自慢話は聞いてもらえない
会社案内や営業資料は、往々にして企業の自慢話になりがちです。それはそうです。「ウチの会社、信頼できますよ!」「ウチのサービス、すごいですよ!」と言いたいですから。
ですが、資料を目にする方々が、その説明に興味があるわけではありません。いや、むしろ、興味がない場合の方が多いわけです。
どうすれば、お客様の心に刺さる資料を作れるのでしょうか。
答えは、ふだん何気なく観ている映画やテレビドラマの「構成」の考え方にあります。
そもそも映画やテレビドラマの「構成」は、観客や視聴者に「おもしろいドラマだ!」と興味を持ってもらうためのものだからです。
映画やテレビドラマの脚本家や小説家を600名以上育成してきたシナリオ・センターが、資料作りに活きる「構成」についてご紹介します。
ターゲットを整理する
資料を制作するにあたって、まず確認したのが、誰に向けた、何のための資料かということです。ドラマでいえば、視聴者を想定することに当たります。20代を意識するのか、40代なのか、男性か女性かなどです。
「そんなこと当たり前だ」と思うかもしれませんが、ターゲットを明確にすることはとても大切です。なぜなら、資料を作成する過程で、伝えるべき情報の取捨選択、伝え方までターゲットが基準になるからです。
ターゲットがぼんやりしてしまうと、全ての情報がぼやけてしまいます。
伝えたいことをドンドン出す
ターゲットが明確になったら、ターゲットに刺さりそうな強みや伝えたい情報をどんどん出していきます。いわゆるブレストというやつです。
ですが、そのまま資料には書きません。なぜなら、これらの情報は、あくまでこちら側が伝えたいことであり、お客様が知りたいことではないからです。
起承転結を押えて情報を整理する
資料作りで一番迷うのは、伝えたいことをどういう順番で伝えればいいのか、ではないでしょうか。順番を考える際は、お客様が資料を読み終わったときに、どんな気持ちになっていればいいかを考えます。読み終わりのお客様の気持ちから逆算して、乗せるべき情報を考えることができるからです。
まず考えるべきは、起承転結の「転」になります。「転」では、こちらが伝えたいテーマを伝えます。次に考えるのは「結」です。「結」は、テーマの定着と余韻という機能があります。
「転」で、こちらが伝えたかったテーマが伝わり、「結」は、お客様が「確かにそうだな」と思っている状態になります。
出だしも、ターゲットの立場で考える
「転」「結」が決まったら、出だしを考えます。ドラマの構成では「起」にあたります。「起」で考えるべきことは、テーマに対するアンチテーゼです。アンチテーゼというのは、テーマの逆という意味です。
「テーマ」で伝えたいことが「便利だよ」だとしたら、「アンチテーゼ」は「不便な状態」になります。出だしも、お客様にどんなアンチテーゼがあるのかを考えます。
お客様自身の問題意識に働きかけることができれば、自ずと興味を持って資料を見てくれます。
「承」で問題を解決していく
「起」と「転」「結」の関係は、逆になります。
この逆の状態を、変化させるのが「承」の機能です。お客様が抱える問題の解決策や解決に至る根拠を「承」で提示していきます。
構成については、「結」を意識するだけで、 伝える 力が変わる も参考にしてください。
まず「何を伝えるか」だけを考える
資料を作る際には、大きく二つのことを考えます。「何を伝えるか」と「どう伝えるか」です。どちらも共通するのは、お客様の立場で考えるという点です。
資料作りの「構成」を考える段階では、「何を伝えるか」だけで整理することがポイントです。
資料を作るとなると、どんな言葉で伝えるか、どんな図表を作るかなど、色々なことが気になってしまうのではないでしょうか。ここで「どう伝えるか」まで考え出すと、2つの作業に頭を使うことになります。これ、大混乱の元です。なので、あくまで、端的に「何を伝えるか」だけを考えます。
伝わる言葉にする
伝えるべきことが整理されたら、あとは「どう伝えるか」というクリエイティブを練っていきます。文言やレイアウト、デザインなど、練りに練る段階です。ここでは、各自の好みが出てきます。
ですが、構成の段階で「何を伝えるか」が定まっていれば、お客様により伝わりやすい言葉、デザインをのびのびと考えることができます。
実際に、大手菓子卸問屋さんの海外進出のための営業資料の作成を、担当の方々と一緒に行いました。ドラマの「構成」を意識して作り込み、デザインに落とし込むことで、アジア圏のスーパーマーケットのバイヤー担当が集まる展示会では、多くの商談を得ることができました。
感動は、万国共通です。ドラマの「構成」は、世界でも通用します。
営業資料・会社案内を作成する際には、是非、起承転結を意識してくださいね。