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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

脚本家の書く小説には、共通項があった!

母子飴

シナリオ・センター代表の小林です。
ほんのご紹介第2号です。お休みをいただいたので、じっくり読ませていただきました。シナリオライターが書かれた小説をたくさん読み込んでいくと、共通項が見つかりました。
一番大きい共通項は、読んでいると映像が浮かぶように書かれていること。シナリオはディテールを描くことですから、しっかりと見えるように書かれているんですね。しかも変に装飾語ないので、多分どなたが読まれても同じ映像が浮かんでくると思います。
もうひとつは、キャラクターがしっかりできていること。登場人物ひとりひとりがちゃんと生きているんですね。もちろん、小説家の方も同じことをおやりなんでしょうけれど、シナリオライターの書くエンタテーメント小説は「見える」。ここが際立っている気がします。

今日ご紹介させていただくのは、出身の脚本家井上登紀子さんが書かれた「泣きの信吉かわら版 母子飴」(学研M文庫刊)。井上登紀子さんは、脚本、戯曲、構成などを執筆されていますが、小説家としては、時代小説っぽく井上登貴というお名前で書かれています。

母子飴

この小説は、かわら版屋の信吉が出会う市井の人々の人情話が3話描かれています。どれも、登場人物のキャラクターがいきいきと描かれ、主役の信吉、妹おぶん、八丁堀祥之進、彫り師嘉助、大家惣兵衛、岡引き七五郎などまわりを取り巻く人々のキャラも見事で、シリーズ化できる見事のキャラ作りになっています。

第一話の表題にもなっている「母子飴」は、見事に色を使っているんですね。花菊糖という飴細工の広告が原因で脅される飴屋を救うのは、色なんです。映像的でしょう。ま、詳しくは読んでのお楽しみなので書きませんけれど(笑)
映像が浮かぶ、キャラがイキイキしている・・・まさにこの「泣きの信吉かわら版 母子飴」もシナリオライター小説の法則(こんな法則あり?)で書かれているから、面白いです。
シリーズ化にも、映像化にもすぐできる気持ちのよい心温まる時代小説になりました。
しかもさすが、井上さん。ご自分が構成されているドキュメンタリー「檀れい名匠の里紀行」(BS日テレ)で取材された名匠たちの姿や技も活かしていらっしゃるようで、すべての仕事はすべてつながっていく・・・経験にはなにひとつ無駄がないということですね。


私の感では、これだけ登場人物のキャラがしっかりしているのですからシリーズ化されると思うんです。時代小説家井上登貴の活躍を楽しみにしています。

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