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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

柏田道夫おすすめ 映画『 グリーンブック 』を楽しむ 見どころ

柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その3
『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』
過去を振り返るのに「回想」がない!

脚本家でもあり小説家でもあるシナリオ・センターの柏田道夫講師が、公開されている最新映画を中心に、DVDで観られる名作や話題作について、いわゆる感想レビューではなく、作劇法のポイントに焦点を当てて語ります。脚本家・演出家などクリエーター志望者は大いに参考にしてください。

1回目、2回目に取り上げた映画では、考え抜いて1回だけ使っている「回想」シーンについて語りました。

そこで、「ハリウッドのエンタメ系映画は基本、回想を使わない」と述べましたので、実例としていいサンプルはないか? と思い出したのがこれ、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(以下サブタイ省略)。

2009年作なので少し前ですが、実によく出来た脚本で、しかも全編が〝過去を振り返る話なのに、回想を使わない〟作品なのです。

これが1で、大ヒットしたために2と3が同じ監督やキャストで撮られましたが、それらはまさに柳の下の2匹目、3匹目のトジョウなので、改めてご覧になるなら、観るのは1だけでいいかと思います。

監督と脚本はトッド・フィリップス。原案と共同脚本はジョン・ルーカスとスコット・ムーア。

さて『ハングオーバー!』、回想はないと申し上げましたが、構造としては回想法のひとつの「サンドイッチ型」で、終盤にほんのちょっとだけイメージ的な(なくてもいい)回想が入りますが。

つまり、冒頭部が「現在」で、砂漠のハイウェイでフィル(ブラッドリ・クーパー)が、結婚式を5時間後に控えた花嫁に「ダグがいない。間に合わない!」とケータイで電話しているところ。

そこからタイトルで「2日前」と出て、花ムコのダグ(ジャスティン・パーサ)と、友人で教師のフィル、歯医者のスチュ(エド・フィルムズ)、トラブルメーカーのアラン(ザック・ガリフィアナキス)の四人は、独身最後の日をバカ騒ぎ(バチェラーパーティー)をすべくラスベガスへと向かう。

高級ホテルのスイーツルームをとって、屋上で「さあ楽しもうぜ!」と乾杯(実はドラッグ入り)をして……

(次のシーン)

翌朝彼らがホテルの部屋で目覚めると、部屋はムチャクチャ、スチュの前歯が抜けていて、ニワトリが歩いていて、バスルームに虎がいる! さらに戸棚に赤ん坊もいて、花ムコのダグがいない。

ひどい二日酔いのフィル、アラン、スチュの3人は、昨夜の記憶がまるっきりない。

とにかくダグを探そうと、赤ちゃんを抱いてホテルを出て、自分たちのクルマを出して貰うと、なんとパトカー! 部屋から放り投げたらしいマットレスが入口の屋根に刺さっている。

ポケットにあった領収書とかを手がかりに、三人はダグの行方と、昨夜自分たちが何をしたのか?――を探っていく。

そこから抱腹絶倒の展開が次から次へと巻き起こり、彼らの昨夜の行状が次第に明らかになる。

しかし肝心の花ムコが見つからないままで、冒頭の「間に合わない!」という現在に戻ります。

この「サンドイッチ型」回想では、真ん中の「こうだった」と振り返る部分では「直接回想」を入れない、というのが基本ルールなのですが、この映画も彼らが半日前の出来事を振り返るという話なのに、回想シーンを使わない。

それって凄くないですか? 自分で書こうとしたら? と考えてみて下さい。

その代わりにアルバムや防犯ビデオ映像とかが巧み使われていて、しかも最後のタイトルバックで、「回想シーンの代わり」の絶妙さ! ぜひ観て下さい。

もうひとつだけ。

この映画はジャンルとしては大笑いできるコメディなのですが、構造は「行方不明者の捜索」と「謎の解明」という典型的なミステリーでもあります。探偵もののストーリー展開を活かしているコメディなのです。

※You Tube
シネマトゥデイ
映画『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』予告編より

柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その4
『グリーンブック』これぞバディロードムービーの教科書だ!

