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第33回橋田賞 令和6年度橋田賞新人脚本賞
受賞者に聞く!

第33回橋田賞 令和6年度橋田賞新人脚本賞 受賞者に聞く!

令和6年度橋田賞新人脚本賞(一般社団法人 橋田文化財団 主催)。
応募総数は一時間ドラマ部門457篇、短編部門428篇(前回応募総数:長編部門364篇/短編部門703篇)。一時間ドラマ部門から佳作2篇(入選作は該当なし)、短編部門から入選作3篇が決定。

そのうち、こちらのシナリオ・センター在籍生&出身生の方々が受賞されました!

☆一時間ドラマ部門
・佳作
『シニアの居場所』松山富江さん(横浜作家集団)
『遠くから来た客』今泉紗弥さん(元作家集団)

☆短編部門
・入選
『よいおとしを』青山ユキさん(作家集団)
『素直になれなくて』不動里美さん(元研修科)

令和6年度橋田賞新人脚本賞の贈賞は、第33回橋田賞の授賞式で行われました。この授賞式は、時代を象徴する作品を生み出した制作陣・役者の方々が一堂に会するという貴重な場でもあるため、毎年大変な話題となります。

加えて今年は、橋田文化財団の前理事長 脚本家・橋田壽賀子さんの生誕100年を記念した「橋田壽賀子生誕100年記念特別賞」も選出されたため、より盛大に開催されました。

そんなメモリアルイヤーに受賞された上記4名の皆さん。
コメントをいただきましたのでご紹介いたします。「脚本家コンクールで賞をとりたい!」という方に向けたメッセージも併せていただいておりますので、是非参考にしてください。(広報:齋藤)

◆ 一時間ドラマ部門 佳作:『シニアの居場所』松山富江さん
「これからも“シニアのこと”を書き続けていきたい」

=あらすじ==
問題を抱えたシニアの女性二人が、ひょんなことで出会い、同居が始まり、困ったことを互いに助け合って生きる物語――。
※本作はアクターズチェック(=俳優の方々による本読み)を行い、橋田文化財団の公式サイト等で動画配信予定。

――受賞作『シニアの居場所』について

〇松山さん:橋田賞新人脚本賞の応募は今回で5回目になります。受賞の知らせをいただいたときは、「今夜眠れるかな」と心配になるほど感動しました。

この作品を書くキッカケになったのは、国民年金と厚生年金の違いをニュースで見たことです。国民年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の全ての人が加入する年金。自営業・学生・無職の人たちは国民年金だけに加入します。対して厚生年金は、会社員や公務員の人たちが国民年金に上乗せして加入します。

こういった加入対象者の他、国民年金と厚生年金は色々と異なる部分があります。将来の受給額なども人によって違いがあるので、いざ年金をもらえる年齢になっても、これまでの仕事の仕方や人生の歩み方によって年金の受け取り額も異なるわけです。

現在は人生100年時代と言われています。この“長生きの時代”に、どうしたら上手く生きることができるのか。こう考えながら、あるシニアの女性二人が色々な困難を乗り越える様子を書きたいと思いました。

今回書く上で、「このシニアの女性二人が幸せになるように」ということに特にこだわりました。誰にでもやって来る老後。そのとき、誰もが安心して過ごせますように、と願いながら書きました。

――「シナリオを書くことは脳トレにもなっているかなと思います」

〇松山さん:今年でシナリオを書き始めて8年になります。シナリオを書いていて困ったとき、その解決策を考えるとき、シナリオ・センターで学んだことが役に立っています。

私は去年から70代になりました。シナリオを書くことは脳トレにもなっているんじゃないかなと思っています。作品が完成すると、何処か作品を募集しているコンクールはないかと探して応募していて、それが楽しみにもなっています。

