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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

柏田道夫おすすめ 映画『 ジュディ 虹の彼方に』を楽しむ 見どころ

脚本家でもあり小説家でもあるシナリオ・センターの柏田道夫講師が、公開されている最新映画を中心に、DVDで観られる名作や話題作について、いわゆる感想レビューではなく、作劇法のポイントに焦点を当てて語ります。脚本家・演出家などクリエーター志望者は大いに参考にしてください。普通にただ観るよりも、勉強になってかつ何倍も面白く観れますよ。

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その21-
『1917 命をかけた伝令』 最新技法を活かすには基本のドラマが大切

第一次大戦の戦場を描きながら、画期的なワンカット撮影で話題の『1917 命をかけた伝令』です。圧巻でしたね。見終わって「エライものをみせてもらった」と余韻に浸りました。

それは確かにワンカット手法がもたらす迫力、緊張感で、映画の技術はついにここまで到達したか! という実感に他なりません。

それはそれとして注目なのですが、「ここを観てほしい」というのは、実は脚本の部分、脚本の作りの綿密さです。すなわちワンカット撮りを成立させるためにも、緻密に組み立てられた(人物の動きやセリフの書かれた)脚本があって、それに従って撮影が行われていたに違いないから。

まずこの全編ワンカット撮りですが、演出家の多くが一度はトライしたいと思うようです。過去にはヒッチコックが『ロープ』というミステリーでやっていますが、当時はフィルム一缶分をワンカットで撮ると15分程度なので、それを繋いで連続して見えるという工夫を凝らしていました。

近年では、インディペンデント映画ながら大ヒットした『カメラを止めるな!』が、冒頭から40分ゾンビ映画の撮影をするシーンがこれでした。

2015年のアカデミー賞主要4部門を獲った『バードマン』は、デジタルキャメラや編集技術の進化で、全編をワンカットで繋いだように処理(しかも同時時間進行ではなく、時間経過もしてしまう)という驚嘆の映画でした。

さて、この『1917』ですが、戦場を2人の兵隊が移動するという想像を絶する展開を、冒頭から(ほぼ)ワンカットで描いていて、これがすなわち〝映画の技術はここまで来たか!〟と思わせるところです。

ただ実際には、それぞれのシーンをワンカットで撮り(それはそれで凄いのですが)、それを編集作業で全編を繋いだということのようです。

で、この撮影を実現するために、サム・メンデス監督がクリスティ・ウィルソン=ケアンズと共同で書き上げた脚本に注目して下さい。

ストーリーの型でいうと、一番シンプルな「ロードムービー(旅もの)」。対ドイツ戦が行われていた西部戦線で、スコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)の2人の伝令兵士が、最前線にいる1600名の友軍兵を救うべく、「攻撃中止」の命令を携えて命がけの旅をする。

旅ものは、目的地を目指して主人公たちが、旅を始めて途中のさまざまな困難に遭遇しつつ、出会いや別れを繰り返して、最終地点まで辿り着くまでの物語。多くは「バディ(相棒)もの」のスタイルをとり、互いが対立・葛藤をしながらも友情が育まれる。旅が終わり主人公は成長を遂げます。

『1917』もこのシンプルな構造ですが、旅の途中で2人が遭遇する事件、人物、エピソードの配分のさせ方をとにかく観てほしい。戦闘シーンや彼らを次々と襲う危機の数々だけでなく、涙が止まらないようなエピソードの入れ方も。

さらにワンカット撮影だけに、彼らの行動をひたすら追いかける一視点型でもありますし、実はきちんとハリウッドの「三幕構成」となっています。特にミッドポイントとなるある事件が、人物の心情の大きな転換点になっている点を。スコフィールドとブレイクそれぞれの人物像、履歴や性格の違いもきちんと作られています。

実際のシナリオ(スクリプト)がどう書かれているのは分かりませんが、彼らはずっと移動をしていて、空間も連続して繋がっています。

それでもシナリオではおそらく、〇塹壕A→司令部内→塹壕B→原野A→原野B→果樹園→廃屋の民家……というように、シーンごとに分けて書かれていて、各シーンをワンカットで撮っていく、というに処理されたのではないかと思います。

