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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

柏田道夫おすすめ 映画『 21ブリッジ 』を楽しむ 見どころ

映画から学べること

脚本家でもあり小説家でもあるシナリオ・センターの柏田道夫講師が、公開されている最新映画を中心に、DVDで観られる名作や話題作について、いわゆる感想レビューではなく、作劇法のポイントに焦点を当てて語ります。脚本家・演出家などクリエーター志望者は大いに参考にしてください。普通にただ観るよりも、勉強になってかつ何倍も面白く観れますよ。

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その35-
『パーム・スプリングス』過去の類似作を越えてオリジナルとする方法

今回ご紹介する映画『パーム・スプリングス』は、ジャンルとしてはいわゆる「タイムループ」(タイムリープとも)ものです。

SF・ファンタジーの人気ジャンルに「タイムスリップ」or「タイムトラベル」ものがあって、「またか」と思うほどに次々と新作が登場しています。これらの多くは過去の有名人とかが現代に現れて、というパターンか、逆に現代人の主人公(たちのことも)が、戦国時代や江戸時代とかにタイムスリップしちゃって、のどちらかに大別できます。

この「タイムスリップ」ものは、シナリオを勉強している人は、一度は書いてみたいと思うようで、たびたび出会います。いかにも話が作りやすいからですが、それだけにありがちと表裏一体の最たるアイデアといえます。よっぽどの新味がないと勝負できないわけです。少なくとも、「タイムスリップ」ものを書こうと思うなら、過去の名作をチェックした上で、オリジナリティを見いだすつもりで挑んでほしい。

さて、数多い「タイムスリップ」の中で、さほど多くないのがこの「タイムループ」ものです。過去とか未来に主人公が行ってしまうオーソドックスな「タイムトラベル(スリップ)」と違って、「タイムループ」は、同じ時間(過去)を何度も繰り返してしまう。

このパターンは少ないと述べましたが、もちろんそれなり名作(例えば小説の『リプレイ』)があります。ウキペディアとかでも詳しく解説されているので読んでみて下さい。『リプレイ』は主人公が、自分の過去のある時期に、繰り返し戻るのですが、この『パーム・スプリングス』は、同じ一日に戻って、永遠(?)にその日を繰り返してしまうという設定です。

この“同じ日ループ”作品の嚆矢は、1993年のハロルド・ライミス脚本・監督で、ビル・マーレイ主演の『恋はデジャ・ブ』だと思います。それより前(83年)の筒井康隆原作で、大林宣彦監督の名作『時をかける少女』も同じ日を繰り返す(こちらがリープものといわれる)物語ですが、無限“同じ日ループ”ではありません。

この“同じ日ループ”はその後に、トム・クルーズが謎の侵略者に殺されながらもまたループして戦い続けるというSFアクション仕立ての『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(原作は日本の桜坂洋のラノベ)。

最近では、主人公の女子大生が自分の誕生日の当日に、何度も同じ殺人者に殺される日を繰り返す『ハッピー・デス・デイ』。これはホラーテイストで、ヒットしたためにパート2も作られました。

前置きが長くなりましたが、『パーム・スプリングス』です。

カルフォルニアの避暑地パーム・スプリングスで、恋人と来ていたナイルズ(アンディ・サムバーグ)は、ある超常現象がきっかけで、同じ日を繰り返す無限ループの毎日を(すでに)送っている。そんなある一日、知り合ったサラ(クリスティン・ミリオティ)をループに巻き込んでしまう。実はサラだけでなく、もう一人“同じ日ループ”地獄を送っている人間がいることが分かって……

どうなるか? は映画を観ていただくとして、本作の新味はこの“同じ日ループ”を、複数の登場人物が経験しているという点でしょう。テイストとしては『恋はデジャ・ブ』と近いラブコメです。ナイルズとサラの恋愛であったり、生き方を見直して成長していくテーマ性も。

また、この設定のキモは、【起承転結】の【転】と【結】、つまりループの終わらせ方だったり、どうオチをつけるかという運びで、観客を納得させられるか? 本作はこれもバツグンにうまい。

ところで、初心者からされる質問に「同じ設定、似たアイデアがあった場合はどうすればいいのか?」があります。タイムスリップものは、まさにこれが多くなるのですが、その中の“同じ日ループ”ものであっても、キャラクターやテーマ、設定でいくらでも差をつけられるのです。

