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物語を作るときの重要事項/人物関係がドラマを生み出す

物語を作るときの重要事項/人物関係がドラマを生み出す

よく連続ドラマが始まるとき、人物相関図が紹介されますよね。それは人物関係にドラマがあるからです。そこで今回は、「じゃあ、人物関係ってどう書けばいいの?」というお話をご紹介。脚本家志望者の方も、初心者の方も、ぜひ参考にしてください。

このコーナーでは、「自分にはシナリオを書く才能がないかも……」と悩んでいるかたへ、面白いシナリオが書けるようになるちょっとした“術”を、シナリオ・センター講師・浅田直亮著『いきなりドラマを面白くする シナリオ錬金術』(言視舎)&『月刊シナリオ教室(連載「シナリオ錬金術」)』よりご紹介いたします。

『おくりびと』で描かれる夫婦と親子

今回は、まず映画『おくりびと』の例から始めます。

本木雅弘さん演じる元チェロ奏者の主人公は、帰郷し、ひょんなことから納棺師の職に就きます。死後2週間たった遺体を運ばなければならなかったり、噂で主人公の仕事を知った幼馴染から「もっとましな仕事さ就けや」と白い目で見られたり、不良学生に説教していた男に指さされ「この人みたいな仕事して一生償うのか?」と言われたりしながらも、経験を積んで一人前になっていくにつれ納棺師としてのやりがいを感じるようになるが……というストーリー。

まさに納棺師という職業を題材とした、お仕事ドラマです。

しかし、それだけではありません。より観客が感情移入しやすい“ドラマ”()がプラスされています。

一つは夫婦のドラマです。

広末涼子さん演じる妻に、主人公は納棺師の仕事に就いたことを言えません。でも、どうもおかしいと思った妻は主人公が遺体役をやらされているDVDを見つけ、納棺師の仕事をしていることを知ると、そんな仕事は辞めてくれと頼み、何とか説得しようとする主人公に「汚らわしい!」と言って、実家に帰ってしまいます。

が、ある日、主人公が帰宅すると妻がいます。そして、妊娠したことを告げられます。喜ぶ主人公に妻は再び納棺師の仕事を辞めてくれと迫ります。「自分の子に自分の仕事を堂々と言える?」と。そこへ幼馴染の母親が亡くなった知らせが入り、妻は主人公の納棺の仕事を目の前で観ることになって……というドラマです。

もう一つ、クライマックスは親子のドラマです。

子どもの時に主人公と母を捨て出て行った父親が亡くなったという知らせが入ります。遺体の引き取りすら拒否しようとする主人公ですが、同僚や妻に説得され父親と対面します。それでも父親の顔を思い出せない主人公ですが、父親の納棺を自ら行います。

と、父親の手に石が握られています。それは幼かった主人公と父親が「石文」として交換した石でした。その時に父親からもらった石を主人公は今も持っています。主人公が渡した石を父親も、ずっと持っていたのです。主人公は父親の顔をはっきりと思い出し涙を流します。

この夫婦と親子のドラマがあるからこそ、アカデミー賞はじめ海外でも高く評価されたのかもしれません。

“ドラマ”についてはこちらの記事をご覧ください↓
「ドラマとは何か。改めて考えてみました。」

「物語を書くときの基本知識/“ドラマがない”とは」

人物関係がドラマを生み出す

『おくりびと』の夫婦のドラマや親子のドラマといった、より多くの観客や視聴者が感情移入しやすいドラマをプラスしてみようというのが今回のシナリオ錬金術です。

特に、親子のドラマというのは強力です。親子関係のない人はいません。ということは誰にでも親子のドラマがあるはずなのです。

子育てというのは恐竜の時代からあったようです。ほとんどの恐竜は卵を産みっぱなしだったようですが、マイアサウラという恐竜は、化石から子育てしていたであろうと推測されています。ということは親子のドラマは恐竜の時代からあったのかもしれません。

というわけで今回は、「子育て恐竜マイアサウラの術」!

