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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

多くの人が共感するのは、登場人物が持つ弱さと強さのバランスなのかと思う

クジラは歌をうたう(集英社刊)

遺したものは

シナリオ・センター代表の小林です。ニール・サイモンが亡くなり享年91歳だと知り、唖然としました。そうなんだ、もう月日は流れるように進んでいたのだと・・・気がつきました。
名作「おかしな二人」は1965年作品でしたし、私の好きな「グッバイガール」は1977年作品・・・名作は、ついこの間の作品のように心に残るものなのだと感じました。
さくらももこさんが亡くなり、さくらさんはまだまだ活躍していただけるお歳なだけにショックで、残念でたまりません。
私の年代よりはちょっと下ですけれど、良き昭和を描いた「ちびまるこちゃん」を読むたびに「あるある」だけでなく、自分の子供時代とすー―っとリンクさせられてしまうお話の運びに心を癒されたものでした。
人はみな誰もがいつかいなくなってしまうのですけれど、そして他人の心から少しずつ消えていくのですけれど、作品はいつまでも残ります。
創作者だけが持てるある意味特権なのかもしれません。
これからも、さくらももこさんの漫画は読み続けられ、アニメ「ちびまるこちゃん」も見続けられることでしょう。
ご冥福をお祈りします。

クジラは歌をうたう

大事な人が亡くなった後、遺された者は何を見て、なにを思っているのでしょう。
出身ライターの持地佑季子さんの「クジラは歌をうたう」(集英社刊)が出版されました。
持地さんは、08年フジテレビヤングシナリオ大賞佳作を受賞後、映画「管制塔」「空色物語」「くちびるに歌を」「青空エール」「プリンシバル」、8月1日公開された「青夏~君に恋した30日」などの青春ものを得意とするシナリオライターです。
その持地さんの小説「クジラは歌をうたう」の解説を書かれていらしたのが、出身ライターの宇山佳佑さん。びっくりしました。(笑)
宇山さんもシナリオライターであり小説家でもあり、「桜のようなぼくの恋人」「今夜ロマンス劇場で」など、持地さんと同じように青春ものをヒットさせている売れっ子作家さんです。
彼の解説を読んだら、私が書きたいことがほとんど書かれているので、「もう!」と思いながら、「青春ものの名手である持地佑季子が満を持して小説を執筆した」という宇山さんの解説を横目に、今、紹介させていただきます。つらい!(笑)

このお話は、高校時代に亡くなったはずの睦月のブログが12年ぶりに更新されていたところから始まります。
「君は今、何を見て、何を思っていますか?」というメッセージが。
結婚を控えていた拓海だが、届くはずのないメッセージに動揺し、睦月への想いが溢れだしてしまう。
誰が2人しか知らないブログにメッセージを送ったのか、ミステリアスな書き出しから始まる、過去と現在を行き来する巧みな構成に、切ない物語に、不覚にもちょっと涙してしまいました。
なにしろ、うまい。持地さん自身がお持ちになっていらっしゃる優しさ、登場人物への愛情の深さが心を打つのだと思います。
胸キュンさせるシーンを巧みに散らばらせながら、30歳の現在と18歳の過去とを交差させ、登場人物すべてのキャラクターとそれぞれが持つ葛藤を描き切ることで、それぞれの未来を感じさせるという凄腕の小説です。
脇の登場人物にさえ、どの人も魅力的で、愛情を感じてしまうほどです。
そして、このまま映画にしてしまいたいほど映像的な見せ場がたくさんあり、ひとつひとつのエピソードにシーンが目に浮かびます。沖縄・東京・鎌倉、舞台も読者の想像力をあおります。
まさにシナリオライターだからこそ描ける小説だと思います。
シナリオライター志望の方も小説家志望の方も必読の書です。

「クジラが歌をうたう」 クジラは歌をうたうことがある。(略)クジラが歌うのは、好きな相手への求愛の為とも言われている。だが、その真相はいまだ謎のままである。

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