観ている間は、そんなことは考えなくていいのですが、見終わってから、しみじみとあれこれ反芻してみて下さい。3倍、4倍、いえ10倍にも楽しめます。

※YouTube
ユニバーサル・ピクチャーズ公式
『1917 命をかけた伝令』予告

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その22-
『ジュディ 虹の彼方に』クライマックスが起点の脚本構成手法

レネー・ゼルウィガーが、見事ななりきり演技と圧巻の熱演でアカデミー賞の主演女優賞を獲得した『ジュディ 虹の彼方に』。

『オズの魔法使い』のドロシー役で、一躍ミュージカルスターになったジュディ・ガーランド。私はこの映画や『スタア誕生』は、テレビの洋画劇場で観た記憶があります。淀川長治さんの解説でした。

 むしろティーンだった時に観た『キャバレー』のライザ・ミネリに衝撃を受けて、そういえば彼女のお母さんだったなあとか、MGMミュージカルを回顧する『ザッツ・エンタテインメント』で、本作でも登場する(団子みたいに丸くなった)ミッキー・ルーニーがジュディを紹介していました。

認識としてそのくらいで、実は47歳という若さで亡くなり、その晩年(というより一生)がこんなに可哀想だったというのは知りませんでした。

 さて、基礎講座で「構成」の手法をあれこれと習いますね。例えば、ある女の生涯を題材にしようとして、どこから始めるか? オギャアと生まれたところから? 結婚するところから? いや、臨終から入って回顧する? というように、いろいろな入り方が考えられる。

 いわゆる【起承転結】の【起】ですが、それを決める前に基準(核)となるのは、作品で何を描くかという「テーマ」です。それはすなわちテーマを訴える【転】が基準になります。クライマックスとして、テーマを訴え、一番盛り上がる【転】と速やかに終わり余韻で終わる【結】。ここを見据えた上で、最良の入り方としての【起】を見出す。

ジュディ・ガーランドという波瀾万丈の人生を歩んだ、一人の女性を描こうとする際に、どこを切り取って、どこからどう描くのか?

 この映画は、ジュディの亡くなる直前のロンドン公演をメインに据え、【起】と途中に、少女時代の過酷な日々が回想として随時挿入されます。映画会社側から強いられる過密スケジュールや、後のジュディの心身をむしばむことになる薬漬け管理の日常など。

 このロンドン公演にしても、素晴らしいパフォーマンスで観客を魅了するショー場面がある反面、泥酔して失態を演じる姿も描かれます。これは実際にそうだったようです。

ともあれ、『オズの魔法使い』から、数度の結婚や『スタア誕生』の復活といった彼女の人生の真ん中あたりはカットして、落ち目でボロボロになった晩年に焦点を当てる。

 脚本のトム・エッジがルパート・グールド監督と徹底話し合いながら、全体の構成を組み立てていったはず。その際に、核として据えたのが、クライマックス【転】のショーの場面だったに違いありません。

ここに持って行く(それも『虹の彼方に』!)ために、どこから入って、どう【承】を展開させるか(例えば感動的なゲイカップルとのエピソードの入れ方など)。

 ところで、ジュディの生涯がこんなに可哀想だったと知らなかった、と書きましたが、この映画は実在したスターの悲惨さを描いたものではけっしてありません。

それは大ヒットしたフレディ・マーキュリーの一生を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』がそうだったように、アーティストとして歌うことで表現し続けた人間の輝きと素晴らしさこそを描いています。これがすなわち創り手たちが一番伝えたかったテーマでもあります。

 特に今はコロナ騒動で、エンタメ業界にかつてない試練の波が襲いかかっています。でもこの映画のクライマックスを観ると、アーティストの情熱と、それを共用する観客がいてこそ〝感動(カタルシス)〟が導かれる。

人はそうした心の栄養こそが生きていく上で必要なのだ、ということを伝えてくれます。今だからこそ、映画館で観て下さい。

 YouTube
ギャガ公式チャンネル
【公式】『ジュディ 虹の彼方に』3.6公開/本予告

※前回の柏田道夫おすすめ映画の記事「『パラサイト 半地下の家族』を楽しむ 見どころ」はこちらからご覧ください。

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