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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

魅力

警視庁01教場(角川文庫)

ありがとうございました

シナリオ・センター代表の小林です。いやいや早い。夏から年末のスピード感の半端ないこと。
さて、シナリオ・センターのゼミナールの授業は今日で、明日のシナリオ8週間の修了を以って、2023年度のすべての授業が終わります。
今年1年ありがとうございました。
日本のみならず世界中が目まぐるしい1年だったような気がします。
今年は、コロナで閉じこもっていた生活から、ある程度解き放たれました。
ゼミナールも講座も少しずつ対面でいらっしゃる方が増え、シナリオ・センターにも活気が戻ってきました。
コロナのおかげで(おかげというのは違うかな?)、コロナ禍の3年で培ったオンラインと対面のハイブリッド授業が定着しました。
日本中から、海外から、気軽に遠方から受講していただける、ゼミナールもWEBゼミができるという新しい形ができたことは、シナリオ・センターにとっては「災い転じて福となす」となりました。
受講生の皆さんが、オンラインと対面のハイブリッド形式を上手に使いこなしてくださっていらっしゃることは嬉しいことです。
来年は、果たしてどんな年になるのかわかりませんが、混沌としている世の中であればあるほど、私たちの想像力、表現力が必要とされてきます。
私たちは、しっかりと、社会を見る眼、物事を見る眼、人間を見る眼を養って、自分自身の想い、考えを、様々な形で表現し、伝えていこうではありませんか。
嬉しいこと、喜びごと、悲しいこと、悔しいこと・・・色々あった1年だったかと思います。過去を糧にして、明日を見つめていきましょう。
来年、皆様が昇り龍となりますように。佳いお年をお迎えください。

表参道シナリオ日記は、本日で2023年終了とさせていただきます。来週1月9日にお目にかかりましょう。

警視庁01教場

今年最後のご紹介は、出身作家吉川英梨さんの「警視庁01教場」(角川文庫)です。
吉川英梨さんの御本は、多作でいらっしゃるのでたびたびご紹介させていただいています。
その都度感心するのは、一言で言えば「読ませる!」。
私の好きなハラマキシリーズはもちろんのこと、警察、海上保安庁シリーズなど等の小説の面白さは、他の警察小説の中でも群を抜いていると私は思っています。
それだけでなく、この前に書かれた「悪い女 藤堂玲花 仮面の日々」(朝日新聞出版)は警察小説とは全く違って、誰もが持つ人間の欲望と悪意を、ミセスパーフェクトと呼ばれる主婦を通して描かれ、実に見事でした。
今回は、53教場から数年たって、見当たり捜査員だった甘粕仁子という新しい主人公が生まれました。

53教場の学生だった塩見が助教になり、教官甘粕仁子と1330期を受け持つことになる。塩見は、教官、助教官は密接な連携が不可欠と感じているが、仁子はよそよそしい。
ある日、警察学校の前で、甘粕教場と書かれた段ボールに入った人の左脚が見つかる。誰がどんな目的で警察学校の前に置いたのか・・・。
見当たり捜査官だった甘粕仁子は犯人追跡中に大けがを負い、現場ではなく警察学校の教官なったのだが、仁子の人知れず抱えている秘密が、そのカギを握っているのか・・・塩見は仁子と力を合わせられるのか、1330教場の学生たちはどうなるのか・・・。

いつもながら、本当に魅力満載のキャラクターができています。
しかも今回は、仁子の不可解なキャラクターが物語を引っ張っていくのですが、まあ、うまい、ついつい読み進んでしまいます。
解説の中に、対談で吉川さんが話されたことが抜粋されていました。
なるほど、こうして作っているのか、だから深いキャラなのだと納得がいきました。
買って読んでねと言いたいところですが(笑)、ちょっとご紹介すると、
「主人公の名前を姓名判断にかけたり、いつも結構考えますね。
年表も作ります。世相がこうだった時こう思ったとか、初恋は?どういう親に育てられたのか?とか。
プロットを何十枚も書くので、その中で自由にしゃべらせるうちにキャラクターが固まってきますね。
いざ書く時は、年代だけは確認しますけど、年表にとらわれず彼らの生の声を大事にしながら書いていくようにしています」(教場対談 吉川英梨×長岡弘樹/「警視庁53教場刊行記念!警察学校小説対談が実現!/カドブン」

新たな01教場の生徒たち、脇を固める人びとのキャラクターもさすがです。
53教場の魅力的な五味と高杉も大活躍です。
最後のところを電車の中で読んだのですが、涙ぐんでしまって隠すのに大変でした。ミステリーで泣かせるって、なに!?

キャラクターの創り方は、それぞれですが、吉川さんのキャラクターの深さ、魅力はここから生まれたのだということがわかります。
これからシナリオを、小説を、描かれる時にどのようにキャラクターを構築するか、そこがドラマの肝になります。
吉川さんに負けずに皆様も頑張りましょう。
来年もご健筆で!

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