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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

学ぶこと

死して

シナリオ・センター代表の小林です。週末に昨秋亡くなった講師のお宅にお伺いしました。
陶山美和。長年講師として添削を中心に頑張ってくれていたのですが、56歳の若さで亡くなりました。「来年は元気になって復帰したい」と願っていたのに。
その昔一緒にシナリオ・センターで学んだ友人たちと柏田とご一緒に昔話に花を咲かせながら、彼女を偲びました。
うちの近くのお寺に「命は限りあるもの 驚くことなかれ」という説話が掲示されています。確かに、誰でもが死ぬことは当たり前ですから、いつ死のうが驚くことではないのですが、なかなかその心構えはできません。
ある程度の年齢になれば遺される者も覚悟ができたりはしますが、若い場合はやはりまさかという方が大きいですから、そう簡単に割り切れるものではありません。
遺された家族の方々がその寂しさを乗り越えて、前へ進んでいくことを祈るしかありません。私は、故人とともに小さい頃から息子さんの成長をみていただけに、強く自分の道を進んでほしいと祈るばかりです。
シナリオ・センターも50年も長きにわたってくると、新井一をはじめ何人もの講師やスタッフを見送ってまいりました。
天国には、シナリオ・センター天国校ができているのではないかと思うくらいです。
シナリオをこよなく愛していた 彼女も、きっと天国でまた先輩講師とともにシナリオを教え続けるのだろうと想います。そんな風に考えるとちょっと嬉しくなります。
センターに関わってきた方々のお力でここまでやってこられたわけですが、新井が遺していった「シナリオの基礎技術」のおかげで、ぶれることなく次の世代へと引き継ぐことができています。
「表現する」ことはとても大事なことだなあと実感しながら、きちんと志とともに、ノウハウをつないでいきたいと思います。

昔も今も

今も昔も変わらない形がある・・・。
小津安二郎、世界に誇る名監督の名作の数々の4Kデジタル修正版ができました。
横浜シネマリン(JR関内北口・市営地下鉄伊勢佐木長者町・京急日の出町下車)で「小津4K~巨匠が見つめた7つの家族~」と題して、3月9日より7作品を上映します。
小津安二郎監督は言うまでもなく、黒澤明監督、溝口健二監督と並び国際的に最も支持される日本が世界に誇る映画監督です。1963年に亡くなられるまで54本の映画を創られています。
とはいえ、今の若い世代の方は、お名前は知ってはいても実際にご覧になられたことがない方も少なくないかもしれません。
せっかく4Kデジタル修復版にきれいになった名作ですから、一度ご覧になってみてほしいです。
小津監督の作品は、決して大作ではなく、家族の在り方、人としての生き方を淡々と描き、観る者の心に訴える作品ばかりです。そのきめ細やかな表現、人間を見つめる視点は、今もなお決して過去の作品になりません。
シナリオを志す方、必見の映画です。

7つの作品は、
父と娘の深い絆と愛情を描き、後年のホームドラマの礎となった「晩春」(49年)
戦争の傷を抱え生きる大家族の崩壊と再生を描いた「麥秋」(51年)
身分や価値観の違う夫婦のすれ違いと和解を描く「お茶漬けの味」(52年)
どなたもご存じの親子、老いと死を描いた最高傑作の映画「東京物語」(53年)
倦怠期の若夫婦の危機と再生を描いた人間ドラマ「早春」(56年)
親子愛をテーマに辛口の逃げ場のない主人公を描いた「東京暮色」(57年)
人の心の美しさを謳いあげた文芸巨編「浮草」(59年・カラー)

多くの国内外の映像作家たちに影響を与え続け、現代でもオマージュを捧げられている小津作品。
ドラマは「人間を描くこと」ですが、まさに小津作品はその原点といえるものだと思います。
シナリオ・センターでも、常に「人間を描け」と申し上げていますが、なにをして人間ドラマといわれるのか、どうしたら描けるのか、小津作品から学んでいただくとよいかと思います。
ありがたいことに、これからも名作のデジタル修復版がどんどんでてくることでしょう。
名作を見ることは創作者の肥やしになります。積極的に見ていきたいものです。

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