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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

柏田道夫おすすめ 映画『 サマーフィルムにのって 』を楽しむ 見どころ

映画から学べること

脚本家でもあり小説家でもあるシナリオ・センターの柏田道夫講師が、公開されている最新映画を中心に、DVDで観られる名作や話題作について、いわゆる感想レビューではなく、作劇法のポイントに焦点を当てて語ります。脚本家・演出家などクリエーター志望者は大いに参考にしてください。普通にただ観るよりも、勉強になってかつ何倍も面白く観れますよ。

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その41-
『ドント・ブリーズ2』ナーメテーターの手法はなぜ万能なのか

今回は若干(かなり?)異色のサスペンススリラー『ドント・ブリーズ2』を取りあげます。R-15指定がついているように、それなりに暴力的な描写もありますし、この手の映画はダメという方はスルー……いえ、我慢して観て下さい。

なぜなら、物語をおもしろくする、あるいは観客のカタルシスを得る構図として多いに参考になります。この手のサスペンス、アクションものはもちろん、そうじゃないヒューマンドラマや青春物でも応用できる技法が満載なのです。

「2」とついているように、そもそもは5年前に製作されてヒットした『ドント・ブリーズ』の続編となっています。

前作はネットとかでも観られます。主人公の最恐盲目じいさん(スティーヴン・ラング)の物語というのは同じですが、パート2はガラリと内容が変わっていますので、「1」を観ていなくても楽しめます。

ところで「ナーメテーター映画」という言葉をご存じでしょうか?

もとは『映画秘宝』などのライター、ギンティ小林さんが「舐めてた相手が実は殺人マシーンでした映画」から、ラジオを中心に映画評論をしているラッパーの宇多丸さんが『ターミネーター』をかけて用語としたジャンルのこと。

一市民として地味に暮らしていた人物がいて、何かのトラブルに巻き込まれると、その本性が露わになる。実は苛酷な戦場を潜り抜けた優秀な兵隊だった、凄腕のスパイだった、殺し屋だったなどの過去を秘めていて、その男(が断然多い)を舐めてかかった悪党とかをボコボコにやっつける。

シルヴェスター・スタローンの出世作の『ランボー』や、デンゼル・ワシントンが少女のために立ち上がる『イコライザー』、隠居していたキアヌ・リーブスの殺し屋がマフィアを殲滅する『ジョン・ウィック』、ウォンビンの質屋が隣人の少女のために立ち上がる『アジョシ』。最近では、ゴミ出しも出来ない冴えないおっさんが殺人マシンだったという痛快作『Mr.ノーバディ』もナーメテーター映画。

で、前作の『ドント・ブリーズ』は、退役軍人の老人が小金を貯めていると聞いて、三人の若者が一軒家に盗みに入る。老人は実は盲人で聴覚が発達していて、彼らの気配と音を察知して容赦なく殺していく。

タイトルは“息もするな”といった意味。若者たちが舐めてたじいさんが強くて、じわじわと彼らを追い詰める怖さ満載のサスペンスでした。

盲目というハンデを持った人物が、実は凄まじい強さを秘めていて反撃する、という構図なら、我が国が産んだ時代劇ヒーロー「座頭市」を思い出します。勝新太郎の当たり役ですが、以後もさまざまな俳優で映像化されました。

なぜあんなに観客の心を掴んだのか?

それは弱者である主人公が、より強い権力者、悪人に反撃し、最後の最後に勝利する。この構造に(権力や突出した能力を持たない)一般人である観客のカタルシスが得られやすい、溜飲を下げることができるから。

つまり、この「ナーメテーター映画」の構図は盤石といっていい。

ただ注意点としては、主人公が実は能力を秘めているとしても、前半部や【承】部では、それなりの危機的状況に陥る。弱点もあってそこを責められたり、一度や二度は破れたり窮地に追い込まれて、そこからいかに反撃するか?その展開のアイデア、二転三転の運びを工夫することです。

本作も盲目のじいさんは何度も死にかけるし、彼が守ろうとする娘との秘密も大きな障害となります。そうした運びをハラハラしながら観て下さい。

ところでこの“ナメテーター主人公”のエッセンスは、アクションだけでなく、いろんなジャンルに応用できます。

例えば、スポ根ものなら『弱虫ペダル』の小野田坂道クン。サクセスヒューマンもので、ダサい女子大生のアン・ハサウェイが一流編集者になる『プラダを着た悪魔』。貧しい掃除夫のマット・デイモンが、天才数学者として成長する『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』……

