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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

柏田道夫おすすめ 映画『 ブックスマート 』を楽しむ 見どころ

映画から学べること

脚本家でもあり小説家でもあるシナリオ・センターの柏田道夫講師が、公開されている最新映画を中心に、DVDで観られる名作や話題作について、いわゆる感想レビューではなく、作劇法のポイントに焦点を当てて語ります。脚本家・演出家などクリエーター志望者は大いに参考にしてください。普通にただ観るよりも、勉強になってかつ何倍も面白く観れますよ。

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その25-
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』青春物の切り取り方

現在劇場拡大公開されている青春コメディの快作『ブックスマート』を取りあげます。最高に楽しくて、笑ってじんわりと感動させてくれます。

『Booksmart』は「優等生」といった用語ですが、「頭でっかち」「世間知らず」的な意味もあるとか。監督は女優として活躍していたオリヴィア・ワイルド。見事な初監督作です!

さて、このコラムではこれまであまりいわゆる青春ものは、取り扱っていなかったようです。

そもそも「青春物」の定義は? というと、要するにティーンの一時期の生き方とか悩み、恋愛、友情といった姿を切り取って描くもの。ティーンじゃなくて、二十歳過ぎくらいの若者の場合もあるけど、でもまあやはり歳を重ねるにつれ、恋愛がメインだといわゆる「恋愛物」になるし、生き方とかだと「ヒューマンドラマ」になるでしょう。

で、ティーンといっても12、3歳くらいまでだと「少年(少女)物」になる。『スタンド・バイ・ミー』とかは「青春」手前という感じです。

するとやっぱりメインは高校生くらいの年代でしょうか。そうした青春物の中でも、卒業前夜の時間を描いたアメリカ映画の名作があります。

私の世代は何といっても、ジョージ・ルーカスの名前が刻まれた『アメリカン・グラフィティ』(73)。アメリカのとある町の高校生たちが過ごす、旅立ち前の一夜を切り取った物語。ベトナム戦争前の彼らの青春の輝き。この他にも『ブレックファスト・クラブ』や『初体験/リッチモンド・ハイ』といった佳作もこのシチュエーションでした。

さて『ブックスマート』の主人公は、優等生で生徒会長だったモリー(ビーニー・フェルドスタイン)と、親友エイミー(ケイトリン・デヴァー)の女の子二人。彼女たちは、真面目にハイスクール時代を過ごし、恋や遊びにうつつを抜かしていた同級生たちをバカにしていた。

ところが、彼らもしっかりと有名大学への進学とかを決めていたのを知って大ショック。ならば私たちもせめて卒業パーティくらい参加しなくちゃ、ということで会場を探して右往左往、ようやく辿り着いたものの……

このモリーとエイミーの珍騒動(と交わされるスラング、下ネタ炸裂セリフも)がもう最高。エイミーはレズビアンであることをカミングアウトしているし、それも当たり前という周囲もいかにも今のアメリカです。

彼女たちが距離をとっていた同級生たちと、ナマにぶつかり、触れ合うことで、いろんな顔が見えてくる。たった一夜なのに、彼女たちは怒ったり泣いたりして、めまぐるしく成長します。

そう、青春物は大人への階段を一歩登ることで、失う時間や思い出がひときわ輝く。そうした“一瞬の輝き”を描けるかが評価を決定します。

今回の「ここを観ろ!」は、まさにこの“切り取り方”です。

皆さんもそうでしょうが、それなりに長い人生の中の「青春時代」って、ほんのわずかな一時期だと、“後からしみじみ思うもの”じゃないでしょうか。

すると「青春」を描く場合は、わずかな一時期の、さらにどこをどう切り取るか?がポイントになるはず。

青春時代に主人公(たち)が、熱中していた何かにクローズアップする、というアプローチもあるでしょう。あるいは『アメグラ』や本作のように、たった一夜とか一日を切り取ると、まさに特別な青春の日を描くことができます。(あ、ついでに、回想シーンはいっさい出てきません。不思議な幻覚シーンはありますが)

その一瞬の輝きだからこそ、青春の時期は思い切り弾けた方がいい、バカやっていい。今の時代性もあるけど、日本の若者たちは総じておとなしすぎる。モリーやエイミーたちのように、悩みながらもハチャメチャやってほしい。

彼らのイキイキした姿に大笑いしながら、こういう弾けて楽しい日本の青春映画を見たいよ、って思いました。きっと今が狙い目ですよ。誰か青春の一瞬を巧みに切り取って!

