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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

脚本家 青木江梨花さんに聞く
映画『車線変更 -キューポラを見上げて-』&ドラマ『三千円の使いかた』

脚本家 青木江梨花さん/映画『車線変更』ドラマ『三千円の使いかた』

シナリオ・センター出身ライターの青木江梨花さん(研修科修了)。

青木さんは4年間の会社員生活を経て、2007年にニッポン放送のラジオドラマ『BITTER SWEET CAFÉ』で脚本家デビュー。

これまでの主な脚本作品は、北海道発地域ドラマ『農業女子 はらぺ娘』(NHK)、『遺留捜査』『遺留捜査』『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日)、『花嫁のれん』シリーズ(東海テレビ・フジテレビ/講談社『BE・LOVE』にてコミカライズ好評連載中。コミックス第1巻発売中)、『私は“サバイバー”』(NHK-FM)、猿之助と愉快な仲間たち第一弾公演・PARCO PRODUCE朗読劇『天切り松 闇がたり~闇の花道~』など。

そして、現在公開中の映画『車線変更 -キューポラを見上げて-』(MOVIX川口での上映を皮切りに順次公開予定)と、毎週土曜日放送中のドラマ『三千円の使いかた』(東海テレビ・フジテレビ系全国ネット/全8話)の第5・6話の脚本をご担当。
<※ドラマ『三千円の使いかた』は、出身ライター 原田ひ香さんの同名小説(中公文庫)が原作で、同じく出身ライターの嶋田うれ葉さんも脚本を担当されています>

『月刊シナリオ教室』(2023年3月号)には青木さんのインタビューを掲載。
こちらのブログをご覧いただいている皆さまに向けたコメントもいただきましたので一足お先にご紹介!

映画『車線変更 -キューポラを見上げて-』とテレビドラマ『三千円の使いかた』について、また、シナリオを勉強して良かったと思うこともお話しいただきました。

脚本家になりたい方、脚本にちょっと興味がある方。
「映画の脚本ってどんなことを意識して書いているんだろう?」
「脚色(=小説などを放送・上演できるように脚本にすること)ってどんな感じでやるんだろう?」
「シナリオ・センターで勉強してどうだったんだろう?」
といった疑問に対するひとつの“回答”にもなっているかと思います。参考にしてください。

映画『車線変更 -キューポラを見上げて-』
「映画は“分かりやすさ”よりも“感じてもらうこと”を優先して表現するように」

*

©K’sスペシャルニーズエンターテイメント/映画「車線変更」上映市民の会

=あらすじ=
埼玉県川口市の鋳物工場の息子でオートレーサーの野平幸助は「賞金王」獲得を目前にして、ライバルと練習中に接触事故を起こし、障がいを負ってしまう。婚約目前だった幼なじみの恋人とも破局。障がい者となった幸助を待ち受けていたのは、健常者の時には想像もつかなかった閉鎖された環境と、憐れむような世間の目だった。絶望する彼を鋳物職人の父・徳人と母の円美は厳しくも深い愛情で支える。やがて出会った、心や身体、差別といった様々な障がいを抱える人々が絶望する幸助を変えていく。ある日、義足でロードレースに挑む松本唯と出会う。「進む道は変わっても、同じ夢を叶えられるかもしれない」。幸助はバイクから自転車に乗換え、再び自らの夢を追い始める――。

――この作品を書くことになったキッカケ

〇青木さん:今回声を掛けてくださった東京サウンド・プロダクション(TSP)さんとは、企画書をやりとりしたり、2時間ドラマの脚本協力をしたりしていたのですが、ある時「スケジュールがタイトだけどなんとか助けてほしい!」とお電話をいただきまして、今回の映画について相談をされました。

聞いてみたら本当にタイトなスケジュールだったので最初はお断りしようかと思ったのですが、プロデューサーから「若い主人公の話だから若い作家さんにお願いしたい。“青木さんは私が信頼している脚本家さんです”ということで監督にご紹介させてください」と言われ、とても嬉しかったこと。また、川口には以前住んでいて土地鑑があったこともあり、ご縁を感じてお引き受けしました。

――主人公のキャラクターについて

〇青木さん:中途半端にだけはしたくないと思い、書く前に、徹底的に主人公を追いこもうと決めました。彼が悩み苦しむ時間帯はすごく重苦しい表現になってしまいますが、そこは逃げずにちゃんと向き合おうと。

改めて完成した作品を見返すと、本当にかわいそうなほど追い込んだなと思います。

すべてを奪われた後、どう困難を乗り越えていくかは、彼と一緒に考えて行こうと思っていたので、後半は主人公と二人三脚で、一緒にもがきながら道を切り拓いていった感じです。

――特に心掛けたこと

〇青木さん:障がいや国籍差別というとてもデリケートな問題を題材の一つとして扱っているため、その辺りの表現やセリフには気を遣いました。当事者の方たちを傷つけてはいけないけれど、せっかく扱うならそれぞれの問題の核心は突きたいと思っていたので、どんな表現なら両立できるのか、すごく考えました。