アカデミー賞で作品賞と脚本賞(製作・監督もしたピーター・ファレリーとニック・バレロンガの共同)、マハーシャラ・アリが助演男優賞を受賞した話題の『グリーンブック』です。

人種差別を描いているわりに軽すぎる、掘り込み不足だ、とかの否定的な意見もあるみたいですが、どうしてこういうテーマだと重くしなくちゃいけないの?

笑わせて、よりたくさんの人に観てもらって、しみじみと感動を噛みしめて貰えるだけで、創り手側の意図は伝わると思うのですが。

この映画も「回想」が1カ所もありませんでした。回想を使わなくても、旅をする2人、イタリア系移民出身のトニー・バレロンガ(脚本のニックの実父で、演じたのはヴィゴ・モーテンセン)と、天才ピアニストのドクター・ドナルド・シャーリー(ファレリー)の過去であったり、どういう育ち方、履歴なのかが分かる造りになっているところを注目して下さい。

それは別にして、今回こころを見ろ!というのは構成としての「バディロードムービー」。

物語の構造として、最もシンプルな造りこそが「ロードムービー(旅もの)」です。

主人公が何らかの目的があって、旅を始めて、その過程を描いて、最後に何らかのカタチで旅が終わる。

【起承転結】でいうと、主人公による旅が始まるまでの前提があって(もしくは旅が始めるところから)、旅の過程で事件が起きたり、障害があったりしながらも旅を続ける展開が【承】、旅の最終段階でのクライマックスの【転】で盛り上げて、旅の終わりを示す【結】で、物語も終わります。

それも一人旅は単調になりがちなので、旅の同行者バディ(相棒)を加えることが多い。できるだけ相容れない要素を持つ2人とすると、途中で喧嘩したり、トラブルの種になったりできます。

旅の始まりでは、その2人が対立していたり、互いを信頼していないのですが(アンチという手法ですね)、旅の過程で力を合わせてトラブル回避をすることで、旅の終わりで信頼関係が生まれる、互いを理解する。友情(ないし愛情)が芽生える。

「バディロードムービー」は名作がたくさんあります。

古くは『或る夜の出来事』や『手錠のままの脱獄』、アメリカンニューシネマでは『俺たちに明日はない』『スケアクロウ』『明日に向って撃て!』『ペイパー・ムーン』『エルマ&ルイーズ』など、さらには『レインマン』とか、近年では『X-MEN』のスピンオフ映画『ローガン』も。

あげているとキリがないほどですが、名作と凡作(ありきたり作品)とを分けるのはまず、バディとする2人のキャラクターの造型、対比です。上記の名作の相棒たちを思い出してみて下さい(観てない人は必見ね)。

『グリーンブック』の対比も際だっています。

しかもこれまでと違うのは、ボス(雇い主)が差別される側の黒人のピアニストで、雇われた側が粗野で大食いのイタ公(でも、そう呼ばれると怒るイタリア人の誇りを失わない)運転手兼ボディガード。その2人が、黒人差別が法的にも認められていた時代の南部を旅する、という設定の巧みさです。

長い作品の構成ができない、と悩む人にはこの「バディロードムービー」なら、実にシンプルにストーリーが組めるはず。

それだけにありきたりな凡作にもなりがちです。そうしない決め手は、相棒のキャラの際立たせ方と、2人に(3人とかでも可)〝どういう特異な旅をさせるか?〟その設定にアイデアが発揮されると名作へと近づくはずです。

※You Tube
ギャガ公式チャンネル
【公式】『グリーンブック』3.1(金)公開/本予告より

※柏田道夫の「映画のここを見ろ!」【その1:『ファースト・マン』の回想シーン!】【その2:『スリー・ビルボード』の「回想と秘密」】はこちらをご覧ください。

『グリーンブック』は第91回米アカデミー賞最優秀脚本賞受賞
第91回米アカデミー賞最優秀脚本賞・脚色賞受賞&ノミネートの脚本家一覧

『グリーンブック』は、第91回米アカデミー賞最優秀脚本賞受賞!
脚本家についてはこちらをご覧ください。
また、あわせて、
■第91回米アカデミー賞最優秀脚本賞にノミネートされた作品と脚本家
■米アカデミー賞は、日本のアカデミー賞と違って「脚色賞」もあるので、
第91回米アカデミー賞最優秀脚色賞を受賞した作品と脚本家、
ノミネートされた作品と脚本家
――もご紹介!