この『パーム・スプリングス』を上記作品と併せて観ると、ありがちを脱する突破口が見つかるはずです。

※YouTube
シネマトゥデイ
タイムループで全員の動きを把握!『パーム・スプリングス』本編映像

-柏田道夫の「映画のここを見ろ!」その36-
『21ブリッジ』名作刑事物からいいとこ取りをするアプローチ法

今回は現在絶賛公開中、このコラムではあまり取りあげていなかったジャンル「刑事アクション」の『21ブリッジ』です。

人気の高いミステリーの中でも、犯罪捜査のプロフェッショナルである刑事を主人公とする「刑事物」は、今や映画のみならずテレビドラマ(日本はもちろん、欧米でもシリーズ化が多い)でも一大ジャンルとなっているのは、皆さんもご存じの通り。

『21ブリッジ』の主人公デイビス刑事を演じたチャドウィック・ボーズマン(製作も)は、『42 世界を変えた男』で黒人大リーガー、ジャッキー・ロビンソン役で注目され、『ブラックパンサー』で大スターに躍り出たのですが、昨年の8月に43歳で夭折、最後の主演映画になってしまいました。

監督は大人気となったダークファンタジードラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のブライアン・カーク。夜のシーンがほとんどの本作で、独特の空気感、タッチが見事に活かされています。

さて、今回注目してほしいのは、この「刑事物」の複合的な描き方です。

述べたように、刑事が主人公で犯罪に挑む、解明するというお話はもう百花繚乱、出尽くしている感があります。それでも人気なので作られ続けます。テレビ局の企画担当者とかは、年柄年中「シリーズ化できる刑事物がないか?」と、血眼で探し続けていますし、欲しがっているはず。

皆さんが脚本家デビューしたとして、「新しい刑事物の企画を出して」とプロデューサーに頼まれるかもしれない。その時にどんなものが出せるか?まず第一に、主人公のキャラクター設定でしょう。どういう刑事にするか?職種であったり、経歴、専門性とかで違ってきます。

ちなみに「刑事物」といっても、刑事が探偵役となって謎(主に殺人事件)を解明していく「推理」がメインになるものと、刑事が凶悪犯とかと戦う「アクション」に大別できます。もちろん両者を融合させる作品もあって、『21ブリッジ』はそうした複合型といっていいでしょう。さらには、組織としての警察内部の汚職や不正を暴くといった「告発」ものもあって、その要素も取り入れています。

で、本作はこうした過去の名作刑事物のいわばいいとこ取りをしています。

そうした歴史を語り始めると、それだけで終わってしまうのですが、本作を観ながら思い出した映画をいくつか挙げると、スティーブ・マックィーンが孤独に捜査を貫く『ブリット』。クリント・イーストウッドが、ゴーイングマイウェイで犯人を追い詰める『ダーティハリー』。個性的刑事のジーン・ハックマンが、麻薬組織と戦う『フレンチ・コネクション』。アル・パチーノの刑事が、警察内部の不正に挑む『セルピコ』。そのアル・パチーノの刑事と、ロバート・デ・ニーロ率いる強盗団とが対決する『ヒート』などなど。

あるいは(刑事物ではなくギャングアクションですが)銀行強盗をしたら予想以上の現金があって、というウォルター・マッソーの『突破口!』の要素もしっかりと取り込んでいます。

『21ブリッジ』の評判として、「展開が読める」というのがあって、確かにデイビス刑事が最後に挑む巨悪は、というあたりは察しがつきます。ただそうだとしても、本作のおもしろさをけっして損なっていません。

シナリオの作りとしてもうひとつ注目したいのは、各主要人物の造型です。トップシーンは、主人公デイビスの原点、生い立ちのエピソードからですが、事件の発端となる強盗犯の二人も、いつの間にか彼らに感情移入してしまう。彼らだけでなく、主人公デイビス刑事を、これでもか、これでもかと“困らせて”そうした手法ゆえに感情移入をさせられるのです。

その事件の夜から一旦解決する朝までが、三幕方式の丸々二幕(この展開のスピード感も見事)で、三幕目としてのその後の解決編という構成も注目です。

ともあれ、『21ブリッジ』は過去の名作刑事物のオマージュともなっています。それはつまり、皆さんがプロデューサーから企画を求められた際に、こうした過去作を観ている(知っている)ことが大前提(当たり前)なのです。今のうちにしっかりと吸収しておきましょう。

※YouTube
シネマトゥデイ
チャドウィック・ボーズマン主演『21ブリッジ』予告編

※前回の柏田道夫おすすめ映画の記事はこちらからご覧ください。
■その33・34
柏田道夫おすすめ 映画『ノマドランド』を楽しむ 見どころ 

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