あとは、説明的になりすぎないこと。テレビドラマを書いていると、どうしてもわかりやすくするために説明的なシーンを作ってしまうので、映画は「分かりやすさ」よりも「感じてもらうこと」を優先して表現するよう心掛けました。

――今回、「これは勉強になった!」と感じたこと

〇青木さん:障がいのある方の生の声です。

「骨肉腫で足を切断した時はもう生きているのも嫌だった」というセリフを書いていたのですが、今回の映画の出演者の一人であり、片足が義足でパラリンピックにも出場経験のある村上清加さんから、「病気で足を切断するのは生きるため。だから“生きているのが嫌だ”という心境にはならないと思う」とご指摘を受けました。

言われてみれば至極もっともなのですが、そこまで想いが至らなかったことに、自分の想像力の限界を突きつけられました。

ありきたりな表現になってしまいますが、取材の大切さを痛感させられた瞬間でした。

©K’sスペシャルニーズエンターテイメント/映画「車線変更」上映市民の会

テレビドラマ『三千円の使い方』
「原作のよさを最大限生かしつつも、“青木印”の作品にもなるように」

=あらすじ=
「人はね、三千円の使いかたで人生が決まるの」。これは、御厨美帆が子どもの頃、祖母・琴子から言われた言葉。24歳になり、憧れの一人暮らしをはじめた美帆は、そんなことなど忘れ、人生を謳歌していた。IT企業に勤め、同世代の中では給料もよく、自慢の彼氏と幸せに暮らす毎日。しかし、順風満帆に見えた美帆の人生に、自分自身の生活を見直す転機が訪れる。さらに美穂の祖母・琴子、母・智子、姉・真帆など御厨家の面々にも、自身の人生についてそれぞれ深く考える出来事が起こる――。

※YouTube
東海テレビ 公式チャンネル
土ドラ『三千円の使いかた』第1話 1月7日(土)23時40分放送 ティザー

――脚色する際、特に意識したこと

〇青木さん:原作者の原田ひ香さんとは長い付き合いの友人なので、ひ香さんの影はずっと脳裏にチラついていました。笑

ひ香さんの原作を脚色する、というのは我々の長年の夢でもあったので、お互いにとって幸せな作品にしたいという想いが今回は特に強かったです。

あとは今回に限らず、脚色する際に常に思っているのですが、せっかく私が書くのだから、原作のよさを最大限生かしつつも、ちゃんと「青木印」の作品にしようとは思っていました。

セリフや小ネタなど色々遊ばせていただきましたので、その辺りも楽しんでもらえたら嬉しいです。

――「ここは特に注目してほしい!」というところ

〇青木さん:第6話は主人公のお父さんにスポットを当てたオリジナル回なのですが、利重剛さん演じるお父さんのキャラクターが私の亡き父に重なる部分が多々あり、書きながら溢れた様々な想いをそのままセリフに込めさせていただきました。

ホン打ちでも「青木さんの想いがものすごく伝わってくるホンですね」と監督に言っていただけたので、ぜひティッシュを箱で用意して、テレビの前にスタンバっていただきたいです!

それから、誰かのセリフのどこかに、さりげなく ひ香さんの“他の書名”を忍び込ませてありますので、原田ひ香ファンの方はぜひ探してみてください。

「人生は一瞬で変わるし、変えられるだけの力をシナリオは持っていると思います」

――シナリオ・センターで学んだことで、いま役に立っていること

〇青木さん:シナリオ・センターの授業は技術的なことを実によく網羅してくれているので、デビュー当初は「こういう時ってどうするんだっけ?」と疑問に思ったら、迷わず授業のノートを見返していました。

デビュー後はシナリオ表現についてなど誰も教えてくれないので、授業のノートは私のバイブルとして今も大切に保管してあります。

在籍中は本科でも研修科でも毎週課題を提出するようにしていたので、自分の書くペースを何となくつかむことができましたし、〆切に対する意識も高まったと思います。

――「シナリオを勉強して良かったな」と思うとき

〇青木さん:脚本家というのは、失敗も遠回りも、自分が歩んできた道のりすべてを糧にできる職業です。

これまでの経験が作品に活かせたときはいつも、「人生に無駄なんて何ひとつなかった」と思わせてくれますし、そう思えるのはシナリオを勉強したお陰だと思っています。

デビューした瞬間、今までテレビの向こう側の人だと思っていた有名作家のみなさんが「仲間」として迎えてくれた時もすごく嬉しく、シナリオを勉強してよかったと思いました。

人生は一瞬で変わるし、変えられるだけの力をシナリオは持っていると思います。

※その他、シナリオ・センター出身の脚本家・監督・小説家のコメントはこちらのページをご覧ください。
脚本や小説を書く とは/シナリオの技術を活かして

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