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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

人間を描くということ

人を想う

シナリオ・センター代表の小林です。今日は立秋です。なのに暦も戸惑っているではないかという暑さです。
明日は、長崎原爆の日、今週の日曜日は広島原爆の日でした。
長崎は、台風の接近に伴い、岸田首相はじめ来賓の参列を見送ることにしたそうです。
広島の時の岸田首相のスピーチを聞いて思いました。
さすが、コピペではなかったけれど、本当に思ってもいない「核廃絶」のスピーチなど聞かされても、被爆者の方々は腹立たしいだけ、むしろ長崎の明日は、本当に核廃絶を願い、平和を祈る方々だけで心から願い祈れる気がします。

どうしてこうも、他人に対する想像力がないのかなぁといつもいつも思います。
ちょっと想いを馳せれば、私たちだって感じられることを感じないというのは、どういうハートを持っているのでしょう。
この間のフランス研修騒動。私は、子ども、少子化対策を考える女性議員の活躍は本当に大事だと思っています。女性だからこその視点は今一番必要なこと。
でも、本当に悲しい。子どもを持っている人もいるというのに、何故想像できないのでしょうか。
7人に1人貧困の子どもがいる日本の現実を前に、エッフェル塔でにっこり写真とか、パリでの美味しい食事の写真とかを楽し気に、本当に子どものことを考えているのであれば、少なくともアップできるはずもありません。
楽しんでいけないのではないのです。自分のお金で子どもでも家族でも連れていき、そのついでにでも勉強してきたのなら、ま、賞讃もありです。(しないけど)
でも、わずか6時間の研修で研修に行ったなんて、厚顔無恥にいわないで。党費だの自費だの、子連れの言い訳など、恥を知る人なら口が裂けても言えないはず。

少子化以前に、給食がない夏休み、貧困の子どもたちがどうしているかを考えたことがありますか。
食べるもののない子供の気持ちを想像したことがありますか。
想像もできないからパリのパンケーキの写真など平気で出せる。心根が最低な人間だと思うのです。
子ども食堂やフードバンクを丸1日、視察ではなく実際に手伝ってみてください。1日だけでも、感じるはずです。まともな人なら。
自分たちの思っている以上に大変な親子が沢山いる、フランスでの研修よりも日本での実態をまず見てみましょうよ。
それでもわからない人は、人間をやめろとは言いませんが、少なくとも議員は辞めて欲しいです。
ああ。また怒っちゃった。尋常じゃない暑さは、怒りも呼びます。(笑)

人間を描け

小説家であり、脚本家の平岩弓枝さんが6月に亡くなられました。享年91歳。
平岩弓枝さんは、「鏨師」で直木賞を受賞後、小説だけでなくテレビドラマもたくさん描かれていらっしゃいました。
文化功労者、文化勲章受賞者でいらっしゃいます。

「御宿かわせみ」は小説でもドラマでもシリーズ化され、これ以上人気を博した作品はなかなか見当たらないと思います。どなたもご存じでしょう。
私の一番好きなドラマは、東芝日曜劇場(TBS)で描かれていた「女と味噌汁」ですが、水前寺清子さんの「ありがとう」や京塚昌子さんの「肝っ玉母さん」も、家族愛、人間愛が溢れる素敵なドラマでした。
なんで、いつもすてきなドラマが描けるのだろうかと思っていました。
亡くなった方の人となりを載せる朝日新聞の惜別というコーナーがあります。
27年前、新井一も載せていただきましたが、7月末に平岩弓枝さんのお話が載っていました。

「執筆は苦しみの連続だった。恩師の(長谷川伸)「人間を描く」という言葉を徹底したからだ。(略)
『人間を描く。一言で言えば何でもないんですが、自分を通して人間を描くのですよね。自分が幼ければ、単純な善悪しかないような、幼い人間しか書けない。自分が成長しないと、人間は描けないのですよ。気づいたときはぞっとしました。』
弱くだめなところこそ見つめ続ける。「御宿かわせみ」の主人公おるいと東吾の関係はその到達だった。
『東吾さんにも失敗はあるし、おるいさんもやきもち焼きだし、それが人間のかわいらしさでしょう?』」

シナリオ・センターでも、常に「人間を描け」と申し上げています。
平岩さんの言葉を聞いてはたと思いました。
作者自身が成長しないと、視聴者を引き付ける人間は描けないのだと。
とすれば何が大事なのでしょう。

映像表現の技術は、シナリオ・センターでしっかり学べ、培うことができます。
ですが、作者の描く人間は、作者自身であり、作者の視点ですから、これはお教えできることではありません。
いい脚本家のなるには、自分磨きが大事なのです。

日本の文化芸術に対する思いは、世界を見ても大変低いです。お金しか考えない政治家・官僚の生き方に通じているような気がします。
自分を磨くというのは、文化芸術で心を磨き、表現すること。知性教養というのはそういうところからうまれるのではないでしょうか。

国立科学博物館が、予算を削られてクラウドファンディングに踏み切りました。
9時間半で予定額の1億に達し、2日目の現在2万4千人の方々から4億円に達したそうです。返礼品のキッドも図鑑も終了してしまってもなおです。
返礼品じゃないんです。文化芸術を愛する人々、大切だと思っている人がたくさんおいでになる。
お上よ!だったら予算削っても大丈夫だなんて、思うなよ!
これは、文化芸術を理解しない、無教養のお上への怒り、当てつけなんですから。

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