこともあり、書き始めてすぐ、全てを音で表現する難しさに直面しました。特に効果音は、手探り状態で、今、改めて作品を読むと、「実際この音はどうやったら作れるんだろ?」「もっとシンプルに出来たんじゃないか」など、反省点ばかりです。
――今回、シナリオ・センターでの学びが活きたと感じられたことがございましたら是非お聞かせください。
〇ニッコさん:授業では、ファンタジー、サスペンス、時代劇、ホラーなど、皆さん、さまざまな作品を発表されるので、とても刺激になります。私も何か新しいことに挑戦してみたいと思っていたところに、ちょうどラジオドラマ講座のお知らせが届き、「音だけのシナリオってどうやって書くんだろう?」と興味が湧き、受講しました。受講していなかったら、賞にも応募していなかったでしょうし、今は何事にも挑戦することの大切さをかみしめています。
――「ラジオドラマを書いてみたい」「ラジオドラマコンクールに応募したい」という方に向けて、何かメッセージをいただけますでしょうか。
〇ニッコさん:一度も書いたことが無い方は、ラジオドラマ講座を受講するのが、基本を学べる一番の近道ではと思います。書き始めると映像との違いにかなり戸惑うと思いますが、とにかく最後まで仕上げ、効果音も含め他の方に伝わるかどうか、授業で発表してみるのがよいと思います。今回の受賞は大きな励みになります。ありがとうございました。
これまでにも、南のシナリオ大賞で受賞されたシナリオ・センター在籍生・出身生が沢山いらっしゃいます。
こちらも併せてご覧ください。
■第18回南のシナリオ大賞
大賞 天見ろねさん
■第17回南のシナリオ大賞
優秀賞 立石えり子さん
■第16回南のシナリオ大賞
優秀賞 谷口あゆむさん&橋本直仁さん
■第15回南のシナリオ大賞
大賞 荻安理紗さん&優秀賞 竹上雄介さん
■第14回南のシナリオ大賞
大賞 竹田行人さん
■第12回南のシナリオ大賞
優秀賞 山下蛙太郎さん
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