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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

他人を想う

こどもホスピスの奇跡~短い人生の『最期』をつくる~(新潮社刊)

いも殿さま

シナリオ・センター代表の小林です。確かに猛暑ですが、どことなく残暑(?)の気配、夏の終わりを感じます。
それにしても、コロナの蔓延だけでなく、土砂災害もあちらこちらでおきて、日本はまさに最大級の災害真っただ中という気がします。

最大危機だというのに、お上たちののんきさ加減は、本当にこの人たちには心というものがあるのか、他人に対する想いというものを持ち合わせていない人ばかりに見えるのですが・・・。
総裁選の事ばかり頭にあるお上たちに何かを期待しても仕方がないのだと諦めがどうしても出てしまいそうになります。
いや、諦めてはいけない。おかしいと思うことには声をあげて、いけないと思うことにはNOを突きつけることが、唯一下々のやるべきこと、下々にできることなのですから。
選挙も近いですし、二度と間違った判断を下さないように、愚かな忖度などをしない国民でありたいです。

土橋章宏さんの「いも殿様」(角川文庫刊)の文庫版がでました。
2019年に単行本として出されたものですが、今、こういう時だからこそたくさんの人に読んで欲しいです。
諦めてはいけない、きっと、どこかに「いも殿様」がでてくるはずだし、そうすべく私たちは選べばいい、声をあげればいいのだから。
そんな気持ちになるお話しです。

「いも殿様」は、全国を襲った享保の大飢饉のときに、石見銀山の地に赴任した井戸平左衛門の物語です。
飢餓と悪政に喘ぐ石見銀山に赴任した井戸平左衛門は、農民たちの窮乏に心を痛め、自ら先頭に立ち、役人と商人たちの癒着を切り、義金募集、公租の減免を断行。そして、ウンカやイナゴなどの災害を防ぎ、抗夫と農民と心を一つにすることにも心を砕き、成功します。
そして、食料対策100年の計を立て、薩摩からからいもを必死の思いで手に入れ、この地方で初めてからいも栽培を始めます。
からいもを手に入れるために、銀の鉱脈を見つけるために、自分のお金を全部使い、着物は2枚だけ、刀も売り竹光、民のために清貧に甘んじます。
ですが、困窮はとどまること知らず、最後は、民のために幕府の米倉を開けて、責任をとって切腹します。

今、こんな為政者はいるでしょうか。爪の垢でも飲ませたい。
自分たちの事ばかり考えて棄民政策を平気でとるお上たち、一人でも亡くならないように即刻病院を立ち上げ、ワクチンをきちんと打てるようにし、困窮している国民に給付金を配ってください。
ご飯が食べられない子供がいるなんて、どんな最低な国なんですか。
お金の使いどころは、あなたたちの懐にではない!

こどもホスピスの奇跡

本当にお金を有効に使ってほしいところはいっぱいあります。
他人のこと、子供のことを本気で想い、広くアンテナを張り巡らして、世の中を見れる政治家がいればと心から思います。

ドキュメンタリー作家で小説家でもある石井光太さんの「こどもホスピスの奇跡~短い人生の『最期』をつくる~」(新潮社刊)が新潮社ドキュメンタリー賞を受賞されました。
「こどもホスピスの奇跡」は実際に大阪に創られた「TSURUMIこどもホスピス」のお話しです。
一般的にホスピスというと看取り場のように思われますが、確かにそれもあるのですが、最後の時間を豊かに過ごすための場所なのです。
子どもの場合は、特にその要素は強く、短い人生を治療や抗がん剤で苦しむだけでなく、楽しい時間を家族や友達と過ごせる場所という意味が大きいのかなと思います。
このホスピスの立ち上げで凄いのは、行政を当てにしていない民間の一般社団法人だということです。
ある意味、この国を象徴している創られ方だと思いました。

小児がんのお医者さんや患者の家族など力を合わせて作られたホスピス、幸いなことに日本財団から古い洋館を利用しないかという話から、ユニクロが初めた「子どもへの社会貢献事業」から資金を得て作られていく過程が、医者や看護師、保育士などの関係者、患者やその家族、支援者などの思いをつづりながら描かれています。
私が一番感動したのは、前例のないものを創りあげる困難さのなかで、片時も病気の子供たちへの心遣いを忘れない方々がつくりあげてきたということです。
オープンにあたって、限られた予算の中でタオルを選びます。
そのタオルは老舗ブランドの高級品。子供が大浴場や水遊びに使うだけなので、もっと安物でもと思う事務方に、理事の一人が言います。
「ホスピスは、患者さんや家族に美しい思い出を遺してもらう空間なんです。
これまで触ったことがないくらい柔らかなタオルがでてきたら、子供だって家族だって嬉しいですよね。心が安らぐ。
僕は、ホスピスはそういう場所にしたいんです。」
こういう素晴らしい志の子供ホスピスが2016年誕生した経緯が描かれているのですが、その後の経過も決してきれいごとではなく、スタッフは悩みながら、、身体だけでなく心にどう寄り添えるか、今も尚試行錯誤を繰り返しているようです。

石井光太さんと2011年日本大震災のドキュメンタリー「遺体」を描かれたときに、ミソ帳倶楽部でお話をしていただきました。
ニュースでも知らされなかったあの日3月11日どうなっていたのか、医者や消防資産や警察官の方々がどのよう動いたのか、マスコミも知らせられなかったむごいほどの現場の姿を描かれていました。
石井さんは、通り一遍な眼では決して見ない方で、そこに隠されている真実や嘘を見事に浮き彫りにされる作家さんです。
そして、弱者に対する向き合い方が半端ではないです。
この本は、石井さんの本の中では、ある意味善意にあふれた人々の葛藤を描いているやさしさの溢れる内容です。
ですが、石井さんは、一部の人だけが考えているだけではなく子供ホスピスの必要性、これからのことを、私たち自身も考える、想像する・・・そんな問いかけをされているのではと思います。
すべては他人ごとではない、いつか自分にもおきることだという認識をもつことが正しいかどうかはわかりませんが、少なくとも想像力を持って、世の中を見ていくことの大切さを改めて感じさせてくれました。

利用や寄付などを考えている方など詳細は「TSURUMIこどもホスピス」の公式HPをご覧ください。
http://www.chiildrenshospice.jp/

もう少しコロナが収まったら、石井光太さんにお話しをお聞きしたいと願っています。

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