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「簡潔」「的確」「あたたかい」。それを私は、受け継ぎたい
【突撃講師インタビュー 上原講師 編】

突撃講師インタビュー。今回は、シナリオ8週間講座と研修科を担当する上原講師です。新井一がシナリオ作家協会で教鞭をとっていた夏の合宿がきっかけで、シナリオの勉強を開始し、シナリオ・センターの前身である新井邸での寺子屋時代を知る新井一の薫陶を色濃く受けている講師のお一人です。
新井一から何を学び、何を意識して講師として生徒さんと接しているのか伺いました。東宝企画製作のぶっとんだ特撮テレビ番組『クレクレタコラ』の脚本を書かれていたとは思えない(?)、親しみやすい上原トークです。

 

シナリオを書くきっかけは、大学生の夏

新井
毎回講師インタビューで聞いているんですが、シナリオを書くようになったキッカケってなんですか?

上原 
映画が好きで、小さいころから見ていたんです。
よく母に連れられて渋谷東映にタクシーで。時代劇黄金期です。
俳優でいうと市川右太衛門とか、片岡千恵蔵とか、大川橋蔵、萬屋錦之介とか…

新井 
全然分からない(笑)。すいません。

上原
(笑)。
僕にとっては時代劇はスゴくなじみのあるんです。
そういえば、今の生徒さんは※「時代劇」手こずってますよねぇ。
「忠臣蔵」は名作ですから、いい教材になりますよ。

※時代劇…研修科の30本ある課題のうちの最終課題。

新井
へぇ。
僕の世代でテレビドラマで「鬼平犯科帳」、「水戸黄門」とかやっていたけど、少なくなりましたしね。
習慣的に見づらくなりました。じゃあ、時代劇を中心に見ていたんですか?

上原
いや、中学生になると一人で洋画ばかり毎週。
ヒロインの女優に週替わりで恋していました(笑)。

新井
(笑)。

上原
シナリオを意識したのは高校生の時。
映画の「007~ロシアより愛をこめて~」を見てからです。
原作を読んだ友達が「ヘリコプターを打ち落とすシーンなんか原作にないぞ」って。
「原作と映画は違うんだな」と。

新井
「シナリオ」というものをそこで認識したんですね。
すぐに書こうと思いました?

上原
いや、実際に書こうと思ったのは大学生の時です。
2年だったかなぁ。たしか、シナリオ作家協会の夏の合宿に参加したんですよ。

新井
見るのが好きから、書こうと思ったのはどうしてですか?
  
上原
映画好きは大抵、監督になりたくなるんです。
私の場合は、「監督は脚本が書けなくちゃいけない」ってなにかで読みまして。
まあそんなことないんですけどね(笑)。
ジョンフォードやヒッチコック、溝口健二も書きませんから。

新井
そういう監督は、パートナーの脚本家がいたりしますしね。
シナリオを書いてみてどうでした?

上原
もっと上手く書けると思っていたんですけど、まあ書けないですよね(笑)。

新井
(笑)。通う前には自分なりに書いたりとかはしなかったんですか?

上原
しなかった。いきなり夏合宿に行っちゃった、という(笑)。
そこに講師として新井先生もいらしていました。

新井一の講義は、落語のようだった

新井
へぇ、それが新井一との出会いなんですね。
講義はどんな感じでした?

上原 
落語みたいな講義でした。面白かったですね。

新井 
※紺野さんもそう言ってました。メモをとる時間ももったいなかったと。

※紺野講師…昨年末まで、通信講座の添削講師担当。
「私に投資して」から始まった【突撃講師インタビュー!紺野講師・前篇 / 後編

上原
私は新井先生が言ったことはかなり書き留めましたね(笑)。
新井先生はよく師匠の「川村花菱」さんの言葉を引用していました。
「役者の“しどころ”を考えろ」、とかね。
川村花菱さんを理解しないと、新井一を理解するのは難しいと思います。
彼はお芝居の台本を書いているわけです。

新井
もともと新井一は芝居を書きたかった人ですからね。

上原
ええ。それですぐに川村花菱の脚本集を手に入れました。
新井一先生が紹介したものメモをするだけじゃくて、全部買うんですよ。
お金にいとめをつけずにね。古本屋で見つけて、結構高かったですよぉ(笑)。

