背中
シナリオ・センター代表の小林です。「参ったね~」としかいえません。この蒸し暑さはなんでしょう。
講師も受講生の方々も、真っ赤な越して、フーフー言いながら入ってきます。
生き残れるのかと本気で思います。体調を壊す方は多いでしょうね。こういう気候では、無理しないでマーペースで行くことが生き抜く方法ではないかと思います。
パルコで「先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~」を観劇しました。
小津安二郎監督の話しで、私の大好きな俳優中井貴一さんが演じるというので、どうしても観たいなぁと思っていました。
私自身はまだ幼かったので、小津監督が活躍していた頃をよく知りはしませんが、映画全盛期のあの華やかさとちょっと退廃的な撮影所の雰囲気は知っているので、ひどく懐かしく、映画の良き時代のにおいを感じながら観劇しました。
お芝居は、小津監督と縁のあった女性たちを幻想的に出しながら、小津監督の人となりを描いています。あの頃の映画人って、女性にもてたのですね。(笑)
このお芝居にも出てくる小津監督の盟友脚本家野田高梧(舞台では野崎)さん。
監督と共に次々と名作を生み出してきた脚本家で、脚本家をめざす方ならどなたもが一度は読まれたことのある「シナリオ構造論」を書かれた方です。
お芝居を観ながら、野田高梧先生のお葬式の時に、あちらこちらの木陰で泣きながら見送っていた玄人筋らしい女性たちがいて「さすが野田先生!」とうらやましく見ていたと生前の新井が語っていたことを思い出しました。(笑)
映画全盛の頃のエピソードらしいですね。
そんなことも思い出しながら舞台を堪能してきました。
グッナイ・ナタリー・クローバー
作家集団の須藤さんのお嬢様が小説すばる新人賞を受賞されました。
須藤アンナさん「グッナイ・ナタリー・クローバー」(集英社)
須藤さんは、大学の課題だったかでシナリオ・センターに取材にいらしたこともあり、聡明なお嬢さんだなあと思っていましたが、失礼ながらなんとお父様を越えて(笑)、小説家としてデビューされました。
お父様からいただいて、読ませていただいたら、久々に面白い翻訳本に出会った感じがしました。
霧の町チェリータウンにいる13歳のソフィアのお話しです。
母親が家出したために父親の酒場を手伝いながら毎日をうつむきながら過ごしているソフィア。
この町は「壊れていないなら直すな」がモットーで、町の人のほとんどが毎日をただただスルーするがごとく生きている。
家出でした母のせいでより支配的になった父と見て見ぬふりをする兄と父を怖がる町の人々。
夏休みのある日、向かいの家にナタリー・クローバーがやってくる。
なぜか「毎週生まれ変わる」ナタリーに振り回されながら、一緒に自分だけの町の地図を作るナタリーと過ごすうちに、強く惹かれていき、自分の世界を変えようと決心する。
文体と言い、設定と言い、日本の作家の書く青春ものとはまったく違った形で、知らず知らずのうちに物語の中に惹きこまれてしまうすごい力を持った小説です。
帯には「2025年再注目のエバーグリーンな青春小説誕生!」と書いてありますが、まさにです。不滅です。
なぜか私の中ではサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を思い出していました。
確か須藤さんはアニメ好きとお聞きしましたが、この「グッナイ・ナタリー・クローバー」、アニメ映画にしたら、最高なものになるような気がします。