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表現したいことをコンクール応募作で
第53回創作ラジオドラマ大賞 受賞者に学ぶ

表現したいことをコンクール応募作で/第53回創作ラジオドラマ大賞

第53回創作ラジオドラマ大賞。応募総数280作品(前回331作品)の中から、大賞1作品、佳作2作品が決定。

そのうち、天見ろねさん(大阪校)の『マイリバー、マイライフ』が大賞を、朴善美さん(大阪校)の『いのち、わたしの』が佳作2席を受賞。

そこでお二人にコメントをいただきましたのでご紹介。

脚本コンクールをキッカケに脚本家デビューされた出身ライターの方から、「脚本コンクールに応募する作品は、誰に頼まれたわけでもなく自分が書きたくて書いているので、自分の表現したいことを思い切り挑戦できる」とお聞きしたことがあります。

今回いただいたコメントからも、「今回、こんなことを表現したかったんだな」「挑戦したかったんだな」ということがよく分かるかと思います。お二人には、ラジオドラマを書きたい方に向けたメッセージも併せていただいておりますので、是非参考にしてください。

大賞『マイリバー、マイライフ』天見ろねさん
「せっかくなので登場人物にBGMや効果音を演奏してもらいました」

=あらすじ==
雨の中、河川敷を一人で歩く小学6年生の川北。そこへ同級生の森野がからんでくる。二人が駆け込んだ鉄橋の下、段ボールハウスに中年男のゼンがいた。三人によって繰り広げられる ちぐはぐな会話、疑惑、そして飛び出る本音。ゼン主催の話し合いはなぜか合奏で終わり、雨が上がって川北と森野は帰路につく。
15年後、同じ河川敷でその思い出話を森野にしている川北。大人になった二人はそれぞれの人生を歩んでいる。ゼンはどうなったのだろうか。二人は忘れているが、あの日ゼンは小さな希望をもった。そしてそれが今につながっている。川のほとりのささやかな触れ合いの話。

〇天見さん:自分なりに考えて書いた作品でしたが、登場人物三人だけのワンシチュエーションストーリーなので、これでいいのかどうか自信がありませんでした。この作品で賞をいただけて本当に嬉しいです。三人ともよくがんばったな、という気持ちです。

創作ラジオドラマ大賞は、今回が初めての応募です。昨年、南のシナリオ大賞をいただいたことが大きなモチベーションになりました。

この作品は、シンプルに好きなことを書いてみようと取り組みました。小さな世界で起きる小さな出来事を巡る話で、登場人物は皆てんでばらばらです。互いを思いやっているわけでもなく、分かり合えるわけでもないけれど、ほんの少しの共感や影響があって何かが変わる。そうした人間関係のおかしみを表現できれば、と考えながら書きました。

今回書くにあたって、モノローグをしっかり書こうと思いました(結果的にうまくいかなかったと感じていますが……)。また、オーディオドラマなので、耳に残るものとしていろいろな楽器を作中に出しています。せっかくなので登場人物にBGMや効果音を演奏してもらいました。話と噛み合えば面白くなるかもと思ったからです。

受賞して、プロの方々からいろいろな講評をいただいたことは貴重な経験でした。良かった点もありましたが、難点のほうが多いことがよくわかりました。反省しきりですが、今後に活かせる具体的なアドバイスもいただいたので、前向きにコツコツ頑張ろうと思いました。

今回の作品に限らず、いつもオーディオドラマを書くときは、(オーディオドラマは)耳からの情報に限られるので、「誰が誰と話しているのか」「なんのことを話しているのか」を分かりやすくすることを心掛けています。でも、その工夫によってかえって分かりにくくなる、ということもあったりするので、なかなか狙い通りにはいきません。

でも、オーディオドラマを書くのは楽しいですし、聴くのも楽しいです。「書きたい!」という気持ちを持って聴くと、勉強になることばかりですし、実際に書いてみると、「こんな音を取り入れたらどうかな?」と想像もふくらみます。

私自身、書くたびに色々と失敗をして課題も多いのですが、それもやってみてわかったことなので、「オーディオドラマを書きたい」という方は、まず思い切って取り組んでみることで新たな発見があるのではないかなと思います。

