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どんな脚本が賞 をとるのか/第19回テレビ朝日新人シナリオ大賞にみる

脚本家志望のかたは脚本コンクールの結果が発表されると、「なんでこの作品が受賞したの?」と受賞理由が気になるのではないでしょうか?受賞理由は選考委員のコメントから読み取ることができます。同時に、選考委員がどんなところを見ているのか、ということも分かります。

そこで今回は、第19回テレビ朝日新人シナリオ大賞の受賞作に関する選考委員のコメントをご紹介。

第19回テレビ朝日新人シナリオ大賞の応募総数は1,236篇。
第1次選考では日本脚本家連盟に所属する脚本家の方々によって行われ200篇が通過。第2次選考以降はテレビ朝日のプロデューサーやディレクターなどで構成された『社内選考委員会』によって行われ、第2次選考で36篇、第3次選考で9篇が通過。

最終選考では、選考委員で脚本家の井上由美子さん、岡田惠和さん(シナリオ・センター出身ライター)、両沢和幸さんの3氏によって行われ大賞1作品、優秀賞2作品が決定。授賞式当日に各賞が発表されました。

大賞はテレビドラマ部門『狂いゆく美』の宮原久実さん(元本科)、優秀賞は配信ドラマ部門『腸弱男の恋』の栄弥生さん(大阪校66期生)と、配信ドラマ部門『両手で、そっと』の山崎陽平さん。

授賞式では最終選考を行った選考委員の井上さん・岡田さん・山崎さんが受賞3作品について講評。

その講評では大賞受賞作品に関して「今までの受賞作品と毛色が違った」「信じて愛して書いている感じがとても面白かった」「自分はこういうものを書きたい!という想いが見える作品だった」といったコメントがあり、どんなところが高く評価されたのかが分かります。

また、優秀賞作品に関する「構成がすごく良くできている。少し直せばこのまま放送してもいいのではと思うくらいの完成度」「セリフ(会話)がうまく読み物としては面白いが、映像化されたときにその面白さがどの程度残るか」というコメントからは選考委員が応募作品のどんなところに着目しているかが分かります。

次回の第20回テレビ朝日新人シナリオ大賞やその他の脚本コンクールに応募される際、これからご紹介する選考委員お三方のコメントを是非参考にしてみてください。

その前にまず、大賞を受賞された元本科の宮原さんと、優秀所鵜を受賞された大阪校66期生の栄さんのコメントからご紹介。

宮原久実さんコメント(大賞受賞:テレビドラマ部門『狂いゆく美』)

〇宮原さん: 選考委員の先生方のドラマが好きで、特に『ビーチボーイズ』『きらきらひかる』『お金がない!』は何度も観ていました。そんな先生方やテレビ朝日の皆さまに、自分の書いたものを読んでいただいたことがすごく嬉しいです。

今まで長年書いてきて報われたことが一度もなくて、書き続けることをすごく悩んで、やめようと思っていたところにこの賞をいただきました。今後この世界は報われることのほうが少ないと思うのですが、報われなくても書き続けていきたいなと思いました。沢山勉強して沢山書いていきたいです。

(記者からの「【初恋】【最後の恋】【初恋&最後の恋】のというテーマに取り組むうえで狙ったことはありますか」という問いに対して)

〇宮原さん:元々、人の一生を書きたかったというか、人の最期を書きたいと思っていました。自分が書きたかったものとテーマがちょうどマッチしたので、狙ったということはなかったです。

自分が多感な時期・中学生の頃に身近な人を亡くしたことがあって。ずっと誰にも言えなかったんですけど、人が死んでいくことについて考えていて、消化しきれない部分がずっと自分の中にありました。それを脚本で書くことでどんどん消化できているような気がして、そういうことを書きたいと思いました。

例えば、病気で亡くなったかたは周りから見ると「可哀想だね」と思われてしまうかもしれませんが、可哀想だった部分と必ず、幸せだった部分もあると思います。そういった、周りには可哀想に見えても、本人は幸せだったという人生を書きたいと思いました。

