小学校の授業「総合的な学習の時間」(以下 総合)では、「自己理解」と「他者理解」を探求することが重要なテーマの1つとされています。自分らしさとは何かを考え、他者との関わり方を考えることはとても大切ですよね。
これを学ぶために、ぴったりの方法があります。それがシナリオ作りです。
実は、このことを言ってくださったのは、今回ご紹介する私立聖ヨゼフ学園小学校の先生方でした。
聖ヨゼフ学園小学校は、国際バカロレア認定校として「探究の授業」に10年以上取り組み、「自己表現領域の探究ユニット」では 5年生までの間に様々な表現方法を探究。6年生ではその総まとめとして、クラス演劇に取り組んでいるそうです。
先生方より、<「自己を表現することで他者とつながる」というのが、探究ユニットのテーマであり、クラス劇もしくは動画を作ろうと思っております。以前より子どもたちとともにシナリオの書き方を勉強しているのですが、その体験を通して、シナリオを書くことは、自分らしさと他者理解について学ぶ最適な方法だと実感しております。もっと詳しく学ぶために出前授業「キッズシナリオ」を実施していただけないでしょうか>とお声掛けいただきました。
そこで、今回講師を担当するシナリオ・センターの新井が皆さんのもとに!
その模様を広報の齋藤がご紹介。
=今回の概要==============
・サービス名:「登場人物のキャラクターを設定してシナリオを作ろう!」
・目的:自分らしさと他者理解の探求
・対象:私立聖ヨゼフ学園小学校さま(6年生)
・時間:約90分
▼GIGAスクール対応プログラム「キッズシナリオ」詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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「自己理解と他者理解の探求のために、総合の授業でどんなことができるだろう?」とお悩みの先生方がいらっしゃいましたら、是非参考にしてください。
エアーキャッチボールを通して自分と相手のことを考える
シナリオ・センターでは、シナリオを作るときは最初に主人公などの登場人物のキャラクター(性格)を設定しよう、と紹介しています。
「主人公はこういう性格」と設定しておくと「こういうシチュエーションのとき、その主人公はどんなことを言うだろう?」「どんな行動を起こすだろう?」と発想しやすくなります。
そして、「どんなキャラクターにするか」「そのキャラクターならどんなことを言ったり、どんな行動を起こすのか」を考えることは、自己理解と他者理解を探求することにも大いに役立ちます。
「それはなぜか」を“体感”していただくために、新井は「エアーキャッチボール」をご紹介。
6年A組とB組の皆さんに、それぞれ一列に並んでもらい、向き合ってペアを作ります。
〇新井:まず、A組が「ボールを投げる側」で、B組が「ボールを受ける側」とします。
投げる側は、「気が強いキャラクター」という設定。
気が強い人はどう投げるか、考えてみてね。
で、その気が強いキャラクターが投げたボールを受ける側は、
どんなキャラクターで、どう受け止めるか、を考えてみてね。
じゃあやってみましょう。
〇新井:おおすごい!
「投げる側」は気が強いキャラクターだから、すごい勢いで振りかぶっていた子が多かったね。
で、「受ける側」の中には、「わっ!びっくりしたなぁもう」みたいなね、ちょっとおどけた感じでボールをキャッチする仕草をしていた子もいましたね。この人は明るいキャラクターなんだな、ということが動作や表情で伝わってきました!
――その後、「投げる側」と「受ける側」を交互に練習。
投げる側は「真面目なキャラクター」や「気が弱いキャラクター」として、
受ける側はどんなキャラクターでどう受け止めるかを考えてもらいました。
練習後、投げる側と受ける側にある条件をプラスします。
〇新井: プラスするのは、投げる側と受ける側の「関係性」と、投げる側の今の「感情」。
早速やってみましょう。
A組が投げる側で、B組が受ける側。
この2人は「仲良し」です。投げる側は真面目なキャラクター。
で、今ちょっと「機嫌が悪い」。さて、投げる側はどう投げますか?