親子のドラマに限りません。

たとえば、映画『ロッキー』はボクシングのドラマですが、恋愛のドラマがプラスされています。

映画『砂の器』は殺人事件を追う刑事と犯人を描いたサスペンスドラマであり、ハンセン病に対する社会的偏見を扱った社会派ドラマでもありますが、恋愛ドラマと親子のドラマがプラスされています。

テレビドラマ『東京DOGS』はコメディタッチの刑事ドラマですが、恋愛ドラマと親子のドラマがプラスされています。

テレビドラマ『アイシテル~海容~』は犯罪加害者と被害者の社会派ドラマですが、母と子のドラマを中心に家族を描いたホームドラマでもあります。

テレビ雑誌で、新しく始まる連続ドラマが紹介される時に欠かせないものの一つがチャート式に図解された人物相関図です。人物相関図にはドラマがあるからです。人物関係がドラマを生み出すと言っても過言ではありません。

ドラマ『JIN~仁~』の人物関係

もう一つ、テレビドラマの例を観てみましょう。

『JIN~仁~』は、大沢たかおさん演じる脳外科医の主人公が、幕末の江戸にタイムスリップしてしまうという設定で、当時は死ぬしかなかったケガやコレラなどの病気を、現代の医学知識で治療しようとします。現代のような医薬品や医療器具がない状況で命を救えるかどうかという、いわばSF+時代劇+医者もののドラマです。

そこに人物関係のドラマがプラスされています。恋愛です。

現代では、中谷美紀さん演じる恋人がいます。主人公が手術に失敗し植物人間になっていますが、歴史を変えることで恋人の命を救える可能性が出てきたり、逆に恋人の存在そのものがなくなるかもしれなかったりして、主人公を葛藤させます。

幕末では、綾瀬はるかさん演じる咲という女性が一途に主人公に想いを寄せます。タイムスリップした主人公を家に住まわせ、食事などの世話をするほか、主人公の手術を看護士のようにサポートしたりもします。

もう一人、野風という花魁が主人公を愛します。中谷美紀さんが一人二役で演じていて、つまり現代の恋人に瓜二つという設定で、主人公は戸惑いつつも……というドラマがあります。

特に、現代の植物人間になっている主人公の恋人は、原作にはなく、テレビドラマ化された時に新たに加えられた人物で、より恋愛ドラマを強くしています。

恋愛ドラマというのも親子のドラマに負けず劣らず強力です。人を好きになったことがないという人は、まったくいないわけではないかもしれませんが、ごく少数でしょう。なので誰もが感情移入しやすいドラマなわけです。

さらに第1話では親子のドラマが盛り込まれています。

タイムスリップした主人公は、小出恵介さん演じる橘恭太郎という旗本が何者かに頭を斬られるところに出くわします。恭太郎を橘家に運び込み手術しようとすると、麻生祐未さん演じる母親が白装束で現れます。

「もし恭太郎を死なせたら、この場でそなたを殺し私も自害します」と懐刀の鯉口を切ります。そして、手術の間、泣き叫び、ついに主人公が頭蓋骨を切開しようとすると「頭をカチ割って助かるわけがなかろう!」「人殺し!」と主人公に斬りかかってくるのです。

ちょっとコミカルに描かれてはいますが、子を思う母親の気持ちが、手術を成功させようとする主人公の障害物になってドラマを生み出しています。

そして、第1話のクライマックスは、往来で枝豆を売る男の子と母親のドラマです。馬に蹴られそうになった男の子をかばって母親は額を蹴られ倒れます。当時は、もう助からない状態です。「馬に蹴られて死んじまえ」という言い方がありますが、まさにリアルな言葉だったわけです。

主人公は母親の命を救おうと母親を番屋へ運びます。ここで咲が橘家から番屋へ手術道具を運ぶという恋愛ドラマが盛り込まれます。大名行列に行く手を阻まれると着物の裾をめくって「産婆です」と言って突破し、雨が降ってきて足元が悪くなり転んで泥まみれになりながらも手術道具を届けます。

しかし、母親が目を覚まし「お医者さま…どうか、おやめ下さいまし」と言います。「私のような貧乏人には薬代を払うことはできませんから」と。すると男の子が「お代はオイラが払うよ、働いて必ず。だから、どうか、どうか、おっかさんを助けてください!」と頭を下げます。

さらに、手術を麻酔薬なし行わざるをえなくなり、あまりの痛みに母親は意識を失いかけ、やはり、このまま手術を続けるのは無理かと思われた時、男の子が「チチンプイプイ」と痛みを和らげるおまじないを唱えます。「チチンプイプイ、チチンプイプイ、チチンプイプイ」と何度も繰り返し、母親の手を握って励ますのです。

これほど泣けるクライマックスは、SF+時代劇+医者もののドラマでは難しいかもしれません。親子のドラマならではと言えるでしょう。

あなたが書いている(書こうとしている)20枚シナリオやコンクールのシナリオには、どんな人物関係のドラマがありますか?もう一度、どんな人物関係のドラマを描くのか、再確認してみてください。

出典:『月刊シナリオ教室』(2010年7月号)掲載の「シナリオ錬金術/浅田直亮」より

次回8月27日に更新予定です

『いきなりドラマを面白くするシナリオ錬金術』はこちらのシナリオ・センターの書籍一覧で。

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