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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

映画『 二宮金次郎 』/五十嵐匠監督と脚本家・柏田道夫さんに聞く

五十嵐匠監督(左)と脚本家・柏田道夫さん(右)

映画『 二宮金次郎 』/五十嵐匠監督と脚本家・柏田道夫さんに聞く

二宮金次郎といえば、銅像でお馴染みの「薪を背負いながら本を読み、勉学に励んだ金次郎少年」を思い浮かべるかたが多いのではないでしょうか。

成長した金次郎が何をしたか、知っていますか?

なんと、600以上の荒廃した村の復興を手掛けたのです。
にも関わらず、この偉業は残念ながらあまり知られていません。

いままで一度も描かれることのなかった、復興に命を懸けた金次郎の人生。
これを映像化したのが映画『二宮金次郎』です。
【原作は三戸岡道夫さんの『二宮金次郎の一生』(栄光出版社)】

今年2019年1月には金次郎の出身県である小田原で先行上映を実施。満員御礼の大盛況でした。

そしていよいよ、6月1日から東京都写真美術館ホールほか全国で順次公開となります。

監督を務めたのはシナリオ・センター出身の五十嵐匠さん。
脚本は同じく出身生で講師でもある柏田道夫さん。

今回、“初タッグ”となるお2人のインタビューを『月刊シナリオ教室2019年5月号』(4/26発行)に掲載します。ブログ用にもコメントをいただきましたので、一足お先にご紹介。

「なぜ二宮金次郎を題材に撮ろうと思ったのか」「どんなことを意識して脚本を書いたのか」等々いろいろお聞きしました。監督ならでは・脚本家ならではのコメント、いただいております!監督志望のかたも、脚本家志望のかたも、ぜひご覧ください。

「この映画のキャストの1人が“土”」
「今の日本人がすっかり忘れて、失いつつある“土”への思い」

――今回、映画『二宮金次郎』をなぜ撮ろうと思ったのですか?
五十嵐監督:薪を背負って本を読む二宮金次郎像の印象があまりに強かったのですが、青年二宮金次郎に関する資料を読み込み、金次郎の生きた軌跡を追うことでその魅力にとりつかれました。
復興にその命をかけたその姿はある意味「革命家」のように思えました。自分の道を突き進むその知られざる激動の生涯はきっと映画になると思いました。

〇柏田さん:私も薪を背負って勉強する勤勉な偉人と思っていたのですが、調べてみると、最初の妻に逃げられたり、農民に対して過剰な監視をしたり、癇癪を起こして村人を用水路に放り込んだり、と人間的なところがあって(二面性の共通性ですね)、人間くさい人だと分かりました。そこから江戸期に実際に生きていた、奮闘する等身大の闘う男としてとらえることができました。

――「ここは特に注目してほしい!」というシーンと言えば?
五十嵐監督:この映画のキャストの1人として「土」があげられます。私たちは、5枚の田んぼを信奉者に提供してもらい、土おこし、田植え、稲刈りのシーンを1年かけて撮影しました。その傍には二宮尊徳の実際にひいた「二宮掘り」といわれる用水路がひかれていました。
また、見所の1つに百姓たちの群集シーンがあります。それぞれのキャラクターを役者さんたちは自由にのめり込んで演じています。特にクライマックスの豪雨のシーンは見所の1つです。

〇柏田さん:それから、二宮の復興計画を潰そうとやってきた侍の豊田正作と金次郎が、極限でぶつかる雨中の畑のシーン。こちらも注目してほしいですね。

――脚本に関して、五十嵐監督はどのような部分を特に拘られたのでしょうか。脚本を担当した柏田道夫さんとの間で“指針”のようにされたことがございましたら教えてください。

〇五十嵐監督:百姓達を十把一絡げで描かないということです。百姓たちは、本百姓もいれば水飲み百姓もいるし小作人もいます。つまりは当時百姓の中でもカースト制度のようなものがあります。
そして、その地で生きる人間の営みがそれぞれある。よって、百姓達一人一人の存在を浮き彫りにするようにしました。特にこだわったのは五平でした。五平のこれまでの人生を考え、履歴書を作り台詞と行動にしていきました。

――柏田さんは脚本執筆の際、特にどのようなことを意識されましたか?
柏田さん:ただの偉人伝ではなく、家族を大切にし、行政官として村人の幸福を追求したということ。
さらに、今の日本人がすっかり忘れて、失いつつある「土」への思い。福島の地が(金次郎が復興したところも)原発事故で失われてしまったことを見ても、もう一度その精神を取り戻せという思いをこめています。

※You Tube
ストームピクチャーズ
2019年夏公開 映画「二宮金次郎」 先行上映会のお知らせより

――五十嵐監督は、監督になった今、シナリオ・センターで学んだことで役に立っていることはありますか?
五十嵐監督:ジェームズ三木さんにセンターで教わったことがあります。それは、必ずエンドマークまで書くということでした。シナリオこそ映画にとっての「命」だと思っています。
しかし、現場に立った時にシナリオが変化していくことがあります。シナリオは「生き物」だと最近つくづく思います。

――今回、お2人は初タッグですね。
〇五十嵐監督:気持ちよくキャッチボールさせていただきました。特に柏田さんの「やさしさ」が今回のシナリオの魅力の1つだと思っています。妻なみと金次郎の会話は素敵でした。

〇柏田さん:非常に脚本を大事にしてくれる演出家で、そこから思ってもみない映像や、役者さんの演技を引き出し、脚本を10倍にも活かしてくれます。

――シナリオ・センターには監督志望の生徒さんもいます。そういった“後輩”にぜひメッセージを。
五十嵐監督:最初から完璧を目指すのではなく、自由にエンドマークまで書くことが大切に思います。完璧なものは面白みに欠けると思っています。未完成なものにこそ観客の心を揺さぶる何かがあるのだと信じています。

――また、脚本家を目指す“後輩”にもメッセージを。
〇柏田さん:自分の書いた脚本、シーンやセリフが、それぞれのスタッフの力が結集し映像化、役者さんが生きた人間にしてくれる。それを目の当たりにするのは何物にもかえがたい喜びです。皆さんもぜひ味わってください。

※映画『二宮金次郎』公式サイトはこちらから。 

※そのほか脚本家・小説家・映画監督の出身生コメントはこちらから。
シナリオ・センター出身の脚本家・小説家・映画監督の方々のコメント記事一覧『脚本家・小説家コメント記事一覧/脚本や小説を書くとは』をぜひご覧ください。 

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