栄 弥生さんコメント(優秀賞受賞:配信ドラマ部門『腸弱男の恋』)

〇栄さん:今日は実は、大賞をもらうつもりでコメントを考えてきましたので、なんと言えばいいのか分からないのですが…。今回かなり大賞が欲しかったので2作品応募しております。もう1作品のほうに自信があり、そちらで大賞を狙っていたんですけど残念ながら2次で落選してしまいまして、まったく期待してなかったこの作品が健闘し、この場所に立つことができて本当に嬉しいです。

選考委員による講評①井上由美子さん
「『狂いゆく美』は今までの受賞作と少し毛色の違った作品」

※第19回テレビ朝日新人シナリオ大賞は、前回と異なった部分が2つ。1つ目は応募作品のテーマを設けたこと。応募者は【初恋】【最後の恋】【初恋&最後の恋】のいずれかを選択しました。2つ目は映画部門がなくなったこと。<テレビドラマ部門><オリジナル配信ドラマ部門>の計2部門での募集となりました。

〇井上さん: 接戦でした、今年は。なので、みんな同じスタートラインだと思いますので頑張ってください。

今年の選考について言いますと、例年より接戦で何度か投票を繰り返したりしました。私は実は、山崎さんの『両手で、そっと』が一番好きで、最初おしていたんですが、選考委員の皆さんそれぞれ好きな作品があって。

宮原さんの『狂いゆく美』はどういう選考になっても「3作の中に残したい」という作品でした。それで討議を重ねるうちにこの作品の凄さがだんだんクローズアップされてきて、「大賞にふさわしいんじゃないか」ということになりました。今までの受賞作と少し毛色の違った作品でした。今後のご活躍をとても期待しています。

今年の応募作はバラエティに富んだ作品が集まりました。その理由、私が考えるには、【初恋】【最後の恋】【初恋&最後の恋】とお題を与えたからではないかと思っています。「自由に書いてくれ」と言うと、なんとなく今の流行りのものを書いてしまって似てきちゃうんですけど、例えば高校生が制服があったほうが頑張って個性を表現するのと同じように、何かお題があると「このお題の中で何が表現できるか」ということを考えてチャレンジしてくれたんじゃないかなと思っています。

あと、このお題によって、例えば「ラブストーリーなんか書きたくないよ」と思っている人がラブストーリーの面白さに気付いてくれればいいなという願いもありました。

私自身もシナリオの勉強をしている頃、ホームドラマが書きたくて、自分の作品の中で人が死ぬ話は書きたくないと思っていたんですけど、いま『緊急取調室』で殺人事件の捜査の話を書いています(笑)。そういう意味でも、応募者のかたが色々なジャンルに挑戦する楽しさを味わっていただければ。毎年こういう工夫を重ねて、テレビ朝日さんと一緒に新しい才能に会えればと思います。

選考委員による講評②岡田惠和さん
「信じて愛して書いている感じがとても面白かった」

〇岡田さん:脚本を書いているものとして、人の脚本も審査をするということは正直申しまして、自分の発言が全部ブーメランになって自分に戻ってくるという感じがあって、けっこう身を切られる思いをすることがあります。

今年はテレビ朝日さんで連ドラの脚本(『セミオトコ』)を書かせていただきます。そのドラマのプロデューサーがこのシナリオ大賞も担当されていて…。「岡田さん、たしかあのときああいうふうに言いましたよね」みたいなことがあると、なかなか重いブーメランを受けることになりますので(笑)、そういったことを考えながらの選考でありました。

大賞の宮原さんの作品は、わりとこのシナリオコンクールにこないタイプのもので、ちょっと褒めすぎかもしれないですけど、谷崎潤一郎的な、昭和40年代に女優の若尾文子さん主演で映画になるようなタイプの作品で、ちょっと毛色が変わっていて、しかも「作家が狙って」というよりは、信じて愛して書いている感じがとても面白かったです。ですから、選考を重ねても残る作品でした。