佳作2席『いのち、わたしの』朴善美さん
「日本の医療が発展してほしいという想いを込めました」

=あらすじ==
十年間、人工呼吸器をつけ、意識のない娘を毎日のように見舞い語りかける母親。その母親が肺がんになってしまう。娘を残して先に死ぬかもしれないと思うと、娘のことが心配でたまらない。娘の人工呼吸器を外してもらおうかと別れた夫に相談すると、そんなことは今の日本では出来ないと言われる。しかし、母親は、娘自身はこのまま延命治療を続けたいのだろうか、と思う。そんな時、日本でも、あるプロセスを踏めば人工呼吸器を外すこともあると知った母親は――。

〇朴さん:創作ラジオドラマ大賞への応募は今回で2回目。前年、ファイナリストとして出席させていただいた贈賞式の挨拶で「次こそは賞を獲ります!」と宣言していました。なので、本当に賞を獲ることができて、大変うれしかったです。今まで、映像ドラマのコンクールでも大きな賞は獲っていなかったので、やっと大きな賞が獲れたという思いです。

この作品を書こうと思ったのは、病院で働いていたときに、娘の人工呼吸器を外してほしいとお願いした高齢の母親が医師に断られた、ということを知り、終末医療について調べ始めました。終末医療は変わり始めていて、適切なプロセスを踏めば、延命治療の中止は行われるようになったことが分かりました。そこで、この作品で、延命治療の決定には患者本人の意思が重要であることを伝えたいと思いました。

「いのち、わたしの」とタイトルにあるように、命は自分のものです。自分の命について本人の意思があれば、本人も家族も後悔の少ない最期を迎えることができるかもしれないと思いました。日本はまだまだ終末医療について発展途上にあります。日本の医療が発展してほしいという想いを込めました。

ラジオドラマは、シナリオ・センター発行『月刊シナリオ教室』で、よく読んでいたので、いつか書きたいと思っていました。シナリオ・センター大阪校で森治美先生のラジオドラマ講座を受講したこともあります。柏田道夫先生の『シナリオの書き方』(映人社)は、映像ドラマの本ではありますが、ラジオドラマにも共通することがたくさんあり、何度も読んでいました。また、私は仕事などの都合でゼミには通えないので、1年に1度は必ず大阪校で長編講評を受けています。いつも的確なアドバイスをいただいていて、大変勉強になります。

そして、今でも書き続けることができているのは、シナリオ・センター東京校の通信講座基礎科に在籍していたとき、課題を添削してくださった先生に「涙が出た」とコメントしていただいた、という思い出があるからです。自分が書いた作品が人の心を動かした。この経験は私に自信を与えてくれました。

「ラジオドラマを書いてみたい」という方は、ぜひ創作ラジオドラマ大賞に挑戦してみてください。創作ラジオドラマ大賞は、受賞者とファイナリストも贈賞式とその後の懇親会に招待していただけますので、そこで勉強になることもありますし、良い出会いもあると思います。

最後に。2023年にシナリオ・センターで開催された、脚本家・久松真一さんの公開講座の中で、「命がけで脚本を書いている」という言葉を聞き、私は、その日から書くことへの向き合い方が変わりました。みなさんも命をかけて書いてください!

*     *     *

いかがでしたか。今回ご紹介したお二人に倣って、「こんなふうに表現してみたい!」ということがありましたら思い切り書いて、是非、コンクールに応募してみてください。

なお、これまでもシナリオ・センター在籍生や出身生の方々が創作ラジオドラマ大賞で受賞されていますので、こちらの記事も参考になさってください。

第52回創作ラジオドラマ大賞/書く事をやめないために

第50回創作ラジオドラマ大賞/物語を書くときの発想パターン

第49回創作ラジオドラマ大賞/賞・佳作一席・二席の受賞者全てがシナリオ・センター出身生

第48回創作ラジオドラマ大賞/ラジオドラマで時代劇

第47回創作ラジオドラマ大賞/書きたいものを書いて賞をとるには

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