【脚本賞】
★最優秀脚本賞受賞
・ニック・バレロンガ、ブライアン・カリー、ピーター・ファレリー(『グリーンブック』)

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
ニック・バレロンガ
ブライアン・カリー
ピーター・ファレリー

※『グリーンブック』の公式サイトはこちらからご覧ください。

■最優秀脚本賞ノミネート
・デボラ・デイビス、トニー・マクナマラ(『女王陛下のお気に入り』)

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
デボラ・デイビス
トニー・マクナマラ

※『女王陛下のお気に入り』の公式サイトはこちらからご覧ください。

※You Tube
フォックス・サーチライト・ピクチャーズ
『女王陛下のお気に入り』日本版予告編より

・ポール・シュレイダー(『魂のゆくえ』)

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
ポール・シュレイダー

※『魂のゆくえ』』の公式サイトはこちらからご覧ください。

※You Tube
株式会社トランスフォーマー配給・発売作品
本年度アカデミー賞脚本賞ノミネート!映画『魂のゆくえ』4月12日(金)公開より

・アルフォンソ・キュアロン(『ROMA ローマ』)

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
アルフォンソ・キュアロン

※『ローマ』の公式サイトはこちらからご覧ください。

※You Tube
東京国際映画祭 Tokyo International Film Festival
『ローマ』予告編|Roma – Trailer HDより

・アダム・マッケイ(『バイス』)

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
アダム・マッケイ

※『バイス』の公式サイトはこちらからご覧ください。

※You Tube
映画配給会社ロングライド
4月5日(金) 全国公開『バイス』特報 30secより

【脚色賞】
★最優秀脚色賞受賞
・チャーリー・ワクテル、デビッド・ラビノウィッツ、ケビン・ウィルモット、スパイク・リー(『ブラック・クランズマン』 )

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
チャーリー・ワクテル
デビッド・ラビノウィッツ
ケビン・ウィルモット
スパイク・リー

※『ブラック・クランズマン』の公式サイトはこちらからご覧ください。

※You Tube
PARCO Movie
映画『ブラック・クランズマン』本予告編より

■最優秀脚色賞ノミネート
・ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン(『バスターのバラード』)

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン

※『バスターのバラードの公式サイトはこちらからご覧ください。

※You Tube
Netflix Japan
『バスターのバラード』予告編 – Netflix [HD]より

・ニコール・ホロフセナー、ジェフ・ウィッティ(『ある女流作家の罪と罰』 )

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
ニコール・ホロフセナー
ジェフ・ウィッティ

※『ある女流作家の罪と罰』の公式サイトはこちらからご覧ください。

※You Tube
FoxSearchlight
CAN YOU EVER FORGIVE ME? | Extended Preview – Watch 10 Full Minutes | FOX Searchlightより

・バリー・ジェンキンス(『ビール・ストリートの恋人たち』)

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
バリー・ジェンキンス

※『ビール・ストリートの恋人たち』の公式サイトはこちらからご覧ください。

※You Tube
映画配給会社ロングライド
『ビール・ストリートの恋人たち』日本版本予告【本年度アカデミー賞3部門ノミネート!】より

・エリック・ロス、ブラッドリー・クーパー、ウィル・フェッターズ(『アリー スター誕生』 )

※脚本家のプロフィールとその他脚本を手掛けた主な映画作品は、映画.comのこちらのサイトからご覧ください。
エリック・ロス
ブラッドリー・クーパー
ウィル・フェッターズ

※『アリー/ スター誕生』の公式サイトはこちらからご覧ください。

※You Tube
ワーナー ブラザース 公式チャンネル
映画『アリー/ スター誕生』予告【HD】2018年12月21日(金)公開より

※日本のアカデミー賞受賞作品については「第42回日本アカデミー賞レポート/映画業界 に入りたくなるコメント集」をご覧ください。

※昨年の日米のアカデミー賞脚本賞については、こちらのブログ『オススメ映画番外編 2018日米アカデミー賞脚本賞受賞者一覧』をご覧ください。

 

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