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小説の描写について 情景描写Ⅲ

「シナリオのテクニック・手法を身につけると小説だって書ける!」というおいしい話を、脚本家・作家であるシナリオ・センター講師柏田道夫の『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
今回は、前々回に引き続き、小説の情景描写について。情景描写というと、見えるものを描けばいいと思いがち。でも、人間には視覚だけでなく、聴覚・触覚・味覚・嗅覚という五感があります。その五感をどう文章に取り入れればいいのか、解説いたします。

「情景描写」は視覚だけではない

小説は地の文で「描写」をしながら、物語を展開させます。
主に情景描写、心理描写、人物描写の三つがあると述べました。
こうした描写をどこまで書くか?

これはその書き手の個性ですし、近年ではあまり綿密に描写をするのは好まれない傾向にあるようです。これは小説の種類や媒体、ジャンルによっても違います。

ひところ持てはやされたケータイ小説などは、地の文は極力少なく、(まさにシナリオのト書のように)簡潔に書かれ(しかしシナリオではできない心理描写などは自由で)、セリフのやりとりをメインにする書き方となっていました。

その流れを継いだネット系小説や、今一番の売れ筋であるラノベ(ライトノベル)も同様の傾向が見られるようです。小さなスマホ画面などに表示される小説だと、長い文章による描写がそぐわないのでしょう。

こうした表現になれた読者が増えていることもあって、今後は読みやすいシナリオ文体のよさを取り入れつつ、小説としての的確な文章表現を駆使できる書き手が求められるでしょう。特にエンタメ系の小説では。

かといって、かつてのケータイ小説調のままでは、通用しなくなっているのも事実です。ページを開くと、会話が延々と続いていて、下部がスカスカといった小説本が増えていますが、私はどうしても小説として認めたくありません。

ともあれ、読者を立ち止まらせない、的確、簡潔な読みやすい地の文による描写があって、磨かれた人物のセリフで展開する。それが優れた小説の文章表現だと思います。

五感を巧みに取り入れる

具体的な「描写」の方法に戻ります。

地の文による描写ですが、コツとしては神的な視点、もしくは視点者の見たもの、見えるもの、さらにはその人物の心情などを描いて、読者をその小説の世界へと導いていく。

神的視点、もしくは人物視点で見えるものを書くのが「情景描写」です。

【芦村節子は、西の京で電車を下りた。
ここに来るのも久し振りだった。ホームから見える薬師寺の三重の塔も懐かしい。塔の下の松林におだやかな秋の陽が落ちている。ホームを出ると、薬師寺まで一本道である。道の横に古道具屋と茶店を兼ねたような家があり、戸棚の中には古い瓦などを並べていた。節子が八年前に見たときと同じである。昨日、並べた通りの位置に、そのまま置いてあるような店だった。】

松本清張『球形の荒野』の書き出しです。

主人公の芦村節子の紹介をしつつ、彼女の見た目で奈良の古都の情景、たたずまいが描写されています。

情景描写はその人物の視覚が中心となって綴られます。

ただ、どうしても情景描写というと、見えるものを描くと思いがちです。

人間には、視覚だけでなく、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という五感があります。巧みな描写、さらには心理や人物描写へともなる表現のコツは、この五感を巧みに取り入れることです。

引用した『球形の荒野』の文章はこう続きます。

【空は曇って、うすら寒い風が吹いていた。が、節子は気持が軽くはずんでいた。この道を通るのも、これから行く寺も、しばらく振りなのである。】

最初の表現だと、節子の見た目で“おだやかな秋の陽”の古都に導かれた感覚ですが、“空は曇って、うすら寒い風が吹いていた。”で、晴れきっているだけでないらしい肌感覚が伝わります。

五感による描写は、また次回。

出典:柏田道夫 著『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(月刊シナリオ教室2015年12月号)より。

こちらのコーナー、次回は12月の第2土曜日に掲載いたします

※ブログ「小説の描写について 情景描写Ⅰ」はコチラからご覧ください。

※ブログ「小説の描写について 情景描写Ⅱ」はコチラからご覧ください。 

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