新井
(笑)。

上原
読んでみると川村花菱という人は大変多作な方でした。
きっと書くのも早かったんですね。「これ、すなわち新井一」だと。

新井
(笑)。新井一も多作ですからね。
書く早さがものスゴかったのは後藤先生も言っていました。

上原
そうでしょう。それに花菱さんは脚本家の育成もしていたんですよ。
短い脚本ををたくさん書かせていて、そこに新井先生も参加していたらしい。

新井
※「影武者たち」に書いてあった気がします。
シナリオ・センターが出来る前の土壌がその時点にあったんですね。

※『日本映画黄金期の影武者たち』…膨大な作品を生んだ「影武者」ともいうべきシナリオ・ライター、プロデューサーの活動からその裏面史をさぐった書籍。

上原
ええ。新井先生はいつか師匠と同じことをしたいと思ったんじゃないですかね。
だから「川村花菱」さんを理解してはじめて「新井一」が分かるんです。

新井
なるほど。そういう意味では、僕は分かっていないかも(笑)

上原
あとは新井先生は「シナリオ講話」の話をよくしていました。
これもメモをして買いました。高かったですよ。

新井
またもや高い(笑)

上原 ええ(笑)
シナリオを書く為の知識や技術を書いた本なのですが、著者が戦前のアメリカの女流シナリオライターのフランセスマリオンという方なんです。
新井先生は、この「シナリオ講話」を意識して「シナリオの基礎技術」を書いていると思いますね。

新井 
確かに、マリオン女史って「シナリオの基礎技術」にも良く出てきていますね。
今度「シナリオの基礎技術」と見比べながら読んでみよかな。
それにしても、本当に新井一のことを抑えているんですね(笑)。

上原
ええ。他の人はやっていないと思いますよ。
本だって他の誰かが買っていたのを見たことない(笑)。

新井
はははは(笑)。
そもそも何で新井一が言ったことをそんなにチェックしていたんでしょう?

私は、素直な生徒でした(笑)

上原 
それは新井先生を尊敬していたからです。

新井 
「尊敬」ですか。どんなところを?

上原 
そうですねぇ。私がシナリオを勉強しているときは、まだシナリオセンターが出来ていなくて、六番町の新井先生のお宅でゼミをしていたんです。
毎週ゼミのある日の朝、先生宅のポストに徹夜で書いた20枚シナリオをいれていたんです。
すると夜、ゼミに行くと添削をすでにしていただいて。
裏に少ないときで3行。多いときで5行。
しかも達筆ですからねぇ…。何を書いているのか分からない時もある。

新井 
ダメじゃないですか(笑)。確かに、新井一の字は読めないものありますよね。

上原
ホント読めない(笑)。
新井先生の添削のポイントは「簡潔」「的確」「あたたかい」この3つですね。
長々と書いてないです。

新井 
なんか長い方がありがたい気がするけど…。

上原 
簡潔でいいんです。
毎回授業で言っていたのが、1つだけ覚えれればいいんだってこと。
たくさん言ったって覚えられないだろうから。

新井
そういうこか。

上原 
短いけど、良いところをみつけてくれる。
それで「あたたかさ」が伝わってくるんですよ。
だから、毎週課題を書くのが楽しくて。

新井
確かに。
楽しくなきゃ、わざわざ家まで言って、ポストに課題を入れないですよね(笑)。

上原
ええ(笑)。
尊敬していたのはそういうところでしょうか。私は反発とかしたことないんです。
毎回、「なるほど」って思っていましたから。素直な生徒でした(笑)。

生徒から講師へ

新井 
生徒さんから、講師になられたのはどんなきっかけがあったんですか?

上原 
シナリオセンターが創立して株式会社になるにあたって、株主になりました。
その辺りからほとんど関係が切れていたんです。
「株券を買わされたから」とは言いませんが(笑)。

新井 
だからじゃないですか(笑)。

上原 
いやいや(笑)。
当時いらした内藤講師からシナリオセンターで「講師をしてみないか」と。
しばらく迷ったんですよ。「できるかなぁ」と。シナリオから離れていましたから。

新井 
書いていなかったんですか?