この映画は楽しいだけじゃなく、ヒントがいっぱい詰まっている傑作コメディです。

※YouTube
シネマトゥデイ
映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』日本版予告編

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その26-
『mid90s ミッドナインティーズ』キッズものはノスタルジーと痛さです

前回ティーンの女の子二人の青春を活写した『ブックスマート』を取りあげましたが、ちょうど同時期に少年の成長もの『mid90s ミッドナインティーズ』が公開されているではありませんか!

これがまた、みずみずしくてせつなくて、たまらない映画でした。「少年(キッズ)物」はこうでなくちゃ、とにんまりしてしまいました。

この両作にはもうひとつ共通点があります。『ブックスマート』のオリヴィア・ワイルド監督は女優さんでしたが、『mid90s』も俳優で実績のあったジョナ・ヒルの初監督作で、自ら脚本も手がけています。

ヒル監督自身の10代の頃の思い出、少年から青年期に至る多感な時代をノスタルジックにかつ、みずみずしさと痛みを反映させています。

さて、前回「青春物」の定義についてこう述べました。
“ティーンが主人公だと、12、3歳くらいまでだと「少年(少女)物」になる。『スタンド・バイ・ミー』とかは「青春」手前という感じです。”

で、この『mid90s』の主人公のスティーヴィーはまさに13歳!身体も小さくて、でっかい兄にボコボコに殴られたりして(このトップシーンはちょっと固まります)、早く大人になりたいと思っている。

そのスティーヴィーが出会ったのがスケボーで、ロスのスラム街にあるボードショップにたむろする少年たちの仲間になっていく。

演じているサニー・スリッチ君は、見るからに繊細そうでいたいけな美少年で、観客はたちまち彼の虜になります。要するに感情移入してしまうのですが、彼のシングルマザーの母ダフニーみたいな気持ちになるんですね。

というのは、スケボー仲間の連中ときたら、いわば不良そのもの。言葉は汚いし、タバコはやるしクスリやら酒も飲むわで、彼らの悪に染まってしまうスティーヴィーが、どんどん心配になってくる。

実際、痛い。スケボーの練習で転びまくるだけじゃなく、悪い遊びをしたり、本当に大怪我をしたり。さらには……

あまりネタバレになるので書きませんが、「キッズ(少年)物」と「青春物」のひとつの境界線として、“性”の描き方があるかもしれません。

『スタンド・バイ・ミー』がたまらないのは、本当にピュアな、もう戻らない少年期のひと夏を切り取っているから。思春期は性に芽生える時期でもあるのですが、この映画ではそうした面はあえて描かれていない。

例えば(私は大好きな映画ですが)『おもいでの夏』とかは、ロストバージン(初体験)もので、これは少年が青年への階段を登る青春映画でしょう。

さて、『mid90s』は? これはぜひ映画を観て確認して下さい。

それにしてもタイトルとなっている“90年代の半ば”。確かにもう25年も前になるのですが、ジョナ・ヒル監督にすれば、ノスタルジーとして思い出される時代になっているとは。それはそれで感無量でした。

とはいえ、「少年(キッズ)物」もしくは「青春物」は、今の時代を生きる彼らにスポットを当てるという方法もあるのですが、もうひとつ、このノスタルジックとして描くやり方もとても効果的です。

上記の『スタンド・バイ・ミー』や『おもいでの夏』も、語り手が自らの少年期、青年期を思い出すという手法だったように。

もう戻らない輝きだからこそ、ノスタルジー色が観客の心にも響く。

それから、そうした回顧感と同時に、その時期の少年少女は、自らの境遇の中でもがいて、悩んで苦しんで、痛くて、悶々としていたりします。

思い出すだに赤面してしまいそうですが、誰もがこうしたもどかしさや痛さで過ごしていたはず。こうした痛みなりをきちんと描いて、観客にダイレクトに伝えられるか、が決め手になるのです。ファーストシーンからずっとずっと、スティーヴィー君が抱える痛さ、もどかしさがたまりません。

それだけでもなくて、例えば仲間のレイ君と、ロスの夕暮れの街をスケボーで走るシーンの美しさ。

そしてラストシーンはもう凝縮された青春の輝きで、大いに泣けます。ぜひドキドキしながら浸って下さい。

※YouTube
シネマトゥデイ
『ミッドサマー』のスタジオA24が贈る青春映画『mid90s ミッドナインティーズ』予告編

※前回の柏田道夫おすすめ映画の記事はこちらからご覧ください。
■その23・24
柏田道夫おすすめ 映画『透明人間』を楽しむ 見どころ

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