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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

人間の進歩

粘土板に書かれた人類最古の文字 楔形文字

紀元前

シナリオ・センター代表の小林です。9月は今日で終わり、明日はもう10月。衣替えです。
ちょっとまだウールは暑い気がしますが、富士山は初冠雪したというニュース。着々と冬に向かっているのですね。

今日は、「人類と福祉 先史時代、古代オリエント、旧約聖書」という立教大学名誉教授で古代オリエント博物館館長の月本先生の講演を聴かせていただきました。
今まであまり興味のなかった世界ですが、「面白い!」お聴きして、ホント、「ちむどんどん」しました。
31000年前旧石器時代に外科手術を施された人骨が発見されたというお話から始まって、この人骨が「人類社会は、他の動物と違って、気の遠くなるような昔から、障碍を抱えた仲間を保護してきたことを明らかにしつつある。」ものだというのです。
前2350年頃のウイルニムギナの改革碑文には、社会的に弱い立場にある人達、視覚障碍者などへの配慮と保護が表明されて、それから2世紀後の古代メソポタミアの法典でも、旧約聖書でも「社会的弱者への保護」を定めているのだそうです。
人類文明の発祥の地といわれる古代オリエントは福祉の面でも、歴史の先駆けなのです。
「善を行うことを学び、裁きを実行して、
搾取する者を懲らしめ
孤児を義しく裁き、寡婦の訴えを弁護せよ。(孤児、寡婦は弱者の代名詞です)
支配者らは無慈悲で、盗人の仲間となり
みな賄賂を喜び、贈り物を強要する。
孤児の権利は守られず、寡婦の訴えは届かない。(イザヤ所1章17・23節)」

古代イスラエルの預言者の言葉は興味深く、まったく今の世の中を映しているような・・・誰といわなくても、まさに今そのものですよね。
先史時代のやさしさが人類の本当の姿だと思いたい。いつから人類はやさしさを失ったのでしょうか。

紀元前4000年の頃農耕が始まり、メソポタミアでは粘土を板上にして文字を刻んだそうで、実物を見せていただいたのですが、楔形文字がくっきりと書いてある石板。こんな貴重なもの手に取っちゃった。(あ、直に触ってはいません。)

燐光のイルカたち

昨夜は青年座さんの「燐光のイルカたち」を観劇してきました。
作者のピンク地底人3号さんが、パレスチナ自治区を訪れた経験を基にして書かれたそうです。

舞台は、高さ8メートル幅2メートルのコンクリートの壁が連なってみえる、古ぼけたコーヒーショップ。
イスラエルがパレスチナ側を切り離す分断壁をイメージさせる。
北と南を分断する壁が立っているすぐの南側にいるコーヒーショップのオーナー桐野真守のところに北から壁を越えてやってきた及川凛が夕立から逃れるためにお店に入ってくる。
一目見た瞬間、今はもういない弟のひかるを重ね合わせる真守。
父も母も友人も北軍の兵士に惨殺された真守が懸命に守ってきたものは、失ったものはいったいどんな壁だったのか、弟をなぜ失ったのか・・・目まぐるしく変わる過去と現在に、私達が持つ見えない壁を感じさせるお芝居でした。
演出の宮田慶子さんは「分断と境界と囲い込みと拒絶という、『なぜ人間は自分の領域を主張するのか』という根元的な問いかけをしてくる。『生きるための自分の足元』への渇望が滲み出る。
ベルリンの壁こそ崩れ去ったが、世界では今、壁が増殖しつつあり、さらに堅固、そしてその全長を伸ばし続けているものも多い。
防御のためなのか、排除のためなのか、力の顕示のためなのか、『壁』はあちらこちらを区分けてしまう。
見えない『壁』もたくさんある。
コロナ禍以降、ただでさえ、他者と触れ合う機会は激減した。立場の違い、感染の違い、経済状態の違い、見えない差別、区分けはすっかり浸透した。
息苦しい今の世の中に、この舞台を発信する現場を目撃してほしい。」

宮田さんの言うように息苦しい今よりも、紀元前の世界の方が、今の世界よりずーっとやさしかったと、人類の発展は多くの大事なものを失ってきたように思います。
だからこそ、是非「燐光のイルカたち」ご覧ください。

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