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表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

またね。

天間荘の三姉妹

天間荘の三姉妹

シナリオ・センター代表の小林です。もう10月です。暑さは少し残っているものの空気はすっかり秋、金木犀も香っています。
なぜか今年は多くの方が亡くなられました。
先週は、プロレスのアントニオ猪木さん、落語家の三遊亭円楽師匠が、百歳寿命時代といわれているのに70代でいらっしゃるおふたりが亡くなられました。
まだまだとおふたりとも、やりたいことがたくさんおありになり、そのために頑張って頑張って闘病されていたのにです。世の中の不条理を感じます。

今日は、10月28日公開の「天間壮の三姉妹」の試写を拝見しました。
この映画は、今日から始まった朝ドラ「舞い上がれ!」の脚本を桑原亮子さん、佃良太さんのシナリオ・センターの同志と共に描かれていらっしゃる嶋田うれ葉さんの脚本です。
とても難しい脚本づくりではなかったかと思います。
映画が難しいという意味ではありません。
うまい役者さんたちが、それぞれのキャラクターを見事に演じられていて素晴らしい感動的な映画になっています。
ですが、この映画、現実のお話しではなく、原作は高橋ツトムさんの「天間荘の三姉妹~スカイハイ~」、東日本大震災で津波にのまれて亡くなられた方々の側から描いたお話です。
それをどのように描くかは、原作があるとはいえ、映像化にするには大変だったと思います。

嶋田さんは
「原作の第一印象は、何か面白い原作があるぞというノリではなく、『これは世に出さないといけない』という使命感のようなものを感じました。
私は震災直後から女川町へ度々取材なのでうかがっていて、いつか女川町を舞台にという想いもあって、実際に町の方にこの原作を読んでもらったら『こういう世界があったらどんなに救われるだろうね』と言ってくださって、それが脚本づくりの私の原動力となりました。
亡くなった人たちのお話ですが、今生きづらさを抱えている人たちに届けたいという想いがいちばん強く、それを伝えることに一番心を砕きました。」
とおっしゃっています。

「天間荘の三姉妹」は天界と地上の間にある町三ツ瀬町にある老舗旅館天間荘が舞台です。そこは、臨死状態の人が「肉体に戻るか、天界へ旅立つかを魂の疲れを癒しながら決める場所」なのです。
そこで、姉妹とその母親は旅館を仕切っているのですが、臨死状態の決断をしなければならない腹違いの妹がやってきます。そこから物語は始まります。
お話はご覧になった方がいいと思うので、これ以上言いませんが、誰もが抱えている亡くなった人への想いが、暗く重い形ではなく、自然に受け入れられる安らかな気持ちで伝わっていくお話です。

亡くなった人を想う作品は多いですが、亡くなった側から書かれた作品はあまりありません。
私の知る限りでは、内館牧子さんが描かれた東北放送60周年記念ドラマ「小さな神たちの祭り」(2019)くらいではないかと思います。
このドラマも、亡くなった人が「大丈夫、幸せに過ごしているから、遺された家族たちは元気でいて欲しい」と伝えるお話で亡くなられた側を描いています。それは感動を呼び、文化庁芸術祭優秀賞はじめ多くの賞を受賞されました。
余談ですが、内館牧子さんの「小さな神たちの祭り」(潮出版社刊・2021)は小説となりました。

遺されて生きている者たちは、辛い悲しい寂しい想い、亡くなった人たちへの後悔を山ほど抱えているものです。
この映画は、遺されてしまった、今を生きている私たちに「こうやって生きていていいんだね」と思わせてくれる安らぎとパワー、生きる力をきっと見てくれる人たちに授けてくれることでしょう。
「この世界の片隅に」の製作スタッフとハリウッドで活躍する北村龍平監督、脚本の嶋田うれ葉さんがタッグを組み、それをのん、門脇麦、大島優子、寺島しのぶ、柴崎コウさん他の素晴らしい俳優陣が極限の世界を作り上げました。
東日本大震災で亡くなられた方々、アントニオ猪木さん、円楽師匠やそして身近に亡くなった方々が遺してくれたものを繋いでいくのが、私たちの役目ではないかと想いを新たにしました。
「ひとは生きていく。いのちよりも長く。」(『天間荘の三姉妹』より)

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