これからも“シニアのこと”を書き続けていきたいと思います。

◆ 一時間ドラマ部門 佳作:『遠くから来た客』今泉紗弥さん
「書き続けていれば思いがけず良いことが起こるかも」

=あらすじ==
ある夏の日。東京下町の新藤家に突然、橘ふみ(81)が新藤啓介(89)を訪ねてくる。しかし、啓介は認知症で老人ホームに入所していた。夏の着物を上品に着こなしている ふみだったが、自分の家も帰り道も忘れてしまっていた。啓介の息子・良介をはじめとする進藤家の5人は当惑しつつも、柔らかな ふみの物腰や家事の手際の良さに心を許し、当面居候として預かることに。ふみは留守番をしながら、夏休みの新藤家の子どもたち(浪人生、中学生の双子)に家事を分担させ、おっとりとした物腰ながらもメリハリのある言動で、彼らの生活に刺激を与える。そんな中、老人ホームにいる啓介は、訪問してきた良介に突然、昔のことを話しはじめ、自分にはふみという末の妹がいて、昭和20年の東京大空襲で亡くなったと言い出し良介を驚かせる。啓介は幼いふみが死んだのは自分のせいだと長い間誰にも言わずに苦しんでいたのだった――。

――受賞作『遠くから来た客』について

〇今泉さん:橋田賞新人脚本賞はこれまで4回応募した記憶があります。おそらく5回目となる今回、受賞することができました。

どんな脚本コンクールでも、1次・2次選考くらいまでは通過しても、なかなか最後の受賞には至らないことが多く、何か決定的な訴求力が欠けているのではないかと悩んでいました。でも、そういった中でも書き続けていれば本当に受賞することができるんだ、と驚きましたし、それと同時に率直にうれしかったです。

今後書く作品は、この受賞に恥ずかしくないものにしたいと意識するようになりました。丁寧で「心のある」作品を書いていきたいと思った次第です。

この作品は、よくある普通の家族の中に(何をもって普通、というのかは、いろいろあるところではありますが)、突然事件が起こり、それによって小さな変化が起こっていく、という設定にしたいと思いました。少々不思議だけど、突飛な、ありえないような話ではなく、視聴者が共感できる内容になるよう書きました。

また、どこにでもある普通の日常を生きていても、人には秘密や少々謎めいた側面がある、ということを“前提”として書きたいと思いました。あと、大人だけでなく子どもでも、様々な悲しみを抱えていることがあると思うんですね。だから、たとえ後悔は消えなくても、どうにもならない悲しい思いを抱えた人たちにとっての癒しに少しでもなれば、という思いを込めました。

この作品に出てくる81歳の「ふみ」は、認知症を疑われたりもするけれど、元気で知性も良識もあふれるしっかりとした女性として、イキイキと描きたいと思いました。というのは、何年経っても幼い頃や若い頃の記憶は残っているし、知性は変わらないと思うので。なので、“楽しく生きる高齢者”として描きました。

今や戦後80年となってしまい、現代モノで戦時中の話を入れるとどうしてもかなり高齢者の話になってしまいます。「ふみ」は現在81歳なので当時は2歳。記憶があるだろうか?などと迷ってしまうところもありました。

でも、当時どんなに幼くても、また、何年経っても、戦争を経験した当事者であることに変わりはない。「戦争の記憶」として語り継いでいくべきだと思い、当初通り「ふみ」の年齢は81歳のまま書くことにしました。

――「コンクールと作品との相性を見極めることは必要かなと思います」

〇今泉さん:シナリオを書くときはいつも、「人物をきちんと作りこむこと」を心掛けています。「どういう葛藤を抱え、何を求めている人物なのか」をきちんと定め、人物像を深く掘り下げていく。シナリオ・センターのゼミに通っていた頃、講師からよくこう言われました。

「こういう人物」とかなり細かく決めてイメージを固めておくと、「こういうときは、こんなふうに言うはず」とスムーズにセリフが浮かびます(ただ、人物像が具体的に表現される、とは限りませんが……)。すると、展開もスムーズになるので、自分でも楽しみながら書くことができます。

脚本コンクールでの受賞を目指している方は、忙しくて疲れていたり、全然書く気が起こらなくても、なるべく時間を決めて、毎日1回は必ずパソコンの前に座ると良いのではないかな、と思います。私自身、最初は書ける気がしなかったのに、パソコンの画面を開いてみると、ちゃんと何がしかは書き連ねることができた(後で消すことも多いのですが……)ということがありました。

また、「いつか書こう」ではなく、思いついたシーンはすぐに書きとめておく、というのもいいのでは?数日後読み返してみると、「あれこんなこと書いたかな?」と思いながらも参考になることがよくあります。