そして、受ける側はどんなキャラクターで、どう受け止めるか考えてみてください。
――皆さんの様子を見ていると、こんなペアが。
投げる側の子は、真面目なキャラクターなので正確に手を上げ、投げるフォームも丁寧に、でも、機嫌が悪いのでちょっと強めに振りかぶる仕草をしています。
対して、受ける側の子は、「虫の居所が悪いのかな、しょうがないね」という表情で、両手を広げてボールを受け止める仕草をしていて、優しいキャラクターなんだなということが伝わってきます。
「このペア、すごい!」と驚いたのが、この後。
受ける側の子が投げる側の子に向かって、「グッド!」という感じで、親指を立てたハンドサイン「サムズアップ」をしたのです。そして、それを見た投げる側の子は、ちょっとはにかみながら、同じようにサインを返していました。
「あ、この2人は仲良しなんだな」ということが分かる瞬間でした。新井はそこまで指示していなかったのですが、この2人は自然とその動作をしていました。ビックリしました。
――その後も「投げる側」と「受ける側」を交換して、いろいろな「関係性」と「感情」でエアーキャッチボールをしてもらいました。
シナリオを書くことは、自分と相手についてを考えること
エアーキャッチボール終了後、新井は皆さんにこう解説しました。
〇新井:さきほどボールを投げてもらいましたよね。
こんなふうに何か行動を起こすことを、シナリオを書くときは「アクション」と呼びます。
で、さきほどボールを受け止めてもらったように、相手のアクションに反応することを「リアクション」と呼びます。
アクションとリアクションは、「人物のキャラクター」と「関係性」、そのときの「感情」によって変わります。
だから、まずは登場人物のキャラクターを設定する、ということがシナリオを作るときは大切になります。
キャラクターを設定したら、登場人物たちの関係性や、そのシーンではどんな感情なのかを考えてみてください。
すると生徒さんからこんな質問が。
〇生徒さん:関係性って「立場」っていうことでもありますか?
〇新井:おお!そうだね。「親と子」「先生と生徒」「先輩と後輩」みたいに考えてみてもいいと思います!
それから、「人物のキャラクター」「関係性」「感情」は目に見えないものだよね。映像には映りません。
シナリオは映像にするための設計図。映像に映るものを書きます。だから、「人物のキャラクター」「関係性」「感情」をシナリオで表現するときは、それを表すアクションやリアクションを書きます。
エアーキャッチボールのとき、投げる側が真面目なキャラクターと僕が言ったら、正確に手を上げて、投げるフォームも丁寧にしてくれた子がいましたよね?その一連の動作をシナリオの「ト書(動作・仕草・情景を表す部分)」に書けばいいんです。
――生徒の皆さん、うんうんと大きく頷いてくれています。
〇新井:さらに、皆さんに伝えたいことがあります。
さっき「真面目なキャラクター」という設定で投げたとき、「真面目な人ってこんな感じかな?」「自分は真面目な性格なのかな?」って考えなかった?
それから、「相手は真面目なキャラクターだけど機嫌が悪い」という設定で受け止めたとき、「この人はどう受け止めてほしいのかな?」「自分ならどう受け止めてほしいかな?」って考えなかった?
どちらも、「こういう性格の人の場合」と「自分の場合」を考えたよね?
だからシナリオを書くということは、相手のことも自分のことも考える、ということなんですよ。
――皆さん、また大きく頷いてくれています。
〇新井:シナリオ・センターの創設者である新井一は「ドラマとは人間を描くこと」と言っていました。だから、皆さんもこれから創作劇や動画のシナリオを書くときは、「どんな人間をどう描くか」を意識してみてください。
――この新井の呼びかけに生徒の皆さんだけでなく、先生方も大きく頷いてくださいました。
最後には、「人間を描くこと」を意識しながら、短いシナリオを書いて発表↓
シナリオを書く前に「実は文章を書くのが苦手なんです……」と心配していた生徒さんも、登場人物のキャラクターが際立った面白いシーンを描いていました!この調子で是非、創作劇や動画を作ってみてくださいね!
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いかがでしたか?
今回の模様をご覧いただくと、シナリオを書くことは「自己理解」と「他者理解」の探求にも役立つ!ということが、お分かりいただけたのではないでしょうか?
いろいろな学校の先生方から、「子どもたちに総合の時間に何をやりたいか聞くと、PR動画や短編映画を作りたい!という意見が出ます」というお話をよく耳にします。
PR動画や短編映画を作ることで子どもたちが得るのは、作品を完成させた!という達成感だけではありません。今回ご紹介したように、「自己理解」と「他者理解」を探求することもできるのです。
「シナリオや動画作りについて詳しく知りたい!」ということでしたら、まずはお気軽にシナリオ・センターまでお問い合わせください。
▼シナリオ・センター
TEL:03-3407-6936
MAIL:scenario@scenario.co.jp
※いろいろな施設や学校で出前授業「キッズシナリオ」も実施しております。
事例をご紹介しておりますので、「ご参考までにご覧ください。