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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

作家

サンドの女 三人屋(実業之日本社刊)

141期シナリオ作家養成講座開講

シナリオ・センター代表の小林です。雨から雪になりました。東京感染者数はまた1000人を超えました。
ちょっとうす暗い冷たい日に感じますが、シナリオ・センターはめちゃ元気です。

今日は、141期シナリオ作家養成講座の開講。通学とオンラインの併用で行います。
私は、3階のホールにずらっと受講生の方が並んで座ってくださって、キラキラした目で見つめて下さる姿を拝見するのが大好きなのですが、今は夢です。(涙)
通学は、厳しく定員制限をして、ソーシャルディスタンスを保つようにし、3分の2以上の方はオンラインで受講していただいています。
コロナ禍で、オンライン併用になってから3度目のシナリオ作家養成講座です。
今までとは違った形になって、戸惑いながらも海外や北は北海道から南は沖縄まで津々浦々の方に受講していただけるようになったことは、本当に嬉しいことです。
遠方の受講生から、「東京の授業を受けられるとは思っていなかったので、嬉しい!」というお声をお聞きし、「コロナも悪いだけじゃない」(笑)と思えるゆとりも少しできてきました。
いつまでも終わらないコロナ禍で、シナリオ・センターも、講義だけでなく、案内書、教材などの配布、宿題の受け渡しの方法、ゼミのやり方、などなど大きいところから細かいところまで、様々な変貌を遂げています。
これをどうとらえるかはご意見のあるところでしょうけれど、失くさざるをえなくなったものを数えることなく、より良くなっていくこと、もっとできることをたくさん増やしていけるようにスタッフ一同が心して臨んでいます。。
新たな方々との出会いの今日、2021年1月初講座、気持ちを引き締めて臨みます。

サンドの女 三人屋

この町には、この商店街には、さまざまな出会いと別れがあり、人々の暮らしと物語があります。
原田ひ香さんの新刊本「サンドの女 三人屋」(実業之日本社刊)がでました。

「三人屋」の第1作は、お読みになられた方も多いかと思いますが、2015年に刊行されました。
「サンドの女 三人屋」は三人屋シリーズ、待ち望んでいた2作目です。

三人屋は、父が遺した喫茶店を、あまり仲が良くない三姉妹が朝昼夜と業態を変えて営業している不思議なお店。
朝は、三女が営む焼き立てパンのモーニング、昼は二女が絶品うどん屋、夜は炊き立てご飯が美味しいスナックを長女がやっていました。
「サンドの女」は、あれから3年経て、三人屋も変わりました。
三女の就職を機に、次女が朝から昼まで自家製玉子サンドを売り、夜は長女がスナックという二毛作になり、舞台もちょっと変化があります。

この小説は三姉妹に関わる人々で構成されています。
初回に出ていた三人屋に関わる商店街の人々も年を経て、登場人物の中で私が一番好きな長女の幼馴染大輔も3つほど歳をとり、三人屋を常にかき回す長女夜月は若いヒモができました。
三女の朝日は、就職し、結婚前提の彼氏が、シングルマザーの次女まひるも恋をして・・・新しい登場人物と初回の常連さんが入り乱れて、ますます面白くなりました。
新しく始めた玉子サンドは、ちょっとした行列ができる人気サンド。
卵3個の厚焼き玉子焼きにバター、マヨネーズ、粒マスタードを塗った焼き立てパンにはさんだものがインスタ映えするサンドイッチとして大評判になり、行列の店に。
売り切れたらそこで終わりという我儘な店ですが、お客様の要望でゆで玉子をつぶしてマヨネーズであえた定番玉子サンドとゆで玉子を半分にして切り口が見えるようにしたものと3種類作っています。。
夜は、半端なくたっぷりの突き出しとお酒、最後に炊き立てご飯に御新香と夜月の魅力のスナックに、昼も夜も常連の商店街の人々の人間模様が繰り広げられます。

実は、この本を原田さんが持ってきてくださったのは月曜日。
私は大概1日、2日で読んで、すぐにこの表参道シナリオ日記にアップするのですが、いつもよりちょっと遅くなりました。
それは「サンドの女」を読み終わったら、1作目の「三人屋」をもう一度読みたくなって、読み返してしまったからです。
三姉妹や取り巻く人々の成長をもう一度確かめたくなっちゃって、そうしたら、この世界観に再びどっぷりはまってしまった・・・。
三人屋を取り巻く環境や人間関係を、食べ物を介して感情の変化を感じさせるさりげない作りのうまさに。

原田さんのうまさの秘密って、いつもなんだろうと思っていました。
デビュー作の「始まらないティールーム」から「東京ロンダリング」「ランチ酒」「母親ウエスタン」「一橋桐子(76)の犯罪日記」等など、すべて読ませていただいていますが、純文学からエンタメまで多彩な小説を書かれます。
どれもこう来たかと思わせる凄さがあります。どうしてこんなに多彩な作品が創れるのか本当に不思議でした。
で、今回「サンドの女」を読んでいて、これだ!思いました。
この本の最後に明かされる玉子サンドの旨さの秘密「ひとさじの水」。
これこそが、小説家原田ひ香さんの秘密ではないかと。(勝手に言っています。すみません。)
常に原田さんしか持っていない「ひとさじの水」が効いているのだと。
「ひとさじの水」これを作家性と言います。

確か1作目のご紹介でも書かせていただいたのですが、原田さんの小説は、どれもドラマにしたら、最高に面白いです。
この「三人屋」はとくにドラマにしやすいし、ゼッタイに視聴者に喜ばれると思います。
登場人物のキャラクターの濃さ、舞台はレトロな喫茶店をとりまくちょっとすたれた商店街、美味しい食べ物たちの魅力、三姉妹の秘密。
帯に「心とお腹にじんわりしみる美味しいエンタメ」とありますが、まさによだれもののドラマになること請け合いです。
私の中では、すっかりキャスティングもできております。(笑)
メチャ豪華な役者さん勢ぞろいで、笑いあり涙あり、心癒されるエンタメの究極ドラマになりますよ~!!

原田さんはコンクールで受賞されたほどの脚本家さんでもあったのですから、ご自分でシナリオも描くというのもいいかなぁ。
あ、原田さんの同期で仲良しの浜田秀哉さんに描いていただくのもあり?・・・夢が広がります。
いえ、現実にしましょう。

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