心を潤す
シナリオ・センター会長の小林です。台風6号がすごい勢いで日本を縦断しようとしているようです。どんな様子になるのか皆目見当がつきませんが、線状降水帯など大雨に襲われるところも出てくるようですし、風がとても強い予想なので、くれぐれも気を抜かずに様子を見てください。
明日は、台風次第ですが、基本オンライン参加を推奨します。
電車などが止まると困りますから。状況を見極めて安全にお過ごしいただければと思います。
先月、ちょっとお話ししましたが、できた時からずーっと行きたいと思っていた京都の福田美術館にようやくいくことができました。
福田美術館は、アイフルの創業者福田吉孝氏の収集した日本画を中心とした作品2000点の所蔵物を展示しています。今期は若冲展。
福田さんは「100年続く美術館」をめざし「たとえ美術に詳しくない方が見ても感動を覚える作品」を中心に集められたといいます。
私設の美術館を100年続ける覚悟で創るというのは、しかも「美術に詳しくない人にも見てもらいたい」という気持ちをお持ちというのは、本当に文化・芸術が人間にとってかけがえのない大切なものだということをよくご存じの方なのだと思いました。
「稼ぐ博物館・美術館になれ」と言いだし、稼げないところはつぶすといったお上のことを覚えておいででしょうか。
各国の首脳にオンナを全面に出して媚びを売るお上は、博物館や美術館などは全く興味がないのでしょうね。
文化・芸術は、心を潤すためのもの、人間が人間らしい心を持ち続けられるために必要不可欠なものです。それこそ国を挙げて大切にするべきこと。国は人がいてこそ成り立ち、人が動かすものですから。
その心を持っていれば、媚びへつらいなどできるはずもないと思ってしまうのは私だけでしょうか。
カレンダーのない家
昨今は人間らしく生きること、そんなことすら潰されかねない世の中になりつつあります。
そんな中、人の営み、人の生き方を丹念に描いていらっしゃる方が、2024年、オリジナルシナリオ「マイダイアリー」(ABCテレビ)で向田邦子賞を受賞された出身ライターの兵頭るりさん。
現在、話題の「時すでにおスシ?!」(TBS)、昨日から始まったNHK夜ドラ「ミッドナイトタクシー」とオリジナルシナリオ全開です。
で、すごいのは、兵頭さん、なんと昨秋小説家としてもデビューされていて、まさにポスト向田邦子さん。
デビュー作の「カレンダーのない家」(サンマーク出版)は、兵頭さんが描くシナリオと同じように、めちゃくちゃ心に沁みます。
「未来のことなんて考えても仕方ないでしょ。いまを生きるの。だから私はカレンダーはいらない」と生きてきたアナウンサーでキャスターの久寿米木怜子さんの死からこの物語は始まります。
この1行から、もはやその設定と登場人物に魅了されてしまいます。
これほど人間を描くのがうまい作家はいないのではないでしょうか。
小説新潮6月号の特集「生まれたての作家たち2026」では「フライドチキンを拾った日」を書かれており、拾ったフライドチキンが、次々と出会いを創っていくうまさに感銘を受けました。
月刊シナリオ教室(2025/2月号)のインタビューで、兵頭さんは、人物設定を詳細に考えるとおっしゃっていて、それは小説にも活かされています。
「誰もが普通であり、普通でない面を持っていると思います」
「木皿泉さんの日常の描き込み方に圧倒されて・・・。(略)それがきっかけで人の日常を観察したり、日常の中でちょっとしたドラマを感じたりすることが好きになって」
「いつも最初に、人物設定をとても細かく考えるんです。この人がどんな人で、これまでどんなことをしていて、この時どう感じたかなど」
シナリオも小説も「人間を描くこと」。人間を真摯にみつめて観察する兵藤さんが描く登場人物は、本当にいきいきと豊かです。
私の半分も生きていらっしゃらないのに、なんでこんなに深くやさしく人を見ることがおできになるんでしょう。
兵藤さんは、必ず向田邦子さんを超える脚本家で小説家になると私は信じています。
シナリオと小説、2足の草鞋を履いて、心揺さぶる物語を紡いていってほしいと願っています。













