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少ないセリフで描く には?マンガから学ぶ脚本技術『繕い裁つ人』

マンガにはシナリオ創作に役立つヒントが満載。魅力的なキャラクターとはどんなものなのか。設定だけで面白いと思わせるにはどうしたらいいのか。その答えはマンガにある!シナリオ・センターにてマンガ原作講座やSFファンタジー講座を担当する仲村みなみ講師の『マンガから盗めっ!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
今回取り上げるのは『繕い裁つ人』。注目していただきたいのは、少ないセリフに凝縮された「思い」。セリフが長ければ物語のテーマが伝わる、というものではないですよね?そうアタマでは分かっていても、いざ自分で脚本を書いてみると、「伝えなきゃ!」という思いから、ついセリフが長くなったり多くなったりしませんか?こちらのマンガで物語のテーマをどのようなカタチで表現しているのか是非分析してみてください。

マンガ『繕い裁つ人』(講談社)/池辺葵
注目ポイントはテーマ

町に響くミシンの音。ここは祖母の志を継ぐ市江が営む「南洋裁店」。その人だけの、一生着られる服づくりを信条とする市江と、店を訪れる客たちとの優しい物語。

コミュニケーションの基本はリスペクト

つい最近まで某ファッションブランドが好きだった。そこの服の80%はカラフルでフリルがヒラヒラしており、胸元ががばっと大きく空いていて、試着するとアメリカのTVドラマに出てくる中年女みたいになる。思い切り似合わん。

でもごくまれにシンプルで「しゅっ」としたラインの服もあり、宝探しみたいな感覚で服選びを楽しめたのである。

ところがある日のこと。いつものように服を物色していると、インカムつけた店員が何か喋りながら早足でやってきた。棚卸しがどうとかなんとなくキリキリした感じである。

と、彼女は私が手にとりかけていた服もろとも、私の目の前のハンガーにかかっていた全ての服をいきなり掴むと床にどさっと落としたのである。は? 何事? どうやら他の服と入れ替えるつもりらしい。だけどさー、私は買おうかなあと思ってたんだよ、その服。それを客に対して一言もなく床に落とすか?しかも、土足で歩く床の上にさー。

コミュニケーションの基本はリスペクトである。この店員さんは服にも客にもそしてたぶん自分の仕事に対してもリスペクトがないのだと思った。たかが服、されど服である。そんな時に見つけたのがこれ。服と着る人をリスペクトする仕立て屋の話だ。

※You Tube
KODANSHAcojp
映画『繕い裁つ人』予告編

少ないセリフに凝縮された「思い」

主人公の市江は祖母から受け継いだ小さな洋裁店でオーダーメイドの服を仕立てている。そのポリシーは「不特定のたくさんの人たちに」ではなく「特定のたった一人のために」。

だから、その腕に惚れ込んだ百貨店の企画部員・藤井がブランド化・ネットショップ化を提案しても取り合わない。「着る人の顔が見えない洋服なんて作れないわ」と。

1着1着、丁寧に対話するようにして作られ、年を重ねサイズやニーズが変わっていく客に合わせて仕立て直されていく洋服たち。客は言う。「10年20年おんなじ服と連れそうていけるのがどんなに幸せなことか」。

既製服のように、服に人が合わせるのではない。市江にとって服は「作品」ではなく、着る人たちのためにある。こんな市江の考え方に感化された藤井は、次第に客たち以上に市江の理解者となっていく。

「ああやっぱりこの人の服は善意で満ちている」。

そして市江もまた、藤井の自分の仕事へのリスペクトを感じ取っていく……。

うんちくマンガではない。サクセスストーリーでもない。

ここに描かれるのは市江や客たちが心に秘めるささやかだけれど大切にしている自分だけの生き方や考え方。それを誰かにリスペクトされることの喜び、リスペクトすることの美しさである。

少ないセリフに凝縮された「思い」をご堪能ください。

出典:仲村みなみ著『マンガから盗めっ!』(月刊シナリオ教室2012年9月号)より
※シナリオ・センターの書籍についてはこちらからご覧ください。 

※マンガ『繕い裁つ人』についてはこちらから。

※映画『繕い裁つ人』(公開済み)についてはこちらから。 

次回は2019年1月1日に更新予定

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