ともあれ、これも物語をおもしろくする「アンチ」という手法です。人物の履歴や秘められた能力を与え、それを発揮させるための設定を決めて、そこに人物を放り込むことで、物語が動き始めるわけです。

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ソニー・ピクチャーズ 映画
『ドント・ブリーズ2』予告1 8月13日 金曜日 全国ロードショー

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その42-
『サマーフィルムにのって』バックステージものの劇中劇の方法

この手の邦画(キラキラ青春胸キュン映画!みたいなの)は、まず私はチョイスしません。この歳になると、ついていけないというか、どーでもいいや、と最初から白けてしまったりします。

主演の伊藤万理華という女の子を見るのも初めてで、第一印象は「主演にしてはずいぶん個性的な顔立ちの子だなあ、大丈夫かよ」でした。でも、けっして美形ではない彼女が、次第に「実にはまり役」と変わり、最後は拍手。乃木坂46のアイドルだった、というのを知ったのは見終わってからでした。

そんなズレたオヤジがどうしてこの映画を観る気になったのか、というと、彼女たちが撮ろうとしているのは時代劇で、主人公の女の子(伊藤万理華扮するはだし)が、時代劇マニアなのだ、という設定を耳にしたから。廃れゆく時代劇(それもチャンバラ映画)の復活を願う時代劇ファンの一人として、響くものがあったわけです。ティーンの青春もので、そんなところに目をつける内容なんて嬉しくて涙が出そうでした。

といういわゆるオールドな時代劇ファンですが、はだしと親友のビート板(河合優実)、ブルーハワイ(祷キララ)の三人の秘密の部屋のシーンで、後でここを訪れる凛太郎(金子大地)と同じ気持ちになりました。映画のあちこちに散りばめられた名作時代劇のオマージュにも思わずニヤリ。

で、先に書いてしまうと、彼女たちが凛太郎を主演に撮る時代劇の活劇部分がパラパラと出てくるのですが、(シロウトっぽさを感じさせつつも)実にいい。

今どきのワイヤーアクションとかのアクロバティックな殺陣ではなく、それこそ勝新太郎が『座頭市』シリーズで、生涯にわたり追究し続けていたチャンバラ時代劇の殺陣になっていました。クライマックスでは、はだしもこの殺陣アクションを見事に披露します。

ストーリー展開としては、学園青春物なのだけど、SF要素も入っていたりしていて、引っかかるところもありました。でも、はだしたち女の子3人と、加わる凛太郎ら男の子5人、ライバルの花鈴らの配置も絶妙でした。

で、今回注目してほしいのは、いわゆる「バックステージ」ものの中で描かれる「劇中劇」の内容と、現実ストーリーの配分の仕方です。

「バックステージ」ものは分かりますね。芝居や映画、ドラマを作ろうしている人物たちの物語。業界物とも言います。

フェデリコ・フェリーニ監督『8 1/2』、フランソワ・トリュフォー監督『アメリカの夜』、最近では周防正行監督の『カツベン』……特にミュージカル映画ではたくさんありますね。『雨に唄えば』『コーラスライン』『キャバレー』『シカゴ』……あげているとキリがありません。

で、このバックステージものの多くは、主人公たちが作っている作品が重要な小道具的要素になります。つまり「劇中劇」の「劇」。

この劇中劇について、その詳細を詳しく描くわけにいきませんね。現実部分のストーリーがそれなりにあるわけで、劇の断片を見せて、彼らはこういう作品を撮ろうとしている、と分からせなくてはいけない。『雨に唄えば』なら、騎士とお姫さまの恋愛活劇だというように。

『サマーフィルムにのって』は、述べたように昔ながらのチャンバラ時代劇をはだし監督は撮ろうとしている。各シーンの登場人物たちのセリフや感情表現について、はだしはいちいち悩んで撮影が進まなかったりする。

語られるプロットや撮影シーンで、『武士の青春』という劇中劇のストーリーやドラマが観客にも分かるんですね。ライバル花鈴たちが撮ろうとしている胸キュン恋愛青春映画も。

その内容と、一本の映画を撮ろうとする彼らの青春も色濃く見えてくる。これぞバックステージもの、劇中劇ものに欠かせない要素なのです。

例えば、コンクールなどで多い「漫才師」もののシナリオがあります。漫才でてっぺん獲ろうとする主人公たちの物語。この設定で、彼らが披露する漫才ネタ、つまり「劇中劇」の「劇」がつまらないと、俄然リアリティが失われたりするわけです。

はだしが書いた時代劇シナリオ『武士の青春』を読みたくなる映画でした。

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Happinet phantom
8月6日(金)公開『サマーフィルムにのって』本予告

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