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小説の比喩表現 村上春樹の小説に学ぶ

「シナリオのテクニック・手法を身につけると小説だって書ける!」というおいしい話を、脚本家・作家であるシナリオ・センター講師柏田道夫の『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
今回は小説の比喩表現について、村上春樹さんの小説に学びます。比喩は「何かに例えればいい」というわけではないですよね。比喩表現を下手に使うと、自分の語彙力の乏しさが露呈してしまったり…、なんてこともあるからです。でも、読者に「言い得て妙」と思ってもらえる比喩表現ができれば、小説の魅力が増します。柏田講師が「比喩と言えばこのかた!」という村上春樹さんの比喩表現を読んで、感性を磨いていきましょう。

村上春樹の「比喩」は何が違うか?

小説の「比喩」表現について述べています。

以前、“比喩表現の巧者というと、私は真っ先に村上春樹が浮かびます。”と書きました。

このコラムで村上春樹論を始めると大変なことになりそうなので、少しだけにします。

ともあれ、村上春樹の小説における「比喩」については、芳川泰久・西脇雅彦著『村上春樹 読める比喩表現』(ミネルヴァ書房)という、とても読み応えのある労作があります。興味のある方は一読をオススメします。

春樹節の比喩表現

論より証拠、ここに引用されている春樹節の比喩表現をさらにいくつか引用(ごめんなさい、孫引きですが)してみましょう。

・“女の子の一人一人には綺麗な引出しがついていて、その中にはあまり意味がないがらくたがいっぱいつまっている。僕はそういうのがとても好きだ。”(羊をめぐる冒険)

・“シャワーを出て体を拭いてから、歯を磨き、鏡に向かって自分の顔を眺めてみた。右の頬にはまだ青黒いあざが残っていた。(略)両方の頬はげっそり落ち込んでいたし、髪は少し伸びすぎていた。まるで少し前に息を吹きかえし、土を掘りかえして墓場からはい出してきた新品の死体みたいだ。”(ねじまき鳥クロニクル)

・“ナツメグは上等なハンカチをそっと広げるみたいに微笑んだ。”(〃)

・“ウィスキーというのは最初はじっと眺めるべきものなのだ。そして眺めるのに飽きたら飲むのだ。綺麗な女の子と同じだ。”(世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド)

・“私は日比谷公園のわきに車を停め、公園の芝生に寝転んでビールを飲んだ。月曜日の朝の公園は飛行機が出払ってしまったあとの航空母艦の甲板みたいにがらんとして静かだった。”(〃)

・“私は彼女が公園の中のまっすぐな道を歩き去っていく後ろ姿を『第三の男』のジョセフ・コットンみたいにじっと見ていた。”(〃)

――こうした地の文だけでなく、セリフにも絶妙な比喩が駆使されていて勉強になりますよ。いくつか孫引き。

・“彼女は突然僕に向かって抱きしめてほしいと言った。
「どうして?」と僕はびっくりして訊いた。
「私を充電してほしいの」と彼女は言った。
「充電?」
「体の電気が足りないのよ」と彼女は言った。”(ねじまき鳥クロニクル)

・“「私、あなたのしゃべり方すごく好きよ。きれいに壁土を塗ってるみたいで」”(ノルウェイの森)

・“「怖いのよ」と彼女は言った。「なんだかこのごろ、ときどき殻のないかたつむりになったみたいな気持ちがするの」
「僕だって怖い」と僕は言った。「なんだかときどき水掻きのない蛙になったみたいな気持ちがする」”(国境の南、太陽の西)

――かっこいいですね。でも「こうしたキザな文章が嫌いなんだよ」というアンチ村上ハルキストの悪態も聞こえてきそうですが。

好き嫌いはともかくとして、村上春樹の小説にはいわゆる慣用句、常套句的な比喩はなく、彼独自の表現になっていることがお分かりでしょうか。

出典:柏田道夫 著『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(月刊シナリオ教室2017年5月号)より
次回は4月6日に更新予定です

※シナリオ・センターの書籍についてはこちらからご覧ください。 

※その他、比喩表現についてはこちらのブログを。
■「比喩表現の注意点」はこちらからご覧ください。 

■「小説の比喩表現 で映像イメージの善し悪しが決まる」はこちらからご覧ください。

※要ブックマーク!これまでの“おさらい”はこちらで↓
小説家・脚本家 柏田道夫の「シナリオ技法で小説を書こう」ブログ記事一覧はこちらからご覧ください。比喩表現のほか、小説の人称や視点や描写などについても学んでいきましょう。

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