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映画から学べること:映画『カラオケ行こ!』見どころ・感想
異質同士の組み合わせ、ぶつかりで新しさが生まれる

映画から学べること

脚本家でもあり小説家でもあるシナリオ・センターの柏田道夫講師が、公開されている最新映画や、DVDで観られる名作や話題作について、いわゆる感想レビューではなく、作劇法のポイントに焦点を当てて語ります。脚本家・演出家などクリエーター志望者だけでなく、「映画が好きで、シナリオにも興味がある」というかたも、大いに参考にしてください。映画から学べることがこんなにあるんだと実感していただけると思います。そして、普通にただ観るよりも、勉強になってかつ何倍も面白く観れますよ。

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その79--
『コンクリート・ユートピア』人物の外的要因と内的要因がドラマを際立たせる

今回取り上げるのは韓国発のディザスター映画『コンクリート・ユートピア』です。公開されたばかりなのですが、実にバッドタイミングだったのは、新年早々に能登半島地震が起こったばかりだったこと。映画の舞台となるのは、韓国ソウルの巨大マンション群が林立する地域で、世界規模の地震を伴う大災害が起きたという設定だからです。

映画で描かれる大災害は、町全体が地殻変動によって押し潰されてしまい、情報なども完全に遮断された直後で、国家としての機能も停止してしまっている状態ということですので、比べようもないのですが。能登半島震災で被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。

それとは別に、本作『コンクリート・ユートピア』は、一級のエンターテインメント作品に仕上がっていて、まさに韓国映画の勢いを感じさせられます。

倒壊したアパート群の中で、たった一棟だけ、奇跡のようにほぼ無償で、高層マンションのファングンアパートが残される。当初は近隣の避難民を受け入れていた住民たちでしたが、自らの食糧や飲料水も欠くようになり、生き残るための選択が迫られる事態へと追い込まれる……。

脚本・監督はほぼ新人と言っていいオム・テファ。スペクタクルシーンも息を飲む迫力ですが、何より社会性を織り込んだテーマ、集団や人間が秘めた恐ろしさ醜さが描かれます。サスペンス要素を巧みに取り込んで、ドラマとしても描ききっており、実に見応えがあります。

今回の「ここを見ろ」は、登場人物たちを追い込む“外的要因”と、その人物たちが秘めている“内的要因”によって、人間ドラマを際立たせる手法です。

まず、本作での外的要因は分かりますね。平穏な日常生活を送っている人物たちを極限状況に落とし込む大災害です。地震などの天災だけでなく、事故や事件に巻き込まれることなどで、いつ何時、我々も日常が失われるかもしれません。物語の人物たちも、多くはそうした事態に放り込まれることで、必死に戦わざるを得なくなります。

本作の場合は、市民全体を襲った大災害なのですが、そうした局面に集団で陥ったら、どういう事態になるか?マンションの住民たちが総じて窮地に落とされることで、力の強い者、弱い者といったヒエラルキーが生まれる。

さらに、集団を維持するための強いリーダーが望まれることになります。ファングンアパートでリーダーとして選ばれたのは、身を挺して一室の火事を防いだヨンタク(日本でもおなじみのイ・ビョンホン)。彼は寝たきりの母親と住む男ですが、押し出されるようにリーダーとなり、「住民を守る」というスローガンを掲げて、次第に独裁者のように変貌していきます。

実はこのヨンタクは、絶対に住民たちに知られてはいけない秘密を抱えています。それこそが彼の内的要因です。

さて、そうした秘密を簡単に明らかにしない手法として、ヨンタクは当初からは脇役的な配置とされています。

この物語の主人公は、ここの住民である公務員のミンソン(パク・ソジュン)と看護師のミョンファ(パク・ボヨン)夫妻です。愛し合いながら平穏に暮らしていた夫妻ですが、未曾有の災害に遭遇したことで、次第に立場や善悪の観念に誤差が生じてしまう。

で、このミンソンとミョンファの描き方は、主人公ポジションとして、いわばニュートラルです。特にミョンファは、(ある意味、観客と一番近い)人間としての良識を失わないキャラクターとなっています。対するミンソンは、妻や住民たちを守るため、さらにはヨンタクに引きずられることで、ニュートラルからマイナス側へと揺れていきます。

この夫妻のポジションと対比させるように、リーダーとして力を得ていくヨンタクですが、当初はどういう内的要因を秘めているかが明らかにされません。ヨンタクは悪なのか? 隠している秘密とは何なのか?