それから、コンクールと(そこに応募する)作品との相性を見極めることは必要かなと思います。今回の受賞作品は、以前書いたあらすじが元になっています。ふと読み返したときに、「家族」の話であり、80代の男女も出てきて、全体的にレトロな作風で、まさに橋田賞にぴったりではないか、と思いました。そこで、改めて人物設定や結末などを練り直し、仕上げました。

自分の得意なストーリーはどのコンクールに向いているのか。あるいは、このコンクールに求められているのは、こんなストーリーなのでは、と戦略を立てることも大切なのかなと感じています。

これまでシナリオを書き続けている中で、心折れることも多々ありました。でも、それは私だけでなく大抵の方が経験していることだと思います。だから、「書くこと自体を楽しんで続けていく」というのがいいのではないでしょうか。そうすれば、思いがけず良いことが起こるかもしれません。

◆ 短編部門 入選:『よいおとしを』青山ユキさん
「書いた脚本の数だけ学びがある」

=あらすじ==
佐和野涼子(65)は、東北の田舎で暮らす主婦。夫は他界し、子供たちも独立。今は独り、寂しい日々を送っている。そんな涼子は、年末年始に東京在住の子供達が帰省するのを心待ちにし、準備に余念がない。しかし、子供たちはそれぞれの生活を優先し、結局帰省しないことに。大晦日、気落ちした涼子はスーパーマーケットで転倒し怪我をしてしまう。涼子を助けたのは、仕事が遅いと評判のレジ係・小鳥遊明菜(40)。涼子は明菜に自身の寂しさを吐露し――。

――受賞作『よいおとしを』について

〇青山さん:この度は、大変栄誉ある賞をいただき、心より感謝しております。

この物語を書いたきっかけは、「母に寂しい思いをさせていたかもしれない」――そんな、亡き母への後悔でした。実際、親と子では、時間の流れの感じ方が異なります。人生のフェーズの違いによって生まれるそのズレが、すれ違いを引き起こすのだと思います。なかでも、親が感じる寂しさは、子どもにはなかなか伝わりません。そんな親の孤独を描きたいと思いました。

そしてもうひとつ。タイトルにもなっている「よいおとしを」という挨拶が、とても好きなんです。年末に交わすこのひと言には、さりげないけれど確かな温もりがあるように感じます。その思いも、この作品に込めました。

また、作品を書く上でこだわった部分は、主人公が話す方言です。親子が遠く離れて暮らしているという設定にしたかったので、主人公を東北・秋田県在住、そして、主人公の子どもたちを東京在住としました。ただ、私自身は秋田弁に馴染みがなく、調べるのに苦労しました。一方で、動画などを通じて秋田弁に触れる中で主人公の輪郭がより鮮明になり、人物像を形作る上で非常に有意義な経験となりました。

――「書き続けること、応募し続けること、そして上手に切り替えること」

〇青山さん:現在在籍しているシナリオ・センターのゼミでは、発表した作品に対して率直な意見がもらえます。多様な感想に触れることで、自分の脚本がどのように受け取られているのかを客観的に捉えることができ、作品を見直す上で大きな助けになっています。これは今回の作品を書く上でも役に立ちました。

「コンクールに挑戦している方へのメッセージを」とのことですが、結局のところ、書き続けること、そして応募し続けることに尽きるのだと思います。理想は、その先に受賞があることですが、実際には落選して落ち込むことの方が多いのが現実です。

そこで大事なのが、「切り替え」です。私はわりと切り替えが早いほうで、落選すると「さ、次行こ」と、すぐに前を向くようにしています。この「さ、次行こ」は、気持ちを立て直し、書き続ける上でとても役に立ちます。書いた脚本の数だけ学びがあると思うので、コンスタントに書き続けることに意味があると思っています。

ちなみに私の場合、「プロの脚本家になりたい」と志した4年前から、本格的にシナリオコンクールへの応募を始めました。橋田賞新人脚本賞への応募は今回で3回目ですが、他にも様々なコンクールに挑戦をしています。そして実際に、書き上げる度に多くの学びがあります。行き詰まって苦しい時もありますが、一方でそれは心躍る挑戦でもあります。

