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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

家の重さ

家族セッション(講談社刊)

権利

シナリオ・センター代表の小林です。ここのところ、コロナが沈静化したのはしたのはいいけれど、やたらと日本中あちこちで地震が多く、今日は阿蘇山も噴火、なんとなく不安な気分です。
ろくでもないことばかりしている世界中をみていると、神様がそろそろ怒り心頭になっても仕方がない気もして、無宗教な私も神仏に祈りたくなる昨今です。

なにか心躍る話はないものかと。本当だったら眞子様のご結婚は、コロナ過の一条の光のように、手放しで喜ぶおめでたいことだと思います。
最初はみんな大喜びって感じでしたものね。バッシングの急先鋒のマスコミだって。
私は、お相手のどうのこうのはよくわからないのですが、皇室ということで、いろいろ取り沙汰されて、眞子様は気の毒に思ってしまいます。
眞子様には憲法で守られるべき基本的人権、婚姻の自由はないのだろうか。
あまり皇室に興味がなかった私ですが、権利についてとても気になり始めて、急に日本憲法と皇室典範を読んでみようかと思ってしまいます。
こういうきっかけで今まで知らなかったこと知ろうと思うことも悪くはないのかも。
女性の地位って、女性天皇を認めるところから始まるかもしれないし・・・。(自民党に叩かれるかな?)
美智子上皇后様が、「初孫が皇室を離れていくことを寂しく思う」と87歳を迎えられたお誕生日におっしゃられたとのことですが、バッシングされながらすべてを捨てての結婚を、どんな想いでご覧になっているのでしょう。
お言葉を聞くとふつうの祖母が孫を想う気持ちと同じですね。相田みつをさんじゃないけれど、人間だからこそじゃないでしょうか。
それにしても、家に縛られて結婚に障害というのは、婚姻届けに判は押しても夫婦じゃないというドラマ(「婚姻届に判を捺しただけですが」TBS・出身ライターおかざきさとこさん脚本)もあるように、ドラマや小説でも古い感じはしますが、現実では、未だに婚姻の自由も基本的人権も守られていない人は多いようです。
ジェンダー問題、夫婦別姓とか、まだまだ基本的人権を基に考えることはありそうです。

家族セッション

家とは家族とは、どういうものなのか、児童書なのに深く考えさせられる内容でした。
作家集団の辻みゆきさんが、単行本を出しました。
「家族セッション」(講談社刊)
辻さんはお持ちくださった時、児童書とおっしゃっていましたが、内容は大人が読んでも心響くお話です。
赤子の時に、すり替えられた3人の少女たちの物語なのです。
赤ちゃんの取り違え事件というのは、第2次ベビーブームの時に多発し、社会問題になりました。ちょうど私が子供を産んだ頃なのでよく覚えています。
「ねじれた絆~赤ちゃん取り違え事件の17年」は04,13年とテレビドラマになり、福山雅治さん主演のカンヌ映画祭審査員賞を受賞した「そして父になる」も話題になりました。
今回は取り違えられたのではなく、3人の赤ちゃんの名前をすり替えるという犯罪から始まったお話です。故意にすり替えて赤ちゃんの人生を変えてやろうとしたという犯人の発想がこの物語を奥深いものにしています。

千鈴、姫乃、菜種の3人はそれぞれ環境の違った家に育っていたのですが、中学を進学する春、3人は「赤ちゃんの時にすり替えられていた」という衝撃の事実を知らされます。それも中学では3人が同じクラスに。
性格も育ちも違う3人が、三者三様の思いを抱え、悩み、葛藤しながら、お互いの家でホームステイを始めることに。
大人と少女たちの思いはちょっと違っていて、懊悩しながらも親たちは本当の子供と暮らすことを選び、子どもたちはそのまま育ての親と離れたくない、暮らしたい。
なので、少女たちはある行動に・・・。

親は自分の子ではないことでの葛藤、自分の娘として育てた子への愛情はあふれるほどありながら、自分の血を分けた子への想いも濃い。
中学1年生という年頃はとても中途半端で、13年も家族として暮らした年月は途方もなく重い。
この設定がうまいので、子どもたちの葛藤がよく伝わります。
そして、それぞれ金持ちであったり、定職を持たないシングルファーザーであったり、平凡な家庭であったり、生き方も考え方も違う環境に育っているというのが、より面倒にだから面白くしています。
育ての親と暮らすのがいいのか実の親と暮らすのがいいのか、本当になにが一番いいのか・・・それがわからないがゆえに葛藤を重ねる登場人物たちに共感するのです。
大人の本です。

辻さんは「ゆずのどうぶつカルテ⑧」(講談社刊)も出されており、これは前にもご紹介した叔父の動物病院で、動物を通して様々な経験をする小学生森野柚ちゃんのお話で、もう8巻目となりました。動物との人とのふれあいが心温まるエピソードを紡いでいます。
ここまで長く続いているということは、主人公のキャラクターと動物たちと家族との絆が、あるあるを通り越して感動へと持っていく辻さんの構成力ではないかと思います。
9巻目も楽しみです。

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