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作家になるために 小説をどう読むか ?(ポイントは7つ)

「シナリオのテクニック・手法を身につけると小説だって書ける!」というおいしい話を、脚本家・作家であるシナリオ・センター講師柏田道夫の『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
柏田講師は『月刊シナリオ教室』の中の連載企画「シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!」で、巧みな「比喩」表現の例として、向田邦子さんの短編集『思い出トランプ』(新潮文庫)から、直木賞受賞作の一作「かわうそ」の一文を引用しています。また、作家になるための必須手法として、「優れた書き手の作品、文章から学ぶ(盗む)」べきだと度々述べています。そこで今回は、向田邦子さんの「かわうそ」を教材に、小説を読むときのポイントを7つお伝えします。このポイントを踏まえて名作から“技”を学んでいきましょう。

向田邦子さん作「かわうそ」を教材としてみる

向田邦子の短編集『思い出トランプ』(新潮文庫)から、直木賞受賞作の一作「かわうそ」を教材として、どのように学ぶ(盗む)か?を具体的に考察してみます。

これはすなわち、文章表現だけでなく、小説の構造や展開の仕方、また、どのように作家が「物語を発想して、書き上げていくか?」ということも見えてくるはずです。

未読の方はもちろん、既読の方も下記のポイントを踏まえながらもう一度読んでみてください。

小説を読む際のポイントは7つ

むろん向田さんは故人ですので、実際にどうだったのかは分かりません。あくまでも私なりの考察です。

まず、小説を読む際には、一読者として読書を楽しむ、作家が書いた世界に入り込むという前提は大切に。

それはそれとして、実作者たらんとする皆さんかと思いますので、小説を読む際には次のようなポイントを踏まえた上で臨むようにしましょう。

1.  タイトルと作者
2. ジャンル
3. おおよその枚数(長編・中編・短編・ショートショートなど)
4. 章立て(構成)
5. 人称(視点者・主人公など人物)
6. テーマ(作者の狙い・売り)
7. 文章表現・セリフなど

改めて説明の必要はないでしょう。例えばミステリーならば、そういう心構えで、「どうドキドキさせてくれるか?」とか「どんな謎で展開するんだろう?」といった期待感を持って読者はページを繰るでしょう。

さらに400字詰め原稿用紙500枚の長編なのか、30枚の短編かで、書き手の発想や手法が当然違います。おおよその枚数を念頭に置いた上で、次の章立てとも合わせて、どう作家が作っているかを探る。

さて、向田邦子の「かわうそ」ですが、新潮文庫の組み版が1P=40字×17行=約680字(余白も文字数としてカウント)×14Pですので、原稿用紙に換算すると、22~23枚くらいの短編です。

ジャンルは現代もののいわゆるヒューマンドラマでしょうか(ホラー小説ともいえる)。三人称で主人公(視点者)は宅次。

書き出しが、“指先から煙草が落ちたのは、月曜の夕方だった。”で、視点者の宅次が、妻厚子とのやりとりを経ながら、異変を感じて脳卒中の発作に見舞われる、という部分が【起承転結】の【起】になります。

“停年にはまだ三年あった。”という文章や、“九つ年下の厚子は”といった表現で、人物たちのおおよその年齢が分かります。夫婦には子どもがなく、持ち家の庭にマンションを建てる建てないかが問題になっているなど。

短編なので章立てはされていませんが、【起】は2P半の1行空きまでで約3枚。6つのブロック(ハコ)で構成されています。

【承】から、宅次が病後、軽い麻痺が残る身体になり、厚子の介助で生活を送る様が描写されます。その過程で宅次は、性格の明るい厚子を改めて観察するようになり、次第に見えてくる「女房の本質」に気づいていく。で、表題となっている「かわうそ」が登場します。

晩年を迎えたごく平凡な老夫婦がいて、そこに垣間見える真実、これをわずか20枚強という枚数で切り取ってみせる短編の手法。向田さんが、このテーマ性が先にあって書いたのか、あるいは「かわうそ」というモチーフ的なものを見つけたことから、これを描こうと思ったのかは分かりません。

しかし、「かわうそ」という比喩的なものがあることで、この小説が独特のオリジナリティ、向田邦子だけの小説となっていることを感じてほしいのです。

出典:柏田道夫 著『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(月刊シナリオ教室2017年7月号)より
次回は7月6日に更新予定です

※シナリオ・センターの書籍についてはこちらからご覧ください。 

※要ブックマーク!これまでの“おさらい”はこちらで↓
小説家・脚本家 柏田道夫の「シナリオ技法で小説を書こう」ブログ記事一覧はこちらからご覧ください。比喩表現のほか、小説の人称や視点や描写などについても学んでいきましょう。

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