上原
ええ。仕事で企画書なんかは書いていましたけど。
とりあえずシナリオ8週間講座を見学させていただいて、やることにしました。
最初は本科を担当したんですが、割と自分としては違和感なく出来ましたね。
それからシナリオ8週間講座も受け持つようになりまして。今は研修科を。

新井
順調ですね。講師になる時に新井一に何か言われました?アドバイスとか。

上原
いや、なんにも言われなかったですね。

新井
アレ、そうなんですか(笑)。

上原
ええ(笑)。
新井一先生は、私の8週間講座やゼミの様子もご覧になったことはありませんね。
いきなり全部まかされた。

新井
一言もなく?

上原
なぁんにもなく(笑)

新井
ちょっとコワいな(笑)。いきなり全部まかされるって。
でも講師としての関わりとかあったんじゃないですか?

上原
ないですね。

新井
それもないんですか(笑)。
生徒時代はいろいろお話していたんですよね。

上原
ええ。
ただ新井先生もお忙しかったからね。いろんなことをやられてましたから(笑)。

新井
赤字の全国行脚をしていたりね(笑)。
でも、上原さんはずっと新井一の講義を受けているから、全部分かっていると思っていたんじゃないでしょうか?

「簡潔」「的確」「あたたかい」。それを私は、受け継ぎたい

上原
どうでしょうか(笑)。
確かに新井先生は「たくさん書け」、「早く書け」、「書いたものは忘れてしまえ」とこの3つをよく言っていまして、それは私もずっと実践しています。
私はそれを聞いた当初、生意気に「それって恋愛と似てますね」って言ったんです(笑)。

新井
はははは(笑)。

上原
新井先生は「ウマい!」とショートホープ吸いながら言ってましたよ(笑)。
添削も新井先生にならって3行。長くて5行で。長々と書きません。
「簡潔」、「的確」、「あたたかい」。それを私は、受け継ぎたいなと。

新井
なるほどなぁ。やっぱり新井一の教え方が身についていたんですね。

上原
生徒さんに「来週も書いてこよう」と思わせたいんです。
シナリオって、とにかく書かないと上手くならない。
「書くことでしか学べない、成長できない」ことを実感してもらいたいですから。

新井
今はネットや本だって情報があふれているじゃないですか。
でも、情報をキャッチ出来ても上達するには書かないとダメだと。

上原
そうなんです。
でも、書くことって楽しいだけじゃなくて、時にはツラいこともありますから。
だから基本的には書いてきた課題には良いところを指摘していますね。

新井
「どんなに言われても大丈夫」と厳しい意見を望んでも、いざ言われると堪えちゃうますもんね。
だからシナリオ・センターは「褒める」ことに重点を置いているんですが。

上原
けなされると、書くのが嫌になっちゃいますからね。
川村花菱さんも、きっと褒めていたと思います。
弟子は師匠に似てくるんですよ。

新井
上原さんもそうですしね。
正直「この作品はいいところがないな」って時はないんですか?

上原
「書いてきたこと」、それだけで立派だと思いますからね。
書くのって楽しいですけど本当に大変ですから。

新井
一週間なんてあっという間ですしね。
どのクラスもそうですけど、上原さんは特に「書かせよう」って思いが伝わってきます。

上原 
まあ、誰もシナリオを書いてこないとゼミが成立しないですから(笑)。
新井先生は、ご自分のことを「宿題の番人だ」ってよく言っていましたよ。
私もそうでありたいな、と。

新井
ん?…「宿題の番人」。どういう意味ですか?

上原
「俺が宿題を待っているぞ」ってことです。「アドバイスとか以前に、書いて来い」と。

新井
なるほど、そういうことか(笑)。
ところでクラスで「もっとこんなことをしたい」ってありますか?

上原
私はないですね。
シナリオセンターでは課題でやっていく。そのシンプルな形が非常にいいんですよ。
20枚のシナリオもドンピシャですし。

新井
たしかに47年間、それを徹底的にやっていますからね。
でも新井一は新しいこと好きだったし、なにかしたい気も…。

上原
確かに新井先生はお祭りごとがお好きでしたからね。
でもナールイベントや、47行の物語などもやっていますから。

新井
今のシナリオ・センターは上原さんから見て新井一がアリだと言ってくれるイベントをやっていますかね?

上原
大いにアリでしょう(笑)。

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