今、書きたいことがたくさんあります。まだまだ道半ばの私ですが、心揺らす物語を紡いでいけるよう、精進していきたいと思っています。

◆ 短編部門 入選:『素直になれなくて』不動里美さん
「この受賞作は気負わずに楽しんで書いた作品」

=あらすじ==
口の悪い頑固おやじの田中頼彦(72)は妻の理恵子を亡くし一人で暮らしている。頼彦の娘の里帆は息子の祐樹を連れて、頼彦の食事を作るなどの面倒を見ている。頼彦と里帆はお互いを思いやっているが、素直ではなく一言多いため喧嘩に発展してしまう。里帆は母(理恵子)を軽視した発言をする頼彦に苛立っていた。ある日、頼彦の食事を作り終え、自宅に帰ろうとした里帆だったが、急遽会社に戻ることに。そこで、頼彦が夜まで祐樹を見ることになる。頼彦は祐樹と遊ぶ中で、理恵子とラブラブだったか聞かれる。理恵子との思い出を話す頼彦。祐樹の提案で理恵子に手紙を書くことになり、頼彦は手紙に「理恵子、里帆と祐樹は任せろ。だからゆっくり休め」と書く。仕事から帰ってきた里帆は、寝ている頼彦と祐樹の傍にある手紙を見る。頼彦の言葉を見て、里帆は涙を浮かべるのだった――。

――受賞作『素直になれなくて』について

〇不動さん:橋田賞新人脚本賞への応募は今回が初めてです。一次を通っていたことに気づかず、入選の連絡を受けた時も営業電話だと思い2回もスルーしていました。受賞のことを知り、驚きや嬉しさとともに「私でいいのか?」と不安にもなりました。

これまで、「脚本家なんて一握りの人しかなれない職業」と諦める理由ばかり探していましたが、今回の受賞で「本気で脚本家を目指そう」と決意しました!(……ここで宣言してしまったので、もう逃げられないですね(笑))

橋田賞新人脚本賞 応募作品のテーマが「家族」なので、どういう家族を書こうかな?と考えたときに、最後はほっこり温かい気持ちになれる作品を描きたいと思いました。

登場人物のキャラクターを決めた後は、空想の中で登場人物と会話をしたり、家にお邪魔して、そこで見たものを書いている、といった感覚なので、話の展開などの詳細は決めていなかったのですが、「この家族のことを好きになってほしいな」という思いがありました。

特に意識したのは、父と娘の愛ある行動とそれに反するセリフのギャップから、深い家族愛を表現することです。また、口の悪い頑固おやじでも、どこか憎めない人間味のある父にすることにこだわりました。

――「登場人物の本心を伝えないことでキャラクターに深みが出るのでは、と思います」

〇不動さん:今回の作品を書く上で、シナリオ・センターで学んだ「セリフは嘘つき」が役立ちました。本心を伝えないことで、セリフの裏にある感情がより明確になり、登場人物のキャラクターにも深みが出るのではないかと思います。

運良く賞をとれた私が言うのもおこがましいのですが、この受賞作は気負わずに楽しんで書いた作品でした。応募作品を書くとき、「審査される」ということは一旦忘れて、自由に書いてみるのもいいのかもしれません。面白い作品を書けるよう私も頑張りますので、一緒に頑張りましょう!!

 

*     *     *

 

「なかなか結果が出ないし、もう応募するのやめようかな……」という方。今回ご紹介した4名の皆さんのコメントに背中を押されたのではないでしょうか。次回の応募に向けて、こちらの記事も併せて是非ご覧ください。

令和5年度橋田賞新人脚本賞 安達あづささん 平木健典さん 三谷武史さん

令和4年度橋田賞新人脚本賞 長島清美さん

令和2年度橋田賞新人脚本賞 藤田知多佳さん 山脇さやかさん

令和元年度橋田賞新人脚本賞受賞 小泉理恵子さん

平成30年度橋田賞新人脚本賞受賞 いとう菜のはさん 三谷武史さん

平成29年度橋田賞新人脚本賞受賞 菊地勝利さん

平成28年度橋田賞新人脚本賞受賞 花田麻衣子さん 

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