物語の進展とともに、ユートピアとなったファングンアパートの“平和”は、当然のように悪化する外的要因によって保たれるはずはなく、ヨンタクや夫妻だけでなく住民たちは、さらなる窮地に追い込まれていきます。

こうした極限状態としての外的要因と、そこに放り込まれた人物たちの内的要因によってドラマ性がどんどん高められる。その手法をご覧ください。

※YouTube
Klockworx VOD
『コンクリート・ユートピア』本予告

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その80-
『カラオケ行こ!』異質同士の組み合わせ、ぶつかりで新しさが生まれる

山下淳弘監督の新作『カラオケ行こ!』を取り上げます。

本コラムでは、第74回『1秒先の彼』で初めて山下監督作を取り上げましたが、これは台湾映画のリメイクで、脚本は宮藤官九郎さんでした。

今回の脚本は野木亜紀子さん。たくさんの名作ドラマの書き手ですが、映画脚本としては、第27回の『罪の声』を取り上げました。

山下監督は、初期は大阪芸大時代の仲間だった向井康介さんと組んで、出世作の『リンダ リンダ リンダ』や『松ヶ根乱射事件』『もらとりあむタマ子』などを、さらに『天然コケッコー』は渡辺あやさんが脚本というように、一流の脚本を最大限に活かして、見応えのある映画に仕上げる名手といっていい。

本作は和山やまさんの漫画原作ですが、そのおもしろさエッセンスから、見事な脚色がされ、絶妙なキャスティングによって秀逸なコメディ&青春ドラマに仕上がっています。久しぶりに、映画館で腹の底から笑わせてもらいました。

主人公は二人、中学三年生の合唱部々長・岡聡実(齋藤潤)と、聡実を「カラオケ行こ!」と誘うヤクザの若頭補佐・成田狂児(綾野剛)。狂児の組では、組長主催のカラオケ大会が開かれているのですが、そこで最下位となると、苛酷な罰ゲーム(これも笑える)が課される。たまたま狂児が合唱コンクールで歌う聡実を見て、歌のコーチを頼むことになった。

この二人の出会いがあってのまさに(『罪の声』で注目した)アバンタイトルの出し方も、ぜひ見てほしいのですが、今回の「ここを見ろ!」は、異質同士の組み合わせ、ぶつかりによって、新しいアイデア、物語はいくらでも作れるというところです。

「どういう話にすると新しいか?」。このための“発想法”は、これまでもいろいろなアプローチ法をご紹介してきました。

物語にはいくつかの基本型やパターンがあります。それでも常に新しい物語が生み出されるのですが、それは組み合わせは無数、無限だからです。

例えば、恋愛ものの典型的パターンは、新井一先生によると「ロミオとジュリエット」型です。互いに宿命を背負った二人が出会って恋に落ちる。けれども、そこにカセや障がいが立ち塞がり、恋の妨げになる。『タイタニック』のローズとジャックもこの型です。ただ、違うのは「沈む運命の豪華客船」での恋愛、という組み合わせゆえに新しい恋愛ものになった。

このように意外なもの同士が、なんらかの設定の中で組み合わされると、新しい物語ができる。その異質性ゆえにトラブルや事件が起きるし、人物たちが行こうとする目標、目的へ簡単に進むことができなくなる。

本作のヤクザという世界はかなり特殊なので、これまでもそのものの異常さを描くひとつのジャンルとして成立していました。高倉健さんや富司純子さんの任侠ものや、その定型を破った『仁義なき戦い』のような。

そこから意外性というと、例えば女子高生と組み合わせた『セーラー服と機関銃』、さらに尼僧が組長になる『二代目はクリスチャン』となると、まったく新しい誰も描いていなかったヤクザ物語にできる。『カラオケ行こ!』の意外性は、まずはヤクザとカラオケですね。加えて、合唱部のボーイソプラノ少年と、組頭補佐という組み合わせも異質です。

もちろん、こうした異質同士の組み合わせをさせるためのディテール、展開のさせ方をきちんと詰める必要があります。

通常、中学生とヤクザの組員がバディになることはなかなかないし、綾野剛扮する狂児が所属する祭林組は、どのようなしのぎで成り立っているのかは、まったく描かれていません。ただ、組内でカラオケ大会が開かれるというイベントはありそうだし、ゆえに狂児と聡実はバディとなる。

それにしても、わが国(だけじゃなく世界中ですが)に、深く浸透する一大娯楽カラオケ。物語の中で人物たちが使う場面としてはいくらでも出てきますが、カラオケそのものを題材とした作品は、あまり思い浮かびません。そこに着目したということも新しさでしょう。

それだけでなく中学生とヤクザの友情、さらにはボーイソプラノから声変わりする聡実君の、一歩大人の階段を上る青春ものとしても秀逸です。

※YouTube
KADOKAWA映画
映画『カラオケ行こ!』本予告(90秒)

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