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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

【マスタークラス・セミナー&ピッチング・コンテスト2020】
赤名伸さんの企画が Special Recognition Prize に

映画を作りたいかたは、次回の「MPA/DHU/TIFFCOMマスタークラス・セミナー&ピッチング・コンテスト」に応募してみてください。

「MPA/DHU/TIFFCOMマスタークラス・セミナー&ピッチング・コンテスト」は、モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)、デジタルハリウッド大学(DHU)、TIFFCOM(=東京国際映画祭と併催されるコンテンツマーケット)が開催するイベント。日本の若手映画製作者の海外展開支援を目的としています。

第一部では映画産業に関わるプロフェッショナルをゲストに迎えた講演会やトークショーを、第二部では同じく“プロフェッショナル”な方々が審査員を務めるコンテストです。

3年目を迎える今回のピッチング・コンテストでは、赤名伸さん(WEB作家集団)の「代わりに踏んで」がSpecial Recognition Prizeに選出。同時に、毎年11月にオーストラリアで行なわれるAsia Pacific Screen Awardsへ招待されることも決定しました。

このピッチング・コンテストは、映画にしたい長編企画(題材は自由/シノプシス2000字以内)を募集。一次審査はそのシノプシスをベースに書類選考。多数の応募の中から5企画が最終審査に進み、その応募者はイベント当日、会場でそれぞれ10分間、企画の特徴や内容をプレゼンテーション。いかに「この企画を映像化して観てみたい」と思わせるか、がポイントになります。

次回応募しようと考えている方は、このコンテストの詳細を知りたいですよね。
そこで、赤名さんに企画の内容やプレゼンテーションのことをお聞きしました。参考にしてください。

応募したキッカケ

――受賞の手応えはありましたか?

〇赤名さん:手応えは全くありませんでした。

というのも、過去の受賞者や今回決勝に残った人のうち、ほとんどが実際に映画を作ったことのある監督の方ばかりで、完全未経験の私はどう考えてもイロモノ枠だったからです。応募前は、とにかく大賞が欲しい気持ちで、出せるものには出すの精神で応募した記憶があります。

受賞の感想というか経緯としては、前述の通り、イロモノ枠だったため、決勝のプレゼンでは一か八かの博打に打って出たのですが、案の定、派手に失敗し、終了後は携帯でやけ酒とおつまみのテイクアウト手配に勤しんでいました。

悩んだ挙句、一口ヒレカツを予約したと同時に、突然、名前を呼ばれて壇上に招かれ、混乱したまま受賞の言葉、そして写真撮影……。

ヒレカツではなく受賞の瞬間を深く味わうべきだったと後悔しています。

――応募されたのは今回が初めてですか?

〇赤名さん:今回が初めてです。

――なぜ応募しようと思ったのですか?

〇赤名さん:設定自体は以前から考えていた企画だったのですが、コロナ禍でテーマにより今性が出た気がして、企画を真剣に詰めて応募しました。

というのが、半分は本音ですが、単純にどうしても一度大賞が欲しくて、出せるものには全て出しているというのがもう半分の本音です。

「誰に見せて、どういう気持ちになって欲しいのか、を明確にイメージ」

――「代わりに踏んで」はどういった内容ですか?

〇赤名さん:ラップが大好きで韻を思いつく類い稀な才能を持っているが声を失っている高校生と、声は出せるが自分の気持ちを相手に伝える勇気がない高校生が二人一組で、『ラップ甲子園(モチーフは高校生ラップ選手権)』を目指す——という話です。

前者の声を奪ってしまったのが実は後者で……という形で二人の主人公を軸に話が展開していきます。

――この企画をたてたキッカケは何ですか?
〇赤名さん:2つあります。

1つは、昨年MCバトルを見た事がキッカケですね。当初は悪口の言い合いの様なイメージがあり嫌悪していたのですが、知れば知るほどこれは言葉と脳のスポーツだと感じる様になり、ハマっていきました。R指定さんとか、本当天才だと思います。

2つめは、コロナ禍で見た中高生の涙です。生命の維持や経済活動に比べれば、彼/彼女らが打ち込んできたスポーツや勉学は、軽んじられても致し方ないものだと思います。けれど、彼/彼女らにとってはそれが全てだったはず。少なくとも自分はそうでした。

勉強なんていつでも出来る。スポーツなんてやってる場合じゃないだろう。そんな社会全体の声に、頭では理解出来るけれど、心が納得出来ないまま、言いたいのに言えない想いをグッと飲み込んでいるのではないかと。

“言いたい事を言えないもどかしさやすれ違い”に対して、せめて希望を見出せる作品を残したいと思って企画しました。

――特にどんなことを心掛けましたか?
〇赤名さん:この映画を、誰に対して見せて、どういう気持ちになって欲しいのか、という事だけは明確にイメージし続けました。

具体的には、学校生活や部活動を全て取り上げられ、投げやりになりかけている高校生が、「全部投げ出すのは、もう1回だけチャレンジしてからにしよう」と思ってくれる作品になれば、という事です。

「10分間で作品の魅力を伝える事と捨てる事の難しさを痛感」

――プレゼンテーションではどんなことを意識されましたか?

