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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

森下佳子さんの究極のドラマ

嫌われ政次の一生

シナリオ・センター代表の小林です。出身ライターの森下佳子さんが書かれている大河ドラマ「おんな城主直虎」(NHK)の20日日曜日の話題で持ちきりです。
大人気の政次役の高橋一生さんが死んじゃうからのようで、ディーン藤岡さんの時同様、「政次殺さないで!!」嘆願が多く出たそうですが、壮絶な磔シーンで政次の一生は終わりました。

  20日は「嫌われ政次の一生」、高橋一生さん演じる政次が、直虎のために裏切り者として磔をされる回でした。
嘆願された視聴者の方々、悲しいけれそ、さみしいけれど、納得されたかと思います。(笑)
  大丈夫!森下さんのシナリオは、高橋さんを最後まで生かしていくでしょう。

常日頃から、森下さんのシナリオのうまさには感心しながら、どのドラマも拝見しているのですが、この磔のシーンは、森下さんの作品の中でも語り継がれる名シーンだと思います。 

政次の布石

森下さんがご講義された時に「ストーリーを考えるのではなく、描きたいシーンに向って描いている」とおっしゃっていましたが、まさに「なるほど!」と思いました。

裏切り者として磔にされることになったと聴き、直虎は「政次が行くと言うのなら、私が送ってやらねば」と和尚様と共に刑場にいきます。
読経する直虎、ですが、処刑されようとする瞬間、直虎がその槍を取り、政次の心臓に一気に突き立てます。
2人は見つめあったまま。
直虎「地獄に落ちろ!小野但馬!」「日ノ本一の卑怯者として未来永劫語り伝えてやるわ!」
政次「やれるものならやってみろ、地獄の底で見届けて・・・」とこと切れます。

本当に、うまい、森下さん。
逃がそうとする龍雲丸に政次は白い碁石を直虎に託し、あえて、徳川を裏切った者として処刑される道を選びます。
いつも二人で碁をしながら、井伊が生き延びる策を練っていたのですね。この積み重ねがあって、この碁石が生きるのです。
政次の想いが直虎に浸みこむのです。

淡々と「政次が行くと言うなら、私が送ってやらねば」と言う直虎からは、微塵も政次をおのれで手にかけるとは視聴者は思いません。
可哀想だなあ、辛いだろうな、助命を懇願してほしいなあとか、思いながらみていたことでしょう。

直虎が政次に槍を突き立てる、まさかの展開でした。
政次と直虎の究極の愛の見せ方。
この落差こそがドラマなのですね。
このシーンを描くために、森下さんは、一石ずつすべてに集約して布石を打っていたのです。

そういえば、森下さんからいただいたおはがきに「もうなんかしっちゃかめっちゃかでした」という一言が。このシーンへもっていくためだったのかな。(笑)

「ドラマとは何か」ということを森下さんは見せてくださいました。
森下さんのシナリオには、いつも感心させられていたのですが、このシーンを拝見すれば、シナリオを学ばれている方ならどなたも、森下さんのドラマ手法が、手腕がおわかりになるかと思います。
ドラマとは、こういうことなのです。ストーリー、段取りではないのです。
シナリオライターを志される方は、是非とも学んでいただきたいと思います。
ご覧になっていらっしゃらない方は、オンデマンドで是非ともご覧になってみてください。 

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