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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

物語を書くときの発想パターン
第50回創作ラジオドラマ大賞受賞者に学ぶ

物語を書く時の発想パターン/第50回創作ラジオドラマ大賞に学ぶ

「物語を書く人ってどうやって思いつくんだろう?」「発想のパターンとかってあるのかな」と思っている方。発想のパターンをざっくり分けると、こちらの2つに分類されるのではないでしょうか?

・思いついたアイデアをもとに物語を書く

・自分の経験をもとに物語を書く

でも、どちらのパターンもそれぞれ、

・「アイデアは思いついたけど、その先どうしたらいいか分からない」

・「自分の経験を面白い物語にするにはどうしたらいいか分からない」

――といった“悩み事”が出てくることもあるかと思います。

そこで、参考にしていただきたいのが、第50回創作ラジオドラマ大賞(応募総数362本)で受賞されたお二人のコメント。

佳作一席 『傑作が落ちてくる』杉原大吾さん(作家集団)

佳作二席 『息が、つまるほどの』鈴木佳朗さん(8週間講座修了生)

物語を書くうえでの“ヒント”になりますよ。なお、『月刊シナリオ教室 2022年7月号』では受賞作のシナリオを掲載。併せてご覧ください。 

佳作一席『傑作が落ちてくる』杉原大吾さん
「どのような物語にすればこのアイデアが生きるのか」

*

=あらすじ=
ヒモ男の阿部悠介(33)はある日、酔っ払って階段から落ちた拍子に、一本の小説を書き上げる。出版社に勤めている友人の一ノ瀬海(31)にそれを見せると、傑作だと言われる。さらに、借金取りに捕まって階段から落とされると、また傑作小説を書く。悠介は階段から落ちると無意識のうちに傑作を書き上げる、特殊能力を持っていたのだ――。

――今回の作品を書いたキッカケ

〇杉原さん:「階段から落ちると傑作小説を書ける」というアイデアは以前から考えていましたが、どのような物語にすればこのアイデアが生きるのか手応えが掴めず、ずっと保留にしていました。

それが最近になって、落語の本を読み、「落語は業の否定である」という発想を知ったことで、一つの物語にまとめることが出来そうだと思いました。

登場人物全員が自分勝手な欲望を持っていて、全然優しくない。人間的にも立派な人はいない。でも、どの欲望も肯定的に描く。そうすることで人間の滑稽さを、愛情を持って描くことが出来るのではないか。落語的なものを、現代的なアイデアで掘り返す。ここが本作の始まりでした。

――作品に込めた想い

杉原さん:本作では、なによりもまず人間の欲望を描こうと思いました。人間は常に欲望に従って行動する、という仮説を立てて、そこから外れないようにしました。ひどい人間ばかりが出てきてしまいましたが、どの人間にも欲望があって、その結果なので仕方がないと思いました。

基本的に人間は自分の欲望に従って生き、欲望を遂行するために人間関係を紡いでいる。故にわがままで残酷で悪質。だからこそ、欲望が優しさに接続された瞬間には、奇跡のような喜びがあるのだと思います。本作の最後はバッドエンドと言われたりもしますが、自分としてはハッピーエンドのつもりでした。

――ラジオドラマとして成立させるために気をつけたこと

杉原さん:ラジオドラマとして意識したのは、落語的な物語にしたいという狙いがあったので、場面を絞って、キャラクター同士のやり取りで物語を運ぶようにしました。また、耳で聴く物語なので、聴いていて心地良くなるように、なるべくセリフのテンポを上げるよう意識しました。

とはいえ、脚本の基本である「人間関係を描く」という点は、ラジオドラマの脚本も映像の脚本と変わりないので、ラジオの脚本だからといって、映像の脚本を書くときとそこまで大きく変えたことはありませんでした。

佳作二席『息が、つまるほどの』鈴木佳朗さん
「どうにもならない後悔、僻み。そういう本音や感情を表現したい」

*

=あらすじ=
島波町役場の臨時職員として働き始めた凪沢柚(28)は、前任者から引き継ぎを受けていた。5年前の豪雨によって甚大な被害を受け、多くの犠牲者を出した島波町。毎年慰霊式が行われ、5年目となる今年は、町民を代表して小学6年・倉本元気(12)がスピーチするという。柚は「初仕事」として、元気からスピーチ原稿を受けとるように言われる――。

――今回の作品を書いたキッカケ

〇鈴木さん:そもそもの発想は私の経験です。私は以前、関西で記者をしていました。事件や裁判という真面目なものから「水族館でクラゲ展!」「商店街にツバメの巣!」みたいなネタまで、何でも取材していました。

豪雨などの被災地に取材に行くこともあったのですが、そこで思ったのは「記事で伝えられるのはほんの一部」ということ。結局、カメラを構えられれば、本音なんて言えません。

でも雑談するような関係になって、ポロリと出てくる一言。「あん時、引っ越してればさ……」とか「なんで俺だけ」とか、どうにもならない後悔、僻み。そういう本音こそ、誰もが持つ感情なんじゃないか。「それを表現したい」と思ったことが、この作品を書いたきっかけ、書きたかったことです。

特に、作中最後の元気の叫び、これを書くために、逆算で考えました(審査員の方からは「小6でここまで言語化できない」とご指摘が……んー確かに!)。

――書いていて特に難しかったこと

〇鈴木さん:柚と元気の関係を表現するのが一番の“壁”でした、ある種の“傷”を負った柚が、同じく“傷”を持った元気に出会い、互いに人生が動き出す……。

そう思い描いて書き進めたものの、どうしても「都合良いなぁ、おい!」という展開になってしまう。審査員の方々から「二人のストーリーが交わっているようで交わっていない」と見透かされ、私が“壁”をクリアしていなかったことが白日の下に晒されました……。

――審査員の講評を受けて感じたこと

〇鈴木さん:審査員の方に言われました。「この作品を書いてしまった以上、最後まで向き合わないといけない」と。それは今回の題材が「災害」だったから、という理由が大きいと思います。

でも、どんな作品でも、自分が生み出した作品に対しては、最後まで責任を持たなければいけない、と気づきました(遅い!)。だから、どうすればこの作品が良くなるのか、考えて考えて考えます。今回の作品ともう一度向き合い、練り直すこと。それが今の宿題です。

※これまでも、シナリオ・センター在籍生や出身生の方々が創作ラジオドラマ大賞で受賞されています。こちらの記事も併せてご覧ください。

■第49回創作ラジオドラマ大賞 
「大賞・佳作一席・二席 受賞者コメント」

■第48回創作ラジオドラマ大賞
「ラジオドラマで時代劇 /第48回創作ラジオドラマ大賞受賞 田窪泉さん」

■第47回創作ラジオドラマ大賞
「書きたいものを書いて賞をとるには/第44回創作テレビドラマ大賞より」

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「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、シナリオ・センター創設者の新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。

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