栄さんの『腸弱男の恋』は、よく考えられていて、構成がすごくしっかりしていていました。“腸弱”ということで映像的にどうするつもりなのかなというのはあったんですけど、作品としてとてもいい出来だった思います。ポテンシャルの高い作家さん、というふうに思っております。

今回の傾向としてはすごく老人の話が多かったです。わりと優しい話が多くて、そういった作品の中で、山崎くんの『両手で、そっと』がぶっちぎって通ったという風に思います。セリフが生きていて、なんかこう読んでいて登場人物のことが好きになれる作品でした。

そんな、3人バラバラで、今回はすごくいい選考で楽しかったし、自分も勉強になりました。一緒にこれから頑張っていきましょう。

選考委員による講評③両沢和幸さん
「自分はこういうものを書きたいという想いが見える作品。それはものを書くときに一番重要なこと」

〇両沢さん:例年、応募される作品というのは、その前の年ぐらいに話題になったドラマにちょっと影響を受けているものが多いんですけども、大賞を受賞された『狂いゆく美』は陶芸のお話なんですけどね、耽美的な作品で。テレビというよりもなんとなく映画になりそうな題材。

なぜそれを書こうと思ったんだろうと聞いてみたい感じがしました。要するに、「今こういうドラマが受けるんじゃないか」ということよりは、「自分はこういうのを書きたい!」という想いが見える作品で、それはものを書くときに一番重要なこと。テクニカルにうまいというよりもそれがある人が残っていくんだと改めて思いました。

大賞が『狂いゆく美』になったのは、他の作品にはない独自の世界観というか美学というものを感じたのがすごく大きいんじゃないかと思います。

『腸弱男の恋』は構成がすごくよくできていて、個人的には一番点数を高くつけました。書きなれている感じもありますし、登場人物のキャラクターの描き分けもうまくできていて、ちょっと整理すればこのまま放送してもいいんじゃないかというぐらいの完成度ではあったと思います。

『両手で、そっと』は、会話がすごくうまく書けていて、会話のテンポも非常に良くて、テクニカルにすごいうまいなと思いました。ただ、こういう作品に関して僕がいつも気になるのは、“読み物”としてはすごく面白く読めるけど、実際に映像化されたとき、会話の面白さはどの程度作品に残るんだろうか、ということ。

実際自分も、すごくうまく書けたつもりでいたんだけど映像化されたらたいして面白くなかった、という経験が多々あります。完成されたものを観て、そこから学ぶことも沢山あるので、いまは残念ながら作品が映像化されることがなかなかないのですが、自分が書いたものが映像化される機会が皆さんにあればいいなと思います。

僕らが書き始めた頃に比べるとドラマは特に、作り方も視聴者のありようも変わり、また、新しいメディアも出てきて、コンプライアンスみたいな問題も含めて、なかなか書きづらい部分が沢山でてきています。

ですが、そういう時代に生まれ人はそれが当たり前だと思って育っていくはずですから、僕らが想像もしないような新しい切り口の“新しいドラマ”が今後生まれてくるんじゃないかと僕はひそかに期待をしています。そういう“才能”が、この3人の中から出てくることを期待しております。頑張ってください。

※前回もシナリオ・センターの生徒さんが受賞されています!記事はこちらから。
■第18回テレビ朝日新人シナリオ大賞にみる①「脚本コンクールで賞をとるには」

■第18回テレビ朝日新人シナリオ大賞からみる②「映画・テレビドラマ・配信ドラマの部門について」

■第18回テレビ朝日新人シナリオ大賞・映画部門・優秀賞受賞の川瀬太朗さん/コツコツ書き続ける習慣が受賞に

※いろいろな脚本コンクールがありますので皆さんぜひ応募してみてください!
■「主なシナリオ公募コンクール・脚本賞一覧」

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