〇赤名さん:予告編でもTOPシーンでもいいので、実際に作っちゃうのが一番いいと思います。ただ、自分にはそれが出来なかったので、イメージ絵と言葉で補いました。

しかし、そこで大切になってきたのが、この映画の魅力は何だという事を極限まで絞り込む作業です。当たり前ですが、10分だと言いたいこと全てはとても言えないので。これが言うは易し行うは難しで本当に難しかったです。

・ストーリーを端折って単純に追うだけだとつまらない。

・けれど、感情が動く山場だけを言っても話の筋が通らない。

この2つの間で苦悩しました。

最終的には、「感動という言葉はあるが理動という言葉はない」というどこかで聞いた格言を信じて、山場をメインにしつつ大筋はギリギリ分かる様に話しました。

ただ、質疑応答では、「物語の感情とテーマは伝わったが承の部分の二人の関係性の変化の過程が全然分からなかった」と、鋭く一刀両断されてしまったので、正解はないと思います。

――実際プレゼンテーションをしてみて、難しかったことや新たな発見だったことはありましたか?

〇赤名さん:前述と被るのですが10分間で作品の魅力を伝える事の難しさですね。捨てる事の難しさを痛感しました。

ただ、この極限まで捨てる経験は、今現在、脚本や企画を書く時にとんでもなく役立っています。

また、挨拶からプレゼン内容、締めの言葉に至るまで(人によって服装までも!?)、この企画でしか出来ない事、言えない事はなんだと考え抜いて勝負する必要性も痛感しました。

例えば、挨拶ひとつとっても、自分はリハーサル前までは「海外のプロデューサーの方もいるので挨拶は英語にして気の利いたギャグでも言おう」などと考えていたのですが、それは誰でもどんな企画でも思いつく事で、イロモノ枠がそれをやってもお話しにならないと気付かされたのです。

この企画でしか出来ない挨拶とは何なのか――。

最後まで考え抜いた結果、血迷って爆音の音楽と共にラップで挨拶を行ったところ会場全体が凍りつきました。

なので、これまた何が正解か分かりません(苦笑)

「“自分の頭の中で絵は出来てるぞ!”という方は、ぜひ応募してみてください」

――映画を作りたいという生徒さんが沢山います。また、このコンテストに挑戦する生徒さんも年々増えております。その方々に向けてメッセージをお願いします。

〇赤名さん:憶測ですが、このコンテスト自体が一般の方が観覧されるコンテンツでもあるので、決勝進出者に企画案含め、類似したバックボーンの方は一人もおらず、多種多様な人が出場していると感じました。そういう意味では誰にでもチャンスはあると思います。

一次提出のシノプシスは、文字数が2000文字と通常(800字前後?)よりも長いので、物語の展開の中での山や谷を映像的に描く事が重要なのかなと感じました。

決勝に関しては、誤解を恐れずに言うと、プレゼンが人並み以下の方は一人もいなかったので、プレゼンなるものの経験自体が全くのゼロでブッツケ本番だと多少厳しいと思います。

なので、不慣れな方は恥ずかしくても本番前に誰かに一度聞いてもらう事を推奨します。
(派手に失敗した私が言っても説得力ないですが)

最後に私と質疑応答してくださったプロデューサー Thomas M. Horton氏の言葉を紹介します。

「僕も映画を作る時は、この会場よりもずっと小さな会議室で、ずっと少ない人数相手に、プレゼンテーションする事から始めるんだ。それでも、とても緊張するし、とても傷付く事もある。だから今、君がいかに大変な事をやり遂げたか僕には分かる」

受賞は“ヒレカツの霹靂”だったのであまり覚えていませんが、この言葉は今も心の支えになっています。「どうせ一次でゴミ箱行きだろうな」という言葉に押し潰されそうになった時、名の知れた映画に関わるプロデューサーの方でも同じ恐怖と戦っているのだ、と。

結果はどうあれ、国内外のプロデューサーや有名監督の前で、自らの企画を説明し賛否両論を頂く経験は得難いものになる事だけは保証します。映画監督の方はもちろん、そうでなくても、「自分の頭の中で絵は出来てるぞ!」という方は、ぜひ応募してみてください。

※「ピッチング・コンテスト2020」で、最優秀作品賞/MPA Grand Prizeに選ばれた仲村弦己さんのコメントもこちらからご覧ください。

※「ピッチング・コンテスト2018」では、シナリオ・センター出身生 齋藤栄美さんの「にじいろのうぶごえ」 がプレジデント特別賞 / MPA Grand Prizeに選ばれています。齋藤さんは2017年度の「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」に参加され、『トーキョーカプセル』で監督デビューされました。ndjcに関して公開講座でお話された模様も合わせてご覧ください

▼「ndjc 若手映画作家 育成プロジェクトからみる/現場で求められるシナリオ力」はこちらから

▼「若手映画監督 たちに聞く /「 ndjc」を経験して」はこちらから

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